○柳原
委員 議審進行についていろいろ問題が起
つておりますが、私のこれから言わんとするところは、きようの議題外であります。私はきのうの
理事会において、きようの発言を依頼しておきましたので、特にお許しを願いたいと思います。私が議題外と申しますのは、先ほど触れられた吉村隊に関連、類似する問題なのであります。御
承知のようにあの吉村隊の残虐
事件が、全
國民のきびしい批判の的になりまして、参議院ではこの問題を取上げまして、連日にぎにぎしく証人を召喚して取調べをいたしております。こういうことが全図に傳わりまして、たまたま私たちの
郷里である岐阜縣におきましても、非常にデリケートな問題か起
つて参りました。それはこういう問題であります。現在取調べを受けておるところの吉村隊の残虐行爲よりも、はるかにその量的においても、また質的においても、残虐性が大きい。こういう問題であ
つて、吉村隊をさばくのならば、ぜひともわれわれの受けた残虐行爲もさばいてもらわなければならない、こういうことを岐阜縣の高山市下一之町堀尾藤吉という方と、同じく高山市の室町の堀尾ひさという方、これは、
自分の夫と
自分の弟でありますが、苗字が一緒なのは一人は兄であり、一人は妻なのであります。この堀尾藤吉という方と堀尾ひさという方が、
自分の亭主の堀尾六三という者が、南洋諸島のタラワ島という一里四方くらいの小さな島において、非常な残虐行爲を受けた。そこでこれらの二人の人が、
自分の肉親に当る死んだ堀尾六三という方がどんな死に方をしたかということについて、
帰還した数人の人に当
つて詳しく聞いて來て、これが眞相である
といつて、この四月の七日に岐阜タイムスの新聞を通じまして、ダラワ島の残虐
事件を
発表いたしました。この岐阜タイムスという新聞は、岐阜地方におきましては発行部数においても、また信用の程度においても非常に有望というか、そういう新聞なのであります。この新聞に大々的に取上げられて
発表されるや、ただちに証人が現われて來ました。それは岐阜市眞砂町に住む樅山清という方ですが、堀尾六三という犠牲者とともに一緒にタラワ島にお
つた人です。この人が確かにその眞相は間違いがない、おれが証言するというので、岐阜縣においてタラワ島の残虐
事件が大々的に取上げられるに当りました。吉村隊をさばくならば、このタラワ島もさばかなければならないという意見が岐阜縣においては世論化して來たのであります。ここにおいてタラワ島においてどんな残虐行爲が行われたか、こういうことについて、一々そのリンチの模様をここで
発表するのは省略いたしますけれ
ども、三千五百名程度お
つた同胞である軍人軍属が、終戰少し後までにその約八割の者がこの残虐によ
つて死亡してしま
つて、帰
つた港は約三割ということであります。この岐阜縣の例をとりますと、八十七名お
つた者がわずかに帰
つた者八名という
事件なのであります。但しこのタラワ島
事件は吉村隊の
事件とやや異な
つておりまして、戰時中に行われた問題であります。吉村隊は終戰以後のことが問題にな
つておりまして、終戰後吉村隊は蒙古側の
命令によ
つてああいうことをや
つた。こう言い得るかもしれないが、タラワ島
事件においては全然
日本人ばかりが戰時中に虐殺し合
つた。その
責任者は佐野という海軍技術大尉である、この佐野という者は大阪府出身であるということが判明しておるだけであります。私はここにおきましてこの衆議院の特別
委員会としてはどうしたらよいかという問題でありますが、吉村隊の
事件をあのように参議院で取上げて調べておる以上、この問題も放置しておくことはできないことだと思います。私はこの堀尾藤吉という方と、堀尾ひさという方、それから証人である樅山清という方から、その眞相報告書なるものの提出を求めて、その結果によ
つて適当な処置をと
つていただきたい。かように思
つております。なお特に附言いたしたいと思いますことは、私もあの吉村隊の取調べを参議院に毎日傍聽に行
つて聞いております。非常に多数の証人を呼び寄せられまして、にぎにぎしく開かれております。これついていろいろ感じさせられるところがありました。しかし私はきようこの場合においてどんなことを感じたかということは差控えたいと思います。後日の
委員会で適当に
お話申したいと思います。こういうことについては、参議院の特別
委員会と衆議院の特別
委員会がより以上に緊密に
連絡して、適当なる一つの
方法を講じていただかなくては、今後いろいろめんどうな問題が起
つて來ると思います。私もか
つて軍隊におりましたが、このような残虐行爲は当然起り得ると
考えられます。軍隊の風潮がそのようであ
つたということは身をも
つて体驗しております。このように吉村
事件、タラワ
事件等が問題にな
つて参りますと、全國あるいは
各地方から、このような
事件と類似した問題が起
つて來ると思います。このようなときにあたりましては、どうしても私は参議院と衆議院の特別
委員会の合同
会議といいますか、協議によ
つて、適当な
方法を講ずることが賢明な策であると思いますが、この点についてもしかるべく御処置をお願いいたしたいと思います。