○守島
委員 私は今度の戰爭中ずつと
ソ連に長くおりました。それからモスコーに抑留されまして、
最初の
引揚者として
日本に
帰つて來たわけでございます。そういうわけで、この問題については特に興味を持ち関心を持
つております。それからそういう
関係から遺族の方、あるいは
引揚げ関係の世話をされておる方から、いろいろな質問を受けたりするのでございまするが、私は今四十万人残
つておる
日本人が、今年中に帰れるということはむずかしいことだと思います。今
戸叶さんからも御質問がございましたが、なかなか
ソ連との
交渉はむずかしいもので、結局
向うが思
つておることしかしない。
日本は
交渉することはできませんが、進駐軍の方を介しまして
交渉しましても、なかなか
向うは言うことを聞きません。一方これはほとんど私の
想像でございまするが、多少
引揚者の方の話を聞き、それから最近「ウラルを越えて」という
引揚者の書かれた本を読みまして得た知識もございますが、大部分私の
想像でございますが、
向うは
日本の捕虜——
日本の捕虜ばかりじやございません、ドイツの捕虜もあり、ハンガリーの捕虜もあり、イタリアの捕虜もあるが、これが來年の十二月三十一日をも
つて終る
ソ連の五箇年計画の人員計画の中に入
つておると思う。そこでいろいろな約束はいたしまするが、先生たちはこの五箇年計画の計画
通りにや
つて行
つて、おそらく來年末までの間この
人たちが働かされるように——これは全部じやございません。ぼつぼつ帰しますが、計画の中に入
つておるのじやないかと思う。ことに最近一年の
経驗によりまして、五万人づつ帰すということはなかなか実行できぬ。そういういきさつがあるのじやないかと思います。政治上の
理由もむろんございましようが、私は
向うの五箇年計画の中に、これらの捕虜の
労働力が入
つておると思う。三分の二くらいは、私の
想像では入
つておると考えております。そこで問題は、今私
どもが選挙区なんかへ帰りまして、帰れるだろうか帰れるだろうかという話がございますが、私も意思が弱くて、ややもすると今年中には大丈夫だろうというように言いますが、実は腹の中ではそうは思
つておりません。場合によ
つてはなかなかこれは帰さない。おそらく來年の五箇年計画の完了するまでは帰さない。未來永却に置いておくということはあるまい、むろん一部の思想的の
関係の人で、
向うにいるような人、あるいは
向うでとめて置きたいというような人は別問題ですが、大部分の人は來年中には帰れるだろうと正直に申し上げることもございます。最近本
会議でございましたか、吉田さんに対してどなたかの御質問があつた。帰すために大いに勉強してくれるように、それから今年中には大丈夫かという御質問がございましたのに対して、吉田外務大臣は、大いに
努力はするが、何分相手方もあることだから、はつきりしたことは言えぬ、こういうふうに申されておりました。おそらく吉田さんも、私ほど十分の知識はお持ちにならぬだろうと思いますが、そういう見通しをしておられるのじやないか。そこで私が申したいことは、私代議士でございますので、
政府当局者よりは比較的責任が少いかもしれぬが、
政府といたしましては責任があるから、今年中にはいかぬぞ、來年まではかかるだろうということをおつしやることは、責任上非常にむずかしいかもしれませんが、私の
希望といたしましては、なかなか今年中にはいかん、どうも來年にかかるらしいと
言つて、そして來年中にはたいてい終るだろうというような印象を
家族の方に與えられるよう、少し
努力していただきたいと思います。どうも私郷里に帰りまして聞いておると、
政府の
努力のしよう、アメリカの
努力のしようが足らん、
努力すればすぐにでも
帰つて來るというような考えを持
つておる。また反面には、いつ
帰つて來るかわからん、はなはだしきに至
つてはこういうことを
言つておる。
米ソ戰爭が起る。そうすると
日本も戰爭に加わ
つて、
日本の兵隊も
ソ連に攻め込む。そうすると
日本の兵隊が攻めないように、
日本人の壁をつく
つてそれを防ぐために、
日本人を置いておくんだというような、実にわれわれから考えますと
想像ができないようなことを相当
言つている。だからいつまでも帰さぬだろうということを
言つておる。ですからこの
引揚げに盡力されておる方は熱心なるあまり、もうすぐ帰るもうすぐ帰る、われわれが
努力して
連合軍司令部へ頼めば、もうことし中には大丈夫、こういうふうな印象を與える。それで、ほんとうの事実の
発表はむずかしいことではございましようが、一般の
方々にほんとうのことを示されたい。こういうふうに思います。
もう
一つ申し上げたいことは、私が今申し上げます
通りに、
ソ連から帰られる方についても、これより以上
向うとの折衝に
努力いたしましても、大したことはないと思います。そこでわれわれとして
努力しなければならぬことは、むしろ
帰つて來る方の世話、また
日本に残
つておられるところの
家族の世話、この
方面によほど
努力しなければならないのではないかと思います。これは予算の
関係もございましようが、私は私の選挙区をあつちこつちを歩いてみました印象だけでありまして、はつきり
数字も何も持ちませんが、どうも
努力しておる人が、遺族の世話、
帰つて來る人の世話ということよりは、帰らせる方、旗を立ててワイワイ言う方ばかりで、じみな
仕事の方を閑却しておるような感じがいたします。私のその感じが誤りであればよろしゆうございますが、どうもそうではない。旗を立ててワイワイ
言つて、そうして遺族に断食させるというようなはなばなしい方の
仕事がみな好きであ
つて、じみな、今
生活に困
つておる
家族を世話する、また
帰つて來る人の就職やら
住宅やら食糧品を世話するというようなじみな
仕事は、どうも拔けがあるんじやないか。
政府の方で十分や
つておられるかも知れませんが、末端の方にそういうことがあるんじやないか。その
方面を大いにやらなければならぬと私は思います。私も選挙区を歩きますときに、帰すのにあまり一生懸命にならないで、むしろ残
つておる
家族を世話するように申しておるわけであります。きようこの
請願に対して決定されるだろうと思いますが、私の
希望といたしましては、いつもこういうことを大いにやるというような報告書ばかり出ますが、や
つてもなかなかいかぬ
方面もあるだろう。やるべき
方面はこの点が重要だということを、何とか
方法を講じて印象づけるようにしていただきたいと思います。
もう
一つは中國の中共地域におる人、これは私の
想像でございまするが、さつきの御
説明にも多少ございましたが、これは解決の道がないのじやないか、
向うと
交渉することができないのですから。それもアメリカあたりで何とかしてや
つてもらいたいというと、一般の人は、何とか
方法があるだろう、もう
帰つて來るだろうと思わせまするから、これは困難なんだ、
交渉の
方法がないんだ、中共がしつかりした政権として認められて、アメリカと
交渉するようにならなければ
方法がないんだということを、何とかの
方法で皆樣に知らせる。そうして空な望みを持たせぬというようなことが必要なんじやないかと私は思う。病人には病氣がすぐよくなると言わないで、お前は三年くらい寝なければならぬ、あるいは結局お前は死ぬんだということを知らせることがほんとうの親切であるように、そういう
方面にことを
政府がや
つていただきたいと思います。私の今
言つたことは非常にむずかしいことであると思います。しかしながらできないと言わないで、おやりにな
つていただきたい。またこの議院でも大いにやるんだ、いろんな選挙区の一般の方から
請願がありましたように、大いにやるんだというばかりでなく、なかなかできないんだということを言う勇氣がなければならぬと私は思います。私の
意見はこれで終ります。