○小山
説明員 お手元に差上げてあります資料に側しつつ簡單に御
説明申し上げます。まず最初に
昭和三十四年度
生活保護費國庫負担金月別支出計画調という方の数字がございますが、それについて御
説明を申し上げます。すでに衆議院において可決されたのでありますが、今年度の予算に計上されております
生活保護費のうち、実際に要します保護の費用は、計の一番
最後に書いてありますように約百十四億円に
なつております。昨年は八十九億円程度でありましたから、これに比べまして相当の増額に
なつておるわけであます。このように金額がふえております理由は、結局支給金額がふえている結果そう
なつておるのであります。この点はただいまの表の一番
最後をごらん願いますと
はつきりおわかり願えるのでありますが、一番
最後の表に
昭和二十三年度保護
実施状況調というのがございます。これは各月における保護を受けておりまする人員の推移と金額とを記録しておるものでありますが、これをごらんくださいますとおわかりになりまするように、昨年の四月から今年の二月に至るまでの実績をたど
つてみますると、
生活保護法によ
つて保護を受ける人員が逐次減少していることが現われておるのであります。このことはただいま申し上げましたことと関連して申し上げますと、保護を受けておる人員がかなり減少しておるにかかわらず、今年度の予算が相当程度増額されておる、結局先ほど申し上げましたように、一
人々々に支給されております金額がそれだけ増加しているということの結果であります。この傾向は、大体論として見ますると、非常に健全な傾向を示しております。昔のように、たとえば五人世帶で千五百円であるとい
つたような建前のむとで、非常にたくさんの人員が保護されておるような概観を呈してお
つて、実際受けている金額が非常に少いというような
状態でありますときには、法の
運用は必ずしも適正に行われていないということを示すものと見ていただいていいのでありますが、今後の傾向としては保護人員がふえなくても、保護金額は相当にふえるというふうに行かなければならぬのでありまして、大体論としては、まず
生活保護法の
運用は軌道に乘りつつあるということを、これから見ていただいて間違いなかろうと思います。次にただいまの表の二番目に、
昭和三十三年度
生活保護状況調というのがございます。これは御承知のように
生活保護法による保護には
生活扶助と医療、助産、
生業扶助、葬祭
扶助と五つの種類の保護がございますけれ
ども、これの人員及び金額の実額と比率を示したものでございます。これをごらん願いますとおわかり願えますように、
生活扶助というものが全体の保護のうち主要部分を占めている事実にはかわりございませんけれ
ども、この比率が逐次低下しつつある。たとえば昨年の四月から六月に至ります間におきましては、金額で申しますると全体の六五%が
生活扶助であ
つたのでありますが、これが四月から二月に通ずる期間をと
つて見ますと五八%というふうに落ちております。これはどういうわけでこういうふうな違いが出て参
つたかと申しますると、その次の医療を見ていただけばおわかり願えるわけでありますが、四月から六月までの間は三二%でありましたものが、四月から二月までの長い期間をと
つてみますると、これが三九%にふえているという事実の反面の現れであるわけであります。この事実を一口に申しますると、
生活保護というもののうちで、從來は
生活扶助が圧当的な比率を占めておりましたけれ
ども、最近に
なつて参りますと、
生活扶助と並んで医療というものが非常に重要な比重を占めるように
なつて來たということであります。この傾向はおそらく今後も持続することと思われます。そうい
つた事情が現われておりまする原因については、特に申し上げる必要はなかろうと思いまするので、省略をいたします。
以上で大体の御
説明を終えまして、次に先ほど
社会局長が申し上げました
生活扶助費の
基準額について細目の
説明を申し上げます。
生活扶助費の
基準額は、先ほど申し上げましたような経過をたどりまして、ただいま
実施しておりますものは、
実施以來第九回目のもの、目下改訂を計画しつつありますものは、第十回目のものに当るわけであります。先ほど御
説明を申し上げましたように、
生活扶助費の
基準額は、言いかえれば
最低生活の水準を確保させるために必要な金額ということになるわけでありますが、
最低生活をどういうふうに把握して行くかということが、学問上の問題としても実務上の問題としても非常に困難なのでございます。特に
日本のこの
方面における学問的
研究は非常に未熟でありまして、私
どもが実務上それによりき
つていいという程度に権威あるものは、今のところ全然現われておりません。そういう意味合いにおきまして、私
どもが実務上にと
つておりまする
方法にもかなり多くの疑問を残しつつや
つておるものがございますので、そうい
つた点の矛盾が
実施面においてときどき現われまするので、
実施面の結果を取入れてもう一回
考え直す、こういう過程を繰返しつつ、逐次この
基準額をより適正なものにして行くという氣持で現在作業をしておるわけであります。内容の御
説明を申し上げますと、飲食物費として総体の金額のうちの八五・%にに当る三千八百八円というものが、現在の
基準額では見込まれておるのであります。この総体の金額の中で八五%以上の飲食物費を見ておるということは、すでや論議されておりますように、この
基準額が非常にむりな構成を持
つておるということを端的に現わしておるわけであります。申し上げるまでもなく、エンゲルの
研究以來、飲食物費の全体の生計費における比率を眺めて行くということが、
生活水準を測定する一つの指標にされておるわけでありますが、そのような角度から眺めました場合に、八五・九%という比重はまさに人間の
生活として
考えられる極限に近いものだと言うことができるであろうと思います。かように飲食物費が非常に高く
なつておりまする理由は、はなはだ逆説めいておりまして、ぞれだけ全体の費用としてはむりなでき方に
なつておるけれ
ども、この飲食物についてはまあまあ筋の通るものに近く
なつておるということの反映でもあるわけであります。先ほど
最低生活についての学問的
研究が非常にないことを申し上げましたが、飲食物については、すでにだれしも取上げますように、現在の段階においてもカロリーと蛋白質の量から問題を論議することは、一應すべての場合について取入れられておりますので、
最低生活の
基準額を決定いたします場合にもこれを取入れたわけであります。取入れ方といたしましては、國立栄養
研究所で
研究制定いたしております
日本人標準熱量表というのがございますが、おおむねこの標準熱量表に示された熱量を確保するために必要な飲食物をまず数量的に算出をする。次にかかる数量の飲食物を一番安い品物で補足するとしたら幾らかかるか、こういう
方法で算出いたしておりますのが現在の
基準額における飲食物費であります。從
つてこのものにつきましては、もちろんいろいろこまかい点についての議論はありますけれ
ども、大体論としては、まず建前としてはこの建前を今後も継続しつつ補正を続けて行くということでさしつかえなかろうと思
つております。このような建前をとるようになりましたのは、昨年の八月一日から
実施しております調八次の改訂からでありますが、一口にこう申し上げますことが実現しますのにもいろいろ問題があ
つたのでありまして、一例を申しますと、現在の配給数量と、ここで必要とされております数量とのギヤツプをどういうふうに扱
つて行くかという問題があるわけであります。一口に言いますと、自由購入というものを前提とすることなくしては、ただいま問題にして参りました所要量を完全に充足させることはできないわけなのであります。ところがすでに御承知のように、
政府予算に自由購入と言いますか、もう少し端的に申しますと、やみの購入を前提にするような金額を組むということは、非常にこれは困難なことなのでありまして、財務当局はもちろんのこと、さらに財務当局の監督に当
つておりまする
方面におきましても、この点はかなり大きな疑問を持ち、反対もしてお
つたのでありますが、何分にも問題がきわめて明瞭に現れておりまするために、いわばふしようそ、承認をしてくれたというようなことになりまして、今日のような建前を一應貫くことができることに
なつたわけであります。
かように飲食物費の方はどうにか筋を通したわけでありますが、それ以外の費目については、
最低基準として、よるべき確たる
基準がありませんために、非常に
生活設計の内容が思惟的に選ばれている。思いつきの範囲を出ないものが若干あるというような状況に
なつております。この点は当局としても、昨年の改訂のときから氣にかか
つていることではありましたけれ
ども、まず飲食物については筋を通したい。これを通すことが実はなみなみならぬ困難を伴う問題でありましたために、昨年における
努力のほとんどすべてをここに集中してしま
つたということの結果、今日見るような矛盾が随所に現われる結果に
なつたわけであります。この点につきましては、特に國民の代表としての議会に特別御
理解を願いまして、應援をしていただかなければならぬ問題でもありまするので、多少藝がこまかくなりまするけれ
ども、この資料にそくして御
説明を申し上げることをお許し願いたいと思います。
まず住居費でございますが、一体
最低生活にどの程度の住居費を見込んだらいいかということが問題でありますが、まず見込むべき費目としては、家賃と家具、什器と水道料を見込もうということで三つの費目が見込まれております。家賃を見込みます場合の問題は、どれだけの廣さのものを見込むかということが一つの問題であります。次にはどれだけの單價で見込むかということが第二の問題であります。この二つの問題がともに非常に多くの問題をはらんでいることは、容易に御想像いただけることであろうと思います。第八次及び第九次の改訂では、五人世帶では最小限度六畳必要であろうということで六畳を見込み、当時の公定價格を見込みまして、五十三円六十四銭という金額を計上したのであります。ところが実際にや
つてみますと、この家賃は非常にむりがございます。現に私
どもが、今年の一、二月にわた
つて全國について
実施いたしました被保護世帶の全國一せい
調査の結果の一つを——これは十七府縣でありますが、十七府縣のものをとりまとめてみましても、五人世帶では平均十・六五疊、数字が少しこまかくなりますが、十・六五疊、おおよそ十一疊ということに
なつております。從
つてこの
基準額に見込まれている六疊というのは、まずスペースのところにむりがあるということが
はつきり現われておるわけであります。次に單價の点でありますが、これも公定價格が実態と非常に違
つておる最もはなはだしいものであるだけに、実態生計の上から見ますと非常にむりがあるわけであります。從
つて今後の方向としては、少くとも現在
生活して心る平均十一疊のスペースは確保したい。また單價もどうやも住める程度のものは見込むようにしたいということを
考えております。それから家具、什器としてそこに七品目あげてありますが、この品目は東京都における労働者の家計
調査の際に取上げられている、いわばこのような種類についての基礎的な品目であります。そういう基礎的な品目につきまして、これがどの程度必要で、どの程度もつかという数量と消耗度とを考慮して計算いたしましたのがこの金額であります。この点は、現在
実施した経験から見ましても、あまりひどいむりがないように
考えております。ただ單償がその後若干変更しておるものがありますので、この補正をすることが必要だというように
考えております。それから水道料は昨年の第八次改訂の際に入れた品目でありますが、金額がその後上
つておりますので、これは引上げる必要があるように
なつております。
次に被服類でありますが、被服費が非常に苦しいということは
一般の被保護世帶、特に婦人、
未亡人世帶の訴えるところでありますが、これは全体の需給計画との
関係もあり出すので、あまり多くの品目を見込むことができない現状に
なつております。品目としては、そこにあります四品目を見込んでおるわけでありますが、さしあたりのところ、当分の間はまずこの四品目でがまんをしてもらわなければいけまい。それでどうしても足りないものが、たとえば毛布がなく
なつた、あるいはふとんがなく
なつたという場合のものは一時
扶助という
制度がありまして、特に必要な人は、厚生省に申請することによ
つて與えられるという
制度があるので、その一時
扶助の
制度を活用することによ
つて補
つて行きたい、かように
考えております。ただ今度の改訂の際に何とかして実現させたいと思
つておるのは、この衣類の項目におむつといろものを入れたいということであります。一歳、二歳の乳兒については、十組のおむつが買える程度の金額をぜひ入れることにしたい。これは比較的
生活水準の高い世帶でありますと、親戚にもいろいろ人がおりますので、おむつの材料には何とかこと欠かぬようにや
つて行けるわけでありますが、
生活水準が低くなればなるほど、自分の家庭から持ち出す余地が少くなりますので、少くとも
基準金額の中にはおむつを買える金額だけは見込みたいと
考えております。それから身のまわり品としては、そこにあります三品目を見込んでおります。縫針、傘の二品目については、その後における價格の改訂に應ずる補正をする程度でとどめたいと思
つておりますが、げたについては、現在の年間一人当り二足というのはどう
考えてもむりだ。これは私
どもの経験からい
つても治まらぬということを承知しつつ私
ども泣き泣きこういう内訳でや
つて來ておりますが、これは少くとも二倍程度にふやさなければなるまい。三月に一足ぐらいのものは見込むようにしたいという希望を持
つております。申し落しましたが、先ほどの住居費は全体の中で二・三%にあた
つております。それから現在被服費は二・〇%に
なつております。
次に光熱費でありますが、これも現在一番不足を訴えられる費目の一つであります。電燈料は從量制によりまして、四十ワツト一燈分を見込んでおりますが、これは定額制にかえるということがより
実情に適するように
考えますので、そのようにいたしたいと思
つております。問題は薪炭代であります。薪炭は從來需給計画通り配給されていなか
つたというのが
実情でありまして、そういう
実情に基きまして、薪炭については、実際に配給のあるものを購入する金額だけを見込むということで、木炭四俵、まき十六束、れんたん、豆炭、たどん合せて十七袋というものを見込んでおるのであります。これはりくつを言いますと、場合によ
つてはなまの米をかじれということを
要求するに等しい内容にもなるわけであります。もちろん実際の
運用におきましては、何とかして附近の木を拾うとか、あるいは杉葉を拾うというようなことで補えるし、また補
つて行くという指導をして参
つたのでありますが、この点は私
どもとしても一番筋の通らないことを痛感じている費目の一つであります。その意味におきまして、ちようど飲食物についてやりましたと同じように、五人世帶が一定の
生活をして行くために、一体どれだけの薪炭が必要かということを計算して、少くともそれに必要なだけの金額を計上して行きたいということを
考えております。今までの薪炭代は木炭に換算いたしますと、およそ十一俵強程度を購入し得る費用でありまするが、ただいま申し上げましたような態度で計算をいたしますと、少くとも木炭に換算いたしまして、五人世帶では十七俵を購入する金額がなければいかぬのだという結論になるのであります。この点は私
どもとしてもぜひ筋の通
つたものにしたいという強い希望を持
つております。光熱費は現在のところ全体の五・四%に当
つております。
次の保健衛生費でございますが、これは実のところ被保護世帶からはあまり問題として取上げられることはありませんけれ
ども、民生
委員なりあるいは少しくこの内訳について関心を持
つて研究する人からは、軒並に非常に鋭く批判されております費目の一つであります。そこに書いてありまするように、入浴は月二回しか入らぬという金額に
なつております。この点もぜひ改めたいと思
つております。少くともおとなについては十日に一回程度、
子供の場合は週に二回程度はふろに入れる金額を当然のこととして見込むようにしたい、こういう
考えを持
つております。それから理髪費につきましては、男だけを見て女を見ないということで組まれております。これも
実情から
考えまして、女子を見ないということが非常にむりだという
考えを持
つておりまするので、でき得るならば女子の
子供は男子同様に理髪費を見たいという希望を持
つております。次は石鹸でありまするが、石鹸は一人当り年間一・四、五個という、まことに問題にならない金額を基礎にして組まれております。これはその当時の需給計画がそれでありましたので、これで組んだわけでありますが、実際の所要量から言いまして、これは非常にむりな金額であります。さような意味合いにおきまして、需給事情も好轉して参りまして、年間一人平均十個が配給される見込みでもありまするので、少くとも平均一人当り年間十個を購入すべき金額を計上する。さらに
子供についてはその二倍程度を見込むということをすべきであろうと
考えております。それでも五人世帶にして月にやつと三・五個程度になるだけであります。普通の五合世帶にいたしますと、五個ないし十個を使うというのが
実情であるようであります。それから歯みがき粉は、大して問題はございません。歯ブラシは年間二本ということに
なつておりまするが、これを年間四本程度に
考えて行くべきだろうという
考えを持
つております。あと家庭常備薬、衛生綿というのは、大体現状を少しく補正するという程度でいいと思います。申し遅れましたが保健衛生費は全体の三・三%に
なつております。
最後に雑費でありますが、これが
最低生活費の現状を最も
はつきり現わしているのでありまして、これは全体の費目の一・一%程度にしか当
つておりません。ところが東京都の被保護世帶について
実情を
調査したところによりますと、雜費として七・八%程度使
つております。また全國の
一般家計
調査においては五・三%程度を使
つているわけであります。そういう
実情に
なつておりますし、雜費こそ何ということなしにいるという費目が多いわけでありますので、でき得れば全体の費用の五%程度は雑費に見込むことにしたいという希望を持
つております。中の品目としては新聞代、用紙代、鉛筆代、通信費というようなものでありますが、その他の費目として金額がゼロに
なつておりますのを、そこに全部計上する。たとえばお茶代が全然見てありませんが、お茶を飲む費用とか、
都市において部分的に行われております汲取りの費用とか、その他町会費というような目に見えない金がどうしてもいりますので、そういうものをこれから支出するようにしたいと
考えておりまする
ただいま内容を御
説明申し上げつつ今後の改訂の希望を申し上げたわけでありますが、そうい
つた希望が実現されるといたしますと、現在の四千四百三十三円という金額はおよそ六千五百円程度に上るわけであります。これだけ行けば、もう私は
日本の現状において
最低生活としては十分であろうと思います。そうい
つた希望をも
つて現在
関係方面と折衝しつつあるわけでありますが、繰返して申し上げますように、現在被保護世帶が一番苦しんでおりますものは薪炭と住居であります。この二つだけはぜひとも今度の改訂の際に解決をしたいという強い希望を持
つているわけであります。