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鈴木國務大臣 失業対策は、直接的な当面的な
失業対策事業と、それから最終的な、失業の処理の事業計画と、大体そういうふうな系統に大別されると思います。從
つて失業対策事業は、この
二つの系統の事業を総合して、最終的な
失業対策の完成に向わなければならない、そう私
どもも
考えておりますし、今日まで本
会議及び
委員会を通じて、議員、
委員の皆樣の御
意見も大体そうであつたと了承しております。
政府はそういう
方式のもとに、どういうふうな
考えをしておるかと申しますと、結局國民経済の新しい活動分野の開拓によ
つて、最終的に失業者を安定した形で吸收して行かなければならない。つまりいうところの配置轉換の完成であると思います。これらの方面につきましては、これは
関係方面が廣いのでありまして、
労働省はもちろんその中心的の推進力となり、当面の
責任省であることには間違いありませんけれ
ども、事業全体としましては、
政府全体の連絡と協同のもとに行われなければならない性格のものでありまして、この点につきましては、最近設けられました
失業対策審議会をもその連絡立案の
機関といたしまして、そうしてもう
一つ、最近つくられました総合國土計画の
審議会等の活用によりまして、電源、貿易
関係の事業、港、工場地等の
整備、そういつた問題を含むところの一連の大きな計画を進めなければならないと思
つております。この点は総合國土計画の方面で目下その急速な立案の完成を急いでおります。それらの点についての経費は、どうなるのか。これは主として
政府全体、特に大藏省
関係に
考慮してもらうことになると思いますけれ
ども、必要な場合には特殊の経費の捻出もしなければならぬかもしれませんけれ
ども、今
考えておりますのは、今年度予算の中の見返り勘定千七百五十億円のうちの、國債、復金債を支拂つた後の残つた費用は、日本経済再建の建設的な面に向けるという原則は、
関係方面も承知しておりますので、その方面からも相当の費用の捻出ができるのではないかと思
つております。
それからもう
一つは、何とい
つても日本経済の今後の大体の構想は、輸出貿易を中心としたところに置かれておることは、言うまでもないのでありまして、この貿易方面の事業を運用することによ
つて、國民経済のわく内における雇用力を高めて行くという
考え方に終始しなければならないと思います。大体安本、
労働省、商工省等で、既定の計画に、今度の予算の面から來るところの変化をも
考慮いたしまして、計算したところによりますと、その雇用力の増加は、今年度において貿易二十余万を中心として、一般産業において四十万、それから來年度においては百万前後の新しい雇用力の増加が、現在の計画を遂行して行き得れば、期待することができる。こういう一應の結論が出ておるのであります。これと照し合せまして、
失業対策は立てらるべきである。しかしそこに至るまでに時間的のずれがあることは当然でありまして、その時間的のずれに対処する直接的な、段階的な
失業対策が、
労働省でさしあたり直接的に
責任をも
つて強力に展開されなければならない面だというふうに
考えております。そしてそれは一体どういう
方向でやるかというと、まず何とい
つても、これは消極的でありましようけれ
ども、
一つは現在比較的健全な
状態にある
失業保險の制度をこの際に強力に活用して、当面数箇月の急に應ずるという態勢を整えて、それらの点につきましては、詳しく申し上げませんけれ
ども、
失業保險法の一部改訂、それから
緊急失業対策法というような
法律を、別個にただいま
労働委員会で
審議を願
つておるわけであります。それからもう
一つは、一般にいわれるいわゆる
失業対策事業、先ほどから私が申しました
考え方の全体のわく内で申し上げますと、直接的な、段階的な
失業対策事業でありますが、この面を相当強力に拡充強化して行かなければならないと思
つております。それは現在の予算では、もうすでに
労働委員会でも土橋
委員その他からしばしば御
指摘をこうむつたし、
前田さんからも御
指摘をこうむりましたが、現在の予算に盛られておる八億円前後のあの
失業対策費では少いではないかという御
指摘でございました。お説の
通りだと私
どもも思
つております。これは相当量必要に應じて増加しなければならないと思
つております。その増加の
方式は、予算の組みかえ、予算内のやりくりというような
方式によるのか、それとも臨時
國会における補正予算の提出というような形式をとるべきかという問題は、大藏省が
檢討中でありまして、特に本年度の予算は、今までよりは性格も違い、組み方も違
つておるのでありますから、予算内のやりくりという問題につきましては、新しい課題として解決を要する問題でありまして、私
どもはいずれにせよ、その中のどのルートからでも必要なときに適当な経費が出て來ればいいのでありまして、その方法論に至りましては、大藏省にゆだねて
檢討を急いでもら
つておるのであります。そうして一方において、ただいま申しました
緊急失業対策法という
法律を成立させることができましたならば、それによ
つて労働大臣は、多数の失業者が発生すると予想されるような、必要な地域に迅速に、
失業対策を直接的の目的とするところの事業の開始を命ずることができる。それからその終結をも措置することができる。同時にもう
一つ緊急失業対策法におきましては、從來の公共事業の方面における失業者の吸收という問題が、必ずしも思うように行
つておらなかつたという事実から見まして、一定の吸收率をきめて、そうして公共事業の方面にも今日まで以上に高い率で失業者が吸收されるような措置をと
つて行く、そういうふうな措置によ
つて考えられますのは、現在
失業保險の方から受けとめられる
人員は、最近通過した予算内におきまして、約三十万人であります。しかしこれは保險経理といたしましては、その倍を吸收できる資金が民間の方から拂い込まれた保險料の方にはあるのでありますから、必要であれば、もつと多くを吸收することができる。
政府の支出は、義務的の支出でありますから、それに付随して増加せらるべきものであります。大体において七十万人までは増加して行くことができるという保險経理の
状態にあります。七十万人まで受けとめるかどうかという問題は、一應別といたしましても、いざという場合には、そこまでは十分行けると思
つております。それから直接的の
失業対策の面で受け入れられる人たちはどれくらいであるかという問題は、これは支出さるべき経費と、將來起
つて來る失業の
状態とによ
つて、変化するのでありますけれ
ども、これは必要な量を吸收し得るだけの事業を拡充しなければならない義務が
政府にあるはずでありまして、御
指摘の
通り、
行政整理も行う、九原則も強力に行
つて行くという政策を実行する以上、必要なそういつた経費を出すべき義務は、一
労働省としてでなく、
政府全体としてあると私は思
つております。そういう際には、その経費を支出していただいて、そうしてこの
三つの
方式を強く推進して行くならば、もともと容易ならぬ失業の
状態であり、困難をきわめる問題ではありますけれ
ども、國民総力をあげて、あえて失業者もしくは労働者諸君のみにこの犠牲を押しつけることなく、全体の施政として
政府の施策が誤りなく遂行されましたならば、國民経済の拡充の面において最終的に失業者を吸收し終るというところまで、中間的の
失業対策事業をも
つて持ちこたえて行けるのではないか。これは大体論でありますけれ
ども、そういう
考えのもとに、ただいま
進行中であります。