○久下政府
委員 ます第一に
医師法、
歯科医師法の一部を
改正する
法律案につきまして御
説明申し上げます。
御
承知の通り、昨年の秋、東京帝國大学の附属病院及び
日本赤十字社の病院におきまして、輸血による徹毒感染の事例が発生いたしまして、社会的な問題にな
つたのでございます。その際
厚生省におきましても、これが取締りのために必要な
法律の制定につきまして、案の作成を考慮するということをお約束申し上げて頂いたのであります。現在輸血をしております
実情は、御
承知の通りに、第一には親族でありますとか、知人でありますとかいう人から血をもらいして、それを
医師が患者に輸血いたします場合と、それから東京等の大都市におきましては、別にいわゆる輸血者というものがおりまして、若い学生などが多いのでありますが、これらのものが
一定のたまり所を持
つておりまして、一種のあつせん業者がおりまして、病院等の注文に應じて輸血者を派遣して、その血をと
つて患者に輸血をするという二つの範疇があるのであります。問題の起きましたのも、また起きます可能性の多いのも、後者の場合でありまして、職業的な給血者が存在をしており、これをいかに取扱うかということが、取締り
関係の要点であると思うのであります。か
つて厚生省におきましては、
昭和二十年に輸血取締りに関する
省令を設けまして、必要な
措置を講じてお
つたのでありますが、新憲法の制定に伴いまして、取締法規が失効をしてしまいまして、そのままにな
つてお
つたのであります。そこで当初、私どもとしてはそれにかわるべき
省令の
内容を持つたような
法律の制定につきまして、考慮をいたしてお
つたのであります。その後、斯界の専門家を初め、各方面と折衝を続けてお
つたのでありますが、結論といたしましては、まず輸血の取締りに関しまして、先ほど申し上げました仲介業者を認めるということは適当でないという結論に
なつたりであります。これはいかに取締りを嚴重にいたしましても、
法律上そういう業態を認めるということは適当でないという結論になりました。そうなりますと、結局、結論的にはこの職業的な輸血者は直接病院に直結いたしまして、病院が責任を持
つて、その血液の純潔を保持するというような取扱いにならなければならないわけであります。そこで責任を負うべき
医師及び
歯科医師に対しまして必要な
指示ができるという、
医師法及び
歯科医師法に一應條文を設けまして、それによ
つて実質上
医師及び
歯科医師の義務として考えておりましたことを
指示するようにしたらどうかというような筋道に相な
つて参
つたのであります。ただいまさような筋に基きまして一案をつく
つて関係方面と打合せをいたしておるのでございますが、まだ案文が最終的に確定をいたしておらないのでございます。きわめて簡單な條文でにありますが、私どもの策として考えておりますのは、
厚生大臣に
公衆衛生上重大な危害を生ずるおそれがある場合において、その危害を防止するために必要があると認めるときに
医師に対し、
医療または保険
指導に関して必要な
指示をすることができる。
厚生大臣は前項の
規定による
指示をするにあた
つてに、あらかじめ
医道審議会の
意見を聞かなければならない。こういうような
規定と同じように
歯科医師法の中にも一文を設けたいということを考えておるのでございます。
次の
死体の
解剖及び
保存に関する
法律案でございます。これは先ほど
政務次官の御
説明で大体つきてると思うのでございますが、少しく補足して申し上げたいと思います。
政務次官の御
説明にもありましたように現在のわが國の法制の建前といたしましては、
刑法各條の中に
死体の遺棄及び損壊についての処罰
規定があるのみでありまして、
從つて医学校
教育の際の
死体解剖なり、あるいは病院などで行
つておりますいわゆ病理
解剖に属しますものも、
刑法本則の正当の
業務に基く行為はこれに罰しないという正当
業務として、事実上容認をされているというはなはだ消極的な取扱いに相な
つておるのであります。そこで一方におきまして、
教育の面からは
医学校におきましては、大体悔
医学生八人につきまし年に一体くらいの
死体解剖を必要とするのでありますが、その
死体の
解剖につきまして今申したような
法律上の積極的な容認がないために非常な不安を感じている
実情であり、また一面におきましてそういう必要な
死体を入手する道も少いという
実情でございます。なおその他病理
解剖と称しておりますが、いろいろな疾病の診断をいたしまして、その者が死亡した、はたして
医師の診断通りの死因によ
つて死亡したかどうかということで、
死体の局所
解剖をいたしまして、それによつで死因がはつきりする場合が多いのでございます。これもやはり
死体の一部でありましても
解剖するわけでございますが、今申したように
根拠規定がなくて非常な不安を感じておるのであります。一方
医学の進歩からしますれば、この病理
解剖ということにぜひ必要なことであるとされておるのであります。かように
医学の
研究及び
教育のために
死体の
解剖をするということを公に積極的に容認をする必要があるということが、この
法案の根本的な考え方でございます。しかし無條件にたれにでも許すというわけには参りませんので、ただいま考えてありまするのは、
死体解剖をなし得る人としては、
医師、
歯科医師その他
死体解剖に関して相当の学識、
技能を有し、
厚生大臣が適当と認定したものという三つの範疇に属する人に、一應
資格者として
法律上の認定をしたいと思うのであります。しかしながらこの人たちも、
解剖するにあたりましては、自由にか
つてにするというのでになく、
原則的にその都度
都道府
縣知事の
許可を受けるようにしたいと思うのであります。但しすべて評可を受けるということでありますると、事実上実行困難の場合が多くなりまするので、実際
解剖を行います場合には
許可を受けなくても、特定の者及び特定の場合につきましては届出をも
つて足りるという取扱いをしたいと思
つております。たとえばあらかじめ
死体の
解剖について
厚生大臣の認定を受けておる人がやります場合でありますとか、あるいは刑事訴訟法によりまして、いわゆる可決
解剖と称するものがございます。犯罪原因を糾明いたしますために、刑事訴訟法に基いて行われる場合がございます。また食品衛生法によ
つて死体解剖をなし得る
規定がございます。かような
法律によ
つてやりまあう場合については、事後の届出でよろしいというような取扱いをしたいと思
つておるのであります。なお
死体の
解剖につきましては、先ほど
政務次官の
説明の中にもございましたように、
原則として
遺族の
承認を必要とすることにな
つております。例外的に
遺族の
承認を必要としない事例として考えておりまするのは、死亡確認後三十日たちましても、引取者が出て來ないというような
死体でございますれば、
遺族の
承認を得るすべがないのでございます。こういう場合は多くはいわゆる病理
解剖の場合に該当するのでありまするが、二人以上の
医師がこの
死体解剖についてその必要を認定したものであ
つて、しかも
遺族の所在が不明であるか、あるいは
遺族の承諾を得る時間的の余裕のないもの、こういう場合には
遺族の
承認がなくても
解剖してよろしいということを考えておる次第でございます。そのほか
法律に基いてやります場合には、
遺族の承諾を受けなくてもよろしいということにしております。それらの場合を除きましては、すべての場合にまず
遺族の承諾ということを必要としたいと思
つております。
それからこれも先ほど
政務次官の
説明にございましたように、現在東京ほか七大都市におきまして、都市の
地域におきましては、死因不明の
死体について檢案、または
解剖をすることができることに
ポツダム省令でな
つておるのであります。これをこの
法律の方に織り込みまして、
法律化しようということで一緒に入
つております。さらにまた
大学等で
医学教育のために必要な
死体を入手するのに便宜を與えますために、
大学等への
死体の交付に関する
法律というものが昨年の審議会の御決定をいただいておるのでございます。その
規定法律もこの中に織り込みまして、先ほど申し上げました大学において、
教育のために
解剖をする
死体の入手が少しでも便宜になるようにということを一緒に織り込みたいと思
つておるのであります。これが
死体の解調及び
保存に関する
法律案の
内容の概略でございます。この
法案におきましてもまだ成文としては固ま
つておりませんで、打合せ中でございまして、前の
医師法及び
歯科医師法の一部の
改正と同様の段取にな
つておりますことを御了解いただきたいと思
つております。
最後の
医療法の一部
改正に関する
法律案でございます。これは大体二つの事柄が含まれております。まず第一には往診のみによ
つて医業、歯科
医業、または助産の仕事を行います者につきましては、その住所をも
つて診僚所、または助産所と見なしまして、必要な
規定を
適用するようなことにな
つております。ただその必要な
規定の中にかんじんの
診療録の檢査でありますとか、あるいは必要な場合にその
報告を出してもらうという
規定が
適用されておらないのであります。そこでこれらのものにつきましても今申し上げたような必要な
報告を徴する、あるいは処理帳簿を提出してもらうということのできるような
根拠規定をつけ加えたいと思
つておるのであります。
医療法の一部
改正の第二点は、病院、
診療所または助産所につきましての
廣告制限の
規定を一部緩和したいという考えでございます。具体的な事例で申しますと、現在の状況で申しますと、
健康保險の指定医でありますとか、あるいは優生
保護法の指定医でありますとか、こういうような
廣告が一切できないことになるのでございます。と申しますのは優生
保護法の指定医ということであれば、全部の
医師が指定せられるのでなくて、特定の
医師、相当に学識
技能を持
つております
医師のみが指定をせられるわけでございます。そうするとその指定医であるということを
廣告することは、当然その人の
技能なりあるいはまた治療
方法の
廣告ということにな
つております。この
技能、治療
方法に関する
廣告は一切いかぬということにな
つております
関係上、
法律的に見ると非常に不合理なことが起
つて参ります。そのような場合において必要な定めをいたしまして、
廣告のできるようにいたしたいというのが
廣告制限の緩和の
内容でございます。これは病院、
診療所及び助産所を通じまして、同じような
規定を設けたいと考えておるのでございます。この最後の
医療法の一部
改正につきましては、すでに案文も大体まとまりまして、近く御
提案を申し上げ、御審議をいただく運びになるものと考えておる次第でございます。