○栗山良夫君 私は製造煙草の價格改定へ即ち煙草の値上げに対しましては、今年七月二日の本
議場において大衆課税的な値上げに反対するということ、購買力の限界を超えるごときこの煙草の値上げに反対であるということ、特に
國家財政の四分の一にも相当するところの巨額の税收を一製造煙草に求むるがごときは全く不見識極まるものであるという論点に立ちまして、反対の意思を表明いたしたのであります。この反対は單なる煙草の値上げということのみではないのでありまして、今
國民を苦しめつつありまするところの大衆課税反対の一環として私は主張をいたしたのであります。この主張に対しまして、僅か半歳を出でない今日、私共が当時主張をいたしましたところのその結果がそのまま現われまして、ここに再び價格の改定をせざるを得ないこの不見識なる
政府の政策、專賣政策に対して、私は重ねて反対の意思を明らかにせざるを得ないのでありす。
先ず第一に数点の反対点を申述べたいと思うのでありますが、第一に申上げたいことは、第三
國会の終りにおきまして、私共は
國家の健全財政の建前からいたしまして、又
國民の
生活安定の建前からいたしまして、大衆的課税の反対を叫びました。予算におきましても、或いは通信料金におきましても、國鉄の料金におきましても、專賣益金においても然りでありまして、そうしてこの意見に当時野党でありましたところの民自党は、私共の主張と同じういたしまして、この四つの
法案に反対をせられた筈であります。(「そだそうだ」「その
通り」と呼ぶ者あり)この民自党が僅か半歳を出でない間にかくのごとき政策の変更をせられて、ここに煙草の値上げの
法案を提出されるということは、私共全く予解に苦しむのであります。(「よく聽いて置け」と呼ぶ者あり)政治は信念であり、節操がなければならないのであります。(「その
通り」と呼ぶ者あり)この僅か半歳の間にかくのごとき政策の轉換が行われたということは、野党における人氣取り政策であ
つたのか、或いはこれが若し当を得ないといたしまするならば、敢て反対せんがための反対であつたということを言わざるを得ないのであります。(
拍手、「その
通り」と呼ぶ者あり)かくのごとき民自党から
提案されたところの本製造煙草の
改正法案に対しては、私は先ず反対の意思を表明するのであります。又私は社会党にも一言申上げたいのであります。(笑声)当時私共は(「よく聽け」と呼ぶ者あり)私共と同じ考を持
つておる党といたしまして、強力にその同調を求めたのでありますけれども、去る第三
國会においては確か社会党は煙草の値上げに
賛成をせられた筈であります。その社会党が私の聞きますところによりますと、本日煙草の値上げ反対の
討論を申込でおられるという話であります。(「総選挙を控えているからだ」と呼ぶ者あり)私は理由の如何を問いません。明らかに大衆課税的なこの値上げに対して曾て
賛成をせられた、今度は反対せられるその社会党の眞意を又了解し得ないのであります。(
拍手、「選挙対策」と呼ぶ者あり)この意味におきまして、先ず反対の政治的な観点を申上げたのであります。
第二に、專賣政策の失敗について申上げたいのでありますが、三十億の賣行不振の対策としてピースの製造を減少いたしまして、そうして
配給煙草の値上を断行するというのでありますが、
配給ということは自由價格よりも相当に値を下げまして
配給するところに妙味があるのであります。段々と自由價格品或いは闇物價と殆んど差のない程度に
配給價格を上げて行くならば、もはや
配給の妙味は失
つて行くのであります。(「その
通り」と呼ぶ者あり)こういう意味におきましても私は
賛成をいたしかねるのでありますが、特に私共の聞きまするところによりますると、監視官千三百名を置きまして、密耕作、私設專賣局の徹底的な檢察をやるということを
政府当局は言
つておるのでありますけれども、專賣局の話によりますると、この人員を以てしては殆んど不可能であるということを明らかに明言されておるのであります。然らば「きんし」が十五円になる、こういうようなことになりまするならば、ますます密耕作、私設專賣局の横行を刺戟するだけでありまして、
政府の政策は大いなる矛盾に縫著せざるを得ないと思うのであります。特に私はこのような
状態におきますところの煙草の問題は、原價計算から申しましても、九割の税金に一割の煙草の味附をやりまして国民に喫わせるものである。こういう工合に言わざるを得ないのであります。この考え方は酒の場合にも同じように現われておる。すでに酒におきまして約三十億の減收を來しております。賣上高は予定の僅かに八二%である。そうしてその最も大きな原因は、特價酒の値が高過ぎるということであります。そうしてそのことが地方税の賦課を併せたために特に大きな影響を與え、それが酒の密造までも誘引し、この密造を殆んど現在の
政府の力では抑え切れないというような、この酒の状況と全くよく似ておるのであります。私はこのような意味におきまして專賣政策の失敗という観点から、先ず第二の反対をせざるを得ないのであります。
次に、第三といたしましては、大衆課税的な意味から反対をいたします。私の持
つておりまする資料によりますと、二十三
年度の課税所得と、それから二兆四千億の
國民所得の一人
当りの比率を出して見ますと、大体
給與所得におきましては、所得七万二千円に対しまして課税所得は四万円、五五%が課税所得の対象にな
つております。ところが業種所得のうちで、農林、水産を除きました営業所得におきましては、二十三万三千円の所得のうち、所得税の課税所得にな
つておりますのは十三万三千円、即ち五七%であります。殆んど大差がないのであります。大差がないという亡とは、皆さん方が私が申上げるまでもなくよくお分りにな
つておる
通りに、勤労所得税は税の所得の殆んど全部を完全に棚上げせられております。
從つて五五%の
只今申上げました額は確実に課税所得として税の対象になるのであります。然るに業種所得の五七%は殆んどその所得の全部が開け放しにな
つておるとは言われないのであります。そこに相当の余裕がある筈であります。この観点から逆に考えますならば、二兆四千億の
國民所得の計算のうちで業種所得の計算は極めて杜撰極まるものである、不公平極まるものであると言わざるを得ないのであります。こういう観点からいたしますならば、今度の
インフレの進行、いわゆる貨幣價値の下落によ
つて、止むを得ず引上げられましたところの全官初め民間労働者の
給與の引上と同時に、勤労所得税の基礎控除の引上げ、或いは税率の引下げをスライド的に同時に断行しなければならなか
つたのであります。(「その
通り」と呼ぶ者あり)これは昨日岩間議員が申述べた
通りでありますが、私は業種所得の税金も決して軽いとは申上げません。相当に苦しいことは承知いたしておりますけれども、まだまだ勤労階級の税金よりは相当に余裕があることは、この実績から認めざるを得ないのであります。然るに拘わらず、こういうような税率の修正をやらないで、更に物品税、消費税、こういうような系統に類するところの大衆課税をこの上に積み重ねて來るということに対しまして、果して勤労階級はどのような遂にその
生活の針路を求めようとするか、私は極めて暗澹たらざるを得ないのであります。このことこそ明らかにこれは増税であります。税率の修正を行わないということも増税である。又煙草の値上も明らかに増税であります。こういうような観点からいたしまして、私は先ず反対をしなければならん。(「まだやるのか、時間々々」「頑張れ」と呼ぶ者あり)次に、十九日マ書簡の九原則の中に、收税計画を
促進強化し、脱税者に対しては迅速、廣範囲に亘り刑事訴追
処置を取ることというのが明記されております。私は税制の根本的な改革をやらなければ、この煙草の値上、こういう大衆的なものでは殆んど
國家財政を賄うことができない、こう確信をいたすのでありますが、この不当利得、終戰後の不当利得に対して徹底的な手を打たない限りにおきましては、如何にこういうような大衆課税的なもので
國家財政の補填をいたそうと思いましても、恐らく
國家財政の前途は眞つ暗であると言わざるを得ないのであります。この観点からいたしましても、(「時間だ」と呼ぶ者あり)今度のマ書簡の九原則の
嚴重なる実行によ
つて、税制の根本的な改革の上に国家財政の基盤が立てられなければならんものと主張するものであります。
最後の論点は、(「降りろ」「頑張れ」と呼ぶ者あり)先ず公聽会の意見というものが殆んど無視されておるということであります。私は
國会法の規則によりまして、(「降りろ」と呼ぶ者あり)私は
國会法の規則によりまして……