○鈴木國務大臣
委員長からの御注意で、建設
事業としての
公共事業の面においてなるべく話をし、また質問するようにという
お話でありましたが、私をお呼び出しに
なつたのは、主として
失業対策の問題につきまして、ただいま御質問にありましたように、やや横にそれるかもしれませんけれども、やはり
失業の問題についての
考え方を一應申し上げませんと全体が捕捉できません。少しその
方面を申し上げます。
第一番に
公共事業の
失業対策としての
考え方という点でございましたが、これは少しぶしつけな言い方かもしれませんけれども、多ければ多いほどいいのだ、これはわかり切
つておりますし、また実際十億でも二十億でも多いことを切望しておるという立場はわかりませんけれども、しかし現実の問題といたしましては、今の
予算、それから見返り資金等の制度とにらみ合せまして、実現可能な範囲において私どもの
失業対策の一環としての
公共事業を
考えなければならないと思うのであります。それで
あとの方の御質問と交錯しますけれども、大体どれくらいの
失業者が出て來るのだという御質問につきましては、午前中事務当局から断片的に幾つかの現象をあげて、
統計はいろんな
関係方面との
関係もあり、また事実上將來出て來るものを確固たる形で捕捉するということは、日本の今の
統計技術その他では不完全であるけれども、たとえば
失業保險を受取りに來ておる人たちの趨勢はこうでありますとか、
安定所に現われた趨勢はこうでありますとか、断片的な形でも
つてほぼ全体の推移が推測できるような形で、おそらく御
説明したろうと思うのであります。これらの点につきましてはさらに御質疑がありましたならば、事務当局からお答え申し上げさせますが、総体としての
失業者というものの
考え方、捕捉の仕方はどういうふうに
考えておるかという点が、おそらく私に対する御質問の
中心と思います。この点につきましては、一應御了解を得ておきたい点は、いろんな
関係方面との
関係もあ
つて、
一つはその
数字の檢討に時間を要し、そのまま一應捕捉したものをそのままやろうという段階に至
つていないことが
一つ。また実際上の問題として、なかなか推定であるからして容易に捕捉できないということが
一つ。そういう
関係がありますが、それらを考慮いたしまして端的に申し上げますれば、この春の第五
國会におきまして、私は衆参両院に対しまして、今から將來出る
失業者の数はどれくらいかという質問に対して、かなり部門別のケースもあげましたけれども、結論として離職者と職業を必要とする
失業者というものの数は、必ずしもぴ
つたりと一緒になるものではなくて、一應離職した者の中にも、病氣とかあるいは老齢とか、御婦人の方ならば結婚ということの方にコースをとるために、さしあた
つて就職を必要としない人たちもあるからして、その間に差はあるけれども、大体百万ないしは百六十万くらいの人たちを対象とするところの
失業対策というものを、今
年度の下半期までに
考えなければならないような推移をたどるのではないかという
説明をしたはずであります。そしてその
数字の出て來るところの部門別につきましても一應申し上げたのでありまして、それらはすでに新聞あるいは
國会の速記等にも残
つておるはずであります。もちろん当時も推定でありまするし、今日も推定であります。しかしながらさつきも申しましたように、
安定所に現れて來ておるところの
数字、それから
失業保險を受取りに來ておるところの
数字、その他われわれの現在の機能において把握し得るところの各
方面からの
数字を総合いたしますると、当時私たちが立てましたところの推測のこの
数字、條件に、あまり大きく変更を加えなくていいような、つまり
失業者は一部の人たちが言うような、破綻的な勢いをも
つて押しておらないと同時に、またごく一部の人が言うような、手放しで安心していていいような推移でもないと、こういう過程をたどりまして、今日においても、
労働省当局としては百万ないし百六十万という
数字は変更しなくてもいいのじやないかという確信を持
つておるわけでございます。そういたしますると、さつきの第一の
公共事業法の中に、すでに御質問の前提として、もう少し横道にそれるかもしれませんが、御
説明申し上げますと、これをどういうふうに措置するかというのが基本でありますが、これは
関係方面の
考え方も、現在の内閣の
考え方も、
労働大臣としての私の
考え方も、結論において同じでありますが、今度のようなこうい
つた相当量の
失業を措置して行くところの失策対策は、あくまでも國民経済の組みかえと、新しい雇用面の拡大、その
方面に最終的に雇用を
吸収し、安定して行くという
考え方を根本に置かなければならない。しかしそれは実際の問題としては、とうてい半年一年をも
つてそういう安定の状態にまでは達し得ないであろう。將來のことだから明確な推定はできませんけれども、私どもの
考え方では、今
年度と明
年度と明後
年度の方と、つまり
失業の最もひどくな
つて來てから二年くらいの期間を置いて、
計画的に漸次
年度末における
失業者の残
つておる比率を少くして行
つて、そうして一定の度合い、たとえば全体の有職人口、日本では三千四、五百万でありますけれども、それの二パーセント前後の
失業者は、これは完全雇用の状態においても、ほんとうの
数字が列國にあるのでありまして、そうい
つた状態にまで持
つて行くことができましたときに、初めて一應
失業問題は解決したというと大げさでありますけれども、一應措置し得た、そういうふうに
考えられると思うのでありまして、そういう
考えのもとに、それでは百万ないし百六十万の措置を本
年度においてどういうふうにするか、今申し上げましたような全体的な
考えを、二年ないし二年半先まで延長して、その一環として、最も重要な時期として今
年度の方途はどうするかという問題であります。それに対しまして私どもの計算したのは、
國会においても御
説明申し上げましたけれども、一方で
失業者が出て來る。しかしいかなる場合にも新しい雇用はあるのでありますが、
失業者の出るだけそれだけ新しい雇用があるはずはありません。それでは
失業問題は出て來ないですけれども、
相当ある。一体どれくらいあるか、これも推定でありますけれども、当時私どもは、
一般國民経済の
方面において四十万くらいの新しい雇用は出るであろう。それから見返り資金が時間的に遅れることなく集中的に投入されるならば、二十万ないし三十万——おそらく三十万の被雇用がこの
方面から期待できるであろう。そうすると約七十万の雇用というものは
一般國民経済のうちに、あるいはまた見返り資金の投入によ
つて、本
年度のものにおいても——百数十万の
失業者はあるけれども、一方においてそういう雇用は期待されるという見通しを申し上げたのであります。その後の推移におきましても、私どもはこの
数字が著しく
違つているとは思
つておりません。たとえば
安定所において、なかなか就職率は少いのでありますけれども、十万人くらいづつ、年に百万人、百二十万人くらいは就職している。しかしこの人たちの就職は安定ではないのでありまして、その中にほんとうにおちつく人たちは一体どのくらいかというと、現在
安定所で調べたところでは三割、三十パーセント前後は安定の形をも
つて行かれるじやないか、おちついて來るのじやないかと思
つております。それから、たとえば
安定所を通じません國鉄の整理におきまして、実例をとりますと、約九万人の整理された人たちの中で、五万人とちよつとくらいだと思いますが、われわれの
調査によ
つて就職を必要として求めておる人たち、そのうちの二万四千人は
安定所を通じてではありませんが、鉄道当局の努力によ
つてすでに就職しております。そういうふうにして
考えて参りますと、本年は二十一万出て來たところの
行政整理のあの人たちのうちでも
つて、五、六万は老齢により、あるいは病氣により、あるいは帰人の方で結婚の方に向いて行
つて就業を求めて來ない、そうすると十五、六万人かりに來たとして、國鉄の例は最も就職率の高い面でありますから、同じようには
考えられませんけれども、おそらく本
年度におきましては五万から六万、七万くらいの推定でありますけれども、
行政整理によ
つて現われたところの
失業者で、職を得たが
つてお
つて得られなか
つたという人たちは、それくらいの
数字にな
つて行くのではないかと思います。こういう
情勢を勘案いたしまするというと、百万ないし百六十万人の
失業者のうちで、さつき申しました約七十万人の人たちが、新しい雇用の中に本
年度において就職して行くという
考え方は、著しく間
違つておらないと、今までの推移をも
つて思
つておるわけであります。そういたしますると、三、四十万ないし百万の人たちに対する
失業対策というものが、この新雇用を別として
考えられなければならないということになるのでありまして、それがいうところの
失業対策の対象だと思
つておるのであります。この場合に、
失業対策事業というものを展開して、三、四十万人でも、あるいは場合によ
つては百万人でも、直接政府の
失業対策に
吸収して行くということができますならば、
失業対策の面よりだけ行きましては満点でありますけれども、実情では、そういうことは財政
関係でできないと思います。またいずれの國でも、こういう場合におきましては、まずまつ先に動かしますのは
失業保險の制度であります。幸いに、日本には現在の
予算に計上されておるだけでも
つて、特別会計の予備費まで使いまするというと、六十万人、百三十億円の
失業保險を拂い得るところの準備ができておるのでございます。最大限に動かせば、百十万人まで、つまり昨年の剰余金まで動かして、政府がその二分の一まで受持つという
予算的措置さえすれば、百十万人まで應じ得る準備ができておるのでありますけれども、こういうような形でも
つて、
失業保險を無限に拂
つて行くということは、
失業対策としては下の下であるとともに、言うまでもなく、その人たちは、六箇月たてばまたもとの
失業状態にもど
つて來るのでありますから、
失業保險はその段階の急に應ずるだけのものであり、政府の緊急
失業対策が急には間に合わぬというときに援用する
方法であ
つて、
予算においては三、四十万人、場合によ
つては五十万人くらいまでは應じ得るという準備は整えております。実際においても、去年の暮の十二月に
失業保險をとりに來た人は、その
金額は二千九百万円であるのに対して、その七月には四億円を越えておる。八月には七億円くらいにはなるのではないか、九月に十億円に達するのではないかという推移をと
つております。これだけ見ておりますというと、恐るべき
数字でふえておるようでありまするけれども、そう無限にふえて行くのではないのでありまして、今年の十月、十一月あたりを最高といたしまして、半年くらい横ばい状態が続いて行く、それから落ちて行くという推移をたど
つて來るのではないかと思
つております。
話は大分ごちやごちやして参りましたが、そういうふうに述べて行くと、最後に残
つて來るところの人たちは、三、四十人の人たちであ
つて、その人たちに切実な手を準備しておかなければならないという、ぎりぎり決着の
数字が出て來るわけであります。この人たちに対して、できることであるならば、
公共事業を展開いたしまして、そうして
失業対策に應じて行きたいのが私どもの
考え方でありまするし、そう行けば非常にいいのでありまするけれども、
予算の
関係で、三、四十万人のの人たちを
吸収し得る皇居企業を今度開し得る
予算的
関係に立
つておるかどうかという問題は、建設大臣もおいでになりまするし、皆様自身もよく建設
方面のことを御存じだと思いまするけれども、にわかにそれを望み得ないという状態でございます。私どもはこの面において、できるだけ公共企業を起して、そうして急に應じて参りたいと思
つております。その
一つの
考え方といたしまして、建設大臣からの
お話があ
つたかもしれませんけれども、
一般予算、
補正予算だけではなくて、見返り資金の利用も何とか——見返り資金は、あれは投資であると言
つておりまするけれども、そうい
つた技術的な面を克服して、出し得るものがあ
つたならば、その
方面から出してもらえば非常に助かる。一應百億と新聞でも傳えられておりますが、それを交渉もし、今も
折衝を続けております。必ずしも樂観を許すような推移をたどるとまでは言い得ませんけれども、事実あの中に、リザーヴとして百億くらいの金は残されておるのであります。そうしてそれに対しまして、私自身の
折衝したところによりますると、そううまくすらすらとあれが
公共事業に出て來るとは思いませんけれども、必要なときには出し得る形においては残
つておるのだという言明はしておるのでありますから、絶望であるというような
関係ではないと思います。
もう
一つは、
補正予算の
関係及び二十五
年度の
予算にできる限り
公共事業費をと
つていただきたいと思うのでありまして、この点はむしろ私の方から皆様の方にお願いいたしたい点であります。そうしてそれでなおできなか
つたものに対しまして、これは
建設委員会とは
関係がありませんけれども、緊急
失業対策を展開する。ただいま御指摘の
通り現在それに計上されておる金は八億八百万円でありまして、足りないことは事実でございます。私どもも足りないことを痛感いたしまして、補正に盛るのでありましようが、そういう
考えのもとに、段階的にもいろいろな点を考慮しておる。そういうわけでありまして、いろいろごちやごちやと申しましたけれども、大体そういうふうな形でも
つて、
失業問題の措置というものを
考えておるのでありまして、そのうちで
公共事業費の占めるところの性格というものは、ただいま申し上げた
通りでありまして、できるだけ多くしていただきたいという
考えを持
つておるのであります。