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玉置(信)
委員 私は主として
定着援護のことについて
関係当局にお尋ねいたしたいと思います。
海外から
引揚げた多数の
同胞のうちには、無
縁故者が相当多いと思うのでありまするが、先だ
つて函館に、
冨永委員についてあそこの
援護局についていろいろと
調査いたしました結果、無
縁故の
更生施設は非常に大事なことであり、喫緊な要事であることを痛感いたしました。
引揚者援護機関を設置すべきじやないかということを痛感して参
つたのであります。これを前提といたしまして、とにかく
北海道における
引揚げ者の家の状況を一と通り申し上げまして、
あとでその施策についてお伺いいたしたいのであります。すなわち
樺太、
千島の地域から
引揚げた同胞の中には、非常に無
縁故者が多いのでありまして、これらの
人たちは古くから
北海道の開拓のため、
東北各地からまず
北海道に渡りまして、
北海道を足場としてさらに
樺太、
千島に渡り、多年農耕、牧畜、水産または商工の業に從事いたし、言うまでもなくあの地を永住、墳墓の地として強固な
生活の
基礎を築き上げて、在住十年に及んで今日
引揚げたものばかりなのであります。それが
終戰とともに、財産はもちろん、すべての
生活基凖を喪失して、まる裸で故
國内地に帰還したのでありまするが、しかし迎えられた地では
縁故者もなく知人もなく、從
つて信用も薄い。加うるに資金もま
つたく持
つていない。これらの
人たちがすみやかに正業を得て、正常なる国民
生活に復帰することは、現下國内の事情からして容易でないことは御承知の通りでございます。昭和二十一年第一次の
引揚げ開始以来、昨年末までに至る函館に
樺太、
千島から
引揚げた総数は二十八万七千五百九十五人にな
つております。このうちに無
縁故者のみにでも五万七千五十四人という名数を算しておるわけであります。このほかに一應
縁故先をたど
つて帰國した者の中にも約二〇パーセントは、せつかく目的地に入
つたが、たよるべき何らの寄り辺もなく、失望に終
つた者があるような状態でありまして、これらを合算すると、現在までの無
縁故者の数は十万を越えておる。これらの
人たちは
関係機関の配慮によ
つて、一應
北海道及び東北六縣に受入れられて、とにもかくにもそのところを得ているわけではありまするが、しかし
引揚げ者の状況、たとえば各
引揚げ船ごとに順次無
縁故が上昇しておるわけであります。ことに今年のソ連の
発表によりまして
引揚げが開始されることに
なりますと、これまた相当無
縁故者の数がふえて、おそらく
北海道だけでも無
縁故者が十四、五万人には達するだろう。こういうことが予想されるわけであります。もちろん
関係当局におきましては、これら無
縁故者について、第一居住のあつせん、就業相談等あらゆる手段と労苦を盡して定着更正にもつぱら意を
拂つておられるわけでありまするが、しかし現下の状態をも
つてしては、
引揚者の更生安定を期することにはなお前途ほど遠いものがあるように思われる。しかし今までの
引揚者の思想的面を
調べてみますると、比較的穏健でありまするが、しかしながら現情のままに推移すれば、すなわち現在の諸施策の状態から
考えますると、將來精神的、すなわち思想的に非常に
心配される面が多々あるわけであります。そこで私はこの受入れ態勢、應急援護の点におきまして、
政府当局におかれているいろいろな手を盡された
関係もありましよう。また民間人の協力等によりまして、非常に完備いたし、万全の應急対策ができておることは非常に意を強うし、満足しておりまするが、
定着援護という点におきましては、將來非常に危惧される点があるわけであります。一例を上げてみますると、私は内地の状況はまだ
調査しておりませんからよくわかりませんが、
北海道のたとえば住宅の点についてみますれば、二十三年度の
北海道の
引揚者の住宅は四千二百戸しか建設しておりません。なお全道で八千人くらいの
引揚者の
方々が、物置であるとか、倉庫とかいうような、小屋を直して、あるいは間借をして、不自由な悲惨な
生活をしておるという状態であります。二十四年度におきましては、今まで
引揚げの予想される
数字から見まして、今年は約二万人の者が
引揚げられるのじやないかということで、
北海道廰におきましては、これに対して少くとも四千五百戸の住宅の新築を必要とされるというわけで、道廰において有
縁故者に対して一億円、無
縁故者に対して五億円、合計六億円を計上して、
政府に要求いたしておる
現状でございます。このほかにもちろん
地方費からも五百万円程度を計上して、これら
引揚者の
方々に対しままず住むところを早くつく
つてやろうというわけで、熱心にこれが対策を講じつつあるが、しかし何と申しましても無一物の
引揚者でありますから、かりにおそまつな家ができたにいたしましても、安定した
生活を得るにつきましては、今後
政府におきまして、相当援護の手を差延べてやらなければならぬ。その点と、應急受入れ態勢が完全にできておりまして、
引揚げ港に上
つたとたんに衣料あるいは藥品、化粧品その他の日用品が相当多量にもらえる。それからお菓子も與えれば、あるいは應急資金も一千円もらえるというふうなことで、上陸したとたんに非常に満足しているわけなんであります。ところが、一たびこれが
地方に受入れられる、すなわち
援護局の手を離れまして、
定着援護の面で
地方に分散されますと、そうした受入れ態勢が完全でないという結果から、とたんにどうも寂寥を感じ、前段申し上げましたように、思想面にも非常な変化を來しておる。これが各地の状況を
調べてみますると、非常に危惧される点が多々あるわけであります。私時間の
関係上そうした幾つもの実例を申し上げることはこの場合後日に讓りまして、とにかくこうした多くの
方々に一日も早く更生し、
生活の安定を期せしめる援護施策といたしまして、厚生省の外局として
引揚者援護局というようなものを各縣に設けまして、これに援護部あるいは援護課というようなものを設け、さらに市町村並びに
関係機関との連絡を緊密にいたして、これら
引揚者の定着安定更生援護に万全を期すべきでないか、かように思うわけであります。これに関しまして、
援護局におきましてはいかような見解をと
つておりまか。まずこの点を先にお伺いいたしたいのでございます。