○平田(敬)
政府委員 税制改正に関する
法律案につきましては、お手元に
法律案要綱というのをお配りしてある次第でございますが、この要綱につきまして若干提案理由の説明を補足いたしまして、御説明申し上げたいと存じます。
まず方針といたしましては、提案理由でもよく御説明申し上げましたように、税制につきましてはさしあたり現行税制を踏襲して、根本的な改正は將來の
研究にゆだねるということにいたしております。これは近くアメリカからシヨープ・ミツシヨンが見えまするので、その際に
政府といたしましても極力妥当な税制が樹立できますように、万全の準備を目下進めつつありますが、その結論によりまして税制の全般的な改正を行うことに相なるかと
考えている次第であります。しかしながら
部分的に申しますと、この際改正をしていい事項が
相当多数ございますので、さような点につきまして今回
法律案としまして、まとめて提案いたしたような次第でございます。直接税につきましては実は御存じのようにほとんど改正がございません。ただ間接税、なかんずく酒税と取引高税につきましては
相当な改正でございます。その他の諸税につきましても若干の改正を行いますとともに、新たに揮発油税を今回創設することに相な
つたのでございます。以下各税の要点につきまして若干提案理由を補足しまして、御説明申し上げたいと存じます。
まず所得税でございますが、所得税につきましては現在の税法では四月と七月と十月と一月の四期に、それぞれ四分の一ずつを納めることに相な
つておりますが、その建前を本
年度は三回にわけて、六月と十月と翌年一月の三回としまして、それぞれ三分の一ずつを納めるということにいたしておるのでございます。これは
一つはいろいろ
予算、税制等の点が遅れましたのと、もう
一つは
從來から一月の確定申告に対する更正決定が行われまして、課税が少し遅れておりまする点も考慮いたしまして、大体第一期を六月にし、第二期を十月にし、それから確定申告は今まで通り一月としまして、それぞれ三分の一ずつ徴收するというようにいたしますることが、現在の納税者の実情並びに所得税の行政の点から行きまして、最も妥当であろうという
考え方からいたしまして、かような改正案を提案いたした次第でございます。
その次は法人税でございますが、法人税につきましても、
大藏省の税制審議会でいろいろな
研究案を公表いたしましたことは、御
承知の通りでございますが、これにつきましても
相当根本的に檢討を要する点が多々ございますので、法人税の根本改正も、やはり來るべき税制改正の際にゆだねることに相な
つたのでございます。ただその中でプレミアムに対する課税の問題は、目下資本金が各法人とも非常に少くて、しかも借入金は
相当多い。何と申しましても、この際自己資本を充実させるという必要は、非常に緊急の要請事と
考えられますので、このプレミアムにつきましては、この際積立金として積み立てた場合は、
全額免除するということにいたす必要を認めまして、この
法律案を提案いたしたのでございます。これによりまして、各会社が株式を
一般に公募する方法により資金を調達するということは、
相当容易になると私
ども考えておる次第でございます。その改正がおもなものでございますが、なお
從來土地收用法なり農地調整法等により、不動産等を一時に強制的に買收される場合、あるいは賣却される場合がございますが、かような場合におきまして、一ぺんに所得が出て來て、その際超過所得税を課税しますと、実際において課税が酷な場合がありますので、そういう場合におきましては、普通の所得税、法人税だけ課税しまして、超過所得税は免除するというような措置が妥当であると
考えまして、かような改正案を租税特別措置法として提案いたしておるのでございます。直接税の関係はさような点がおもなものでございます。
そのほかに最後にございますように、納税準備預金の
制度を設けまして、この預金の利子に対して所得税を免除する。これは御
承知の通り、営業者、農家の
方々の納税が今非常に困難である。
負担が
相当重いために、納税資金の調達に非常に困難を感じておられるのは、私
ども痛切に感じておりまするが、平素から一定の額を納税準備預金として積み立てておきまして、それを各納期に納めるということにいたしますれば、
相当重い
負担でも、割合に苦痛が少くて納め得るのではないかという点を
考えまして、今回新たに納税準備預金の
制度を設けまして、その預金の利子に対しましては課税を免除する。この預金は、原則として納税のためにしか引出しは認めない方針でございまするが、ただ天災その他やむを得ない事情がある場合におきましては、他の用途に、金融機関の承認を得て引出すことも認めております。その場合におきましては、本來の目的外に使われることになりまするので、課税は免除しない。租税の納付に充てられる場合におきましては所得税を免除する。かような建前にいたしておるのでございます。
その他なお
法律案として、もう
一つ実は少し遅れまして準備して、あとで御審議願うものといたしまして、加算税の規定を簡素化するための
法律案を今準備いたしまして、近く提案する見込みでございます。これはその際に御説明申し上げたいと思いまするが、直接税につきましては大樣さような点を、さしあたり本
年度の目下開会されておりまする
國会で御審議を願いまして、改正を加えて参りたいと存じております。
その次に間接税の方におきましては、酒税でございますが、酒税につきましては、実はこの際
相当な改正をいたしたらどうであろうかという
趣旨で、税率等につきまして改正を加えることにいたしております。その
趣旨はこの要綱にも書いてありまするように、酒類は原則といたしまして自由販賣とする。その値段は、現在の配給酒の値段と、現在の自由販賣酒、特價酒の値段、これとの大体中間程度になるような税率にしよう。ただ消費の性質にかんがみまして、高級酒につきましては
相当高目な値段になるような税率にする。これに反しまして大衆消費に属する、たとえばしようちゆう等の税率は比較的低くする。そういうことにいたしまして、一方においては
財政收入を確保しつつ、他方におきましては消費の性質に應じて、妥当な價格になるようにいたしたいという
趣旨で、税率をきめておる次第でございます。すなわちここにございますように、清酒につきましては特級酒を新たに新設いたしました。これは
從來の一級酒の中で
相当品質のよいものをある程度さらに選別いたしまして、特級酒にいたしまして、この方は少し高目に、すなわち千百五十円、現在の一級酒の特價酒が九百七十三円でございますから、この方は百八十円程度かえ
つて高くなります。これは全國の銘釀地からよい酒を特に集めまして、それをまず地方で予選をやりまして、予選をしたものをさらに中央に集めて審査をいたしまして、その中から審査に合格したものを特級酒として指定しまして、販賣するつもりでございます。この品質につきましては、
大藏省におきましても
相当責任を持
つて賣り出すつもりでございます。現在の一級酒の実際の賣れ行き
状況から見まして、特別に高いよい酒が千百五十円くらいでございますと、大都市方面あるいは地方においても、ある程度の消化は可能であると
考えまして、こういう
制度を設けることにいたした次第であります。その反面一級酒につきましては、現在九百七十三円でございますが、これを九百二十円程度に引下げる。もつとも配給酒の値段は四百八十六円でございますので、配給酒の値段に比べますと大分高くなるのでございます。それから二級酒につきましては、大体中間程度にきめて六百五十円、現在特價酒が八百十円、配給酒が三百七十八円、そのまん中を行くということになりまするが、六百五十円にいたしたい。それからしようちゆうにつきましては、現在は特價酒が七百八十七円で、配給酒が三百六十五円ですが、その中間よりも
相当下まわ
つておりまする四百五十円程度にいたしたい。これは本
年度はかんしよ等も割当が前年に比べて若干ふえておりまするので、極力安いしようちゆうを豊富に供給いたしまして、一方におきましては大衆の需要に充てますと同時に、他方密造の取締りをやろうという
考えでございます。それからビールにつきましては、一本百三十円程度にいたしたいと、かような價格になるような税率にいたしております。この値段は取引高税及び地方税を込めました最終價格の見込みでございまして、ただ地域によりましては、若干特定地加算等の運賃加算等がございますので、
東京都等の場合におきましては、あるいはこれに五円か十円かの端数がつく場合があるかもしれません。それから價格の原價計算の必要上、できるだけさような点を考慮いたしまして、ラウンド・ナンバーの消費者價格にいたしたいと思
つておりますが、若干の狂いがあるかもしれませんが、おおむねこの程度の消費者價格になるようにという意味合いにおきまして、それぞれ税率を定めておる次第でございます。さようにいたしまして大体酒類につきましては、この際原則として自由販賣にしまして、配給をやめるということにいたしております。ただ実際問題といたしまして、労働者や農村等に対しましては、現在も
相当配給いたしております。この値段をこの際上げますと、やはり米價あるいは労働者の家計、重要産業の労働者の家計等に重大な
影響があ
つて、そのために賃金に響くというようなことがあ
つては、おもしろくございませんので、これにつきましては、大体数量を前
年度より二割くらい減らし、値段は現在の値段をすえ置きまして配給する
考えでございます。清酒につきましても、生産費が前年よりも五、六十円高くなりますので、実は税率をそのままにいたしておきますと五、六十円は高くなるのでございますが、消費の性質にかんがみまして、特にこの税率をその
部分を引下げまして、値段は大体現行價格と同じようなことになるように、いたしておるのでございます。さような点が大体酒類につきましての改正のおもなる点でございます。
そのほかに税法といたしましては、密造酒の取締りのために若干の規定を補足いたしております。その詳細は
法律案をごらんになればおわかりになると思いまするが、たとえば器具、容器等につきまして、密造にかかわる器具、容器等は所有者の何たるを問わず、これを沒收できるような規定を設けております。そういうことに関連しまして、現在の密造の取締りの実況に應じまして、実際に法律上の
欠陷があると認められる点につきまして、補足的の規定を設けておる次第でございます。
それから次は清涼飲料税でございますが、この税率につきましては若干この際引下げる。大体一石についてサイダーの場合を例にとりますと、現在は九千五百円の税率ですが、これを八千円程度に引下げる。現在サイダーの一本の値段が三十六円くらいですが、これが三十三円くらいになります。業界の希望からいたしますと、もつと大幅に引下げてもらいたいという希望が、大分あるようでございますが、現在の
財政情勢からいたしますと、なかなかそう参れないので、私
どもこの際清涼飲料の税率が少し行き過ぎであることが叫ばれておりますから、この程度の引下げを行いまして、極力消費の確保をはかりたいと
考えておるのでございます。現在一本三十六円でございますが、税金がサイダー一本当り約三円程度低くなりますので、三十三円くらいになろうと思います。現在は税金が一本に対しまして、十九円で五割ちよつと強なのが、五割弱になるようであります。
それから次は砂糖消費税でございますが、砂糖消費税につきましては、実は昨年の追加
予算の際に、外國から輸入される砂糖にも課税するということに相な
つたのでございますが、その後いろいろ先方と話い合いました結果、やはりこの際輸入砂糖につきましては、非課税にして値段を極力低くした方が妥当である。一面におきましては、今後におきましては、貿易廳から一定の換算レートで價格をきめなければならぬ事情もあるのでありまして、この際輸入砂糖につきましては、非課税にすることが妥当であろうということで、かようなことにな
つたわけでございます。これに伴う價格の改訂は、目下物價廳で檢討いたしておるようでございますが、あるいは若干現在よりも引下げになる可能性があると
考えております。
それから次は物品税でございますが、物品税につきましては、御
承知の通り、非常に税率が高いので、下げてもらいたいという要請が、各方面で出ておるようでございます。私
どももこういう種類の品物の生産がふえて参りますと、確かにこれでは業者の方におきましても、やりにくいという面は
相当あろうと思いますが、ただどうも最近の
財政事情から申しますと、全般的な引下げをいたすということは、なかなか困難のように見受けられるのであります。ただしかしながら、この提案しましたような数種の品目についても、何としてもこの際若干の緩和をはか
つた方がよろしかろうという
考え方からいたしまして、引下げの提案をいたしたわけであります。これも物品税全体といたしまして、
歳入が減るということになりますと、なかなか
財政事情とマツチできませんので、この際乘用の小型自動車等の課税品目を、新たに若干追加することによりまして、それによる
歳入の増加で
歳入の補填をはかりたいと
考えております。なお緑茶につきましては、実際上
從來從課税でしかも免税点を設けておりますと、非常にトラブルが起きてうまく行かないという点がございますので、この際從量税に組みかえまして、その税率を若干引下げるという改正案を、提案いたしておる次第でございます。
次は取引高税でございますが、取引高税につきましては、根本的な問題は將來の檢討にゆだねることといたしまして、さしあたり印紙納税
制度を毎月の現金の
制度に改めることにいたしたのであります。毎月分の取引金額を翌月十日までに
政府に申告いたしまして、申告と同時にこれに対する一%の取引高税を納める、かような課税方法に変更いたしたのでございます。これは印紙を実際にやりました結果に顧みまして、手続が煩瑣なことと、実際にはなかなか励行されなか
つたということに関連いたしまして、むしろかような改正をこの際や
つた方が、円滑に行われるのではないかという
趣旨で、提案いたしたわけでございます。それからそのことに関連して、あまりにも少額の取引に対しまして、毎月納税せしむることはお互いに手数でございますので、この際一月分の取引額が三万円、從
つて税額からいたしまして、三百円くらいまでのところは取引高税を免税いたしたいと
考えております。それと、いま
一つは取引高税につきまして、
從來から
相当課税除外の要望がございますが、その中で最も大衆の必需的な消費に関係の深い部面で、この際考慮を要する面につきまして、新たに非課税とすることにいたしたのでございます。すなわち理髪は
從來は男の散髪だけでしたが、今度は御婦人の方も入れまして理容業全部が対象になる。それから木賃宿等の簡易旅館を除く。それから加工水産物につきましては、この前から当
委員会で問題でございましたが、配給されるもの全部を除く。それから主要食糧や種等の取引を除く。それから葬儀の請負も除くことにいたしております。その他若干、組合間の取引で物調法の
適用を受けるものにつきましては、非課税にするという規定を設けることにいたしております。さようなことによりまして、この際取引高税を実施して行こうということに相な
つたわけでございます。
それから揮発油税につきましては、これは新たに揮発油税を創設することにいたしたのでございますが、大体揮発油は九割程度自動車用でありまして、一割くらい工業用として
使つているようでございます。実際の消費の実情から見ましても、自動車に
使つておりますものは現在のほかの燃料に比べて、コストは非常に低いという実情もございますし、大体揮発油につきましては諸外國におきましても、
相当の財源を求めているという点を考慮に入れまして、この際小賣價格の從價十割程度の課税をしてもよいのではないかという
考え方で、揮発油税を創設することにいたしたのでございます。この課税はきわめて簡單でございまして、製造場または保税地区から引取る際に課税しますれば、完全な課税ができるものと
考えております。揮発油税は戰時中設けまして、その後廃止したのでありますが、現在の情勢にかんがみましてこの際新たに設けて、年四十二、三億程度の税收をあげたいと
考えております。
その他につきましては、土地の賃貸價格につきましても、宅地の賃貸價格の簡易補正をやるための
法律案を目下準備して、近くこれも提案して御審議を煩わすつもりでおります。これは戰災地の
状況が、大分土地の金額が前とかわ
つておりますし、それを現在の
状況になるべく合せまして修正するということは、ほかの賃貸價格の全面改訂に先んじてやるべき緊急なことと
考えられますので、今税務官廳も非常に所得税その他に追われて忙しい際でございますが、緊急な部面だけ先にやろうというので、臨時宅地賃貸價格修正
法案を提案いたしまして、近く御審議を煩わしたいと
考えております。その他各税法に若干の補足的な改正がございますが、大要は以上申し上げた通りでございます。あとは御
質問によりましてお答えいたします。