○山田節男君
只今議題となりました公共企業体労働関係
法案につきまして、
委員会におきまする
審議の
経過並びに結果について御
報告申上げます。
先ず本
法案提案の理由につきまして申上げますが、去る
昭和二十三年七月二十二日附マッカーサー元帥の
内閣総理大臣宛書簡におきまして、現在特別会計によりて行われておりまする國有鉄道事業及び
國家事費事業につきましては、公共企業体への組織替えが示唆されまして、第三
國会に日本國有鉄道
法案及び日本專賣公社
法案が提出せられ、二
法案とも過日
國会を通過したのでありまするが、この二
法案によりますと、これらの公共企業体の
職員には、
國家公務員法が適用されないことにな
つておりますので、(「十二時までやれ」と呼ぶ者あり)公共企業体の
職員は、
國家公務員法の一部を
改正する
法案が
実施せられました後におきましても、当然労働組合法及び労働関係調整法が適用されることになります。併しながら公共企業体はその特異性に鑑みまして、完全國有の法人として
國家の嚴重なる
管理と監督の下に運営されることにな
つておりまして、一般民間の企業又は或る程度の
國家の
管理を受けております企業とは、その性格を異にするものございまして、マッカーサー元帥の書簡にあります
ように、
職員の責任の遂行を怠るごとによ
つて公共企業体の
業務の運営に支障を起すことのない
ように、公共の利益を擁護する方法を確立する必要があります。このために公共企業体の
職員の労働組合及び労働関係につきましては、労働組合法及び労働関係調整法の
規定のみにては不十分と考えられるのでありましていこれに対処する必要な
措置を講ずるがために
本案が提案せられたものでございます。更に又公共企業体の労働関係は、只今申上げ一ました
ような公共企業体の性格から共通の特異性を持つものでありますので、日本國有鉄道と日本專賣公社とに
別個の労働関係に関する立法
措置を講ずることは適当でなく、且つ又公共企業体の労働関係を統一的に把握する見地よりも不適当であると考えられまするので、本
法案に統一せられたものでございます。更に又公共企業体の
職員には、團体交渉権は労働組合法の定めるところによりまして完全に保有するのでありますが、これが行使の方法につきましては、從來一般の組合においては、ややもすれば混乱を生じ、無用に労働の紛爭議を生ぜしめている傾向がございまするが、かくのごとき混乱は努めて排除されることが望ましいことでございます。殊に公共企業体においては、これら無用な紛爭議を極力排除することによりまして、正常な團体交渉を保障し、これによ
つて職員の地位の維持向上を図ることによりまして、公共企業体の能率の発揮と正常な運営を確保し
ようとする立法
措置を必要としたのでございます。更に又公共企業体の
職員には、
國家公務員に認められるその地位に関する特別の保障がありませんので、又これに加えまして、マッカーサー元帥の書簡にも示唆されておりまする完全なる團体交渉と、適正迅速なる調停と、嚴正なる仲裁との制度を確立することによりまして、
職員の生活の安定を保障する必要があるのでございまして、これに関する立法
措置を講ずることが必要となりて来たのでございます。以上は本
法案の提案理由の大体の御
説明を申上げたのでございます。
次に本
法案の
内容を簡単に申上げたいと存じます。本
法案第一章におきましては、本
法案は公共企業体の
職員の苦情と紛爭とを友好的且つ平和的に調整するため、團体交渉の慣行と
手続とを確立することによ
つて、公共企業体の正常な運営を最大限に確保し、以て公共の福祉を増進することを目的とするものなることを明らかにし、更に関係者が公共企業体の重要性に鑑みまして、紛事をできるだけ防止し、主張の不一致を友好的に調整するために最大限の努力を盡すことを義務付けておるのでございます。第二章におきましては、
職員の組合の民主性、自立性を保障するための
規定を設けると共に、公共企業体の廣く
國民に開放されるべき性質よりいたしまして、オープン・シヨップ・システムを
規定しております。更に公共企業体の運営を正常に確保する必要からいたしまして、
職員の組合に加入し得ない者の範囲を明らかにし、更に
職員が組合員であること、又組合の正当な行爲をなしたことを理由といたしまして、如何なる差別待遇をも受けないこととし、万一差別待遇があつたときには、仲裁
委員会の命令によ
つて該行爲の停止を命ぜられることにいたしておるのでございます。第三章におきましては、團体交渉の
手続を
規定しておりまして、本
法案中最も重要なものでございます。第四章におきましては、
職員の一切の爭議行爲を禁止しておりまするが、これは公共企業体が完全國有法人でありますので、これに対して爭議行爲をすることは延いては
國家に対して脅威を及ぼすことになり、更に公共企業体が再建途上の
國家経済と
國民の福祉に占める重要性に鑑みまして、その
業務運営の停廃は寸時と雖も許されませんから、止むを得ず爭議行爲を禁止することとな
つたのであります。第五章におきましては、苦情及び紛爭の調整と調停の方法と、その
機関を設けまして、苦情
処理の適正なる解決のために苦情
処理共同調整
会議を公共企業体の交渉単位に設けしめ、
職員の日常の不平を迅速に解決をして行くことにいたしまして、これによ
つて尚解決しないものは労働関係調停
委員会の調停に俟つことにいたしております。第六章におきましては、仲裁に関する方法並びに
機関を
規定しておるのでありまするが、特に本章には強制仲裁の制度が設けられてありますることは、誠に重要視すべきことと存じます。以上が本
法案の
内容の主要なる要点を極あて簡單ながら御
説明申上げたのでございます。
而して
本案の目的とするところをここに要約いたしますると、
昭和二十二年七月二十二日附の
内閣総理大臣宛連合国最高司令官の書簡に基きまして、国有鉄道事業及び
國家事費事業を公共企業体の事業とするのに伴いまして、公共企業体とその
職員との間の労働関係を規律する制度を確立せしめ
ようとするものでございます。
次に本
法案審議の
経過の概要を申上げたいと存じます。本
委員会は十二月六日から予備審査を行な
つたのでございまするが、その間三回の
委員会を開催し、極めて慎重に
審議を重ねたのでございます。而して昨十二月十一日
衆議院から広院に送付されまして、本日、本審査を行な
つたのでございます。
政府からは労働大臣或いは他の
政府委員、関係局長が出席いたしまして、熱心なる
説明並びに
答弁がございました。尚ここで一言申上げて置きたいことは、(「簡單々々」と呼ぶ者あり)去る第三
國会に驚きまして、本
法案と全く
内容を同じうする公共企業体(「簡單」「十二時までやれ」と呼ぶ者あり)労働関係
法案が、予備審査として付託にな
つてお
つたのでございまして、十月十六日から同月三十日まで、予備審査として九回の
委員会を開催いたしまして、愼重なる
審議を重ねたのでありまするが、特に十一月二十六日、二十七日の二日間、当労働
委員会におきましては公聽会を開きまして、労働者側、
経営者側、学識経驗者側より公述人の出席を求めまして、有益なる公述を聽取し、
審議の参考に供した次第でございまする。その間、
政府からは労働大臣、運輸大臣、竹下政務次官、労政局長)その他関係の
政府委員が出席したのでありまして、第三
國会における(「山田先生ゆつくり」「簡單」と呼ぶ者あり)当
委員会の熱心なる右の
審議が本
法案の審査に專ら役立つたということを、特にこ亡に附加えて申上げたいと存じます。
次に本
法案の
審議における
質疑應答について、重要なものを二三概要を申上げたいと存じます。(「簡單」と呼ぶ者あり)第一は、本
法案の対象を日本國有鉄道と日本專賣公社との二者に限定したる理由如何との質問に対しまして、
政府は、公共性の程度においては二者には多少の相違はあるが、いずれも
國家の資本を以て運営され、収入も
國家財政の大
部分を占めている点では類似しているので、二者を一律に
取扱りたのである。專賣事業は、間接税の徴収
機関にな
つているという点で公共性が甚大である。而してこの二つの業業が一般の私企業より公益性が大である。且つ
國家機関の一種である。(「何が公益」と呼ぶ者あり)という見地から、この二事業に限定したものである旨の
答弁がございました。第二は、本
法案の主眼とな
つておりまする公共企業体の
職員の罷業権の禁止は、民間の企業に影響すること甚大であ
つて、一般
國民の納得する理由がなければならないが、罷業権禁止の根本的理由如何との質問に対しまして、
政府は、
内閣総理大臣宛マッカーサー元帥書簡に基き、公共企業体の事業の運営は公共の利益を侵害されない
ようにするという根本
精神に則つたもので、公共企業体の事業は公益的色彩強く、
國家と同一の事業を営んでおるので、羅業権を禁止する旨の
答弁がございました。第三は、國有鉄道と私鉄の差異を設けた理由如何。又將來私鉄に対して準公共企業体としての
取扱をなす意向ありや否やとの質問に対しまして、
政府は、日本のすべての幹線は國有鉄道にな
つているから、國有鉄道の公共性が遥かに強いので、日本國有鉄道を私鉄と区別した。又國有鉄道と私鉄とを
別個に
取扱うことは実際には不便ではあるが、本
法案の
趣旨を私鉄にまで及ぼせば、
憲法の基本的人権にまで触れて來る慮れがあるから軽々に
措置できない旨の
答弁がございました。第四には、逓信事業を公共企業体としないで、その從業員を
國家公務員法の適用範囲に入れた理由如何という質問に対して、
政府は逓信事業を公共企業体とせざるは、その事業の性質上の区別からではなく、マッカーサー元帥の書簡において区別されているから、その書簡の
趣旨に則
つて立法せられたものである旨の
答弁がありました。第五には、公共企業体の
職員の組合は他の産業労働組合と同盟して連合体を結成することができるか、又それができるとすれば、その連合体は政治活動をなし得るやとの質問に対しましては、
政府は、連合体はこれを結成することができる、又その連合体の政治活動については極東
委員会対日労働組合十六原則にある
ように、政治活動をすることはできるが、併しそれはどこまでも從だる性質の程度で、連合体の主たる目的としてこれを行うことはできないことは当然であるという
趣旨の御
答弁がございました。
以上大体本
法案に関する重要な
質疑應答を申上げたのでございますが、右申上げました
質疑應答の外にいろいろな角度から
政府側と
委員側とに詳細且つ多岐に亘わます
質疑應答が交換されましたが、これらは
速記録によ
つて御覧を願いたいと存じます。
かくて質疑を終りまして討論に移りましたところ、一
委員より、第十五條、第十七條、第二十四條第五号、第三十四條第五号に関しまして
修正を加うべしとの動議が出たのであります。次に
修正案の要旨を申上げます。
一、第十五條の交渉
委員の会合の回数が少な過ぎるので、第十五條を左の
通り改正する。
公共企業体及び組合を代表する交渉
委員の会合は、第八條に定める團体交渉を行うために、毎年四回開かなければならない。但し一方の請求があれば臨時に開くことができる。
二、本
法案で罷業権を全然禁止することは妥当でないと考えられるので、第十七條を左の
通り改正する。
公共企業体及び組合が爭議行爲を行うには、調停
委員会に調停の申請がなされた日より二箇月を経た後において、一週間の予告期間をおかなければならない
三、第二十四條第五号の調停の請求権を労働大臣、運輸大臣、
大藏大臣の三者に認めておるのは、労働行政の一元化に不適当であるから、第二十四條第五号を左の
通り改正する。
労働大臣が、日本國有鉄道の労働関係に関しては運輸大臣の
意見を聽き、日本專賣公社の労働関係に関しては
大藏大臣の
意見を聽き、調停
委員会に調停の請求をしたとき。
四、第三十四條第五号の仲裁の請求権を労働大臣、運輸大臣、
大藏大臣の三者に認めておるのは、労働行政の一元化に不適当であるから、第三十四條第五号を左の
通り改正する。
五、労働大臣が、日本國有鉄道の労働関係に関しては運輸大臣の
意見を聽き、日本專賣公社の労働関係に関しては
大藏大臣の
意見を聽き、仲裁
委員会に仲裁の請求をしたとき。
か
ような
修正案が出たのでございます。先ず
修正案の動議の討論に入りまして、
採決の結果、少数を以て右
修正案は本
委員会において否決せられたのでございます。
次いで
衆議院送付の本
法案全部を
採決いたしましたところ、多数を以て可決いたされました。かくて公共企業体労働関係
法案は
衆議院送付通り本
委員会において議決せられたのでございます。以上を以て御
報告といたします。(
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