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1949-05-19 第5回国会 衆議院 図書館運営委員会 第5号
公式Web版
会議録情報
0
昭和
二十四年五月十九日(木曜日) 午前十一時
開議
出席委員
委員長
早
稻田柳右エ門
君 理事 水谷 昇君
北澤
直吉君
圓谷
光衞
君
中西伊之助
君
中野
四郎君
委員外
の
出席者
参議院議員
羽仁
五郎
君
國立國会図書館
長
金森徳次郎
君 五月十四日
國立國会図書館法
の一部を
改正
する
法律案
(金
子洋文
君外九名
提出
、
参法
第五号)(予) 同月十八日
國立國会図書館法
の一部を
改正
する
法律案
(参
議院提出
、
参法
第五号) の審査を本
委員会
に付託された。 —
——
——
——
——
——
——
本日の
会議
に付した事件
國立國会図書館法
の一部を
改正
する
法律案
(参
議院提出
、
参法
第五号) —
——
——
——
——
——
——
早稻田柳右エ門
1
○
早稻田委員長
これより
会議
を開きます。 昨日正式に本
委員会
に付託になりました
参議院提出国立国会図書館法
の一部を
改正
する
法律案
を
議題
といたします。まず
発議者
より
提案理由
の
説明
を聽取いたします。
参議院議員羽仁五郎
君。
羽仁五郎
2
○
羽仁参議院議員
ただいま
議題
となりました
国立国会図書館法
の一部を
改正
する
法律案
について
提案理由
を御
説明
いたします。
国立国会図書館
は、わが國における
唯一
の
国立図書館
として、
日本文化
の
中心的存在
であり、全国の
出版物
が、ここに網羅的に収集されることは、その
存在
の
基本的要件
であるといわなければなりません。しかして、その
図書収集
の
方法
としては、
購入寄贈
、
交換等
の
方法
もないわけではありませんが、日々増加する新しい資料を吸収するためには、
納本
という
方法
が最も重要なものであることは、諸外国において、
図書館
への
納本
につきそれぞれ
強行規定
を有しこれが励行を強制している事例に徴しでも、また明らかなところであります。しかるに、現在
図書館
への
納本状況
はどうかと申しますと、まことに不満足なものでありまして、いわゆる
民間出版物
の
納本数
は、
全日本
の
出版物推定数
に比して、その半数にも及ばず、また、いわゆる
官庁出版物
についてみましても、その
納入成績
は、はなはだ芳ばしくない状態にあるようであります。
納本
については、現在のところ、
国立国会図書館法
の第十章及び第十一章に
規定
されているのでありますが、今回これに若干の
改正
を加え、
現行納本制度
の強化をはかりたいと考えた次第であります。
改正
の要点は、第一公用のため及び
国際的交換
の用に供するために、現在は、いわゆる
官庁出版物
を
納入
させているのを、さらに
地方公共団体
の
出版物
にも及ぼしたこと、またその
納入部数
を
原則
として五十部と定めてあるものを三十部に引下げ、かつ事態に応じて、その
部数
に幅を持たせたこと。第二に、いわゆる
民間出版物
を
納入
した場合、
現行法
でに、
全日本出版物
の
目録
を
代償
として送付すると定めてあるのを、これに
代償金
を交付することに収め、また、
納入
しない者を
過料
に処する
規定
を新たに加えたこと。三
納入
すべき
出版物
の種類を明示したこと、この三点であります。われわれは、
参議院図書館運営委員会
において、
出版業者
、
公立図書館当事者
、
文部省著作権担当官等
の参集を求め、懇談的に、その
意見
を聞き、
慎重審議
を進めました結果この
提案
を見るに
至つた
次第であります。なお
本法
は昨日
参議院
本
会議
にかかりまして、
全会一致
で可決せられた次第であります。何とぞ慎重御審議くださいますことをお願いたします。
早稻田柳右エ門
3
○
早稻田委員長
質疑
をいたします。何かお尋ねになることはありませんか。
北澤直吉
4
○
北澤委員
ただいまここに
議題
にな
つて
おります
国立国会図書館法
の一部を
改正
する
法律案
の第二十
五條
の二に、
発行者
が正当の
理由
なくして前條第一項の
規定
による
出版物
を
納入
をしなかつたときは、その
出版物
の
小売価額
、
小売価額
のないときはこれに代るものの五倍に相当する
金額
以下の
過料
に処するという
罰則
の
規定
を設けられておるのでありますが、
本法
であります
国立国会図書館法
には
罰則
の
規定
がないのであります。特に今回の
改正法律案
に
罰則
の
規定
を設けました
理由
につきまして、
提案者
の御
説明
を願いたいと思います。
羽仁五郎
5
○
羽仁参議院議員
ただいまの御
質問
はまことに重要な問題でありまして、
昭和
二十三年二月に
国立国会図書館法
が制定せられました当時に、私は
参議院図書館運営委員会
の
委員長
として、この立法に努力した一人でありますが、その際には、この
国立国会図書館法
というものを、その前文にございますように真理がわれらを自由にするという確信に立
つて
、憲法の誓約する
日本
の
民主化
と世界平和とに寄与することを使命として、
国立国会図書館
がここに設立せられるという趣旨に従いまして、
文化国家実現
の最高の理想をここに実現するという
意味
で、この
法律
の中に
罰則
あるいはこれに類するようなものを設けないという
原則
を
守つたの
でございます。従いまして今回こういう
改正
をいたしますについては、われわれとしても相当の論議をいたしまして、あるいはさつき申しました
理由
で、御
説明
申し上げましたように
出版業者
、ことに
民間
の
方々
の御
意見
を求めましたところが、この点につきましては、やはり
国立国会図書館法本法
の文化的の高い性質というものを維持する
意味
で、
罰則
を入れることに反対の強力なる御
意見
もあ
つたの
であります。しかしながらこの点につきましては、実は
衆参両院
の
図書館運営委員会
が、
本法制定
以来
本法
が実行せられることにつきまして、絶えず重大な関心を持
つて
参
つたの
でありますが、
国立国会図書館長
の御
報告
によりますと、
国立国会図書館
への
納本
の
成績
がはなはだしく満足なものでない、これを何とかして解決しなけれならぬ。と申しますのは、
国立国会図書館
が国の
唯一
の
国立図書館
であります
関係
から、そしてまたこの
国立国会図書館
が
全日本
の
出版物
の完全なる
目録
を
作成
する
義務
を負うております
関係
から、
図書
の
納入
が完全に行われることが絶対に必要の
條件
であります。このためにはさつきの
提案理由
の御
説明
の場合にも申し上げましたように、
納入
、
寄贈
、
交換
などの
方法
もございますけれども、しかし何よりも必要なのは、あらゆる
出版物
が自動的に、
オ—トマティツク
に
国立国会図書館
に入
つて
来るということがなければ、完全なる
図書目録
というものは
作成
できないのであります。この国の
唯一
の
国立図書館
であります
国立国会図書
に自動的に、あらゆる
出版物
が入
つて
来るということを実現するためには、いろいろな
方法
が考えられます。そのうちの最も模範的なものとしては、アメリカの
コングレス・ライブラリー
がと
つて
おりますコピーライト、それから
納本
というものとを結びつける
制度
でありまして、われわれとしてはこの
制度
を
日本
に採用することはできないかというふうにいろいろ
研究
して参
つたの
でありますが、現在までのところ、この
コングレス・ライブラリー
が採用しておる
制度
を、ただちにわが
国立国会図書館
において採用せられ得るという
結論
に到達いたしません。これはなお今後も御
研究
を願いまして、あるいはこの
方法
が実現できるものであれば、これが最も理想的であるかもわからないと考えるのでありますが、その間に、時々刻々に
出版
されます
全日本
の
出版物
は多大の数に上りまして、それの
納本
の
成績
がよろしくないために、
国立国会図書館
がその最大の
義務
として負うておる完全なる
図書目録
の
作成
ということが日々遅れて参ります。これを救わなければならないという
関係
で、いろいろな点から問題はあるのでありますが、現在のところでは、まずこの
程度
のことをなすことがやむを得ないのではないかという
結論
に到達したわけであります。 なおこれは
罰則
と申しますが、
刑罰
ではございませんで、いわゆる
過料
という
程度
のものであります。その対象と
なつ
た
方々
の名誉に関するようなものではなく、
法律
としてこの
国立国会図書館
の
納本
の
制度
を完全に施行していただきたいという志を表わしたという点に
主眼点
があるのでございまして、
刑罰
という点に
主眼点
があるのではございません。こういう
意味
で、なお完全な
納本
を得て完全なる
図書目録
をつくる、そうして
国立国会図書館
が国内及び
国際
に向
つて
負うておるところの
義務
を果たすという
意味
におきましては、今後もいろいろ御
研究
を願い、又必要に応じては
改正
をしていただくことをお願いする次第であります。現在のところでは、これが比較的
目的
を達成し得る
唯一
の
方法
であるという
結論
に到達しましたので、この
改正
をお願いしたいというふうに考えた次第であります。
北澤直吉
6
○
北澤委員
ただいまの御
説明
によりまして、
罰則
の
規定
は、
国立国会図書館
がその本務を
遂行
するにあた
つて
やむを得ざるものであるということが了解されました。これをも
つて
私の
質問
を打切ります。
圓谷光衞
7
○
圓谷委員
この二十
五條
の三項ですが「
出版
及び
納入
に通常要すべき
費用
に相当する
金額
を、その
代償金
として交付する。」というのはどういうのですか。
原価
という
意味
ですか売値ですか。
羽仁五郎
8
○
羽仁参議院議員
二十
五條
の第三の「
当該出版物
の
出版
及び
納入
に通常要すべき
費用
に相当する
金額
」というのは、一応の常識といたしましては、いわゆる定価及びこれを送
つて
参ります送料あるいは届けて参ります
運搬料
というものでありますが、これは
館長
が大体定める。もちろん
館長
が独断で、定めるわけではございませんで、適当な機関に諮られて、その
出版
に実際どれだけの
費用
を要したか、またそれを
納入
せられるにどれだけの
費用
を必要とされたかということを判定されまして、これを支拂うという
意味
であります。大体実費という
意味
であります。
中野四郎
9
○
中野
(四)
委員
その場合もう一応伺
つて
おきたいのだが、
館長
の大体の
めど
はどのくらいなのですか、やはり一応の
めど
がなくてはならぬわけでありますが、この機会に
速記録
にとどめておきたいと思います。
金森徳次郎
10
○
金森国会図書館長
この
法律
が
通り
ますれば、
図書館
の方が
中心
になりまして、東京でわれわれが容易に接近し得るような
出版界
の
経験者
数人を集めまして、そのほかにもかような問題について御
経験
のゆたかな方のお集まりを願いまして、いろいろの協議をしてこの額をきめたいと考えております。しかしその額はそのときになりまして、そういう手続を経ませんければ、どのくらいの額が適当であるかということは今申し切れません。今まで聞いておりますところでは、
出版業者
には多少の差はありますけれども、大体
利益
の
計算
の率がありますので、何割かは
——
何割と申しましてもそう大きな割ではございませんが、何割かを割つた額をこの額としていいのではないかと考えております。なおこの
納付
に必要なるということでございますけれども、これは
納付
ということが今日郵便で
納付
いたしましても相当多額になるわけでありまして、こういう点はさらに
日本
の
出版協会
の
方々
と御相談をいたしまして、なるべくは集めておいていただいて、
図書館
の方から受取りに行くというようなことで適当に処理したい。
従つて
結果におきましては
当事者
に特別なる
利益
がないという限度で合理的な道をとりたいと思います。もしそれが
間違
つて
おりますれば、訴訟の問題として裁判所で解決せられるというふうにも考えております。
中野四郎
11
○
中野
(四)
委員
これはその道の
権威者
が集ま
つて
、それぞれ
研究
をされて十二分に
出版者
に対してこの
法律
の
目的
を達成し得る段階まで持
つて
行けると思いまするけれども、一面において、たとえばこの
過料
にしましても、
罰則
をも
つて
義務
の
遂行
を望む限りにおいては、
出版者
のおのおのその立場を十二分に理解してかからなければならぬと思うのであります。そこで大体
出版者
では
——
私
出版
にいささか
関係
を持
つて
おる者ですが、
出版業者
としては、たとえば価格の六〇%なりあるいは六五%なりというものは、どうしても
原価計算
の上において確保しなければならぬものです。そういうようなものが認められることにならないと、
義務
の
遂行
だけによ
つて過料
を科するというような
行き方
は、私は納得できぬと思うのですけれども、おそらく賢明な
館長
のことですから、十分に押えるところは押えておられるのでありましようが、
委員会
の議をま
つて
大体どの
程度
の割で出ましようか、およそ今申し上げたような業界において出し得る
程度
のもの、特に
少数
の
部数
を発行する場合があります。一般の
出版等
によ
つて
何万部か刷るものにおいてはその
利益
の幅も幾分か
印刷過程
において見られますけれども、
少数
の、しかも今日入手困難な
高級紙
を使う場合等におきましては、特にこういう点が配慮されませんと、
過料
のみによ
つて
これを
遂行
せしめるという
行き方
は好ましくないと思いますので、
館長
におよその点を
伺つたの
です。もちろん御留意あ
つて
この点は御執行願いたい、こういうふうに考えております。
金森徳次郎
12
○
金森国会図書館長
ただいまの点は仰せの
通り
と思
つて
おります。今まだ腹案の時代でありまして、実際は各方面の知識を得た後に定めることでありますが、現在でも大体の見当といたしましては、普通の書物については何十パーセントというふうに考えまして、その普通のものさしではいかないものにつきましては、特別に考慮をして、実際の当時者に何らの損害を及ぼさないというところできめたいと考えております。
羽仁五郎
13
○
羽仁参議院議員
ただいま
中野委員
からの御
質問
の点につきまして、
参議院
の
運営委員会
で討論されました模様を多少補足させていただきたいと思います。ただいまお話の
通り
に、
過料
というものを認めるという一面、
参議院
の
運営委員会
におきましても、
国立国会図書館
のできるだけ民主的な
運営
によりまして
民間
の
方々
、なかんずく
日本
の
出版文化
を代表される
方々
の
意見
というものが十分民主的に反映するような機構を考えていただく、またそれを実現していただくということを申し合せましたので、ただいまの御
質問
のような御
意見
が必ず守られることと考えます。
中野四郎
14
○
中野
(四)
委員
参考のために伺
つて
おくのですが、この
法律案
は、新たに出されて、今
国会
で通過せしめる予定であるのですか。
早稻田柳右エ門
15
○
早稻田委員長
私からお答えします。すでに
参議院
の方は通過をいたしまして、昨日正式に付託されたわけですが、本
委員会
において御決定をいただければ、ただちに本
会議
にかけて、本
国会
で決定したい、かように思
つて
りおます。
圓谷光衞
16
○
圓谷委員
動議
を
提出
いたします。この
法律案
につきましては、その内容、発議されるまでの
経緯等
、大体本
委員会
は了承してお
つたの
でありまするから、ただいまの
発議者
の懇切なる御
説明
があり、さらに
質疑
応答によ
つて
一層はつきりいたしましたので、
本案
に対する
質疑
はこれにて
打切つて
、討論を省略してただちに採決せられるよう、おとりはからい願いたいと思います。
早稻田柳右エ門
17
○
早稻田委員長
円谷君の
動議
に御
異議
ありませんか。 〔「
異議
なし」と呼ぶ者あり〕
早稻田柳右エ門
18
○
早稻田委員長
御
異議
なしと認めます。 これより採決を行います。
本案
は
原案
の
通り
可決するに御
異議
ありませんか。 〔「
異議
なし」と呼ぶ者あり〕
早稻田柳右エ門
19
○
早稻田委員長
御
異議
なしと認めます。
原案
の
通り本案
は可決することに決しました。 なお議長に
提出
いたします
委員会報告書
の
作成
をせんければならぬことに
規定
されておりますが、そうした
報告書
はすべて
委員長
に御一任願うように、この場合おきめをいただきたいと存じますが御
異議
ありませんか。 〔「
異議
なし」と呼ぶ者あり〕
早稻田柳右エ門
20
○
早稻田委員長
御
異議
ないようでありますから、さようとりはからわせていただきます。 本日はこれにて散会いたします。 午前十一時二十五分散会