○風早
委員 私は
日本共産党を代表いたしまして、專賣
関係の三
法案に反対の
意見を述べるものであります。前の
國会におきまして
日本專賣公社法が制定せられ、引続いてこの
國会におきまして続々專賣
関係の法規の整備がなされつつあるのでありますけれ
ども、私はこの際に
日本の專賣
制度の
本質と役割というものに関して、根本的な反省が必要ではないかと
感じておるのであります。けだし戰後の最近の段階におきまして、わが國の專賣
制度には大きな特徴が加わ
つたものと
考えられる。この特徴を明確にしておかないと、專賣
制度と國民経済、國民生活との必然的なかつ正しい関連づけを見のがすことになると思うのであります。そもそもわが國におきまして、專賣
制度というものは明治三十六年のしようのう專賣、三十七年のタバコ專賣、三十八年の塩專賣、大体日露戰爭前後に初めて歴史に登場したものでありますが、專賣は製造から販賣に至るまで、すなわち生産
関係から流通
関係に至るまで、一切の
関係におきまして國が主体とな
つておるものでありまして、これは國営の雄なるものであると思うのであります。この國有國営というものは、一部少数者の手に資本の集積、集中と独占が行われまして、かえ
つて生産力の発展を妨げるということになりました場合において、日程に上るのが
資本主義発展の順調な姿でありまして、この場合におきましては、たとえば戰後のイギリスに行われつつあります炭鉱國有、あるいはイングランド
銀行の國有あるいはまた最近行われました鉄鋼業の國有、それらのごとき、そこには一面におきまして進歩的な意義も含んでおるということができると思うのであります。專賣
制度というものは一八八〇年のドイツのビスマーク宰相の專制政治のもとで見られますように、もつぱら
財政上の必要のため、もしくはもつぱら軍事的な要請に基いて、特定の物資の國有國営として発生いたしております。專賣
制度がビスマーク的國有と言われるのも、そのゆえであると思うのであります。わが國におきます專賣
制度は、その発生当時まさしくビスマーク的國有の典型的なものであ
つたと
考えます。タバコの場合は、ただ日露戰爭による戰時
財政負担の激増を裏づけるものであり、塩の場合は
最初から軍事的な目的を持
つてお
つたのであります。しかるに日露戰爭が終りましても、ことにタバコの專賣益金は日露戰爭による増税に加えまして、実質上の間接消費税の増收を企てたものにほかならなか
つたのでありますが、明治
政府はこの緊急の
財政の需要というものがなくなりました以後におきましても、依然としてタバコの專賣というものを、同樣な
財政目的のために継続して参
つたのであります。その証拠には明治四十一年以後、大正、昭和年代を通じまして、公債発行を除いた國家
財政收入における專賣益金收入は、これは常に十数パーセントを維持していたことに現われておるのであります。しかるに第二次大戰が終りまして、わが國民経済が根本的な建直しを要請せられ、その場合に、國民生活の安定と向上ということが一切の再建の根本的な前提
條件になりました今日におきまして、
政府は少しもこの專賣
制度の根本的な反省をすることなく、依然として旧態依然たるビスマーク的な專賣
制度というものを維持しておる。むしろそれに輪をかけておるのであります。現に
財政收入の中に占める專賣益金の收入というものは、戰後二十数パーセントないし三〇%以上にも達しておるのであります。タバコの專賣益金というものは実に極端な大衆課税であります。われわれ國民は主食に次いでの生活必需品としてタバコをのんでおるのでありますけれ
ども、同時に莫大な税金を拂
つておる次第であります。私の場合を実例にとりますれば、私は毎日ピースを二箱のみます。
國会に活動してめちやくちやに疲れますので、ますます本数は多くなります。このピース十本入り一箱の総原價は、これは
政府からきわめて懇切に提供されました資料によりますれば、原材料費、賃金等を含む製造費並びに販賣費、
一般管理費すべてを合せて五円四十八銭三厘にすぎないのであります。このピースを
政府は六十円で賣
つております。一箱で五十四円五十一銭七厘でありまして、実にもう超超過的独占利潤と言わなければならぬと思うのであります。これは九〇〇%の驚くべき税率を持
つた天下無類の大衆課税であります。私は月々
政府にタバコだけでも三千二百七十一円の税金を完全に支拂
つておるのであります。一箱にとめておる人もやはり月々一千六百三十五円五十一銭の税金を支拂
つておるのであります。しかもこのタバコたるや、また天下一品まずいのでありまして、これは天下周知の
通りであります。國民は決して満足してこのタバコを吸
つておらないのであります。私はタバコにつきましてこの新しい專賣法として
法律が整備せられましたことについては、その労を多とするものでありますけれ
ども、しかしすべての問題は、われわれがいかにまずいタバコを、いかに高く大衆課税として税金を拂いつつのんでおるかという、この一点に集約せられると思うのであります。これをもつと
良質のうまいタバコを、もつと安くのませるということができるようになる專賣
制度、その場合には私は今までの專賣
制度に関するあらゆるいろんな問題、矛盾というものがすでに
解決いたしておると思うのであります。そういう根本的な反省をこの際当然なすべきであるのに、
政府はま
つたくそれを怠
つておられる。ただ旧態依然として今まで
通りのしきたりで、ますますそれに輪をかけて、
財政收入一本で税金目当でこの專賣というものを
考えておられる。この
意味におきまして私は
日本共産党を代表して、まず反対しなければならぬのであります。このタバコがなぜ高いかということにつきましては、これは生産原價が高いのではないのでありまして、今申しました、ただ
財政收入一本の見地からこの問題を取扱われておるということにある。これを改めればこの問題は改ま
つて來る。さてこの生産原價でありますが、この原價につきまして、これはこの原價の内部構成を見ますればわかるように、そこに支拂われておりますところの給料、あるいはまた製造費の中に含まれておりますところの耕作者に対する賠償費、こういうものが実に僅少でありまして、ほとんどこれは問題にならない。生活費を切込んだ賃金であると言わざるを得ないのであります。こういうことをそのままにしておき、かついろいろ生産に対する技術上の補助、指導というものが現状のままでありますならば、この生産原價は確かにこの
程度に安いものでとどまるかもしれませんけれ
ども、しかしながらよいタバコを多量につく
つて行くというその根本の問題は、少しも
解決されないと思うのであります。この問題を
解決するためには、かねがね私
どもが主張しておりますように、このタバコの專賣局の從業員の賃金の問題にいたしましても、また耕作者に対する賠償費の問題、それから技術的な改善のための
政府の支出ということにつきまして、根本的に
政府に対して改善を要求したいのであります。それによ
つてのみこのタバコというものの問題が
解決すると思います。その上に立
つてわれわれはこの
法案というものが、初めて眞に國民生活、またひいては國民経済の発展に役立てることができると思うのでありまして、それなくしていくらこういう法文を整理いたしましても、それはま
つたく
意味をなさない。こう申さなければならないと思うのであります。
さらに問題は塩であります。塩の場合におきましては、塩の專賣は
最初から多かれ少なかれ軍事的なる目的をも
つてお
つたのでありますが、今日においても依然としてこれはかわらない。これはやはり正常な
意味での國有國営に属するものではなくして、ビスマーク的な專制時代の專賣の
一つの種類であると
考えるものであります。この塩につきましては新しい問題が今日起
つております。それはもちろん今日に始ま
つたことではありませんけれ
ども、戰後におきまして輸入塩というものの役割が非常に増大しておるということ、これは必ずしも今日はもはや軍事的な目的であるということは言えません。しかしながら外資というものの利益のために行われるということは、これはわれわれが今日吉田
内閣のもとで行われております外資全般に対して非難しておることによ
つて、大体証明せられておると思うのでありまして、塩に関してもその例外をなすものではないのであります。この外塩一トン当りが約二十ドルといたしまして、これはどういう為替の換算率をとりましようとも、非常に高いものについております。そこに根本の問題があるのであります。これについては質疑の際に私はいろいろと資料も出しておりますので、もはやこの討論では省いておきますが、いずれにいたしましても
政府はこの外塩を入れんがために、結局は内塩すなわち國内の製塩業者に対して、非常な犠牲負担のしわ寄せをや
つておるということであります。これについては
政府は意識的にそういう方針でや
つておるわけではないという
説明はあ
つたのでありますけれ
ども、事実客観的にはそうならざるを得ない
関係にな
つておりますので、われわれは積極的に
政府がその逆に國内の製塩業者を助ける、これを復興さして行くという確固たる方針を立てれば、問題はおのずから
解決して行く。すなわち外塩を非常に不経済的に入れて行くということが阻止できると
考えます。またその可能性は十分あるのであります。今日白塩に直して問題を
考えてみますと、これは少くとも
日本で眞空式の生産方式によりまして製塩をいたすならば、外塩を十分に駆逐する可能性はあるのでありまして、問題はこの眞空式の製塩というものに対して、どれほどこれを
政府が助長して行くかという誠意、その実質的な裏づけいかんにあるのでありまして、それを
政府は少しもやろうとしておらない。今までもうほとんど大部分の製塩業者というものが、依然としてこの平がま式の非常に旧式な非能率的な生産方式をと
つておるというのも、これはとうてい業者が独立の力でも
つてこの眞空式に建直して行くということができないことは、実情が示しておるのでありまして、どうしても
資金の面、あるいは資材の面、技術の面で
政府が指導を與えなければならなか
つたと思うのであります。現にあります少数の眞空式製塩方式は、ほかならぬ
政府がやはり相当の補助を與えてそうな
つておる。しかるにこういうふうな補助を今日では全然や
つておらないし、また平がま式の多数の製塩業者が今つぶれんとしておるのを、いかなる面からもこれに対する救済
方策を講じておらない。少くもこの
國会中におきまして、われわれはこの製塩業者が一番今困
つておる、特に平がま式の製塩業者が今もう生きるか死ぬか、もう破滅するかしないかという瀬戸際に立
つて、
政府に要望しておりますところの價格の決定もまだやらない。そうして一万一千円という平均的な價格をいずれの生産方式に対しても押しつけたままにな
つておる。これはいずれはそれぞれの生産方式に
從つて價格差をつけるというような
お話もありますが、それは遂にこの
國会中に見られなか
つたのでありまして、われわれははなはだ遺憾とするところであります。かように結局今
政府は多数の製塩業者を見殺しにしようとしているのであります。われわれはこの一点から申しましても、この塩專賣に対する
政府の方針というものには、はなはだ疑問を持たざるを得ないのであります。ことに外資を助けないと申しながら、事実はこれを助けて、そうしてまたこれによりまして、他面ソーダ工業に対しては多分のいろいろな恩典を付與しておるのでありまして、これらも当の製塩業者の
立場に立ちますならば、これは非常に怨嗟の的にな
つておると
考えるのであります。われわれはこういう
意味においても、今日の破滅せんとしつつある製塩業の
立場をも含めて、
政府の塩專賣政策というものに根本的に反対せざるを得ないのであります。なおしようのうについても今日いろいろな問題がまだ残
つておるのでありますけれ
ども、われわれとしては当面の問題として、この場合には適正價格の決定ということはやはり要望したいと思う。こういう点についても
政府の現在の政策に、はなはだあきたらないのでありまして、かたがたわれわれはこの点についても
政府に信頼を表明することはできないのであります。全体としてこの專賣問題については
政府に対してただ反対するだけでなく、
政府自身がこの際に根本的に專賣
制度の再反省をや
つていただく。そうしてもはや今までのような專賣政策ではどうしてもこれは大衆負担をいたずらに増大させるばかりであり、また中小商工業者をいたずらに破滅させるばかりである。ひいては
日本の経済の再建に重大なる支障を與えるということにならざるを得ないということを確認されんことを切望して、私の反対討論を終りたいと思います。