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米窪滿亮君 私は本
委員会の
委員ではございませんが、お許しを得て
委員外の発言をしたいと思います。
その発言は、社会党から提出しましたところの
運輸省設置法案、並びに
海上保安廳法及び海難審判法の一部を改正する
法律案に関する修正の意見について、御説明申し上げまして、本
委員会全員の各位の御賛同を得たいと思うのでございます。
順序の
関係上、まず
海上保安廳法及び海難審判法の一部を改正する
法律案から御説明申し上げます。社会党の修正意見は、第一條の第二項のこの
政府改正原案によりますと、「第二條第一項中「海難の
調査、」の下に「海難の審判、」を加える。」の「の下に」以下を削るのでございます。それから第十一條の二、「海上保安廳長官の所轄の下に、海難審判所を置く。海難審判所については、」云々とありますが、この第十一條の二全部を削除します。從
つて順序として第十一條の三は十一條の二になるわけであります。
以上が
海上保安廳法及び海難審判法の一部を改正する
法律案に対する社会党の修正意見でございます。
海上保安廳法及び海難審判法の法律をそういうぐあいに修正しますと、勢い運輸省設置保案の若干の修正が必要にな
つて來ると思います。
次に
運輸省設置法案に対する社会党の修正意見を申し上げます。これは第三條の一から九まである列記
事項のうち、最後の九の「海上の安全及び治安の確保並びに海難の審判」というこの「並びに」以下を削りまして、新たに十項を起して「海難の審判」というのをつけ加えるのでございます。
それから第四條の一から五十三まである項目のうち、五十二の次に新たに五十三を起しまして、そこに「海難の審判を行うこと。」という字句を入れます。從
つて五十二の一番末尾の「並びに海難の審判を行うこと。」だけを削る。そうして
政府修正原案の五十三は五十四となるわけでございます。
それからずつとうしろに参りまして、第五十六條の二項、三項に「船員
労働委員会」「海上保安廳」とあるところへ、第三項を新たにこしらえて、「海難審判廳」という五字を加えます。
第二節第五十八條の次に新たに節を設けて、「第三節海難審判廳、」そうしてそこへ第五十九條という新たなる條項を起しまして、「海難審判廳の組織、所掌事務及び権限は、海難審判法(昭和二十二年法律第百三十五号)の定めるところによる。」これだけの字句を加える。
以上が
運輸省設置法案に対する社会党の修正意見でございます。從
つて現在海難審判所とあるものを海難審判廳、運輸省の
外局になる
関係上審判所を審判廳とするわけでございます。これはおもなる修正は大したものがなく、ただ從來海難審判所であ
つたものを、
外局になる
関係上海難審判廳とするだけでありまして、主要な
内容的な修正はあまりないのでございます。
この
理由を
ちよつと簡單に申し上げます。私の意見は運輸
委員会におきましても、
内閣委員会においてもたびたび申し上げたのでございますが、われわれの解釈するところでは、海上保安廳というものは海上の交通を安全に擁護し、不測なる海難事故の起らないように予防する、あるいは船員の免状を発給する、あるいは密輸入を防止する、こういう事務を取扱うところでありまして、あるいは燈台の設備、航路標識の設備をする。そこで航路標識の設備をするとか、あるいは船員の免状を発給するとかいうようなことは、なるほどこれは海難事故の予防ということで、いささか海難審判所と連絡のある
仕事でありますが、主たる任務はやはり海上の保安、治安をや
つて不正事故を防止し、密輸入を防ぐというところにあるだろうと思う。でありますから、世間ややもすればこれは
日本海軍の勃興の素地だというような口さがない批評も起
つて來るのであります。從
つて私の解釈するところによると、海上保安廳はやはり檢察廳的性格が多分にあると思うのであります。一方海難審判所と称するものは、海上において事故の起
つたとき、すなわち海難が起
つたときに
理事官を派遣して取調べて、原被両告の申分を聞いて公正妥当なる判決を下すのであります。從來はその
意味で運輸
大臣のもとに直轄されてお
つたのであります。それを今度は海上保安廳の長官のもとに統轄することになる。從
つて何らそういう修正によ
つて予算が減りもしなければ、ふえもしない、將來船員も
整理される危險もないということであるならば、何も苦しんでいろいろの誤解の起りやすいような修正をして、
大臣の直接統轄のもとを離れて、海上保安廳長官の直轄にしなければならぬ
理由は、私はあまりこれに対して理解ができない。海上保安廳の長官は過日
委員会において、船員の免状の発給とともに航路標識の設置もするから、勢いこれは海難防止になるから、海難審判所を自分のもとに直轄にした方が事務的に便利だ、こう
言つておられますけれ
ども、そういう御返事があ
つたにもかかわらず、今日なお理解できないのであ
つて、わが党提出の修正が妥当である、こういうぐあいに私は考えております。過日この
委員会で運輸
大臣も実質的には以前とかわりはないと
言つている以上は、そういう改正をして世間の誤解を招くというようなことのないように、現行のままにしていただく方がよくはないかというのが、わが党がこの修正意見を出した
理由であります。
もう
一つの
理由は、皆さんもすでに御承知の
通り、海難事故に対しては、今まで船員が二重刑罰をかけられる危險が非常にあ
つたのであります。すなわち海難事故が起
つたときに、海難場所へいち早く
理事官を派遣して、その
調査について原被両告を審判するという処置をとられる場合と、とれない場合がありまして、とれない場合にまま陸上の檢察官が参
つて、あまり海上の知識のないところのこの
人たちが調べまして、そこでも
つて判決を下してしまう。ときどきその判決が誤
つてお
つて、また審判やり直しということになる場合が多いのであります。從
つて海員はこれがために二重の刑罰を受けるという危險が多分にあ
つた。運輸
大臣の直接統轄のもとに海難審判所があ
つたときでさえもそうですから、これが一段下
つて海上保安廳長官のもとになるということになれば、ますます海難審判所の陸上の司法檢察に対するウエートが軽くなりまして、船員に対する二重刑罰が起り得る可能性が多くあるのでございまして、この二点から私
どもはこの修正意見を出したわけであります。修正案と言いましても先ほどからたびたび繰返して申し上げる
通り、現行法のままにしておけばよろしいのであります。何ら積極的な修正案ではないのであります。こういう
理由を御了解の上、修正意見に対して御賛成を願いたいと思います。