○
小澤國務大臣 大体第五
國会以來の
逓信行政、すなわち
電氣通信省並びに
郵政省関係のおもな事項について、御報告申し上げたいと存じます。
これを拾つてみますと、まず二
省分割の経過がどうかということが一点、もう一つは御承知のように前國会において御審議を願いました
逓信行政の
独立採算制が、どういう経過をたどつているかという点が二点、第三点といたしましては、
行政整理がどういう形で行われたかということ、しかもその影響というような点を御報告申し上げたいと存ずるものでありまするが、数学等もできるだけ正確に御報告申し上げたいという趣旨から、一應原稿に基いて御報告はいたすことにいたしまして、なおいろいろ御質問等がありましたならば、その都度お答えすることにいたしたいと存じます。
もちろん
逓信関係でございまするが、まず便宜上
郵政省関係について御報告を申し上げたいと思うのであります。この
郵政省関係の二
省分割の状況は、言うまでもなく四
逓信省は御承知のごとく、
郵政省設置法と
電氣通信省設置法の施行によりまして、六月一日から
郵政省と
電氣通信省とに分離いたしましたが、両者の分離に伴う旧
逓信省の財産の分割に関しては、本省に
財産分割中央処理委員会を、地方には
財産分割地方処理委員会を設け、
財産分割の事務に当らしめ、
中央委員会においては別冊の
財産分割基準を
國有財産調整審議会の議を経て制定し、同基準に基いてただちに具体的、個別的に処理を進め、
両省分離後はおのおの
分割連絡委員会を設け、処理に当りました結果、大体完結も近日中の予定であります。具体的に申し上げますれば、
固定資産につきましては、
極小部分を除き、ほとんど全部
確定済みであり、
作業資産につきましては全部
確定済みであり、
流動資産、負債、
自己資本及び欠損額につきましては、二十三年度決算も終り、目下二十四年度四、五月分の決算を急いでおりますが、これらの決定を待つて近く確定し、
財産分割を完了する見込みであります。また
郵政省の新機構につきましては、
設置法に基き
郵政省組織規程、
郵政省職務規程等の一連の法令によりまして、機構的には一應整備を完了いたしました。旧
逓信省時代の各部局は、それぞれ新部局として発足しましたが、この新たに生れた
郵政機構の中で特に目新しいものは、
監察機構でありまして、本省に
監察局を置き、地方には
地方郵政局と並んで、独立の
地方郵政監察局十局を置き、また監察の
実施機関として七百人以内の
郵政監察官を各地に駈在せしめることとなりました。しこうしてその
所掌事務は、從來の考査及び犯罪の
調査処理のほかに、新たに
郵政事業に関する業務の
調査事務及び事故の
調査処理を加え、
郵政事業の正常化及び合理化をはかることとなりましたが、さらに
郵政監察局は、
郵政業務に対する犯罪について
司法警察員の職務を行うこととなり、その
活動分野も一段と廣汎となると同時に、責務の重大さを加えることとなりました。
設置法の第二十二條第二項に「
郵政監察官は、
郵政業務の運行に関するすべての事項の調査にあたり、その実情及び改善すべき事項についての意見を
郵政大臣に提出し、並びに犯罪の嫌疑があるときは、捜査し、その内容を
郵政大臣に報告し、及び必要がある場合には、犯罪の訴追に協力することについて、
郵政大臣から特命を受けたものとする。」とありますのは、この新機構における
監察官の任務を端的に表わしたものであります。それ
ゆえ郵政監察官は特に
事業知識、人格、識見等においてすぐれた者を厳重な選考によつて任命しなければならないのでありまして、九月二日現在で四百九名の
郵政監察官が、全國各都道府縣の枢要地五十一箇所に駐在しております。このように新
機構発見以來わずか三箇月余りをけみしたのみでありますが、幸いにも着々と実績を收めつつあります。
次に六月以降における
郵政事業の概要を申し上げます。
まず郵便でありますが、
郵便物数の四月から七月までにおける動向につきましては、経済九原則の実施に伴う経済界の不況と、五月の
料金改正の影響も一部にあるものと考えられまして、
郵便物数は総体に減少いたしておりますが、中でも第一種書状と速達、書留、保險扱い等の
特殊扱いが、大幅の減少を見せておりますのは、
料金値上げの影響と思われ、料金すえ置きになつた第二種のはがきにつきましては、昨年度に比し一分六厘の増となつております。第二種のほか、昨年度に比し増加しておりますのは第三種及び第四種及び
普通小包であり、第三、四種の増加は、最近の出版界の活況を反映するものと思われ、
普通小包の増加は、
書留小包の
肩がわりもあるが、絶対数の増加しているのは注目すべきことと思われまする今後の見通しとしましては、
料金値上げの影響を脱し、物数も逐次回復して行くものと思われます。
また郵便の速度は、汽車、
自動車等の
輸送施設と、取集め、配達の回数によつて左右されるものでありますが、これらの施設が戰爭の影響により若干低下したため、
郵便速度もなお戰前の域には達しておりませんが、逐次向上の跡を示しつつあります。最近の施策といたしましては、九月十五日実施の國鉄の
ダイヤ改正を期しまして、
東海道線及び山陽線の五、六列車に新たに
郵便車を連結し、また
青森函館間の連絡船に
郵便車の航送を開始いたしまして、本州と北海道との
郵便物の速達をはかります一方、
東海道線の特急へいわ号に
速達郵便物の託送便を開始して、六
大都市相互間の
郵便物の速達化を企図しております。さらに昨年十月以降、
東京大阪間に開始されました
速達郵便の
特別取扱いの制度を、今年八月以降さらに、全
國主要都市と六
大都市間に拡充いたしましたが、これは
最短所要日数を確保する成績をあげ、非常な好評を博しております。なおこの
特別速達取扱いの地域は、近くさらに拡充の予定であります。
また第五國会において成立いたしました
簡易郵便局法は、去る七月十五日から施行されましたが、
郵便局の普及していない地方におきましては、本制度は非常な好評を得、現に
簡易郵便局設置の要望は、同
法施行以來すでに五百余件に達する盛況であります。本年度の
簡易郵便局設置予定局数は、とりあえず全國三百局とし、
郵便局未
設置町村に設置する方針でありますが、前述のごとく、
設置要望が予想以上に強烈でありますので、若干追加するよう考究中であります。なお契約の締結は十月ごろを目途とし、実際の
事務開始は十一月上旬ごろの予定であります。
次に貯金について申し上げます。まず
郵便貯金の
増加状況につきましては、
割増金附定額貯金並びに
積立貯金の奨励によりまして、九月十二日現在におきましては、九百八十七億三千万円となり、前年同期に比べ、約百四十二億円の増加を示すに至り、郵貯一千億円達成も近い將來に実現することと確信いたしております。
次に
割増金附定額貯金の
募集状況につきましては、本年度第二次
奨励運動として、五月十五日から第五回
割増金附定額貯金を八十億円募集いたしましたが、第一線の懸命な努力により、一般的な金詰りにもかかわらず、期末の七月十五日までに総額約七十億円、
目標額の八割九分を消化いたしました。なお引続いて第六回
割増金附定額貯金四十億円を九月一日から賣り出し、目下これが消化に鋭意努力中であります。
次に
保險年金について申し上げます。
簡易保險の本年七月末におきまする現在契約は、件数約九千二百万件、
保險料月額約十八億五千万円、
保險金額約二千二百六十億円であり、人口千人に対する
普及割合は千百五十四件に達しております。次に本年度の新契約は、八月までで件数約五百八十六万件、
保險料月額十二億八千万円で、今年度目標二十億円の六割四分に相当しております。今後の見通しとしましては、九、十の二箇月にわたり、全國に
簡易保險増強運動を実施して、十月末には
最低目標の九割、約十八億円を獲得し、残余の二億円は十二月末までに得る見込みであります。
目標達成の場合の
収支状況について申し上げますと、
収入保險料として約二百六十億円が見込まれ、これに対する
事業費は約九十五億四千万円を要し、
從つて事業費率は日割六分五厘が予想され、前二十三年度の六割二分、二十二年度の七割に比して、著しい改善となります。また
郵便年金の二十四年七月末現在の契約は、件数約百八十二万件、年金額約四億九百万円でありまして、人口千人
当り普及率は二十三件であります。一月から八月中旬までの新
契約実績は一億七千二百万円で、
目標額八億円の二一%に過ぎないのでありますが、これは方針としてまず保險に全力を傾倒しているためでありまして、
保險目標達成の見通しのつき次第、年金の
増強運動を実施する予定であります。さらに
簡易生命保險及び郵便年金積立金の
運用再開につきましては、前國会において、両院とも
再開促進の決議をされ、爾來引続き関係筋に対する説明、懇請、
大藏省側に対する協力、
要請等に努めつつありますが、二十五年度
予算編成との関係もあり、急速に
最終的解決に導くため、全力を盡しております。なお
地方公共團体その他の
運用再開に対する要望は、依然として熾烈であります。
次に本年度における
郵政事業の
独立採算の見通しについて申し上げます。本
年度予算は、御承知の
通り経済九原則の線に沿い、
独立採算制を強行した結果、歳出は極度に切り詰められ、
既定施設を辛うじて維持することができる程度の経費にすぎないのでありますが、最近までの
支出経費の実状は、経常的な経費のほか、
風水害等による
臨時的経費の支出もあり、予定以上の
支出増加となつております。一方歳入面について見まするに、本年五月一日から実施せられた一部
通信料金改正の結果は、過去における
料金改正の場合と同じく、
予定効果を収めるまでにはなお若干の時日を要するものと思われ、從つて七月までの收入状況は、毎月大
よそ予定の一割前後下まわつており、かつ本年度の
予定收入がきわめてぎりぎりに見積つてあること等のため、
目下増収対策を実施し、極力收入の増加に努めつつありますが、本年十二月ごろまでの
収入状況を見なければ、本年度の
独立採算の確実な見透しはつきかねる実情であります。
從つて郵政事業としましては、極力支出の抑制を行い、収支の均衡をはかり、少くとも現在の
サービスを低下させることなく、
独立採算制を堅持する方針であります。なお
増収対策の一環として、
設置法第四條第十五号の規定により
廣告業務の取扱いを開始することとなり、
法的措置も完了し、目下具体的の
取扱方法並びに
廣告料等につき檢討中であり、実施可能のものから順次実行に移し、
増收対策の一環としての効果をあげる所存であります。
最後に今回の
行政整理の
実施状況を、
郵政省、
電氣通信省を便宜一括して申し上げます。
今回の
行政整理が
行政機関職員定員法に基いて、六月二日より九月三十日までの間に行われなければならないことは、御承知の通りであります。六月一日に
逓信省が分離して、郵政、
電氣通信の二省が新たに発足したのでありますが、そのために六月中はその
分割事務に忙殺されて、
行政整理事務にはなかなか手がつけえなかつたのが、その実情であります。七月に入りまして、ようやく両省の現在員が把握できるようになり、新定員に対する
過剰人員が判明するに至つたのでおります。すなわち
郵政省においては、新定員二十六万六百五十五人に対し、現在員二十七万九千六百四十八人で、一万八千五百五十六人が要
整理人員となり、
電氣通信省においては、新定員十四万三千七百三十三人に対し、現在員十五万六千百九十五人で、一万二千四百六十二人が要
整理人員となることが確定したのであります。諸種の
客観情勢並びに事業に内在する
要請等より、
行政整理の不可能であることを察知し、本年二月より
新規採用を嚴重に差止めて整理による犠牲者を
最小限度にとどめるための措置を講じていたのでありますが、さらに整理による出血を緩和するために、一定の條件を具備する職種、人については、これを休職となし得る途を請ずるとか、あるいは
希望退職者を調査する等の措置を請ずる一方、
整理方針を設けて被
整理者の人選を進めたのであります。かくして八月上旬に諸種の準備が
整つたのでありますが、各
地方局の実情を総合してみると、
希望退職者が意外に多く、その数は
郵政省においては要整理人の六一%、
電氣通信省においては六四%程度を占めるに至り、
從つて本人の意に反して退職せしめられる者、すなわち直の出血量は、最初の予定に比しきわめて少量にとどめることができたのであります。実施時期につきましては、諸種の事情を勘案考慮いたしまして、八月十二日と決定したのでありますが、
希望退職者につきましては、本人の事情、
局情等を考慮しつつ、九月末日までに完了し得るよう、幅を持たせることとしているのであります。
次に被
整理者の救済でありますが、今回の整理の対象となつた人の中には、優秀で、事業のため何とか残つてほしい人も多数あるわけで、これらの人は
通信事業から永久に解職されるのでなく、いわば一時の解職とも言うべきものでありますから、今後二年間は
欠員補充その他によつて、新たに部外に人を求めるときは、
資格要件の優位な者より、できるだけ優先して採用する方針であり、また両省に、中央、地方を通じた
就職斡旋委員会を設置して、その救済策を講じております。
最後に、全逓信労働組合との関係についてでありますが、
行政整理が喧傳せられるに及んで、全逓ではいち早く
行政整理絶対反対を叫んで鬪爭を展開し、去る六月八日より三日間秋田市に第七回臨時全國大会を開催して、種々の決議を行うとともに、ストライキを含むあらゆる
鬪爭手段をもつて鬪う旨を宣言しておるのであります。その後、この
基本的鬪爭方針について、いわゆる地域人民鬪爭なるものを展開しつつ、中央、地方を通じ
管理者に対し、
行政整理に関する熾烈な交渉を要望して來たのでありますが、当局としては、
行政整理事務の円満なる運行を期する意味合いより、整理に関する方針並びに
整理人員数等を説明して、その協力を求めたのであります。
整理実施にあたつては、相当の紛議が予想されたのでありますが、実際には大したこともなく、秋田、郡山、長崎等の数局において
管理者の軟禁が行われ、また電信、
電話回線の
切断事件が二、三箇所あり、
辞令拒否数も、
郵政省においては
発令総数の九%、
電氣通信省にあつては二〇%あつただけで、全図的に見て静穏裡に実施を終えることができたのであります。かかる実情は、
客観情勢並びに
公務員法下の運動ということもさることながら、從事員の大多数が
社会情勢、ことに今次
行政整理の意義をよく認識し、一部少数の煽動者に乘ぜられなかつたことを物語るもので、
組合運動の成長を示すものと思います。以上簡單でありますが、今次
行政整理についての説明といたします。
それでは次に
電氣通信省関係のいわゆる二
省分離独立採算制について、御報告申し上げたいのでありますが、この分割の実現した経緯については、さきに
郵政省の分で説明いたしましたが、その結果を簡單に申し上げますと、本省につきましては
内部部局として業務、施設、経理の三局と
電氣通信研究所を置きました。業務、施設の両局にはさらに機能別にそれぞれ五部ずつを置いています。研究所は從來は外局でしたが、研究の実用化という面に重点を置いて、
事業部面と緊密な連繋をはかる上から、これを内局としたのであります。それから
從來内局であつた
電波管理業務を、電波廳として外局にし、また
航空保安廳も独立して外局となりました。このように
電氣通信省の任務は、結局
電氣通信事業と
電波業務と
航空保安業務の三部門にわかれることとなり、
電氣通信事業運営の統轄者として大臣、次官の下に、特に
電氣通信監を置いたのであります。
なお以上のほか
電氣通信省の事業を民主的、能率的に取運ぶため、
電氣通信省運営審議会、
電氣通信調整審議会、
電波技術審議会等が附設され、
関係官廳や
民間学識経驗者を委員に命じて順次活動を開始しつつあります。
次に
地方機関としては、從前の
逓信局所在地に
電氣通信局を置き、そのもとに
事業管理の徹底をはかるとともに、
対外折衝の任に当るため、各
府縣五十二箇所に
電氣通信部を新設しました。また
通信部の下に
現業事務の第一次
監督運営機関として、業務、施設両部面を一体化した
電氣通信管理所を、全國で二百五十八箇所設けました。現業の取扱局は、この
管理所の管理下で
電信電話の
運営維持の
第一線業務を取扱います。全國で電報局が二百二十七局、
電話局が百四十七局、
電報電話局が四百三十局あります。その他
特定郵便局約一万四千局中一万二千局程度が、
電信電話を
電氣通信省からの委託の形で、取扱つています。
今回の機構の特徴を一口で申しますと、
電氣通信省はいわゆる
縦割組織を採用したわけで、本省から現業の第一線まで仕事を縦割にし、本省の各部局ではそれぞれの
所掌事務については、現業までの責任をとり得るように、その
責任権限を明らかにし、業務、施設等の各部面が、上から下まで一つの線でつながつているのであります。もちろん各段階毎に、
関係部課は緊密な
連絡協調をとることは当然のことであります。
以上のご
とく電氣通信省の機構は、
郵政省の場合と異なり、根本的な変革を行つたため、その
本格的事務開始に若干の期間を必要とし、本省及び
電氣通信局に特別の組織をつくつてその促進をはかつて來ましたところ、本省及び
電氣通信局は六月二十日から事務を開始し、
通信部、
管理所については
新設機関であるため、廳舎の準備、職員の配置その他の都合上、八月十五日から全面的に発足いたしました。
なお、新機構下における
電氣通信事業運営についての職員の心構えを、全員に徹底せしめるために、八月一日
電氣通信監名で
部内一般に対して「
電氣通信省新設に伴う
事業運営の
一般方針」を通達した次第であります。
次に
電氣通信省の事業の概況を、三部門にわかつて説明いたしたいと存じます。
まず第一に
電氣通信事業から申し上げますと、
終戰直後のわが國の
電信電話は、戰災と
風水害等天災地変と、加うるに戰爭中長期間の施設の酷使によつて、その
有機的機能を一時ほとんど
失つた状態であつたのでありまして、具体的に申せば、
加入者総数は戰前の百八万あつたうち、五四%が戰災をこうむり、
市外電話回線一万五千回線の五八%、
電話回線二千二百回線の七五%が罹災したのでおりまして、また
残存設備も長年
補充保存が極度に低下していたわけであります。しかし
終戰後関係者一同の努力によりまして、
加入電話につきましては本年三月末約九十三万個まで復旧しましたが、これも八
大都市についてみれば五五%の復旧率をいう不満足なものであります。復旧の遅延の理由は、予算の面、資材の生産面、
労働條件の惡化等がおもなものであります。ただ
市外電話回線は大半復旧いたしましたし、また
電信回線に至りましては一昨年度におきまして、ほとんど全部の回復をみている状態であります。次に
サービスの状況でありますが、
大都市の
市内通話は、現在
完了通話率が三三%程度であります。昭和五年ないし九年当時は八〇ないし七〇%でありました。
市外通話の
サービスも漸次改善されて参りましたが、昭和十二年ごろは東京、大阪間は至急通話で平均二十二分間でありましたが、現在は
特別至急通話でも大体二時間かかり、
從つて通話申込みの取消も二〇%から三〇%程度に上り、收入に惡影響を及ぼしている状況であります。電信はこれに比べて復旧が好調で、たとえば東京と
主要都市間につきましても、昭和五年当時大体一時間から二時間程度のものが、本年六月の調査では、全國平均で
普通通信二時間五十分、至急通信二時間程度まで速達化されているのであります。
次に本年度の
新規計画を申し上げると、
建設予算として百九十二億の成立を見ましたので、これで
加入電話六万七千、
公衆電話三千、
増設電話三万の増設を計画しているのであります。この分の建設費は約四十億円であります。このほか
市外電話回線の増設、復旧二万一千キロ、
電信回線の
更生強化に八十八回線を予定しております。
次には、
國際通話について一言いたします。戰爭前の
対外無線は三十余ありまして、世界の
電話加入者の九〇%と通話できたのでありますが、終戰と同時に一時は
ジユネーブ等中立國との回線も杜絶していたのでありますが、その後連合軍の好意によりまして漸次再開され、現在では東京から八回線、大阪から五回線連絡しております。
國際通話は
從來連合軍関係の利用が主でありましたが、
貿易再開に伴つて、漸次民間の利用が増加して参つております。今後の貿易の発展のためにも、また
外貨獲得のためにも、
対外回線の拡充の必要であることを深く信じまして、諸般の準備のため努力いたしておる次第であります。
なお、ここでつけ加えまして、
電氣通信事業の関係で懸案ないし計画中の
重要事項について、二、三御説明いたしたいと存じます。
まず明二十五年度の
電信電話の
設備計画の方針でありますが、これは第一に收益性を増して、
事業運営の基礎をこれに置くことであり、また
大都市、
重要産業都市の
通信整備復興に、重点を置く考えであります。あわせて警察、
消防通信等、緊急な
特殊通信施設を整備するとともに、
既設設備の
効率的活用をはかり、
サービスの復元に努めたいと考えております。
次に
警察電話を本省へ移管する問題であります。これは昨年六月の
閣議決定に基き、
警察事務用の
有線電話は、昨年八月から仮移管が行われ、
建設保守を行つているのでありますが、しかしその所有権は大
部分都道府縣に属していますので、これを一括して讓り受けるために、來る
臨時國会でこれに関する法案を提出する準備を行つているのであります。
次は
日本電話設備会社の業務の引受の問題であります。
從來増設電話、
接続電話の設備及び維持の工事は、
日本電話設備会社で事実上独占してやつて
参つたのでありますが、一昨年三月連合軍からの指令によつて、この業務を政府に引受け、今後新設される
増設電話については、政府で直営することとなつたわけであります。それに基きまして本年度において、さしあたり同社の保守する電話機三十一万個のうち、約十万個を対象として、業務の引受を実施する予定であります。
最後に國際
電氣通信條約加盟に関する問題があります。これは國会の議決及び連合軍総司令官の承認を経て、昨年十二月加入の申入れをなし、正式受理を見たのでありますが、ソ連及びその衛星國側が加入の無効を主張して、本年五月パリ—の國際
電信電話主管廳会議でも、日本の会議参加が否定されているのでありまして、この日本の加入の効力は、目下ジユネーブの國際
電氣通信管理理事会で論議されておりますが、政府といたしましては、一に米國の援助により、すみやかに正式加入の承認が決定することを切望している次第であります。
次に第二の電波管理関係について申し上げます。現在電波行政の重要課題としてとりあげられておりますのは、電波法及び放送法の制定でありまして、わが國における無線及びラジオ放送に関する法律は、大正四年に制定せられました無線電信法でありまして、現下の発達した無線業務を規律する法律としては、はなはだ不備であると考えられますので、一九四七年アトランチツク・シテイにおきまして締結せられました新國際
電氣通信條約、及び新憲法の要求にも合致する電波法を制定し、またラジオ放送に関しては、新たに放送法を制定して、わが國の放送の健全な発達をはかる必要を認めまして、目下右両案を立案中でありまして、來るべき
臨時國会に提案する予定でございます。なお、電波法及び放送法の執行に当る機関といたしましては、新たに内閣に七人の委員をもつて構成する電波管理
委員会を設けることといたしたいと考えておる次第であります。
次に第三といたしまして、
航空保安業務について申し上げます。
航空保安廳は六月一日から長官、次長の下に、中央に八課、地方に十七の航空保安事務所、三十の出張所、九の航空標識所の組織をもつて発足いたしました。
最近連合國の対日管理政策の推移に伴いまして、
航空保安業務のうち、日本政府の手にまかされる範囲は、漸次拡充される機運にありますので、当局といたしましても自主的運営態勢を準備して、種々の対策を樹立して、その実現に努力している次第であります。すなわち終戰以來わが國は、民間航空を一切禁ぜられたのでありますが、元來航空保安の業務は、民間航空の管理権と離れても、公共的、國際的な責任を有するものでありまして、今後諸外國に伍してこの責任を遂行するためには、現在國際的水準から著しく立ち遅れているこの事業面の格段の改善をはかるため、要員の訓練や技術の研究を強力に推し進めたいと考えているのであります。他方また最近の世界の航空界の趨勢にかんがみ、時代遅れとなつている航空法その他現行関係法令にかわつて、保安業務の合理的運営の基準となる法律を制定するため、第六國会を目標として目下法案の作成の準備を進めておる次第であります。
次に予算関係について概略を申し上げますと、二十四年度の
電氣通信事業特別会計予算は四百四十六億円で、うち建設勘定が百九十二億であります。建設勘定は対日援助見返り資金からの百二十億と、終戰処理費からの二十六億が、おもな財源となつております。これ以外は減價償却や補充取替費を含めて、すべて事業收入でまかなうことになつております。すなわち御承知のように九原則に從いまして完全な收支均衡、
独立採算制を、しかも郵便事業のように
料金値上げを行わずに強行することになつておりまして、本
年度予算は事業復興上相当窮屈な内容となつております。
この
独立採算の実施の状況を申し上げますと、予算では電信事業收入五十三億六千八百万円、電話事業收入二百四十九億六千二百万円、無線
電信電話事業收入、雜收入八億九千五百万円、合計三百二十億四百万円の收入であるのに対して、支出も同額に押えてありますが、本年度七月までの收入実績を見まするに、同期間の予定額百億八千万円に対して、五億六千万円が超過を示しており、まず順調な收入をあげていると言い得るわけであります。七月は機構改革等で、收入は相当低減していることと思われますが、年間を通じて三百二十億円の收入を確保し、さらに数億円の増收をあげ得ることは、大体において確実と考えておる次第であります。他方これに対して現在までの支出の実績は、機構改革その他本年特殊の事情によつて、相当経費が増高する事情のもとにあるのにかかわりませず、経費節約、使用の合理化に努めました結果、本年度七月までの予定額八十七億六百万円に対して、約二十三億を減じまして、結局損益計画において約四十二億もの利益を生じているわけであります。ただしこの経費は、なお中間勘定の整理による振替額を、附加しなければならぬ性質のものでありますので、整理の上は相当支出額が増額となると考えられる次第であります。なおここに若干留意すべきことは、減價償却の関係でありますが、これは正常な減價償却費は約八十七億円、すなわち
固定資産の六%を必要とするのに対しまして、本
年度予算では、他のやむを得ない経費捻出のため、四十六億円しか見込んでいないことであります。これは結局資本の食いつぶしを行つているものでありまして、決して健全な経営の仕方とは言い得ないものであります。
なお、今後
電氣通信省としては
独立採算制の基本原則を堅持する一方、事業経営の基本方針を企業的経営に切りかえ、あらゆる活動を刷新して、
サービスの改善、増收確保、支出の合理化をはかる方針でありますが、これが実行にあたりましては、現行官職制度、ことに会計制度ないし給與制度等において、研究改善を要するものがあると考える次第であります。
最後に今年度における災害による通信被害、及びその対策について一言いたしたいと思います。近來相次ぐ風水害、震火災等のため、
電氣通信施設のこうむつた被害は甚大なものがありまして、戰災よりようやく復興しつつある
電氣通信施設にとつては、まことにたえがたい痛手であるのであります。本年におきましてすでにデラ、ヘスター、ジユデイス等の台風により、九州初め中國、四國地方に多大の被害が発生し、
電信電話回線にありましても、電線の切断、電柱の倒壊、流失、ケーブルの損傷、浸水等により、相当の被害を受けたのでありますが、さらに最近キティ台風の襲來により、関東地方一帶に著しい被害をこうむつたのであります。また、さきに松江市の大火により、松江電報局及び
電話局が類燒し、
電信電話設備も多大の被害を受けたのであつて、この種の災害による被害の應急費並びに復旧費は、年々数億円の巨額に達するのみならず、これらの被害によりこうむる間接的な有形無形の損害は、はかり知るを得ない莫大なるものがあるのであります。これらの被害については、当省としましては万全の應急措置をとり得るよう、各種の対策を講じているわけでありますが、今次のキティ台風による被害に対する措置について申し上げますと、
電信回線にありましては、障害回線を経由する電報は他の迂回線路により傳送し、他に迂回の途のないものは着信局もよりの局まで傳送し、その局から使送する方法をとつて、通信の確保に努めたのであります。また重要通信は非常無線を発動し、警察無線、測候所無線等を利用して、疏通に努めたのであります。電話におきましては、罹災
加入電話については、連合軍関係、警察消防関係を最先とし、官公署、公益國体その他重要生産業者の順に、應急並びに復旧を強行いたし、市外回線については、連合軍專用、警察用、緊急公衆用、新聞專用の順に、應急並びに復旧を強行するとともに、罹災地への緊急通話は、他の迂回線より中継して連絡確保する等、應急の策を講じたわけでありますが、今後の対策といたしましては、非常災害発生の場合、通信の疏通と復旧の迅速を期するため、非常災害情報連絡及び措置要綱を定めて、部内及び部外関係情報連絡、及び被害回線の復旧順位、及び非常無線区間の運用、その他必要な一切の緊急措置は、この要綱に基いて実施するよう、すでに全國的に指令を発しました。なお今後の根本的な災害対策といたしては、さきに申し上げましたごとく、年年非常災害により多大の損失をこうむり、かつ巨額の復旧費を投じている実情にかんがみまして、台風通過地域、降雪地域等の架線をケーブル化し、架察線路を地下線路化する等、今後の施設は、これらの災害にできるだけ耐え得るよう計画し、また現在施設のうち特に脆弱なものにつきましては、特別保守を実施し、その被害を
最小限度にとどめるより配意いたしておる次第であります。なお先般の風水害によつて被害をこうむりました施設につきましても、この方針。復旧に努めたいと考えているような次第であります。
なお、ついででありますから申し上げておきたいのでありますが、大体來るべき
臨時國会に
逓信行政関係の法案として、提案したいという考えの法案は、先ほどの説明中にもありました通り、まず電波管理法案、放送法案、
郵便物委託法案がおもな法案でございます。そこで確定案にはなつておりませんけれども、皆さんの手元に一應原稿を差上げておきましたから、御研究の上、適当な御意見を承りたいと存ずるものであります。但し、
郵便物委託法案につきましては、すでに閣議の議を経まして、あらゆる交渉が済んで、國会が開かれればただちに提案する程度まで進んでおります。その他の法案につきましては、なおいろいろ関係各省あるいは関係方面とも折衝の余地がありますので、いまだ確定案でないことを特にお含みの上、御研究を願いたいと存ずるものであります事。