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灘波参考人 御指名をいただきました
日本建築業協会会長をしております
灘波でございます。本日中小企業としてここに
意見を発表さしていただきますことは、非常に光栄と存じ、あつく御礼を申し上げます。
日本建築業協会と申しますればいくらか聞えはいいようでありますが、実は御
承知のように中小企業としまして、いわゆる大工、左官、こういう職種が十七種ほどございます。これが自己の力により経営をしている
業者と申しますのは、一人以上を使
つてお
つて、資本金が二百万円以下をも
つて、中小企業としてや
つている
仕事であります。その加入團体は縣を單位としまして、その傘下の團体の人員は、全部総括しまして十六万九千四百三名おるのであります。その
仕事の
内容と申しますと、大体町の
仕事の人と、元請けの下において働いておる人、
営業をや
つておる者、かような
関係にな
つておるのであります。このほかに、大体五十七万とわれわれは推定しておるのでありますが、いわゆる職人としてあります。
業者としては十六万九千四百三名、これが昨年の六月の各府縣の國体から報告を得た数字であります。これも加入しておる縣は三十七縣でありまして、まだ九縣が加入しておらぬのであります。
内容はさような組織において成
つておることを御報告申し上げまして、本
建設業法に対しては、全國中小企
業者は全面的にこれに賛意を表しておるものであります。
なおこの
法律がしかれます前に実は終戦と同時に、この建設中小企業の位地はまことに微々たるものであるために、社会からいろいろ非難を受けてお
つたのでございます。すなわち最近におきましても封建的であり、あるいは観念的から見ましてもボス的とか、あるいは労務供給のごとく観察せられまして、まじめにや
つている
業者に対しましては、まことに遺憾にたえないところでありまして、経戦と同時に独立法をつく
つてもらいたいというので、二十一年の末月におきまして、時の総理大臣、
関係大臣に陳情いたしまして、本日まで継続いたして運動して参
つたのであります。ところがこの意をくまれまして、二十二年の三月ですか、四月ですか、
建設省においては
地方自治法が改正されまして、
地方條例をつく
つていいというようなことであまして、條例の指示まで受けて、われわれは一躍意を強くしたのでありますが、なかなか
地方によりましてうまく徹底しておりません。近畿地区及び愛知地区におきましては、その
業者の登録に対しまして、それが影響してなかなかうまく行
つておるのであります。ところがだんだん進みまして、さらにこれではいかぬ、どうしても独立法をつく
つてもらわなければわれわれの
仕事がはつきりして來ぬ。またどこまでも社会からかまじめな
業者のように
考えられまして、まことに遺憾に
思つてお
つたのであります。その後一昨年末におきして、
職業安定法がしかれまして、さらに非常に困苦な目にあ
つておるのであります。御
承知のように、私どものような
業者にまことに小さな
業者でありまして、事務組織あるいは資金の問題につきましては、社会から見てま
つたく小さなものでありまして、その点におきましてはまことに遺憾でありますが、御
承知のごとく、この
業者は自分の
技術と
経驗によ
つて請負をや
つております
関係上、自分も働きもすれば
設計も
請負もする。かような
関係で、なかなか事務組織というようなものがなく、ほとんど自分の勘でや
つておる。かような
関係から、社会から非常に暗く
見えるのではないかと思いますので、この点は先ほど申し上げましたように、まことに遺憾と思いまして、何でも自分みずからこれを開拓して行かなくてはならぬというので、商工協同組合あるいは企業合同によりまして、昨年から着々実施しておるのでありますが、なかなか数が多いので、さよう申し上げましても、なかなか隅々までは私らの気持は徹底しておらぬのであります。しかしこれは官あるいは輿論の支持によりまして、着々これを実施して行かなくてはならぬのでありますが、何を言
つても
法律の根拠がはつきり私らにはないのでありまして、他の作業上における
取締りがどんどん活発にでまして、われわれの
育成助長のための
法律がなか
つたということは、まことに遺憾であ
つたのであります。今回この
建設業法が
建設省において立案されまして、本
國会に提案されましたことは、まことに私らとしては感慨深いものがあるのであります。
本
建設業法につきましては、実は
公聽会あるいは文書による内示等がありまして、これには
相当私らの
意見を申し上げまして、その意向を
相当にしんしやくされまして、この
法律案ができておりますことは、私らとしてもまことに意を強くしておるのであります。御
承知のごとく、本
建設業法は、われわれ
建設業の
育成助長のために、また
工事の
施行の上におきまして完成の
責任を負わせるところに、受注者と発注者とが同等の立場において、
雙務契約のもとに
工事ができるようになりましたことは、私らとしてまことに意を強くしておるのであります。これにつきましては、昨年の末ごろこの業法の内示がありましてから、全國から内示について
公聴会を開いて、この
意見を聴取しまして、まとま
つたことを
建設省及び衆議院、参議院
方面の
委員長に、実はぜひ通過していただきたいということで陳情書を差上げてあるのであります。それから四月十一、十二日に全國の臨時総会を開きまして、さらに再確認いたしまして、
本案をぜひ通過さしていただき、われわれ中小企業をして正しい道を歩かせて、堂々と國民の義務を負わせるような方向に進ましていただきたいということを、特にお願いしたいのであります。先ほどからいろいろ
お話がありましたが、中小企業なるがゆえに、
一定のわくの中へ置いてもいいじやないかという
お話も出ておるのでありますが、本法は登録は自由でありまして、本人が
資格あり、十分なる
請負の能力を持
つてお
つたら、だれでも登録できる、こういうような方向に持
つて行
つていただいたのであります。われわれ中小企業におきましては、從來は圧迫に圧迫を加えられて、今日まで続いて來ておるのでありますが、この際この業法によ
つて、ぜひとも社会的の地位の向上をや
つていただきたいのであります。御
承知のごとく大きな建物あるいは小さい建物におきましても、実際の
設計その他
技術面におきましては、
相当の力を有するのであります。実際にこの築造物なり、あるいは
道路なり、河川なり、あるいはダムなりの実際の
工事の
請負と申しますのは、この築造中小企業の專門の者の総合的活動によ
つて完成しておることを、よく御認識を願いたいのであります。今日この中小企業の性格をはつきり現わしていただかない限りは、土建業が正しく行こうとしてもなかなかむずかしいのであります。ことに私らの
業者には
相当の不覚な者もありますが、ぜひともこの業法によ
つて正しい道を歩かせることが、今日わが
建築におきましても重要な問題であると、私らは中小企業として
考えておるのであります。この点をぜひお含みの上、
本案を本議会において成立させることを私らは大なる期待を持
つておるのであります。
先ほども申しましたように、今回の業法の
内容につきましては、最初
公聽会なりあるいはに内示なりをしていただきまして、これを全國的に通知しまして、大体われわれの意図するところを入れていただいたのでありますが、やはり私らの中には学問のない方が多いのであります。また事務的なことがなかなかわからないのでありますから、はつきりとこの條文に、自分が
請負いにな
つていいか悪いか、あるいはそういう
資格をも
つて実際の義務を遂行できるか、こういうような面におきまして、はつきりさしていただきたいのが一、二ありますので、この点をひとつ申し上げたいと思うのであります。
業法の第三條におきまして、政令で定める軽微な
工事の
請負いはこれを除くとあります。この「軽微な」というのは、われわれ
土建業者が從來からくせがついておりまして、かりに
工事費を安くあげようとしますには、ごまかしてやると見られることがあるのはやむを得ないのでありますから、これをはつきりしないと、軽微となりますと、たとえば百万円の
工事を十万円、二十万円と切
つて請負うということでは、せつかくのこの意義を失う、ということになるのであります。先ほど
お話にありましたように、
相当の金を預り、
相当の
責任をも
つてやる上は、だれでも
工事の
請負資格のある者は受けられる。こういうことから申しまして、軽微ということはむずかしいのでありますので、できますれば私らはこの点は、自己の労力によ
つて完成し得る軽微な
工事を
請負う者はこれを除く、こういうふうにしていただきたい。そうすると、修繕あるいは三坪や五坪の
工事は一人でもやれるのであります。少くとも十坪、二十坪となれば、いかなる
工事の名案者であ
つても、一人や二人では
工事ができないのであります。十坪の家を建てるには、少くとも十人、二十人使わなければできないのでありますから、自己の労力によ
つて完成し得る軽微なる
工事を
請負う者はこれを除く、かようにはつきりしていただきますれば、修繕とかあるいはた
なつくりとか、そういう
程度のもりは、私らも
請負いでつくることは望まぬのであります。一人となりますれば、さような人の家を建てるのに、一年も二年もかか
つてやるものはないのであります。短
期間に
工事を完成させる面から申しましても、そういうことになればはつきりして行くのじやないか。ことは私らの後輩である職人、すなわち技能労働者の
範囲を、この自己の力によ
つて、修繕やた
なつくりくらいはどんどんや
つて行けるようにしていただきたいのであります。
その次に第二号の問題でありますが、「別表中第十四号から第二十二号までに掲げる
工事のみの完成を請け負うことを
営業とする者」こうありますが、別表の十四号以下を見ますと、板金
工事、とび
工事、ガラス
工事、塗装
工事、防水
工事、タイル
工事、壁紙
工事、機械機器設置、
工事、熱絶縁
工事、かようにならんでおるのであります。しかしこれは一般に小さな
建築をいたしましても、こういう
工事を離して別個にしてやるということはないのでありますので、やはりこういう
業者も人格を向上し、その地位を向上させるためには、少くともその登録は別個に除くというようなことがないようにという
希望が、「全面的に強いのであります。中には一部反対もありますが、ぜひそうしなければ、お互い関連して
仕事をして行かれないのじや‘ないかという
意見が強いのでありますから、この点御考慮を願いたいのであります。
またこの別表十四号から二十二号の中に、とび
工事がありますが、とび
工事は実は世の中からだいぶ
簡單に
考えられておりますが、とび
工事をや
つております者は、これはただ足場がかりとかそういうことばかりでなく、鉄筋、鉄骨、こういう組立
工事も実施しておりますので、この面は元請け負いの場合においても、
職業安定法の
取扱いにおいて今迷
つておりますので、これは
相当な
技術を要する。
一つの配置その他の問題でも他の職種との関連がありますので、これは十五号は
相当考えていただかなければならぬ。
工事業者として取扱
つていただきたいのであります。これは数は
相当少くなると思いますが、
相当に大きな記備あるいは危險性を伴うような
工事においては、これは重要であります。たとえば河川
工事におけ浚渫
工事、こういうようなものも大体とびがやるのであります。この面は
一つぜひとも御考慮願いたいのであります。
それから第六條の問題であります。これは事務的に
考えまして、こういう場合もよいのではないかと言いますか、実は全國の
業者の意図を率直に申しますと、六條の中には二地区にわた
つた場合には建設大臣、その他は都道府縣知事、こういうふうにな
つておるのでありますが、これは事務的には煩雑になるのと、
一つは大中小にかかわらずその
営業所在地の都道府縣に登録しておいたらどうか。これは見方によ
つて若干ひがみがあるのではないかというようなお
考えがおりますが、現在の民主的な時代において、
相当の大
工事だけを
建設省に持
つて行く。その他の
工事を府縣に置くということは、
考え方としておもしろくないのではないか。これが中小企
業者の一番のねらいでありますが、これは事務的にできないとすればやむを得ないのでありますが、われわれ中小企業としては、同等の
資格において登録していただきたいというのが念願であります。
それからさつきも山ましたが、二十二條と二十三條の一括下請けの禁止であります。二十二條の二項の「前項の
規定は、
建設業者があらかじめ注文者の書面による承諾を得た場合には」ということは削除したらどうかという
意見であります。それは何かといえば一括下請けしてはいかぬとはつきりしていただいた方がよい。二十三條にははつきり注文者の書面による承諾を得ればよいことになるので、條文の並べ方から申せばかようなことになると思いますが、私ども
業者はまことに鈍感なのでありますので、どうかひとつだれが見てもわかるようにしていただきたい。かように念願しておるのであります。
あとはこまかいことにつきましては全面的に賛意を表するものであります。われわれ十六万九千四百三名の会員、その他加入者の國体も同様
賛成しておるものと
考えますので、ぜひとも本
國会を通過するよう御
審議を願いたいのであります。
なお一点つけ加えてお願い申し上げたいことは、本法はやはり
育成、助成のためではありますが、実はただいまのところは物資需給調整法によりまして
建築業者だけには、主要資材の割当てがないのであります。これがために
建築費が非常に高くな
つておる。以前は注文された
建築に対して、必要なよい材料を
地方に出かけて買
つて來て、そうしてなるべく安いものでなるべくよい
技術をも
つて完成することを誇りとしてお
つたのであります。自分が損をしてもやり遂げるというのが私ども中小企
業者の傳統的な精神でありますが、これがなくな
つたために、販賣
業者から買
つてさらに築造して行くので、非常にむだがある。また官廳あるいは
地方公共事業においては、資材をいただきますが、自分の
設計その他に必要な資材がなかなか得られない。好むものが使えない。ここにもむだがある。かような面からこの業法をしかれますと同時に、
建築資材は末端の最終需要者、仕上げるところの
業者に渡るような方法にしていただきたいのであります。なおこれにつきましては、もうすでにやみの物價が公定價格よりも割
つておるものが多いのでありますから、この際
建築主要資材は全面的に統制を撤廃していただいて、注文による築浩を完全に
責任を負
つて仕上げるということにして、
建築費をなるべく安くする方向に持
つて行くようにお願いいたしたいのであります。さらに
経済九原則が重要視されて参りまして、統制の解除が困難であ
つた場合においても、他の生産工場におけるいわゆる加工資材は、工場その他には渡
つておるのでありますが、私らの
建築業者に限
つて省かれておるのであります。これも從來の行為があまり一般輿論から支持されておらなか
つた結果であると思うのでありますが、
建築業者だけ度外視するということのないように、つまり最終需要者、
建築業者あるいは申請者の名前で、
請負つたものは、よい材料を選定して安く使わせていただけるように念願するのであります。かようにいたしますれば、物價統制令あるいは指定生産資材割当規則、
建築統制令等の改正等がな
つて行くと思いますが、この点も平行して、この議案を御
審議になるときにお
考え願いたいと思うのであります。
なお業法が
施行されますれば、われわれのような小さい
業者が加入して参りますので、はなはだ事務的には
めんどうになると思いますが、しかしながら後來の行政廳の窓口が非常に廣いのであります。たとえて申しますれば、ただいまでは
職業安定法の
関係、労働基準局、
建設局、おるいは
商工省、かようふうに廣いために、いろいろの書類が非常に輻輳して來るのでおります。これをぜひとも窓口を一本にしていただきたいのであります。私ども中小企業から申しますれば、一般庶民住宅、個人住宅あるいは町村の学校、市町村の
道路というような計画がありますので、各都府縣の
建築局、かような方向に一木にまとめていただくようにしていただければ、われわれ
業者も、事務的に迷わないで、この法を守
つて行けると思いますので、この点事務が簡潔に行われるような方向にお願いしたいのであります。
以上、中小企業として初めてかような会に代表として私
発言さしていただきまして感激にたえませんが、この氣持を全國にただちに通じまして、私ら偶人
業者としても精励、強化いたしまして堂々と中小企業として活きて行かれるように、ぜひ本
法案の
施行を願いたいと思うのであります。全面的に
賛成であります。