○
森國務大臣 この
機会に
農林行政各般にわた
つておりますが、一應現在の
施設の
方針を申し上げたいと存じます。
御
承知の
通り本年度の
食糧事情は、百八十万トンの
輸入を懇請する
情勢にな
つておりますので、七月
アメリカの議会が、これを
経費の上において承認してくれるかくれないか未知数でありますが、大体懇請をいたしまして、百八十万トンの
食糧輸入ができるという予想を立てておるわけであります。先般シヤムより五万トンの米が
輸入されることになりまして、これも
アメリカに対して、さらにこの五万トンに対する
増加輸入も許容されるような
情勢にな
つておりますので、二十三米穀
年度におきましては、大体不安なく当初
計画の二合七勺の配給が維持できるのではなかろうかと考えておるわけであります。
麦作の方におきまして一部的には非常に悲観されました中國、
九州方面、あの
暖地方面には、すでに
相当の
被害がありまして、ばれいしよに轉作いたした面もあるのでありますが、関東、
北陸方面には寒害、
雪害等がありませんので、大体大した減耗ではないのではないかと思
つておるのでございます。四國、
九州の
方面は目下調査に出しております。ここ数日いたしますれば全部の状況が統計されることと考えるのでありますが、この
麦作に対しましても、
肥料の
手配、農薬の
手配等を遺憾なく行いまして、できるだけの
善後措置を講じたわけであります。
現在の
日本の
食糧がそういう
情勢でありますから、できるだけ
食糧増産に
努力をいたしたいというのが私の念願でありまして、とりあえず本
年度の
さつまいもを
能率を上げたいという
氣持からいたしましてい御
承知の
キユアリング施設を五億二千万円ばかりの
予算を
見積りまして、全國的に主要な
生産地また主要な
消費地にその
施設をいたしまして、甘藷の貯蔵を
計画いたしておるのであります。來年の四月、五月の候までには貯蔵し得られる見込みがあります。腐敗を防ぐとともに一時に
さつまいもが配給されるというようなことなしにや
つて行きたいと考えておるわけであります。
肥料の
生産におきましても、御
承知の
石炭等の
事情もありますが、幸い
電力等の
事情もよろしいので、
予定計画の
生産もでき得ることと考えております。
しかし先般も各
市町村長の代表との会がありましたときも、
地方が非常に酸性化いたしまして、
化学肥料の
能率を十分に上げないような
土地もできておるというような説も出ておりましたが、私はこれも認めておるのであります。こういう
地方には中和の
方法を考え、また
有畜農業を
取入れまして、そうして
土地の
有機質の
増加、土質の
改良等をや
つて行きたいと考えておるのであります。
何分予算の編成におきまして、当初
相当の
計画をも
つて公共事業費を考えたのでありますが、四囲のいろいろな
事情から、十分なる
予算の
見積りができ得なかつたことを残念に思うのであります。ことに
土地改良につきましては、都道府県の
事業に対しましては、お
手元へ出しておりますような
相当の助成もできるのでありますが、
個人單位の
経営に対しましては、
予算の
関係上これを計上することができ得なかつたことは、まことに残念な次第でありますので、こういうような
事情に置くことは、今日の
食糧事情から許されないのでありまして、でき得べくんば適当な
機会を得まして、こういう
方面にもさらに
檢討を加えて、こういう
事業の未完成に終らないようにや
つて行きたいと考えておるわけであります。
なお
土地の
拡張につきましては、
開墾と
干拓と二つの道があるのであります。
開墾は非常に進捗いたしておるのでありますが、この
農地改革の進捗が
森林計画と齟齬する点がありまして、御
承知の本年の一月に、
政府といたしましては
地方に注意を與えまして、今後未
耕地の
開拓地に対しましては、
地方における
審査委員会の議を経て、その承認を求めて初めて
土地の
買收を定めるという
方針をとりまして、そうして
地方におけるこの
方面の摩擦をできるだけ少くいたしまして、
土地の
開墾をいたしたいと考えておるわけであります。
なお
干拓については、
沿岸干拓と
湖沼干拓とあるのでありますが、
沿岸の
干拓は潮の干満を利用いたしまして、その
当該地の環境によりまして、実に簡單に
干拓し得られる
地方もあります。また
港湾の
深度等によりまして、なかなか
規模が大きくあ
つて、非常に費用もかかり、年数もかかるという
干拓予定地もあるのであります。そういつた
ところはすでに
漁業権の
買收を終りまして、
組合においては
相当の
経費を投じておるのでありますが、
何分三年あるいは五年の
予定計画におかれておるのでありまして、今日のような
予算の緊縮しております場合においては、できるだけ早く一年か二年で完成するという
干拓地を求めたいと考えております。
湖沼における
干拓は、水を干しまして低
水地と用水路をつくればよいのでありますから、これはきわめて簡易に行われますので、こういうふうな
干拓は今後力を入れてやるべきであると考えておるのであります。殊に
水害等の問題は、すでに
國土保安の上からやかましく問題になりまして、
建設省の携わ
つてや
つておる
仕事であります
森林の荒廃が、非常な
原因をいたしておることは私が申し上げるまでもないのであります。特に現
政府といたしましては、
國土保安の上から
治山治水に力を入れて行きたい。
治山治水に力を入れる今日の
仕事といたしましては、御
承知の
通り里山があまりにも濫伐過伐にな
つておる。
奥山が利用されておらないということが事実でありますので、どうかしてこの際
奥山の利用をやりたいという
氣持で、
林道開発、あるいは
木馬道あるいは
車馬道等に力を入れまして、
林道を
開発し、
奥山を利用いたしまして、
里山をしばらく休養の位置に置くということが、
治山治水の上から申しましても適当でないかと考えておるわけであります。
なお造林におきましても、伐切後
植林が遅れておる点が
相当ありますので、現在百五、六十万
町歩の
植林をしなければならない
計画にな
つておるのでありますが、また今後年々歳々の適当な伐採を加えますと、少くとも二百五、六十万
町歩は五箇年の後を考えましても
植栽をしなければならない。この
植栽につきまして第一に考えることは
苗圃であります。
苗圃が
食糧事情のために非常に狭くなりまして、苗の
生産が十分にできておりませんので、
植林いたしたくても苗がない、こういう
関係で、もしもあやま
つて粗悪な苗を
植林いたしますれば、二年か三年でまたやりかえなければならぬという悲境に陥るのでありますから、今日
森林組合等にも十分注意いたしておりますが、
政府におきましても、しつかりしたほんとうの正しき苗の
生産に力を入れて行きたい。また
森林組合にも働きかけまして、
りつぱな苗木を養成することに力を入れて行きたいと考えておるわけであります。また
山林の
経営の上におきまして、
國有林として持
つておる林地を、いつまでも
國有林として持
つておるのがよいか、あるいはこれを
民有林に移して、
民有林としての
経営をやつた方が合理的であるかということを、十分に
檢討を加えまして、現在の
國有林に対しましても
相当の
整理を行
つて行きたい、かように考えておるわけであります。
なお
保安林というものは戰争当時非常な勢いをも
つて開放されまして、それがために
國土保安の上においての非常な障害を來しておることも事実でありますので、
國有林の
整理とともに、
民有林に対しましても
保安林としての
計画をも
つて行きたいと考えておるわけであります。
なお話が
主要食糧生産の面にまわりますが、今日の
主要食糧生産の上において、ことに
米麦等の
生産の上におきまして、
科学技術の
取入れが非常に遅れておると思います。
日本の今日の
科学的指導機関として
農事試驗場が携わ
つてお
つたのでありまするが、
農事試驗場があまりにも
地方的に散在いたしておりますので、この際これを総合いたしまして強力なものにいたしたい。ことに御
承知の
通り六・三制の制定の結果、
地方における乙種、
甲種の
農学校が、
新制中学あるいは
新制高等学校と変化いたしまして、
農家の
子弟に特殊の
技術を教養する道がないのであります。ということは、
畜産学校であるとか
農学校であるとか、
林業学校というものは
甲種程度で設けられたのであります。それが今回の学制において消滅いたしましたことはまことに
農業方面から申しまして遺憾にたえないのであります。こういう
子弟に対する教養をどうするかということが、今後に残されたる問題でありまして、これは
各地における
農事試驗場において、十分なる
技術、学術の修練をいたしまして、昔の
甲種的学校の
成績に負けないような
技術指導者を養成して行きたい、かように考えているわけであります。
なお
科学の
取入れにおきましても、今日まで民間においていわゆる
篤農家、老
農家という人が、長い間の
経驗によ
つて特種の
技術を持
つている。その特殊の
技術であ
つて科学的には
説明はつかないけれども、とにかく栽培の上において、あるいは
品種の上において、あるいはその
生産の上において、実にすぐれた
成績をあげておるというものが
相当あるのであります。そういうふうなものを、
各地における
農事試驗場においてこれを早速に
取入れまして、その
技術を普及いたしたい、こう考えておるわけであります。なお米の
供出制度が叫ばれまして、これは戰争のおかげでありますけれども、質よりも量という
氣持で、
品種が非常に低下しておる点もありますので、このいい
品種の
生産ということについても、今後力を入れて行きたいと思うのであります。
次に
蚕糸業方面について、一言現在考えておりますることを申し上げたいと存ずるのであります。御
承知のように、今日の
生糸に対する
レートは四百二十円ということに特別にな
つておりまして、五千六百掛という價格を維持しておるのであります。これが今想像されているように、三百三十円という
レートに設定せられますると、ほとんど
輸出ができ得ないような
情勢になるのであります。もしさようなことになりますならば、
蚕糸業の問題において重大な結果を及ぼします。現在
製糸業者の
立場におきましては、五千六百掛の
原料を持
つておるのであります。この五千六百掛の繭を今現に糸にしておるのでありますが、その
糸がかりに三百三十円、三百五十円というような
レートに引上げられますと、非常なる損失を來して來るのでありまして、この問題についてはまだ具体的に皆さんに御報告申し上げる
機会に至
つておりませんが、何とかして
製糸業者に打撃の及ばないように、
從つて今年の
養蚕にさしつかえのないようにいたしたいと考えておるわけであります。ことに
アメリカの
情勢は、昨年來非常に
輸出が殖えてお
つたのでありますが、その
輸出の殖えた結果
アメリカに
相当滯貨しておりまして、現に
貿易関係におきましても、
相当の滯貨糸がありますために、
金融方面に非常に苦痛を感じておりまして、
從つてこの
春繭の買入
資金をどこから持
つて來るかという
悩みを持つ
製糸家も、中にはあるのであります。実は五箇年
計画を立てましたときに
製糸設備がぐんぐん進捗いたしまして、ほとんど五箇年
計画通り製糸規模が整備いたしたのでありますが、なお
食糧事情が窮迫いたしておるために
養蚕の振興が遅れまして、繭の
生産がなお
製糸規模に対して六割
程度くらいの
情勢に置かれておるのであります。そこに
日本の全
蚕糸業者が、
悩みを持
つておりますので、これが十分なる
原料がありますれば
生糸家といたしましても、
相当企業が合理化されて行くのでありますが、そこにいわゆる跛行的な結果を見ております。しかし今
政府として考えておりますことは、
絹糸の
消費を
相当制約いたし、あれに使つちやいかぬ、これに使つちやいかぬというように、そういう
方面において非常に規制を加えておるのでありますが、今日の
段階におきましては、これをよろしく撤廃いたしまして、自由に
絹糸の
消費をせしめ、また
養蚕家におきましても、また
繭糸くず繭等の統制を廃止しまして、これは
養蚕家の自由に
家内工業によろう、あるいは
委託加工によろう、これらのものを処分さすというふうなことが、今日の
繊維事情から申しましても適当ではないかと、かように考えておるのであります。さしあたり先ほど申しましたこの五千六百掛の繭をも
つておる
製糸業者に対して、何とかしてこれを切抜けせしめたいという
氣持で、せつかく今
努力いたしておることを御報告申し上げる
程度に止めたいと存ずるのであります。
次に
金融問題でありまするが、
金融は非常に農村が緊迫しておりまして、ことに
農業会が
農業協同組合に改組されまして間もないのであります。まだ
農業協同組合が眞に活動の力をいたしておりませんので、一日も早く
農業協同組合が自主的な発達をするように助成して行きたいと考えておるのでありますが、それにつきましても、
農林金融金庫というものを独立さしたいというようなことを、常に考えておるのでありますが、まだ
農業者自体が出資するという
立場に來ませんのと、
國家の
資金関係で
金庫設置は今日の
段階でどうしても実現ができないというような
情勢にあるのであります。しかし昨年の九月定められました
農林水産の
復興金融の道でありますが、これが九月から三月一ぱいまでに四十億円のわくをもら
つたのでありますが、
資金等の都合で二十一億の金を融通いたしたのであります。これは
中央農林金庫を通じてでありますが、その道によ
つて、この二十四
年度におきましては
相当の金額を工面いたしまして、
長期金融の道を考えて行きたいと、かように考えておるわけであります。
いろいろ
農林行政の上において多岐にわた
つておりますので、主なものを二、三拾い上げて御報告申し上げた次第でありますが、なお御
質問に應じましてお答えをすることにいたしまして、一應この辺で打切りたいと思います。