○山下参考人 副
委員長の山下であります。ただいまの
委員長の
一般的な説明を、具体的に私から申し上げたいと思います。
今回われわれが言
つております集中排除法の問題について、集中排除法の
法律違反である、惡用であるという面と、ただに
法律違反であるというばかりでなく、
日本の経済安定の面から見ましても、企業の正しい安定の面から見ましても、決して正しい適用ではない。この二つが大きな問題でございます。
法律違反の点につきましては、
過度経済力集中排除法の持つ一方的な大きな力の問題はすでに御承知だと思いますが、経済力集中排除法が、極東
委員会の指令の轉回後大きくゆるんだことは御承知の
通りであります。最初会社側も、あのときは非常に峻嚴な適用がなされることをおそれまして、われわれも非常な細分を避けるために、ともに
反対したわけであります。ところが現在この
法律違反を犯しておる点はどういう点かと申しますと、この緩和の空氣に便乘いたしまして、逆に、一昨年の東芝五十五日間の大ゼネストをも
つて反対いたしました、合理化二十八工場処分の
反対にもかかわらず、これをそのまま進めて來ておることであります。このことは東芝三万人の
労働者が、はつきりあの五十五日のストライキのときに知
つていたことでありますから、いかに持株会社
整理委員会で説明されようともその経済力集中排除法を会社の
整理に乘せて出て來たということは、はつきりしておるのであります。
その
法律違反の第一点は、この結論に合せるために、すなわち二十八工場処分の東芝企
業者の野望に合せるために非常に歪曲されて、結論的には二十八工場をどういうわけで処分しなければならぬかという、はつきりした認定がなければいけないということが立法できま
つておりますが、これに合せるために非常にむりな認定をしておるのであります。これはお手元に事務局から配付されました、請願書の附属の趣意書の中に詳しく書いてありますから省きますが、会社が日ごろから持
つておりました原案に符合させるために、事実の認定を逆に結論に合せて、そのために、東芝の企業を一應知
つておる者から見れば、非常にひどい認定をしているということであります。
もう
一つは、この事実の認定が非常に古い資料をも
つてなされておる。
昭和二十二年三月の資料でございます。しかもこの資料は、持株会社
整理委員会で独自の調査をしておると言
つておりますが、実はこれが全部会社側の出した資料でございます。持株会社
整理委員会の事務局が積極的に動けば、工業会その他の資料を十分にとり得るはずのものでありながら、会社側の資料をも
つて事実の認定をしておる。しかも二十八工場を指令に該当させるためには、どうしても歪曲しなければならない。この見え透いた事実の認定をしておるということでございます。
もう
一つ、事実の認定につきまして大きく申し上げたいことは、その指令案には、十分調査がなされておるということを書いてございますが、われわれが聽聞会でも反駁した
通り、この該当二十八工場のうち、行かれた工場はわずか三工場、しかもそのうちの二工場は、ただほかの問題で來たときに立寄
つたということで、五分か十分顏を出した程度であります。これをも
つて十分な調査をしたと言う事実、これに対しましては持株会社
整理委員会も反省した模樣でございまして、聽聞会以後、今急速に東北とか東海をまわ
つておりますが、そのまわり方も東北のあの六縣にわたります七工場を、わずか三、四日でまわるというかけ足的なまわり方でありまして、われわれの追究に対しまして、あそこもここも行
つてみたということを一應言う程度にとどまるわけであります。かくのごとく、まず事実の認定に対しまして明らかに
違反しております。
それから
法律違反の第二点といたしましては、この集中排除法は、経済力の集中を排除するということが原則だと思いますが、この
法律の第
一條にあります
目的に明らかに
違反いたしまして、逆に経済力の集中——
地方工場、
地方産業を切り取ることによりまして、都会の大工場への集中
生産を育成する。明らかに集中排除法とは逆の育成を指令しておることであります。その具体的な事実を三つ申し上げます。
第一番は、二千万円の三千人を擁する東芝車両会社を吸收してよろしいということを言
つておる。吸收しろとはもちろん言えないでありましようが、よろしいということをあえて言
つておることは、もちろん吸收しろということであります。先ほどの笹山
委員長のお話では、百パーセントの株を持
つておるから、実際的には同会社であるということを言われます。そうなれば、うちの東芝といたしましては、百七十一社の子会社を持ち、百パーセントの株を持
つている大会社は四十数社に上
つております。そうすれば東芝コンツェルンは十億以上の巨大会社になるのでありまして、百パーセントの株を持
つておる大工場をそばに持
つており、これは
自分の会社と同じ会社であるからということになれば、明らかに独禁法に
違反し集中排除法に
違反するのであります。
さらに第二の
違反実例といたしまして申し上げたいのは、経済力集中排除法というものは、軍事的経済力の潜在性を排除するのだと言
つていながら、該当二十八工場は、経済力の点から言
つて、東芝から見れば非常に貧弱なものであります。むしろこのようなことを言
つていながら、終戰後二十一年度におきまして、横須賀工場に厖大なる工場の建設を許しております。これは持株会社に移向する前でありましようけれども、この横須賀工場の潜在力というものは、現在の有名なる堀川町工場、あの眞空管、電球事業において最高を行きます堀川工場、あれと匹敵する潜在力を持
つております。か
つて貴重なる復金融資を五千万円以上もここに注ぎ込んでおります。しかも一箇の電球もできないというのに、こういうことを許しておるのであります。
第三には、外資の導入と十分な
関係の事実があるということ。かように眞空管の横須賀工場を許しておる一面、
地方工場のことにつきましてかかる峻嚴なる処分をしていながら、北海道の札幌における札幌工場の建設を、持株会社
整理委員会において二十二年において許されております。かようなことは、今や経済力集中排除の世界的な動向は、東芝の会社に対して、経済力の集中排除ということの指令は緩和される段階に來ております。緩和される段階にな
つておりますが、そのついでに資本家の合理化も便乘させてやろうという、実に卑劣なる違法的行為をあえてや
つておる。これがほんとうに立法当時のように、
日本の経済民主化のための経済力の再編成ということが峻嚴に行われているならば——東芝というものは御承知のように東京電氣と言
つて、元はマツダランプと言
つておりましたが、東京電氣という電氣会社と芝浦製作所という重電氣の会社が合さ
つたものでございます。これは
もともと歴史的
條件から行きましても二つでありまして、現在におきましても必ずしも
一つになりきれていません。この二つのものに分割の指令が出るのは必至の問題でありますが、なぜこれが許されるか。これは
委員長が先ほど言われましたように、外資導入その他の問題とからみまして、東芝のインターナショナル・ゼネラル・エレクトリック会社との協定の
状態から見まして、これを分割しない方がよりよいという観点からいたしまして、経済力集中排除法の峻嚴なる適用から言うば、いわば当然分割されるべき東芝と東電が、合さ
つたまま行くことが許されたわけであります。かような大きな問題が許されたことは、すでに経済力集中排除法によるところの適用は、外資導入に非常に関連性の深い東芝に対しましては、適用を排除するという観点にほかならないのであります。そのかわりに、二十八工場という、非常に経営的にも健全化いたしました
地方の各工場をこの人身御供にして、とにかく二〇%減るのだというようなことをも
つて、経営者が日ごろ処分したいという考えを持
つておる。その案を取入れてやろう。そうすれば幾らか減るということで、経済力集中排除法が適用されたという刑をとろう、こういう考え方であります。このことが一道二十四縣にわたる二十八工場の
地方工場を、
理由なくして
整理するということであります。このような企業合理化は、先ほども言われましたように、企業再建におきまして経営者が自力をも
つてやるべきことであります。
日本経済の民主化のために打立てられました経済力集中非除法の緩和の波を
利用いたしまして、このような惡用を許しておるという点におきまして、これは明らかなる経済力集中排除法の
違反であります。
第二に、そういうことを申し上げますと、東芝は四十三工場もあ
つて非常に大きいのだから、いろいろ
法律の
違反もあるかもしれないけれども、この法が経営者に都合がいいというならば、それは乘せてや
つてもよかろう。こういうような考え方も出るかもしれませんが、それが間違いなのであります。先ほども笹山さんは、経理の健全化のために
もと言われましたが、事実はま
つたく相反するのでありまして、具体的に申し上げますと、二十三年度の下期におきまするところの東芝の工場別に、黒字、赤字の
状態を見た場合に、これは
営業の最終損益まで含まれておりませんで、工場だけの損益でありますから、黒字は最終損益を見ればもつと多いと思いますが、一應工場独自の損益から見ましても、二十三年の十月から今年の二月までに、黒字工場にな
つているところが十三工場ございます。その十三工場のうちの九工場が処分指令に該当しているのであります。さらにこの二月におきまする
状態——このことを申し上げますのは、該当工場が非常によくな
つて來
つておるということを強調しているのであります。一番最近の二月の資料に基きますと、黒字工場が二十工場に増加しております。そのうち処分に指定されている工場が十四工場であります。このように、明らかに東芝自身の経営の健全性から言いましても、
地方工場を切り離す
理由は成り立たないのであります。東芝の経営者が二十八工場の分離を考えましたのは、二十一年の十月以來でございます。このころの考え方からいたしますと、明らかに
地方工場は当時終戰直後の虚脱
状態にあ
つたし、経営者より見れば、
一つの工場をフルに運轉しようと積極性もなく、インフレ過程におきましては
生産を停止し、資材の温存をはかるという態度であ
つたために、明らかに資金、資材の不足のために、
地方工場の経営はよくなか
つたのであります。かかる資料を
もとにして考えられました二十八工場というものの処分ということは、現在の東芝の企業の絶対的な経済再建のためから言いますと、明らかに
違反するのであります。さらにこのことは、大きく
日本の経済再建の方向から見まして、
地方工場におきまして非常に苦しい合理化の結果、採算のとれる
状態にまで來ている工場を、いたずらにこの集中
生産の波に乘りまして、そうしてこの
地方の民生のために明らかに各
地方の町村と直結しております工場を、ただ二分割を避ける名目の
もとに犠牲に供されていることは、
地方におきまする経済上安定したる工場を
整理することによ
つて、いたずらに大工場に対して資金の集中と経済力の集中を許すことになるのでありまして、各問題工場の府縣の議員の方々が、
民自党の方も、民主党の方も、労農党の方も、
社会党の方も、
共産党の方も、すべて双手をあげてこの撤回に
賛成してくださ
つている事実をもちましても、この問題は、
日本の経済再建の上から見ましても、明らかに超党派的にこの撤回の主張の正しさを認めていただけるものと信ずるものであります。
さらに、
委員長の言われました第三の経営者の惡用の点でございますが、先ほど申し上げましたように、経済力の集中排除ではなくて、むしろ集中の育成、そういう形をとりまして、一石二鳥と言わんばかりに合理化をやろうとしている。この経営者の野望、これは集中排除法のような権力を使
つてやるべきじやなくて、企業の自主的な
立場においてなさるべきものであります。ところが、この自主的な
立場においてなさることを避けまして、集中排除法の指令によ
つたからこうなんだというような態度をとりまして、具体的に申し上げますと、最近におきまして会社は、横浜の
地方裁判所に、経済集中排除法の指令が出た。これはもう二十八工場処分ということは絶対に動かせない。
法案の性格上当然そうなるんだから、これを実施するには労働協約がじやまである。だから労働協約が無効であるということの仮処分をや
つてくれ、ということを言
つて來ております。さらに新潟縣の加茂工場、長野縣の川岸工場、このようなところにおきましても、経済力集中排除法の指令が出たからこういうことをやるんだ、やらなければならないのだという形で、どんどんとや
つております。
自分の問題としてやるべきことを、國会がきめた経済力集中排除法なんだからとい
つて、その実施機関であるところの持株会社
整理委員会が、こまかいことを知らないのをいいことにいたしまして、うまうまと二十八工場案を乘せまして、すべてを、この
日本政府が立法いたしましたるところの國会できま
つた法律であるからということで、権力を惡用いたしまして実施して來ている。これが現在の東芝の労働不安の
根本的な
原因なのであります。