○木村國務大臣 ただいま議題となりました
地方税法の一部を
改正する
法律案につきまして、その適案の理由及び
内容の概略を簡單に御
説明申し上げます。
御承知のごとく、昨年七月実施いたしました
地方税
財政制度の全般にわたる
改正によりまして、
地方財源は相当強化せられたのでありますが、その後における給與ベースの改訂、物件費の高騰及び委任事務費の増加等の諸事由によりまして、再び
地方團体の財源は窮迫を告げて参り、
地方團体の七割までが、あえて標準賦課率を越えて増税を行い、あるいは幾多の法定外独立税を創設して、その必要財源の確保に努めているのでありますが、なお相当数の
地方團体におきましては、昭和二十三年度の決算において收支の均衡を保持しがたい情勢にあるのであります。このような情勢に対処して、可及的に税收入の増加をはかりますとともに、経済九
原則の線に沿い徴税確保の措置を講ずる等のため、現行
地方税制度に必要な
改正を加えることといたしたのであります。
本
改正法律案の
内容は二点から
なつております。すなわちその第一は、住民税、地租、家屋税等現行税目の若干に対しまして、賦課率の引上げ等所要の変更を加えたことであります。第二は、税收入の確保及び租税徴收権の強化をはかるため、所要の
改正を加えたことであります。以下順次それぞれの
内容を御
説明申し上げたいと存じます。
改正の第一点は、既存税目に対しまして加えました変更でありますが、その第一は、住民税の一人当り平均賦課額の引上げであります。住民税は、
地方財政收入を確保するとともに、自治の基本である負担分任の精神を税制の上に顯現することをその本來の性格とするものでありますが、以上述べました
地方財政の現況、物價騰貴に伴う住民所得の変動等の事情にかんがみまして、その納税義務者一人当りの平均賦課額を府縣民税及び
市町村民税を合せ、現行の九百円から千四百五十円に増加することといたしたのであります。本増税に伴う増收見込額は約七十五億円でありますが、よつて生ずる住民負担の増加を考慮いたしまして、納期につきましては、
從來の
規定を改め、
原則としてこれを二期とすることといたしたのであります。
第二は、地阻及び家屋税の標準賦課率の引上げであります、昨年の税制
改正によりまして、地阻は百分の二百、家屋税は百分の二百五十と法定されたのでありますが、窮乏せる
地方財政の現状にかえりみ、かつはまた不動産價値の高騰等の事情を勘案いたしまして、今回これらをともに百分の五百に引上げ、約八十億円の増收をはかることといたしたのであります。しこうして地代家賃がすえ置かれていることによる
所有者負担の過重を防止し、不動産價値の増大による眞の受益者をして負担せしめるため、地代家賃の統制額に対し、本措置と同時に必要な
改正を加えることといたしております。
第三は電氣供給業等特定の事業に対する事業税につきましては、所得にかえ收入金額を標準として課税することといたしたことであります。電氣供給業、ガス供給業、運送業等におきましては、料金統制が行われている等の
関係がありまして、現行純益主義の課税によりますときは所要の税收入を確保することができないのであります。そこで、國の物價政策と
地方財政の現状との相互調整をはかりますために、統制料金の決定に際しては
地方税相当額が十分織り込まれることを期待しつつ、純益にかえ收入金額を標準として事業税を課することとし、その標準賦課率を本税附加税を合せ收入金額の百分の二と法定することといたしたのであります。この
規定は、料金の改訂せられたときから適用することといたしています。
第四は、入場税の
規定を整備したことであります。入場税は昨年國税からの移讓を受けまして以來、各
地方團体の努力により、着々増收の実をあげておるのでありますが、(一)美術館、博物館等への入場に対してまでも一律に現行の税率を適用することはやや酷にすぎる感がありますことと、(二)現行の入場税に関する
規定が著しく不備であることとにより、入場税の課税対象を四種類に分別し、新たに遊覽船や遊覽
自動車の利用に対しても入場税を賦課し得るものとし、博物館、美術館等への入場、及び遊覽船や遊覽
自動車の利用に対する入場税の賦課率を百分の六十とするとともに、無料入場に対する
規定を整備いたしたのであります。なお入場税收入が若干偏在いたしますため、
一般には
地方財源が窮乏しているにかかわらず、一、二の特殊の
市町村においては、入場税附加税の收入がその團体の規模から見て必要と思われる程度以上に多額に上りますので、これらの
市町村については道府縣において、その賦課率を制限し得るものとし、その制限した率だけは道府縣税たる入場税の賦課率に加えることとし、不当に偏在する
市町村の税收入を道府縣の手によつて、他の
市町村に再
配分するの措置をとらしめることといたしたのであります。
第五は、鉱区税及び狩猟者税の賦課率の引上げであります。物價漸騰の事実に伴い、その税率を合理化する必要がありますので、特権税たるこれらの税目につきましても、それぞれその賦課定額を五割程度引上げるとともに、狩猟者税につきましては、狩猟
関係者の要望に從い、税率を簡素化し、
從來の三段階制を廃止して一律に
規定することといたしたのであります。
第六は、
從來の法定税目である
電話加入権税の名称を
電話税と改め、
電話の使用またはその加入に対して課することといたしたことであります。すなわち過般の
電話の使用に関する政令の
施行に伴い、以後
電話加入権は消滅いたすこととなりましたので、その名称を実体に即應せしめるため、
從來の
電話加入権税という名称を廃止して
電話税とし、これに相應するよう
從來の
規定を整備いたしたのであります。
第七は、道府縣法定外独立税については、道府縣は特別の事情がある場合においては條例をもつてこれに対する
市町村附加税の賦課を禁止し、または賦課率に制限を加えることができることといたしたことであります。
從來道府縣の法定外独立税につきましては、
市町村は当然に附加税を課し、特別の事情がない限り、これを賦課徴收する義務があ
つたのでありますが、このような制度は
市町村が特に財源を必要としないのにもかかわらず、住民の負担を増加して不必要な財源を付與する結果を招くことになるのみならず、当然に
市町村附加税が賦課されるため、税率その他についていらざる考慮を拂わなければならないこととなり、当該道府縣が当該法定外独立税によつて得た收入を特定の目的に使用することを制限する結果となりますので、かかる場合におきましては、道府縣が條例をもつてその附加税の賦課を禁止し、または賦課率に対し、必要な制限を加えることができることとし、その結果附加税の賦課を禁止され、または賦課率を制限せられた
市町村については、必要に應じ、その
財政需要を満たすために、別途法定外独立税を起すことができることとし、住民負担と
財政需要との相互の間における合理化をはか
つたのであります。
第八は、目的税に関する
規定の整備であります。(一)都市計画税たる目的税は、主要種目である地租割、家屋税割、事業割及び特別所得税割の四種に限定し、種目が多岐にわたるため
國民に與えているいらざる圧迫感を幾分でも排除することとし、(二)水利地益税を拡張して、山林等の事業に要する経費についてもこれを課し得るものとし、(三)共同
施設税についての
規定を整備して、汚物
処理施設等に対しても共同
施設税を課し得ることを明文をもつて
規定することといたしたのであります。
改正の第二点は、経済九
原則にのつとり、
地方税の徴收手続を合理化し、
地方團体の租税徴收権能の強化をはかるため所要の
改正を加えたことであります。
その第一は、新たに
地方税に関する滯納処分の
規定を設けたことであります、
地方税に関する滯納処分手続については、
從來國税の例によることとされていたのでありますが、このような
規定のしかたでは手続にも明確を欠く点がありますのみならず、住民の
財産に強制権を発動する重要な
規定が
地方税法中に欠けていることは、おもしろくありませんので、新たに
地方税法中に國税法規からは独立して滯納処分の手続を
規定することといたしたのであります。
第二は、道府縣の徴税吏員に対し通告処分その他國税犯則取締法によると同樣の権限を與えることといたしたことであります。昭和二十二年の
改正以來、
地方税におきましても、漸次重要な消費税が加えられて來たのでありますが、これらの税種はその脱税が容易であるため、現行の制度の下においては、必ずしも十分な捕捉ができませんので、今回これらの税種につきましては、
地方團体の徴税吏員に対しても國税犯則取締法に基くと同樣の権限を與え、その権限を強化し、脱税犯等に対しては、司法手続にかえ行政手続をもつて
迅速かつ強力に罰金相当額の納入その他所要の処分をなし得るものとし、もつて租税收入の確保を期したのであります。
第三は、入場税の徴收
方法については、特別徴收義務者をして道府縣が発行する証紙をもつて徴收せしめることといたしたことであります。入場税の徴收にあたりましては、その額の多寡をめぐつて
地方團体と
関係業者との間にしばしば脱税等の疑いにより爭いをひき起すのでありますが、徴收税額の多寡につき、このような爭いを起すことのない
方法として、
地方團体及び特別徴收義務者に対し、入場税は道府縣の発行する証紙によつて徴收すべきことを強制することといたしたのであります。この証紙は適宜入場券にも代用されることと
考えております。
第四は、罰則の強化であります。昨年の
改正によりまして、
地方税の犯則に対しましても刑罰を科するものとしたのでありますが、実施後約一年間におきまする状況及び最近における反
税運動等の
実情にかんがみ、(一)新たに不納せん動に関する罪及び滯納処分に関する罪を法定するとともに、(二)軽易なる犯則すなわち申告または報告すべき事項について、申告または報告を怠
つた納税義務者に対しては過料を課し得る
規定を復活することといたしたのであります。
以上申し述べたところが本
法案の提案の理由及び
内容の大要であります。
何とぞ愼重審議の上すみやかに御賛同あらんことをお願いいたす次第であります。
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