○福田
説明員 お手元にお配りしてあります
昭和二十四
年度の総合
資金需給見込概算について、御
説明申し上げます。
まず表の見方でありますが、左側の方は
資金事情、いわゆる
資金の供給力を総括して、一覽し得るようにしたものでございますが、右側の方はそれの配分でございます。二十三
年度は一部推定が入
つておりますが、今までわかりました範囲の実績を見込んだ上の推定実績でございます。それを対比しまして二十四
年度が並べてございますが、まず項目の
説明から申し上げますと、
金融機関という欄では、
金融機関の
資金増加、具体的には預貯金の増加を主とするものでありますが、それが昨
年度の三千五百三十八億に対して本年は二千三百億、約千二百億ばかり少く相
なつております。この少く
なつております理由は、まず第一に昨
年度は右側にありますように、千億以上の財政からの支拂超過があるのみならず、
産業資金の中に
復興金融金庫というのが七百億以上ありますが、そのうち
相当部分が実質上財政
資金でありましたので、合計いたしますと千五百億以上のものが財政面から金融へ負担が轉嫁した、そういう
状態であ
つたのが、今
年度はま
つたく姿がかわ
つておることが第一点、それと相関連いたしまして通貨の増発が、昨
年度は九百三十七億ありましたものが、今
年度は増発なしという前提で考えております。なおまたインフレーシヨンがありませんので、いわゆる水ぶくれ的の預金も今
年度は比較的少くなる、かような観点から昨
年度よりは
相当少く相
なつておりますので、その
状態は
経済の安定した時期に
基準をとるべきであろうという立場から、
昭和十年以前の三、四年間を基礎にとりまして考えてみたのであります。具体的に申しますと、
昭和七年から十年までを基礎にいたしまして、あの当時の國民所得に対する貯蓄の割合を考えてみたのであります。ただその際に
注意しなければならないことは、課税の負担状況があの当時と現在とではかなりかわ
つておりますので、課税の負担が重く
なつたという事情を考慮するために、國民所得から公租公課を差引いた
残りの、いわゆる可処分所得でありますが、その可処分所得というものを
一つの
基準にと
つてみたのであります。具体的には國税、
地方税、專賣益金というものを差引きました可処分所得に対しまして、その当時の貯蓄の割合をと
つてみますと、大体一〇・六%見当に
なつているのでありますが、
昭和二十四
年度の國民所得を二兆九千七百四十二億円としまして、それに対して國税、
地方税、專賣益金総計が七千八百二十四億円で、差引可処分所得は二兆一千九百十八億円となります。これに対しまして今申し上げました
昭和十年以前四年間の貯蓄の性向一〇・六%を乘じてみますと、おおむね二千三百億を若干越える
程度に相なるのであります。
從つて経済が安定してもこの
程度の貯蓄は、努力して達成し得べき目標であろうというように考えられます。
大藏省におきましては貯蓄の目標額を二千五百億円と
決定いたしておりますが、それは努力目標でありますので、需給見込といたしましてはそれより若干下まわる、努力によ
つて確実に達成し得るであろうという限度を押えたのであります。ただ
昭和五年、六年を避けました理由は、あの当時は御
承知のように極度のデフレの時期でありまして、通貨もむしろ收縮いたしておる状況であ
つたのであります。しかし本
年度は通貨の收縮なしという前提から考えますと、五年、六年
程度をとることは適当でないという前提のもとに、七年から十年までを一應の基礎にいたしたのであります。
次に
政府出資及び財政
償還金でありますが、これはそこに表現いたしておりますように、二つの要素から
なつております。
一つは
政府が直接
産業に対して投資する部分、
一つは財政から金融へ返す部分、前の方の
政府が直接
産業へ投資する部分は、右側の方の(2)の
産業資金の(ハ)のところにあります
政府投資六十九億に見合う数字でありまして、その内容は船舶公團に対する出資五十四億円と、開拓者
資金融通
特別会計から貸出しを行います金額の十五億円を合計いたしまして、六十九億円と見たのであります。このうち船舶公團に対する出資は、
從來復興金融金庫からの
融資によ
つてまかなわれてお
つたのでありますが、
復興金融金庫の機能が低下いたすに伴いまして、直接
政府から船舶公團に対して出資することに相な
つたので、実質上は
從來の
復金融資に
相当するものと御理解いただいてよろしいと思います。
残りの六百三十六億円は、財政から金融へ返す部分でありまして、そのおもなものは
復金の債券の
償還金が、
現金償還の部分が三百二十五億円、貿易
資金特別会計の借入金返済が二百五十億円、
國債の
償還が二十一億円、その他印刷廳や貴金属
特別会計、財産税
特別会計等の借入金の返済を合計いたしまして、六百三十六億円と相なるのであります。その中で
復興金融金庫の
現金償還分の三百二十五億円の財源を申し上げますと、そのうち三百億円は、一般会計からの
復金に対する現金出資の部分であります。
残りの二十五億円は、ただいまの御
質問の点に
関係するのでありますが、
復興金融金庫は、
予算に表われておりますように、回收が七十億円、新規の貸出しが五十億円、差引二十五億円の回收超過と相なりますが、その回收超過の二十五億円は、この三百二十五億円中の二十五億円に充当されることに相なるのであります。もともとこの表は右も左も
資金の純増、あるいは
融資の純増で押えておりますので、
復金は五十五億円の貸出しがありますけれ
ども、純増價格としては、それをマイナスの二十五億円になる。この二十五億円を右側に立てますかわりに、左側の方にプラスとして財政
償還分の二十五億を立てておるわけであります。なおついでに申し上げますが、
復興金融金庫の五十億円の貸出しと申しますのは、貸出しとしては新規でありますけれ
ども、実質的にはすでになされております。
市中銀行の
融資に対する
復金の保障
融資の肩がわりに、充当する予定でございますので、新しい
資金需要の見込みを受付けて貸すというわけではない予定でございます。貿易
資金特別会計の借入金の二百五十億円の返済は、一般会計から貿易
特別会計に四百億円の出資をいたしますが、そのうち二百五十億円だけを借入金の返済に充てて、
残りの百五十億円は貿易
特別会計の増加運轉
資金として使用される予定であります。このように貿易
特別会計なり、その他の
特別会計へ一般会計から繰入れますもののうち、その
特別会計の事業
資金として使われる分は、この
政府出資の中に入れておりません。民間の事業の分だけを入れておりますのですが、もしそれを入れるといたしますれば、さつき申しました
政府投資六十九億円の中に加算すると同時に、左側の
政府出資の七百五億円に加算すればよろしいことになるわけであります。一應
政府事業そのものからは、そのものの増加
資金はこの中には含んでおりませんことを、御了解いただきたいと思います。
次に直接投資の七百億円でありますが、この内容は二つの部分から
なつております。
一つは株式とか社債とかいうような証券の、直接個人ないし
企業の投資する部分と、もう
一つは
企業の内部留保でございます。前者を大体三百億円、後者を大体四百億円
程度と考えております。それは二十三
年度の推定実績とおおむね同額
程度予定しております。
次に(4)の
米國対
日援助見返
資金千七百五十億円につきましては、先ほど
中川政務次官から御
説明申し上げた
通りでありまして、二百七十億円の
公債買入れに充てる分は、
鉄道公債が百五十億円、通信
公債百二十億円でありまして、それは右側の國庫財政二百七十億円と見合うことになるわけであります。
残りの千四百八十億円の
使途につきましては、まだ判明いたしておりませんので、一括して計上しておりますが、いずれにいたしましても直接
産業の設備
資金として投資されるにせよ、あるいは
國債の買入れに充当せられる場合といえ
ども、通貨の收縮がありませんから、結局はそれだけの金は
金融機関へ流れて來るという想定のもとに、千四百八十億円は右側の
産業資金の(ホ)の対
日援助見返
資金の千四百八十億円と見合してございます。この内容が詳細になるに從いまして、この概算見込はもう少し
はつきりして來ると思いますが、現状においてはこの
程度でやむを得ないというふうに、御了解いただきたいと思います。かようにいたしまして合計が
資金供給力は五千四百五十五億円でありまして、昨
年度よりはわずかながら増加いたしておるのであります。
次に右側の方でありますが、
資金配分のところで財政
資金中國庫財政二百七十億円は先ほど申し上げた
通りであります。
地方財政の二百三十三億円は
地方債の発行見込額でございます。この二百三十三億円は
予算でも御
承知のように、
特別会計の積立金の増加、たとえば簡易保險、郵便年金、厚生保險等の保險会計などの増加
資金を
見返りとして考慮されておりますので、一般
金融機関にあまり迷惑をかけることにはならないのであります。その
特別会計の増加
資金は、預金部の預金となりますので、預金部
資金の左側の
金融機関二千三百億円のうちに含まれておりますので、その中から二百三十三億円が
償還されるということになるわけであります。
次に
産業資金につきましては、
金融機関の投
融資が二千五百三億円に
なつておりますが、これは
銀行のみならず預金部も含んでおりますし、また興業
銀行のような特殊
銀行も含んだ計数でございます。ただ二千三百億円の
資金供給に対して、二千五百億円の投
融資を見ておりますのは、結局財政からの
償還金に基いておるわけでありまして、自分で貯金を集めた金以外に貸出しが行えるということを意味するわけであります。
政府投資六十九億円と直接投資七百億円、
米國対
日援助見返
資金千四百八十億円につきましては、
資金供給の場合に御
説明したことによ
つて盡きると思います。なお
金融機関の現金
勘定の増加二百億円を見ておりますが、これはいわゆるキヤツシユの増加を意味するわけではなく、キヤツシユももちろん一部には含まれておりますが、
金融機関の現金
勘定には小切手類等もありますので、それらをも包含いたしております。
從つて預金が増加するに從いまして、ある
程度そういう現金
勘定の増加はやむを得ないところでございまして、大体二十三
年度程度を見ておけばよかろうというふうな
考え方で、前
年度と同額を見込んでおります。なお
産業資金の総額は四千七百五十二億円でありますが、そのうち一應ただいまの目算といたしましては、先ほど
政務次官からも
お話がありましたように、設備
資金が千六百億円、
残りが運轉
資金と考えておりますが、設備
資金につきましては、前
年度の推定実績がおおむね千二百億円足らずでありまして、それに比べれば金額的には若干増加を見ております。ただ物價水準が二十三
年度と二十四
年度とでは若干違いますのですが、一應この
程度あれば現在計画されておる生産計画は、おおむねまかなえ得るのではないかというふうに考えております。運轉
資金は前
年度大体二千九百億円足らずでございましたが、これで参りますと三千億を若干越えるのでありまして、昨年價格改訂によ
つて増加運轉
資金が
相当い
つたという事情をあわせ考えますと、今
年度これだけの
資金があれば、運轉
資金の面ではかなり緩和され得るというふうに考え得ると思います。
それからついでに、今までは個別的な計数の御
説明を申し上げたのでありますが、この
資金計画の特長的な事項を要約する意味で、かいつまんで申し上げますと、まず第一に通貨量に対する
考え方であります。先ほど來御
質問がありましたように、世間では今度の
予算は極度のデフレ
予算だ。
從つて二十四
年度は非常に強い安定恐慌なり、あるいはデフレなりが起りはしないか、という懸念をされておる向きが少くないようでありますが、この通貨増発をゼロと見ております意味は、通貨を増発もしなければ通貨を收縮もしない。両方の意味を両面から理解されると思いますが、通貨を増発しないという意味はインフレをやらないという意味であ
つて、通貨を收縮しないということは極度のデフレをやらないという意味に解されると思うのであります。
〔
首藤委員長代理退席、
委員長着席〕
從いまして極度のデフレは起さないということが、この
資金需給見込概算から理解され得ると思うのであります。
第二の特長は財政と金融との
関係であります。昨
年度は先ほ
ども申しましたように、財政からかなり金融に対して
資金を要求したのでありますが、今
年度は二百七十億なり二百三十三億なりの國庫財政
資金、
地方財政
資金の需要は完全に消化し得るように、見合いを考慮しておりますにもかかわらず、財政からも六百三十三億円の
償還を行い、なおその上に
米國対
日援助見返
資金からも、
相当に
資金が金融界に還流するという建前に
なつておりますので、今
年度は財政から金融の方に逆に金を持ち込むという姿に
なつておる。もしそれを全部持ち込まないで通貨の收縮に向けるならば、一般に憂えられておるようなデフレにな
つて來ると思いますが、通貨は收縮しないという意味で、この
資金計画は考えておるというのが第二の特長であろうと思います。
第三の特長は貯蓄の額でありますが、二十三
年度に比べて二十四
年度は千二百億円以上も貯蓄額が少い。これはインフレーションが安定することに基きむしろ当然の結果でありますが、ただ二十三
年度は金額的には大きいのですが、当座預金的のものの増加が
相当多くの部分を占めておるのに対して、二十四
年度においてはほんとうに國民の貯蓄らしい貯蓄が、この多くの分を占めることになるだろう。額としては少くても内容は充実したものにな
つて來るだろうということが、第三の特長であります。
第四の特長は、対
日援助見返
資金という新たな項目が生れたことであります。御
承知のように対
日援助見返
資金は
ガリオア、
イロアによ
つて入
つて來る
資金でありますけれ
ども、しかしながら國内金融的に見ますると、一般会計から八百二十三億円という
輸入補助金を、貿易
特別会計に繰入れることになりますので、その八百三十三億円は普通歳入、つまり税收に基いてとられる。徴收される。逆に言えば一種のあるいは強制貯蓄というようなものとも考え得ると思います。そうい
つた実質を持
つたものが財政の面に入
つて來ようということが、第四の特長であろうと思います。
第五の特長といたしましては、
産業資金の質の問題であります。量的には先ほど申し上げましたように、二十三
年度よりはかなり増加いたしておりますが、これを質的に考えてみますると、
復興金融金庫というものがむしろ回收超過になるという形において、設備
資金の調達に非常に困難な問題がある。
從つて先ほ
どもいろいろ
お話がありました対
日援助見返
資金から、なるべく多くの部分を設備
資金として供給してもらうことがぜひとも必要にな
つて來る。なおそのほかに金融の質の問題としては、金融の基調が健全金融の姿に一層徹することになるだろうということであります。
復興金融金庫の
融資が必ずしもすべて不健全金融とは言えないと思いますけれ
ども、ああい
つた行き方がかりに対
日援助見返
資金を例にと
つてみましても、
償還計画の確実に立てられたものということが條件に
なつておる点から見ましても、いわゆる金融のベース、
経済原則に基づく金融ということが中心にな
つて來るだろうと思います。いわんや一般
金融機関についてみますと、当然そうい
つた傾向が強化されるということが考えられなければならないと思います。なおその他の点について御
質問がありますればお答えすることにして、一應の
説明を終りたいと思います。