○
池田(峯)
委員 私は
日本共産党を
代表して、本
法案に絶対
反対するものであります。
私は、この
法案が本
委員会に提出されましたときに、往時軍部、
官僚が横暴をきわめておりましたときのあのやり方を、ふと連想せざるを得なかつた次第であります。すなわち彼らは、やまと魂、あるいは皇國精神、滅私奉公、一億玉碎等の言葉を盛んに使用いたしまして、雨あられと降り注ぐ爆彈、焼夷彈に対して、ばけつと火たたきで対抗せよ、対抗できると指導し、原子爆彈に対しては白い着物を着よ、敵の本土上陸に対しては一人一殺、竹やり戰術を唱導した、あのやり方が、そのまま本
法案の中に生かされているということを指摘することは、私は決して困難ではないと思います。本
法案の提案
理由には、こううた
つております。「御承知の
通り近年洪水による災害は激増の一途をたどり、昭和二十三年度のごときは、
公共土木施設の被害のみでも五百億円に上
つております。一方治氷の
根本対策たる河川砂防
費用は、國家財政の
現状より思うにまかせないありさまで、このまま放置いたしますならば、洪水の害は遂にとどまるところを知らないであろうと
考えられます」云々。すなわち今や國土の荒廃その極に達し、本年度のごとき僅少なる
公共事業費をも
つてしては、本年予想されるところの大水害、この被害をとうてい防止することができない
現状にあることを、
政府自身認めているのであります。しかも吉田内閣の力ではこの被害を未然に食いとめることは不可能である。
政府は
政府の任務を全うすることができない。税金は遠慮なく取上げるけれ
ども、
公共事業費の方は、わずか五百億しか出さない。大
部分を特権大
企業、少数の大
企業の擁護に傾け盡さなければならない。こういつた民自党
政府の性格としては、荒れ果てた國土を顧みるいとまがない。そこで
政府が
考え出したのがこの水防法であろ。往年の防空訓練さながらの、竹やり、ばけつの戰術であるのであります。しかもこの水防に要する
費用は、当該水防管理團体が
負担するというふうに
規定されてしおり、
政府の責任は毫末も
規定されていないのであります。しかるに市町村、あるいは市町村組合、水防予防組合に対しましては、その区域における水防を十分に果すべき責任を有するというふうに
規定されておる。一体現在の
地方公共團体に、かような経費をまかない、しかもその責任を十分に果すことができる
経済的
基礎があるでありましようか。
地方の財源はほとんど
中央に吸收されております。
地方配付税の配付率は、削減されております。二十二年、二十三年の災害復旧、あるいは六・三制の学校建築のために、莫大なる負債を負
つておる
現状であります。さらに自治
警察費、教育費等、これは当然國庫で
負担すべきものを
地方自治体が
負担し、一方
地方産業の疲弊もようやくその極に達しようとしておりますときに、
政府は災害防除のための
費用をと
つてやることができない。お前達で責任をも
つてやれ、もし堤が切れても災害が起きても、それはお前たちの責任だぞと言わぬばかりの
法案がこの
水防法案だといわなければならぬのであります。また團員の定員、服務規則等は、市町村の条令できめることにな
つておりますが、消防團に入
つておるだけで非常な
負担にな
つているところでありますから、半ば強制的に團員に
組織されることになるでありましようし、仕事を休んだ場合でも、それに対する報酬というような点も全然考慮されず、特に水防作業のために負但し、あるいは病氣にかかり、または殉職したというような場合における
規定も明確にされておりません。こういう殉職者に対しましては、当然
本法において國庫が何らかの処置をとるというような
規定がなければならないのでありますけれど、これが市町村の條令で定めることにた
つておりますために、現在の
地方財政の疲弊した状態から見ますならば、きわめて僅少な涙金になるであろうということは明らかであります。
從つて戰時中のあの國家総動員法の徴用令と同様に、強制的に
一般住民が
政府の責任を逆に轉嫁されまして、肉彈とな
つて水の中に飛び込み、命を捧げる責任を負わせられることになるであろうということが
考えられるのであります。
さらにまた、本
法案におきまして、水防團と警察署の
関係でありますが、第十五條に主として市町村でありますが、水防管理者は、水防のため必要があると認めるときは、警察署長に対して、警察官または警察吏員の出動を求めることができることにな
つておりますけれ
ども、この場合に、水防作業全般の指揮権は何ら明確にされていないのでありまして、この場合十数箇町村を管縦し、独自の通信綱を持ち警察権を持つのが当然優位に立ち、事実上警察権の指揮下に入ることになるでありましよう。民自党
政府の企図しておりますフアツシヨ政策が、ここにもその若芽を出しておるというふうに私に
考えるのであります。水害はかような一片の
法律によ
つて防止できるものでほ絶対にありません。近代的科学兵器に竹やりで対抗すると同様、あたらとうとい人命と労力と資材を、いたずらに荒れ狂う自然の猛威の飜弄にすかせるのみであると思うのであります。
共産党は、大
企業、独占
資本の擁護のための経費を全面的に削減いたしまして、財源を減らし、
公共事業費を大々的に増額いたしまして、國土の復興に充当すべきこと、これをまず第一現在の
政府がやらなければならないということを要求いしまして、本
法案に
反対の意を表明する次第であります。