○
井之口委員 私は今の
動議に反対するものであります。そうしてこの二十一年度
歳入歳出決算を全面的に否認するのであります。
理由といたしまして、
財政法によりますると、
決算報告書は二十一年度分を二十二年十一月三十日までに
会計檢査院に送付せねばならぬ規定に
なつております。それであるのに、実際これが
会計檢査院に送付されたのは、二十三年の三月九日でありまして、それから
会計檢査院が檢査をして、わずか十三日しか
会計檢査院に間が與えられていなか
つた。そのために檢査が非常に不十分であります。これか第一の理由であます。
第二番目に従いまして未確認のものが一般、特別、
歳入、
歳出を通じて見ますると、二百九十七億円にも達するという、実に大きな数字に
なつておるのであります。なぜこう
なつているかと申しますと、そのおもな理由は、
終戰処理費で二百三十九億円というものが
概算拂いに
なつて
支出されている。その
調査でさえも今日
会計檢査院でまだできていないという状態であります。しかもこれは
概算拂いで出すなどということは、國民に非常に大きな負担をかけるものであり、國民に対して、ま
つたくこういうやり方は申訳ないものだと思う次第であります。
そのほかに、
財産税や、戰時補償特別税の点を見ますと、十億円もまだ
調査ができていないという状態であります。こうした
財産税とか戰時補償特別税とかいうようなものは、当然大きな資本家か拂うべき税であ
つて、とろうと思えば非常にとりやすいので、ある。それが、いまだにこういものが放棄されて、
決算がきちんとできていないというふうなことは、われわれとしてこれを承認しがたいのであります。
次に、
予算外
支出金といたしましても、
予備金とか、経済安定費というようなものの厖大な
支出がございますが、これも大体われわれは、
支出項目が承認しかねるものであります。
次に、
歳入の点を考えてみますると、いまだ
収入に
なつていないのが百八十六億からあるという状態でありまして、それらの内訳を見てみますると、粗税
収入で約九十九億もいまだ
徴収に
なつていない。
特殊物件の
収入でさえ三億七千二百万円が未
収入ということに
なつていますが、これなども非常に小さく見積られておるものだと思うのであります。
返納金のごときでも、三億七千万円がまだ未
収入に
なつておる。
物品拂下代でさえ二億一千百万円が未
収入に
なつている。
臨時収入でさえも二億一千百万円、價格差
格差益金は一億六千二百万円、これらがみな未
収入に
なつている。
財産税にいたしましても、五十七億一千六百万円が未
収入に
なつている。かれこれ全体を通じて見ますと、價
格差益金のごときは、これをまじめに政府はとろうとしていな、。ほとんどわずかな人数しかいない
物價廳にその
徴収をまかせきりにしているという状態であります。
税務署でもこの問題は取上げていない。忙しいとか何とかいうので、小さな人民のわずかばかりの、千円とか二千円とかいうふうな税金の差押えはきびしくやりますが、こういうものを査定して、國家の
収入をふやすというふうなことはや
つていないのであります。
財産税のごときは、当然これはとるのに何らの労を要しないで入る性質のものであります。それが五十七億円も未
収入という形に
なつております。粗税
収入の小わけを見てみますと、
所得税が二億二千万円、これだけまだ
徴収されておりません。法人税が三億八千万円、増加
所得税が八十八億一千万円、
財産税でさえ三十億、戰時補償特別税が二十億、こういうような内訳に
なつておる。内訳を見れば明らかに資本家、大財閥に対する課税の
徴収がおろそかに
なつているということがうかがわれるのであります。こういうことがあるから、当然大衆課税に國の財政がたよらなければならぬ、苛歛詮求をしなければならぬということに立ち至ると思われます。
次に
登録税の点を見てみますと、二十一年度の
登録税は、登録される
物件の賃貸價格の十倍から約十五倍ぐらいにすぎない。船舶のごときはトン当り三百円から五百円というような実に低率なものであります。これは普通の
財産税の課税標準と比較してみまして、三分の一か十分の一ぐらいの低率に
なつておる。とりわけ
東京はひどいのであります。大きな財閥
関係の不動産の
登録税がとられないで、数億あるいは数十億の税源が逃げておるという状態であります。さらに
返納金が十分
國庫に入
つて來たかという点を見てみますと、
会計檢査院の指摘にもあります通り、
復員局関係で元陸海軍省の
支拂つた前
拂い金が
概算拂いに
なつておりまして、当然
返納されねばならぬものが十四億三千五百万円もある。そうしてこれの
徴収に不熱心の点がわかるのであります。商工省
関係にいたしましても三億二千二百万円からある。その後幾分は入
つたでありましようが、こういうものは時期を失してのんべんだらりと遅くまで
徴収されないで、
返納金として当然
國庫に入るべきものが放置されておるということはわれわれの承認し得ないところであります。なおさらに
特殊物件に目を移してみますと、第一、
会計檢査院で約六十一億というものを指摘しております。そのうち
徴収されたものもあるし、また残高もかなりあるようであります。二の
特殊物件は内容を調べるに
從つて実に驚くべきことをわれわれは発見するのでありまして、第一
拂い下げた数量が非常に不明瞭である。次に賣
拂い代金のきわめて低いこと、
終戰直後のマル公で出すとか、またその出す時分にはマル公價格はずつと上
つておるに限らす、依然としてそういう價格で出しておるのも
会計檢査院の指摘によ
つて明らかであります。なお價格差の査定も不十分である。
從つて價
格差益金に対してかけられる税も十分にとられていない。のみならず、差益の一部を價格女定
資金として保有するというふうな、資本家の実に横暴な掠奪行為とも言うべきものがうかがわれるのであります。なお当然有償で配付しなければならないものが無償で配付されておる。それから直接費とかあるいは間接費とか、こういうものを算定して
國庫に納付すべき代價のうちから多くの費用を差引いてしま
つて、
会計檢査院の指摘にあります通り三十万円とか五十万円の間接費というようなものが出ておりりますが、ま
つたく理解するに困難でありまして、いかなる状態にこれが使われておるかわからないのであります。そうして結局こういうふうな費用と納入すべき
資金とを帳消しにして差引いて、
放出物件の納付を怠るというよ現象が至るところに見受けられるのであります。でありますから六十億円の査定もこれは小さきに失すると思います。今日未納十五億という報告ももつともつと綿密に計算して行かなければならぬものと思うのであります。
次に統制会社に渡した数量でありますが、鉄鋼販費あるいは日本金属、非鉄金属、皮革、繊維等に出しておるところの價格も驚くべき低價格であり、國民が戰時中あれほど血税によ
つて出して積まれてお
つたところの
物品がこうした安い値で持ち去られることは、われわれは承認しがたいのであります。
運輸省鉄道総局に取扱われた分を見ましても、それほど安いものでありながらなお六千二百五十万円からの未納がある状態であります。
運輸省建設本省に関する分でも八千七百万円、
逓信省関係でも八千五百万円未納がある状態であります。しかも隠退藏物資として摘発されたものも相当その後現われておるのでありまして完全事なる
調査が行われていない。この点も認めるのであります。あるいは放出物資の
代金を自治團体で警察費や
寄付金に濫用してみたり
——これは山形、岡山のごときであります。放出物資の代償が高過ぎると称して返金を追
つてみたりこれは岡山の例であります。もはや廃止に
なつている戰時補償金という名前で差引勘定して、政府に支拂うべきものを支拂わなか
つたり、これは長崎の例であります。無償でと
つてみたりさまざまの点が行われております。こういう点はみな承認しがたいものであります。
次は廃兵器処理
委員会という民間國体についてのことでありますが、政府は兵器処理
委員会に渡したところの数量も、價格もほとんど定めないで
精算書も何もなしで、これに厖大なるものを渡している。この兵器処理
委員会と申しますのは、日本製鉄、日本鋼管、古河電氣、扶桑金属、神戸製鋼等のごとき大財閥でありましてこういう大財閥をいたずらに利しているたけであ
つて、これからの兵器の代價の
徴収ということも怠
つている次第であります。なお艦艇解撤につきましては、二十一年度の四月以降播磨造船その他造船業者に当時の日本の軍閥の所有しておりました艦艇の約半分を、解撤を依頼したものでありますが、その解撤によ
つて発生する諸資材というものは国家の
財産でおるにかかわらず、それがどこに消えうせたかわからぬということに
なつている。これは
会計檢査院自身も認めている点であります。そういたしますとこれは当然
法律上の
犯罪行為が成立しなければならないものだと思う次第であります。
歳出の面を見ますと、
終戰処理費として
支出された百二十億七千万円というものは、
昭和二十年九月から二十一年十一月までに
支出されている。その利子が一億七千万円も支拂われている。しかも
終戰処理費の使途に対しましては、
会計檢査院の監督も行き渡
つていない。どういうふうにこれが使われたか、土建その他の食いものに
なつている状態がうかがわれるのであります。二十一年度分といたしましては、三百七十九億二千万円が算定されておりますが、これも概算拂である、ほとんど今日からは何に使われたか、どういう費用にな
つたか、
精算でさえも証拠
物件がない状態であります。こういうものをわれわれは承認することはできないと思います。
次に
予算の
目的外に
支出されたものといたしましては、
内務省も、
大藏省も、
厚生省も、
運輸省も、
予算には組んでいないのに、
職員官舎をつく
つたりいろいろなことをや
つているものが七年もある。さらに
経費の
年度区分を」乱
つたものといたしまして、大藏、司法、文部、厚生、商工、運輸、逓信等々が
工事の施行や
物件の
購入に当
つて年度を越えて
支出している、完成しないものに
支出している、そういうふうな自堕落な状態であります。
補助金の支給がどういうふうに
なつているかと申しますと、一般、
特別会計合せまして二百四十億九千七百万円に達します。そのうち專賣局の製塩
事業に出されたものが最もひどいようであります。飛島塩業、これが九百万円日塩興業七百四十一万円、南山製塩が百万円、日本塩業株式会社が千六百万円、妙高企業が一億、小さいものを合せて自給製塩に十二億五千万円から
補助金が與えられておりますが、政府は製塩設備三十八万トンを計画し、生産計画において十三万トンの塩をつくると称してこれらの
補助金を與えた。それでありながら実際出て來た塩は二万九千トンにすぎない。いかに國民の富が浪費され、またこれをもらい受けたところの資本家がほとんどまじめに
経営していない。これらの資本家は草ぼうぼうとはやしてその塩田を放置している状態であります。こういうふうに國民の富が濫費されることは実に遺憾の至りであります。今塩は外國から輸入しなければならないという状態なんです。そのためにも
多額の費用を外國に出しているのですが、これはひとえにこの
補助金が官僚的な補助政策をと
つたために、こういう結果に立ち至
つて産業は興らない、つぎこんだ金はみな水と
なつて消えてしまうという状態になることと思われます。なお
東京都の戰災都市、疎開跡地の賃貸費
補助金のごときも、必要額以上に補助費を與え、また農林
関係の方面を見てみますと、なるほど農業問題は今日日本にと
つて非常に重要であります。食糧問題と
関係して非常に重要である、眞の農民の保護育成のために政府の
資金か使われるならは喜ばしい次等でありますが、しかし農事振興会とか農地開発営團、日本開拓協会等々の組織か民主主義化されておりませんために、そういうものを通じて出されるところの
補助金がいたずらに
目的を達せずして、農業開発のために使われない。揚水機を買うために四千七百万円の
補助金を與えても、それが実際の役に立たない。実際農民の手に入
つて行く場合にはそれだけの十分な効果を遂げ得ないというふうな状態に
なつておる。また集團帰農者の施設
補助金といたしましても、約四百万円からの金が出て行
つておりまするが、それらが眞に農民のためにならない。一部の者が
目的外に使用するか、あるいはまた使い切れないで残
つておるという嘆かわしい状態でありまして、急を要する日本の農地改革がこういう方面からも遅れているということは、
予算の使い方がわれわれ妥当でないと思うのであります。出資團体に対しましても庶民金庫、日本蚕糸統制株式会社等々に
会計檢査院の檢査が及んでおりますが、それだけでは不十分でありまして、出資團体をもつと徹底的に廣汎に
調査する必要がある。それなくしては
多額の
補助金やら價格調整
資金等々を與えても、日本の産業が十分は興らない。日本の國を興して今日外國から入
つて來るところの資本の支配下に置くか、それをわれわれ、切り抜け得るかこういう重大な時期におきましては、日本の産業を興すためには十分にこの
予算の使い方が合理的であり、日本民族を守る方針で使われなければならないと思うのであります。そうするためには今まで使われて來たところの
予算をもつともつと嚴重に監督し、眞にその
目的を達成し、そうして民族の独立を確保し得るような方向へ將來の財政を嚴重に監督する建前をとらなければなりません。そのためにもこの二十一年度の
歳入歳出の
決算をもつともつと完全なものにして國民の利益を守ることが当然だと思います。その意味におきまして今の区分的に一部分を承認し、一部分を否決するというやり方に反対いたしまして、全面的にこれをやり直すということを、考える次第であります。