○
中平常太郎君 丁度
総理大臣がお見えになりませんから、
総理大臣に対する
質問は見えまして後にいたしまして、時間の空白を置かない意味におきまして、他の閣僚の分を御
質問いたします。
泉山安本長官は
生産増強のために
企業の
合理化を強調していられますが、
企業の
合理化のために必然起きて乗るところの
失業者の
援護方策については何ら四日の
施策の
方針に言及されなかうたことについては、昨日
平野議員からも指摘された
通りであります。
企業の
合理化は
生産の
基盤であると言うておられますが、その反対に
労働者の
労働意欲は
生産の
基盤であると言
つたらどうなさる。否定されますか。
企業の
合理化は、
企業に利潤を得せしめるために
労働力ある
人間をその
企業から掃き出すことを意味するものであります。
政治の
根本は民生の安定にあります。その民生安定を招來せんために今、目の前の何百万という
人間を飢餓に追込むという
考え方でありまするか。高
能率、高
賃金ということは、誠に私なども年祭の主張でありまして、賛成いたします。が、その
方法を誤られておりはしないかということであります。例えば百人の工員が八〇%の
能率しか上げない場合において、二十人を
切つて能率の八〇%を出すというのであるなれば、その八十人は又六〇%の
能率しか上がらない。だから百人のときの八〇%の
能率に
合理化するなれば、八〇%に下
つた八十人を高
能率、高
賃金に切り換えなければ、元の八〇%の
生産は上がらない。だからその筆法から言いますというと、百人のうち二十人切らずして、百人のときの高
能率、高
賃金でやるなれば、従來の八〇%の
生産能力が一〇〇%になるという理論が成り立つのであります。而もそれは
総掛り費がそれだけ減少いたしまして、二十名を整理して得られる
利益よりも百人にな
つて一〇〇%の
能率の方が
利益率は多大なものがあるのであります。かかる方式こそ
生産増強、
完全雇傭と正比例するところの
生産増強ではありませんか。現在においてさえ、
失業者は潜在と顯在と
合計概略六百万人と称せられております上に、ただ一方的な
企業利潤増加のために多数の
失業者を掃き出すという以上は、
不安状態に置かれておる
國民大衆に何故
十分安心の行くような説明をなされなか
つたか。ここに一つお尋ねする。一、
企業合理化と
労働者の
配置轉換は同時に行わるべきものであると思うが、御
所見如何。
次に
泉山安本長官にお尋ねすることもありますが後に残しまして、
國土計画問題について、
益谷建設大臣にお伺いする。
丁度差支があるそうでありまして、赤木君がおられますが、現在我が
國土は、他の
議員も申されました
通り、非常に荒廃しておる。
戰争中十年の間、森林は濫伐に濫伐、河州は土砂の堆積著しく、河床を浅めて、少し降り過ぎると直ちに洪水になり、田畑、道路、橋梁の破損は挙げて数うることができません。
政府は毎年相当の補修を行な
つており、又本
予算にも六十億を
計上してありまするけれども、その
工事請負事情、
人夫賃など、
マル公と闇との開きのあるために、到る所工事に支障が起きております。誠に進捗していない。そのうちに又々破損を招來しておるというようなことでありまして、
人間の弱さを天は笑
つておると思うのであります。又
戦災家屋は
引揚者増加という
特殊事情を加えまして、ますます逼迫告げて、現在四百万戸の不定に対しまして、ここ数年粗雑な建築の
破滅率或いは将來の
増加率などを計算に入れまするならば、今後十五ヶ年の
完成計画にいたしましても、約八十万戸毎年建築しなければ完成できないのであります。然るに現在のように二十万や三十万戸なれば
自然増加と
自然破滅補充の域を脱せない。四百万戸は依然として不足をすものであります。今にして十分な
予算を
計上し、本格的に
國土計画並びに
建築計画を樹立しなか
つたなれば、
國土といい、國内の思想といい、禍いは加速度的に加わ
つて参りまして、將來恐るべき
状態に相成ることは火を見るよりも明らかであります。而も
マ司令部から道路五ヶ年計画の勧告も参
つておりまして、これも差迫
つた問題とな
つているのであります。幸い
日本に
ば労働力は余りあります。森林も四十億石あると言うております。年々七千万石の輪伐は可能であります。
政府はこの際本問題を進捗せしめるために特別なる機関を作り、労務の
大量配置轉換を行い、費用は
建設公債など
有産階級に割当てる
方法を考慮し、大幅の
予算を以て直ちに
実行に移す
考えはないか、この点をお伺いする。
第四、
インフレ対策問題、
政府は
インフレを抑制するために、経済三原則によりまして先ず
賃金統制を強化してこれを抑え、一方
企業の
採算性を唱えて
生産増強を図らんとする
方針りようであるが、それではその日の
生活に喘ぐ
勤労大衆の犠牲においてのみこの
インフレを克服せんとするのであるか。何故に
予算処置か
通貨処置かの
方法によ
つてインフレの
防渇をしないか、それでは
有産階級に障るのであろうかどうか。生きた
人間の
生活を押えて
インフレの
防渇をやるのでは、大体
労働者を何と心得ておられるのであります。
労働者こそ
生産性の
基盤ではありませんか。
労働者に圧迫を加え、先ず沈黙せしめつつ
企業の採算を期せんとするが、それで
労働者の
生産意欲が出ると思うのでありますか。一方
経済再建に当りまして外資の
援助は絶対に必要であるが、これを確保するためには先ず自主的の対策を樹立して計画的にこれを進め、
労働者の
生産意欲を根幹として、労資相俟
つて組織的に積極的な
方策を示すべきでありましよう。
経済再建の
担当者が
勤労大衆である以上、
本格的再建の
基礎條件たる
インフレの克服は
労働者、農民、
一般市民、
中小企業者など
大衆の手によ
つて遂行せらるべきは申すまでもありません。その
生産意欲を阻害して先ず
企業の
採算性を主とするなれば、決して今後の
労働攻勢を防ぎ得るものではありません。ついては三つの
質問について
泉山安本長官に御明答願います。
政府は、
労働賃金を抑制して
勤労者の
生産意欲が旺盛になると思惟せられるや、次に、
賃金対策は当然
労働力の再
生産を可能とする
賃金を以て
最低水準とすべきであると思うが、
政府の
所見は
如何。次に、
インフレの処理は
人間を出血せしめず
予算処置か
通貨処理によ
つて行うべきであると思うが、
政府の
所見如何。
次に厚生問題。
吉田総理は……林
厚生大臣おられますか。まだ見えていないのですか。(「
総理大臣も
厚生大臣もいやせんじやないか」「空氣に
質問した
つて駄目だよ」と呼ぶ者あり)それじや厚生問題は後にする。
引揚問題も後にする。
引揚問題は
外務大臣、やはり吉田が出なければいかん。
第三次
農地改革問題、
泉山安本長官は第三次
農地改革は行わないと言明されました。現在全図の
耕地は二百六十万町歩ありまして、うち約二百万町歩は整理されまして、あと六十万町歩くらいが今尚
封建制の残滓としてボス的に温存放置されているのであります。
民主主義を
根本とせられるなれば、何故
農村民主化のために働く農民に土地を與えよという
民主的原則を破られるのであるか。又第二次改革の進行に伴い、零細な
土地所有者のばらばらに散在せる
耕地の
交換分合は、その
生産能率から
言つて絶対に行わなければならないのでございます。又
日本人口増加の
現状に対し、必要な
耕地の絶対面積は増大していない。
日本は現在
耕地としては全面積の一六%を占めるに過ぎないのであります。未だ耕件可能の原野が廣く未利用のまま放置せられております。最近帰還せる数百万の青年は徒らに手を空しうして農閑期などは随分風紀も紊れておる
状態であります。
食糧増産のために
農村の
余剰労力を傾注し、
治山治水と睨み合せまして画期的なる開墾を実施すべきであります。
農林大臣にお伺いする。第三次
農地改革は
農村の
民主化を完遂せんとするものであるが、これを行わぬことは
封建制度を温存して置くということになるが、
農村民主化の精神に反しはしないか。
次に
中小企業振興問題、商工大臣見えているな。従來の
中小企業は大
財閥の
下請工場であ
つたが、この
財閥がなく
なつた以上、
中小企業は
貿易する
方法さえ十分に知得せず、
資金、資材に窮しまして、今や破滅に瀕しておるのであります。これに対しまして、
政府は先に
中小企業廳を設置し、
苦情聞取りに当
つておるが、
日本將來の
貿易は全く
中小商工業に課せられている
現状から、
如何にしてもこれが
発達助成を図らなければなりません。
政府の説明によると約二十五億円の
融資の枠を取
つておられるのでありまして、一應その
重要性を認識せられておりまするのであるが、
貿易の中枢を担当する立場にある
中小企業に対しては少くとも当分五十億程度の
融資を必要とするように
考えるのであります。これまで大
財閥に何十億と苦もなく
融資せられたことから
考えるなれば、全國のために、全民衆のために、五十億ぐらいは当然と思われるのでありまするが、
政府の
所見は
如何。又
日本労働力が余
つておる手工業は世界一の好評を博しております。然らば
貿易廳の斡旋で許されたる可能の範囲の
外國から商品のサンプルを蒐集いたしまして、各縣持廻り
展示会その他などを開き、
業者にその適品を選択せしめ、
資金、資材の
援助を矢幅に與え、
業者の
生産意欲を高あ、
貿易の進展に資せし
むる方策を行うお
考えがあるかどうか。
次に
補正予算と徴税問題であります。
政府はこの度の
補正予算五百八十六億円のうち三百七十億円は
所得税の
自然増収として
計上しておられるが、かかる
予算の
計上は、他の
議員も申された
通り、いわゆる
水増し予算であると思われる。その証拠には、十一月二十二日には六百二十五億円の時にさえ
自然増収を二百二十億と
計上なさ
つてお
つたのに、五百八十六億に圧縮されたなれば、
所得税自然増収も二百億くらいになさるべきでありましよう。それに何ぞや三百七十億に増額されておるのは
水増しと言わずして何ぞや、又徴税ができるとすれば、現在でさえ苛斂誅求で、正直な
納税者は遂に廃業し又は轉業しておる。一方
闇成金は自家用の自動車で風を切
つて飛ばしておる。
大衆の
生活困窮は空吹く風と世間を跋扈しておる。それは
戰争成金であり
敗戰様々の徒輩であります。
政府はかかる
現状を直視しておられるか。二つの
質問を発する。善良なる
納税者の衷情を酌んで、
所得税の
更正決定に対する
審査請求については実情に即して是正を行い、追徴税についても正直なる者には相当考慮を拂う
考えがあるかどうか。一、一方
新興階級の
増加財産の
臨時調査を行い、
不当収入を摘発して以て課税の公平を維持する
考えはないか。
林さん見えたな。それでは厚生問題をやりましよう。
吉田総理はその
施政方針演説の中に、厚生問題については引揚者問題以外については殆んど触れられていなか
つたのであります。
凡そ政治の要諦は民生安定にあります。これを第一義とすべきでありましよう。然るに悩み拔いておる民生に何を與えんとなさるか。ただ
生鮮食料品や
料飲店の開業を調い、これも今にも
実行するがごとく宣博して
業者を喜ばせ、
國民に飲めや歌えの
廃頽的空氣を作り、人氣を煽り、(「そんなことはないですよ」と呼ぶ者あり)ボスと富者と階級に媚を賣
つておるような政策を大言壯語しておる。
勤労者は低
賃金に甘んじて、インテリは子供に着物一枚さえ買い得ない悲惨な
生活、いわゆる
日本再建のために
耐乏生活をしておる中に、所構わず絃歌湧く酒池肉林の巷を作り、困窮せる
大衆に指をくわえて見せし
むるような方策を喜んで採らんとするのでありますか。さなきだに悪化の一途を辿
つておる
青少年の風紀は尚更に悪化を助長し、滔々として堰を
切つた水のごとく止まる所を知らんでありましよう。
政府は將來を託すべき
青少年の
悪化防止には
如何なる
方策を持
つておられますか、お伺いする。今度の
補正予昇に
刑務所の
予算の追加六億五千万円
計上なす
つておられるが、悪化せる
青少年は手取り早く一方から
刑務所にぶち込むお
考えなりや。
次に
國民の医療問題についてでありますが、
英國やアルゼンチンのごときは
医療設備が完備して
國民のために
全額無料であります。然るに我が國においては、一度病に罹らんか、
中産階級と雖も一朝にして轉落する者が多い。この
國民の
家庭経済から
医療費だけでも無料にするなれば
如何に喜ばれることでありましよう。この問題に対して
如何なる
方策をお持ちに
なつでおられるか、お伺いする。
國立病院、
國立療養所の建設も少く、又
戰争以來、
腐朽荒廃も次第に目立つで参りました。
待遇費か少額のために
癩療養所とか
肺療養所という所は待遇問題で医者も
看護婦も大欠乏を告げておるが、これに対してどうなさるお
考えか。又昨年
実行期に入
つた児童福祉法は先ず全國に施設を建設しなければならない。本
補正予算に一億五十万円
計上してあるが、これは
必要量六十億の五%にも達しない。併しこれも
林大臣のお骨折りで
補正に
計上せられたものと思うが、二十四年度に十分
計上せられるお
考えがあるかどうか。又
生活保護法も物價にスライドいたしまして
補正に十五億五千五百万円
計上をいたしておりますけれども、これでは無論不足であります。二十四年度に増額をせられますお
考えがあるかどうか、これもお伺いする。
厚生省は、とかく
從來伴食大臣などと称せられまして、閣内でも割合軽視される傾向がありましたが、民生安定ということが
政治の
根本であるという以上、十分な
予算を
計上せられなければならないのであります。
英國などでも非常に大きな
予算で活動している。
文文化の進むに
從つて厚生の
予算は大きくなるのであります。
英國などは
社会保障制度のごとき実に完全で、一家に
如何なる出來事ができましても、盡く
政府の施設によ
つて保障されております。いわゆる
生活が安定いたしております。
日本にも数種の
社会保障制度もありますが、皆区々まちまちで統一を欠いておる上に、到底あらゆる
方面に
社会保障ができていないのであります。この度
マ司令部が
日本のために
米國よりその筋の権威ある五名の博士を招かれまして、調査の結果が廣汎なる
勧告書とな
つて政府に渡されております。
政府におきましてもこれを動機といたしまして
審議会設置法案を提出されております。又
議員側といたしましても、強力なる
調査機関を設けることにつき、すでに
厚生委員会を通過し、
決議案を上程することに相成
つておるのであります。これは
社会立法といたしまして最高の民生安定の理念を表現するものでありまして、
相互扶助の原理を織り込み、是非とも実現しなければなりませんが、
政府は審議会を作りお座なりで日を暮し、
実行を遅延するのではないか、この点お伺いする。
引揚問題は、昨日矢野委員が相当述べられたということを聞いておりますから、この点は省いて、ただ
引揚問題が
如何に深刻であり、すでに十二月は結氷期のためにソ連の方からは配船の通知が來ていない。して見れば又明年四月まではもはや帰還はないと思われるのでありますが、四十万になんなんとする未帰還者がソ連において又々三十度、四十度の零下の寒さで強制労働に服さなければならない、誠に断腸の思いがあるのであります。大体敗者は正義を主張することができないか。ソ連の未帰還者問題はそれ自体が正義と解されるか。これをお伺いする。世界の輿論に憩え、世界赤十字連盟、國連、或いはユネスコ、或いは世界婦人各國体等に愬え、その輿論と道義力によ
つて側面的に帰還を促進する
考えがないかどうか。吉田
総理大臣の
演説……お出でになりませんから進行してお
つて呉れといつことでありまして、後から答弁があるそうですから申上げます。吉田
総理大臣の施政
方針は誠に抽象的で平凡、政策の面よりも組閣当時の事情やら解散問題に重点を置かれて、施政
方針に対しては誠に簡單である。この困難なる
日本再建の中に
耐乏生活をしておるところの
國民に固い覚悟と希望とを持たしめる何らの施政もなか
つたのであります。又現
政府の性格が
如何に保守的であるかは世界の現代流れている思潮の動向に何ら触れていられないとさえ感じさせられたのであります。ただ
日本古來の封建思想の惰性と、無反省にして旧式的な表面口先は別として、精神の上において嚴粛なる
民主主義に付に徹することを喜ばざる旧來の保守派を満足せしめんとする一部の
國民、それらの方から起
つて來る人氣を温床とせられておるようであります。この敗戰
日本の困難なる再建途上におきまして、
國民に一種の弛みを見せるがごとき甘
つたるい放漫政策、施政
方針に高度の眞実性と、
國民に反省を求め自粛自戒せしめる高き指導性の見えなか
つたことも亦当然と思われるのであります。組閣当時の世界の論調は、他の
議員からも述べられました
通り、
日本政治の逆轉と断じ、後退と評し、かかる情勢では
日本の
民主化はここ百年もかかるのであろうとか、実に講和会議を一日千秋の思いで期待している心ある
國民に暗い悲観的な
考えを持たしめたことは、争うべからざることであるりであります。
そこで第一に思想問題についてお伺いいたします。我が國はポツダム宣言り受諾によりまして平和的
民主主義に切替えなければ
根本的な思想の樹て直しはなし得ないのでありますが、法の上では極めて簡單でありますが、事実
國民の心の中に
民主主義を徹底せしめることについては、
政府は
如何なる
方策よりも政策よりも、第一番にこれを取り上げ、みずからその範を示し、以て
國民に臨まなければなりません。然るに吉田首相は、ただこの点を言葉の綾に又他の言葉の枕言葉ぐらいに止められまして、何ら、改ま
つた嚴粛な氣持で一つの重要事項として
民主主義の徹底の極めて重要なるゆえんを議会を通じて
國民に呼びかけられなか
つたのであります。これは吉田首相に望むのか或はこちらが無理であるかも知れませんが、苛くも一國の首班として
國民の思指を指導せられる立場として、誠に遺憾であ
つたと思うのであります。
民主主義は申上げるまでもなく、個人が個としての尊嚴の中に社会的共存の理念を理解し、
人間の生存権を尊び、個人の権利、全世界にも替えられない一個の生命價値、かかるものの集團が高度の社会思想となり、
民主主義はここから生れて來るものであることを十分に理解しなければ、民主
政治の
根本理念とはならないのであることは、賢明なる首相の十分御承知のことでありましよう。然るにこの理念より生ずる
民主主義を、厳粛に
日本再建の眞諦だとして
國民に呼びかけられなか
つたのであります。
民主主義は
大衆を閑却しておりません。
有産階級は
國民の五%もないのであります。九五%は
勤労大衆でありますが、資本家の喜ぶような
政治を行い、以て
大衆を第二義的になされるお
考えのごとくに感ぜられるのであります。
勤労者の一家のことを御承知でありましようか。恐らく
総理には一生御幸福に上流の御
生活をなさ
つておられまするから、吉田首相には到底
勤労者の家計のことはお行りになりますまい。
勤労者は一生かか
つても貧乏は食つついておるのであります。闇をやるか不正をしなくては容易に金持にはなれない。親子数代生れ替り死に替
つても貧乏は付き纏
つておるのであります。額に汗して終日働き、
如何に職場を変えようと思うてもその暇さえない、疲れ切
つた身体で狭い暗い一間に帰
つて雑炊を啜る気持を、一日でも首相がお味わいに
なつたなれば、一遍に画期的な政策の変更があるであろうと思うのであります。さなきだに終戰のどさくさの中に六百万の帰還者を迎え、戰災家屋と併せ四百万戸の住宅は不足し、思想は動揺し、節制を必要とする
民主主義の育成途上において、却りて刹那主義、利己主義に陷りつつあることを痛感するものであります。首相においては
民主主義を
國民に徹底せしめる
方策についてお伺いいたします。
又ここに改めて、首相がお見えになりましたから首相にお伺いすることがある。本日附の夕刊東京日日新聞の一面に、吉田氏百万円貫うという二号活字の見出しで、加藤女史が、繊維事件のうち他にも梅村清氏から献金を受けておる者があるとし、吉田首相も同氏から百万円を受取
つた事実があり、その確証を握
つておるということを記者團に発表しておるということであります。誠に青天の霹靂と申しましようか、私は、少数党内閣とな
つておる吉田首相に、こういう問題が今日出たことは誠にお氣の毒で、(笑声)少くともこういう問題は今大事な場合に出なか
つたらよか
つたと思うのでありますが、(「うまいぞ」と呼ぶ者あり)この綱紀粛正は現内閣におかれても重要政策の一つでありまするから、こういうことが発表せられましたることは誠に遺憾に堪えんのであります。これにつきまして首相の答弁を、弁明をお願いいたします。終り。(「お手柔らかに願います」と呼ぶ者あり)(
拍手)
〔
國務大臣吉田茂君
登壇、
拍手〕