○
本田證人 署長室におきまして、
交渉は三十日の午後四時までに撤去しろという
言葉を取消せということでありましたが、すでにその話が出ましたのは午後四時二十分ごろでありましたので、午後四時という時間が過ぎているので、そういうことは問題になるまい、時間が経過していれば早く
移轉する
方法を
交渉したらどうかということで、
向うは一週間くらいの時間がほしいということでありましたが、そう長く置けない、三日間後に、
移轉することということで
移轉の問題は一應まとま
つたのであります。さらに続いて私に対して
四つ要求を出しまして、
一つはこの
事件が起きたのは
署長の
責任であるから、
署長が
責任を負え、
一つは
共産党側にも
負傷者が出ておる。これらの
負傷者の費用は
警察側で弁償するように、それから
一つは話は先にもどりますが、隣の
内郷町の
地内に
矢郷炭鉱というのがありますが、この
炭鉱が
経営者側と
労働者側との間に解雇問題をめぐ
つて不法行為が行われるような情勢があ
つたので、私の方から前後二回
所轄署長の要請に應じて派遣したのでありますが、それが
労働者側の弾圧である。そういうような
警察官を派遣したのは
警察が悪いから
責任を負え、もう
一つは
矢郷炭鉱の山本という
労働者が解雇されたから死んだ、それは争議について
警察が朝早くからその
地内に
應援に
行つてさわいだから死んだのだ、
署長も殺人の教唆なんだから共犯の一人として
責任を負えというような
四つの
要求を出したのでありますが、私としては
事件の
責任についてはいずれ
公安委員会から追究される問題であ
つて、今申し上げる問題ではない。さらに三つの点については
回答の限りでないから、そういうことには、應じられないということで、彼らとの間に同じことを繰返してお
つたのであります。その間
代表の連中は、
警察の一方的な
行為であるとか、あるいは
共産党に対する
彈圧であるとか、あるいは
吉田内閣の犬であるとか、
署長はやめろとかいうような、私に対していろいろな話もありましたが、結局私から
四つの
要求に対して
回答がないので、
署長はだめだ、
公安委員に会いたい、
公安委員会でなければだめだということになりましたので、六時近くになりまして、矢吹という
公安委員に
連絡いたしまして、
公安委員会の開催を求めたわけであります。とりあえず矢吹という
委員が
署長室に参りました際に、彼らと
交渉が始ま
つたわけでありますが、
公安委員会に対しては、
一つはこの
事件の
責任は
警察側にあるから、
署長の
責任を追究する。
一つは
共産党側の
負傷者の費用を
警察側において弁償しろという
二つの
要求を出したのでありますが、矢吹
公安委員は
公安委員一人において
回答できないから、いずれ他の
公安委員の会同を求めて協議の結果
回答するということに
なつて、矢吹
公安委員が他の
公安委員を
警察署に來るおうに案内に行
つたわけであります。それで七時十分までにもど
つて來る約束で出たのでありますが、
玄関先において
共産党員に檢問されまして、これは
あとで矢吹
公安委員から聞いていただきたいと思いますが、自動車に乘る際に、どこへ行くのだと言
つて共産党員二人がついて行く、あるいはまた自動車に旗を立てる。そういうことを話したので、そういうことには應じられない。あるいはまた
共産党員が一緒に行く必要はないということで、そこに約十五、六分の時間を費しましたので、七時十分にもど
つて來るのが七時四十分にもど
つて來たのであります。部屋に入
つて來ると、そこにいた金龍洙という者が、矢吹
委員に対して今まで何をしているのだ、殺してしまうぞというようなことで、火ばしを振り上げてかからんとしたのでありますが、そこにいた名前はわかりませんが、
署長室に入
つていた者がそれを取抑えまして、それ以上の暴行はなか
つたのでありますが、そういうことで
公安委員が一應参集しまして彼らと
交渉いたしましたが、
公安委員会といたしましても、
二つの
要求に対して今すぐに
回答すべきものではない、
署長の
責任ということも一應詳細に調べた上でなければ
回答できない。第二の
共産党員の負傷の費用弁償も、
警察側にも
負傷者が出ている問題であるから、これも
調査の上でなければ
回答できないというような返事であ
つて、それに対して彼らも納得しないで、その問題について十一時半に彼らが退散するまで話を続けてお
つたような次第であります。その間今後八時から八時半ごろのできごとであ
つたのでありますが、留置中の被疑者が脱出した。あるいは拳銃が奪いとられた
事件が起きたのであります。それは最初三時半に
共産党員と
衝突いたしました際に、
警察官に暴行し、さらに
むりに入ろうとした者を公務執行妨害で検挙したわけでありますが、これを留置しておきましたが、午後八時過ぎになりまして、留置人が、これは利用鎭吾という者でありますが、同志が署内に來ておるということがわか
つて留置場から救を求めたわけでありますが、それで
代表の連中が私に会
つて、お互いに
交渉中にわれわれの一人を検挙することは不都合だ、早く出せ、こういう
要求でありましたが、一應公務執行妨害で検挙しておるのであるから、出せないと
言つたところが、出さなければわれわれが出すというようなことで、先に申し上げましたような
警察の警備力の関係上、一應聞かなければならないような、また聞かなければさらに事態を混乱に陥れるような
状況にありましたので、一應取調べの上、釈放するからということで、
次席警部に命じまして、その手続をとろうとしておる間に、約四、五十名の者が留置場に侵入いたしまして、留置場入口のガラス戸を破り、監視中の織井安吉という巡査から実包を四発装填しておりました拳銃を奪いとり、留置場の鍵を破りまして、利用という留置人を出し、逆に監視巡査を留置場内に入れてしま
つたという
事件が起きたのでありますが、それ以外には彼らは署内において赤旗を振
つて歌を歌
つたり、あるいはまた
警察の
交渉の
状況を中間報告だと言
つて話し、あるいはまた
警察官の集結の、
状況を中間報告するというようなことで、署内に集
つた群衆にそういう説明を加えてお
つたようでありますが、それ以外に暴行等はありません。なおその間に署内にあ
つた警棒とか、あるいは二、三
署員の私物がなく
なつておるようなわけで、これは金額にいたしまして六千円近くのものであります。