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首藤委員 出先機関の安定局並びに物價廳、それから
経済調査廳、各
委員とも全國的に
調査をされまして、その結果はそれぞれ報告書としてまとま
つておりますが、ただいま申し上げたごとく、
委員会の
決議とするということはどうかという御意見から、一應口頭で申し上げることにいたしたいと存じます。特に私は幸い
経済調査次長がお見えにな
つておりますので、今日はこの
調査廳問題について意見を申し述べまして、御参考に資したいと思うのであります。
調査廳は昨年十一月前後に発足いたしまして、大体まあ一年近くな
つたのでありますが、この間各
方面に参りまして比判を聞きますと、ほとんどが
経済調査廳に対しましては非難しているのであります。特にこの非難の重点は
経済警察と同じである。むしろ
経済警察よりも辛辣である。しかも本來の目的を逸脱して檢挙に重点を置くということが、批判の最も大きな対象とされているのであります。言うまでもなく
経済調査廳は、
経済法令の趣旨徹底、宣傳あるいは防犯ということと、さらに行政官廳の連絡監査ということが当面の問題であ
つて、も
つて生産増強に資する。
経済を安定ならしむるための機関として発足したのであります。ところが各
方面に参りまして、この
調査の過去一年の過程を承りますると、査察の方が非常に多いのでありまして、そうしてまた檢挙の比率も相当高いのであります。むろん惡質の犯罪に対しましては、全面的に峻烈な檢挙をする必要がある。これは
経済安定の建前からも必要があるのでありまするけれ
ども、われわれの見あるいは聞き、あるいは体驗しました結果から考えますると、昨年來のと申しますと語弊があるかもしれませんが、終戰後の統制
経済界におきましては、各地に隠退藏
物資がある。それから同時にまた
政府の手持の資材が非常に少い。しかも生産を増強しなければインフレが激化するということから、生産命令を出し、それにマツチするだけの資材を配給していないのが通常であります。たとえばわれわれが
関係しておりまするところのゴム工業におきましても、ゴム一トンについて地下タビが七千足できる、あるいはタイヤが三千本できるというように、生産数ははつきりきま
つているのであります。あるいはまたガソリンが幾らいるという單位消費量がはつきりきま
つているのであります。しかるに商工省並びに安本の配給は、生ゴムだけは配給いたしますけれ
ども、その他の纖維あるいはガソリンの單位消費量は五〇%あるいはそれ以下の配給量でありまして、しかも生産は百パーセントあげて、これを一定の期間に供出しなければ、翌朝の配給を削減あるいは抹殺するという強い制限が加えられているのであります。そこで業者はやむなく各地に散らば
つておりまするところの隠退藏
物資を物色して、そうして非常に憂欝であるけれ
ども、與えられた生産を完遂するということに邁進いたしたのであります。
政府もおそらく私はインフレを押える、隠退藏
物資を有効に使うという氣持から、
一つは資材が少い結果でもありまするけれ
ども、半面また隠退藏
物資を有効に使用するということも、意識的にそういう結果にな
つたのではないかというふうに考えておるのであります。しかるに
調査廳の方はこういうことは全部不問に付しまして、ことごとくこれを違反として檢挙するということにあるのであります。
從つてもしもこれを違反として檢挙いたしまするならば、本日檢挙してあす参りましても、やはりそれらの工場は依然として違反を繰返えしておらなければならぬ。これが偽らざる
現状であります。しかも全國の工場がみな同じ
状態にな
つているのであります。そこでわれわれはこの
現状から見て、
調査廳はまず行政官廳の欠陷をつき、そういう隘路をまずないようにして、そしてそれにもかかわらずなお業者が違反するならば、それに対しては峻烈なる摘発なり檢挙をすべきである。しかるにもかかわらず、根本的の
原因であるところの行政官廳の監査を放任して、その欠陷を放任しながら、片一方の業者だけの檢束、あるいは摘発に重点を置く。これははなはだ
調査廳を設立した本來の趣旨に反すると思うのであります。ひとりゴムのみならずその他の
産業も大体みな同じであります。
從つて幸い新任されたのでありますから、今後
経済調査廳の
運用に際しては、率直に言えば私は行政官廳の監査に重点を置いて、行政官廳の欠陥をまず補
つていただく。その上で業界の査察をされるということにして、從來とは行き方をむしろ反対の方向に向けていただくようにすることが一番いいのではないか。むろんそれか
といつて、どの
産業に、あるいは行政官廳にどういう欠陷があるかということは、これはなかなかおわかりにならぬと思いますから、一應査察することは前提となるかもしれませんが、いやしくも行政官廳に欠陷があるということがはつきりいたしました以上は、他の業者の檢挙は
あとまわしにして、まず行政官廳の欠陷を排除するというような運営をや
つていただきたいと思うのであります。特に私は先般も各地をまわ
つて歩きましたが、大体高松あるいは松山の方の
調査廳はこの趣旨を
了解されておりまして、むしろ業者から隘路打開の相談を受ける。非常に親しみをも
つて、どうしたらこれが生産増強を支障なくやられるだろうか、こういうことをせなければどうしてもや
つて行けないという相談所にな
つているということを聞きまして、非常に私はけつこうだと思
つたのであります。いわゆる経経
調査廳の設立趣旨に合致した運営だ、こういうように考えましたので、今後もその方針で進んでもらいたいということを私はお願い申し上げたのでありますが、中央の
経済調査廳におきましても、全國的には管区あるいは地方の
調査廳をして、こういう方向に今後運営していただくよう御指令あるよう、この機会に私はお願い申し上げておきたいと思
つております。