○
中原委員 私は
労働者農民党を代表いたしまして、ただいま
上程に相な
つておりまする
公共企業体労働関係法案に
反対をいたすものであります。
申すまでもなくわが
日本は、長い戰火からようやくのがれ出まして、
民主主義國家の建設に向
つて非常な努力を拂うて今日に至
つております。しかもその
民主主義日本建設の
最初にして、しかも最大なる要件といたしましては、
労働階級の
民主的成長、
從つてまた
労働組合の
民主的確立強化が養成されている次第であります。しかるに今回さきの第三回
國会におきましては、その
民主制を阻害するはなはだしき
内容を織り込みました
國家公務員法を、さらに改正いたしまして、いわば
國家公務員の
独自性をはなはだしく圧迫いたすの結果とな
つたのであります。さらにそれに関連いたしまして
日本國有鉄道法案、
日本專賣公社法案の通過を見、さらにそれに関連し、かつ続きまするものといたしまして、ここに本
法案が
提出に相
なつたわけでございまするが、さて私
どもはこの
関係法案が、はたしてわが
日本の現在目標といたして進みつつあるこの過程を、きわめて正常に成長せしめるために役立つものであるかどうか。このことについていささか
内容を
檢討してみなければならないと考えるのであります。
まず
最初に、この
法律案に一貫する
一つの
考え方とも申しましようか、
労働組合の
強化を阻害し、
労働組合をしばしば
混乱に導き入れて、
労働組合の独自な、しかも
統一性にある活動をはばむという性格を持
つておることを、見のがすわけに参らぬのであります。そのまず第一番に考えられる点は、すなわち
クローズド・シヨップ制を否定いたしまして、いわゆる
オープン・シヨップでの形をとらしめようと、あえていたしておる点であります。しかも第四條によりますならば、わざわざ入念にも
組合を
結成し、もしくは
結成せず、
組合に加入し、もしくは加入しないことができると
規定いたしまして、
労働組合結成に対する
労働者の本能を、そとにそらしめようにする
一つの
意図がうかがわれることは、はなはだ遺憾と考えるものであります。このような状態をも
つてして、はたしてわが
日本の
労働組合が正常に育成されて行くであろうかどうか。この点はなはだ遺憾ながら、われわれの最も氣づかいとする一点であります。從いましてこのような
考え方は、
敗戰後ただちに立法いたされました
労働組合法の
精神を否定するものでありまして、
労働組合法のそれによりますると、
労働組合法は
團結権の保障及び
團体交渉権の
保護、
助成によ
つて労働者の地位の向上をはかる。このように明記いたしておりまするが、この
労働組合の
精神をま
つたく裏返と、否定いたしまして、むしろ
労働組合の
保護、
助成をサボタージュするというよりも、むしろこれを積極的に打ちこわそうとするの
傾向を示しておることを、私
どもは見のがすわけに参らぬのであります。同時にまたそのような形をも
つて進みまするときに、第二の
労働組合の
結成が促進されて來る。第二
組合の
結成促進ということは、同時に
労働組合の戰線に
一つの対立、紛爭を激発せしめるような
條件がそこに伴
つて参るわけでありまして、このような
観点から考えましても、この
法案に盛られておりまする
内容は、はたして
労働組合の健全なる本來あるべき
組合の発展、
助成のために盡さんとするものであるかどうかということについては、遺憾ながらそうでないということを、われわれは結論しなければならないことを遺憾に思うのであります。
さらにその次に指摘しなければならない問題は、しかも本
法律案の中の最も重要なる部分として考えられる点は、
労働組合に対してその
行動を、
組合の自由なる
意思によ
つて、
組合の
責任においてこれを
行使することを拒否するばかりか、
労働者のすべてが
——最後の
労働者に保障された
一つの
実力行使としての
爭議行為を
禁止しておるという一点であります。この
爭議行為
禁止の
條章は、特にわれわれが強く心を突かれる点でありまして、
労働階級が何よりもこの本
律案に対して憤りを感じた点は、この
爭議行為
禁止の
法律案の
精神は、今われわれが思いを過去に立ら返らしめてみまするならば、往年、すなわちわが
日本の
帝國主義者どもが、彼らの野望を満たさんために
帝國主義戰爭強行へのいろいろな用意を進めたことでありまして、その当時
日本の
支配階級は、
労働階級に対しましてあらゆる方法を通して、その
行動の自由を拘束することにこれ努めたのでありまして、しかもその
労働階級を初めとする全
勤労大衆に対しまして、その
行動の自由、あるいは言論の自由、あるいは出版、集会等々の自由を妨げるために、治安維持法の制定を遂に見るに至りました。しかも治安維持法の制定は、
労働階級を初めとする全
勤労階級の一切の
行動の自由を
一つのわくの中にはめ込み、
労働階級を初めとする全
勤労階級はそのために政治的にも、あるいはまた思想的にも、あるいはまたその他の万般の方途において一切の
行動の自由が阻止され、遂に言わば奴隷の状態の中に追い込まれて参
つたのでありまして、さらにこの治安維持法が数回にわたりまして改悪を見たのでありましたが、その後そのような中にもかかわらず、
労働運動は必然の要請にむちうたれまして、
労働組合を
強化するに至
つたのでありましたが、しかしその
労働運動の
強化に対して、時のわが
日本の
支配階級はこれを禁圧するために、あらゆる方途を講じまして、遂に満洲事変の勃発いたしました昭和六年でありましたか、
労働爭議調停法なるものをつく
つたのでありまして、この調停法は名は調停法でありますが、実は
労働組合運動の禁圧法であ
つたのでありました。このようにいたしまして資本の構成力を
強化するために、浮身をやつしたのでありましたが、その結果は遂にわが
日本の全域から、民主性を決定的に剥奪いたしまして、民主性剥奪の結果として、
日本の
國民多数者は遂にみずからの
意見を
行使することもせず、ただ易々諾諾としてこれ命ずるままに從わなければならないというような状態に置かれたことでありまして、このような状態を経驗して参りました
日本の
國民といたしましては、今日
民主主義日本の建設を言われ、ま
つたく往年のすべての不自由なる状態からのがれ出でようといたしております今日、そして経驗を経驗しつつある今日、またぞろここに、必ずしもそれと
同一の方向をとる、とらないは別といたしまして、それに類似する、あるいはそれを思い起さしめるような
法律案の
提出されることに対しえは、少くとも國を眞実に愛し、わが
日本の民族を憂うるものにとりましては、いささき思いなきを禁ずることができないのでありまして、しかもこの第十
七條は、このような
爭議行為
禁止の目的をも
つてつくられておりますが、
爭議行為そのものは、いまさら繰返して申し上げるまでもなく、憲法の改正に伴いまして、わが
日本の
國民は基本的人権の享有を妨げられないことを
規定され、しかもその基本的人権の不可侵性を
規定されているのであります。また同じく十二條は、この憲法が
國民に保障する自由及び
権利は、
國民の不断の努力によ
つてこれを保持しなければならないと
規定いたしているのであります。從いましてわれわれは、わが
日本の
國民の一人として、また
労働者として、その與えられた
労働者の当然の利益を、これらの
法律案の出るたびごとに
一つ一つこわされて行くという状態は、断じてこれを黙過するわけにはいかないのであります。われわれは憲法の命ずるその点の重要性のみにかかわらず、本來わが
日本の
労働階級はこの重大轉換期に際しまして、大きな民族的な使命を持
つているわけでありまして、その民族的な使命を達成いたしますためには、わが
日本の
労働階級が眞実に侵されることなく、民主性を確保することでなければならぬと考えているのであります。しかるにかかわらず、この
爭議行為
禁止の
法案は、これらの民主性を阻害すること最もはなはだしく、また
労働階級はややもすればあやまちを犯し、あえて過激を
行使するがごとき印象を與えようとし、しかもこの
法律案の
上程された根拠の重要な部分として、
労働運動の行過ぎであるがごとく、吹聽いたしている人
たちもあるようでありますが、私
どもははなはだその点を遺憾に考えるのでありまして、わが
日本の
労働階級は行き過ぎているために、このような
法律案を
上程されなければならぬような、無
責任なる
爭議行為をいたしたためしはないのでありまして、これは前年の二・一ゼネストの態勢以來、しばしば相当大きくゼネストの形態をとらなければならないような状態に、押しやられたのでありましたが、しかしながらわが
日本の
労働階級が置かれている客観的な諸
事情に対する、きわめて愼重な考慮のもとに、いささかも誹謗されなければならないような行き過ぎ行為を、いたしたためしはなか
つたのであります。このようにいたしまして、わが
日本の
労働組合運動は、決して一部の人
たちが誹謗いたすような、
責任なき
行動をいたしたためしはなか
つたのであります。もとよりみずから願みて批判すべき必要のある点については、他から指摘されることをまたず、批判すべきを批判いたして参りました。しかもこの
爭議行為なるものは、決して軽々にこれを行うことをなし得るものでないのでありまして、
爭議行為にストライキ戰術をとらなければならないような
條件というものは、ストライキの方策に出ることなしには、
労働階級の最低限の権益を守ることのできない場合、やむを得ずその挙に出るのでありまして、決して一部の煽動によ
つて、しかも
組合外の者の煽動によ
つて、そのような挙に出るものではないのでありまして、これは少くとも、
労働組合運動をまじめに凝視する者であるならば理解される点であります。しかもわれわれは、なるほど
戰後三箇年の
組合運動の経驗でありますが、過去においてすでに長い経驗を持
つて参りましたわが
日本の
労働組合運動は、その点においてはいささかも第三者の杞憂に値するようなことはいたさないのでありまして維この点については私
ども確信をも
つて、
労働組合運動の自主性と
責任性を強張することができるのであります。いわんや、それのみならずすでに憲法の第二十
八條において
團結するの
権利、團体行渉するの
権利、團体
行動するの
権利を確認している。
從つてこれらはすでに正当に享有いたしました
労働階級の、いわば基本的人権の重要なる
内容の
一つでありますが、この問題をただ一片の
法律案をも
つて否定し去らんとするがごときは、遺憾至極の事柄であると考えるのであります。
さらに
労働組合に対していわゆる官僚の監督権を確立せんとする部分が見えることもまた遺憾とするのであります。それは特に
組合会計に対しまして、外部の監督者を置くことを
規定している点であります。これは言うまでもなく
組合の自主性を侵犯するものであり、外部的干渉を
強化するものでありまして、そのようなことを通じて
組合に対する支配権を、官僚の手に確保せんとする
意図がうかがわれることは、私
どもは了承できないのであります。しかもこの
組合会計に対する
一つの監査の
規定の問題は、これをもし
組合が用いざる場合においては、この
法律によ
つて定める一切の
権利を奪う。こういう
一つの罰則的な
規定が附加されているのでありまして、これらのごときは特に行き過ぎであ
つて、同時に本
法律案が
一つの取締法としての性格を持
つていることも、また私
どもは指摘せねばならぬと考えるのであります。
さらに專從職員に対して
一つの
制限を加えようとしている点であります。本來專從職員の問題は、当然
組合の自主性にまかさるべきものでありますが、本
法律案はその自主性を侵すと同時に、わガ
日本の
労働組合運動が、
敗戰後今日までに必然的な
條件のもとに獲得いたしました、いわゆる專從員職の給與問題を、ここにまた否定しようとしている点は、見のがすことができないのであります。なるほど
労働組合の專從職員が
経営側から給與を得るということは、本來ではないことを私も否定するものではない。しかしながらここにはわが
日本の
組合運動の実情が、当然かくあらしむべき必然を持
つてお
つたわけでもありまして、そのことはすなわち、わが
日本の
労働事情の特殊性といたしまして、はなはだ低い賃金が強要されておる。すなわち低賃金が強要されておるということであります。しかも今日の段階は特にその低賃金に対しまして、高物價の政策が一面強行されておるということも、また見のがしてはならない。從いましてこのような特別な
條件のもとにおいては、当然專從職員の身分は保障されなければならないし、しかも一面最低賃金制の確立を見ておらないわが
日本といたしましては、なおさらのこと、このような特殊
事情を否定することは、同時に
組合運動を破壊するものに相なるということを、私
どもは指摘しなければならぬのであります。このような
事情のもとに、当然獲得いたしました既得権が簡單に否定されることについて、私
どもは
賛成することができないのであります。
さらに
團体交渉の
規定でありますが、この
團体交渉の
規定を見れば、その
團体交渉の範囲を一方的に、しかも決定してかかるということの一点であります。これは
労働者側の意向に何らのしんしやくを與えることなく、
労働者側との、あるいは
労働者代表側との協議をすることなく、ただ一方的にこれを決定して、しかも法の上に明記したということは、
労働組合の権威を傷つける最もはなはだしきものでありまして、この点はまた
労働者の意向を顧みざる、いわば
一つの官僚独裁の
傾向を、最も露骨に証明しておるものであると考えるのであります。
さらに交渉
委員の
制度が設けられておりますが、この交渉
委員制度はこのように法定すべきものではないと考える。少くとも
企業側と
労働側との交渉をいたします場合には、
労働組合の自主的な、そして自由なる
意思によ
つて、当然あるべき交渉
委員が選考されて、その交渉
委員が
組合員の利益を全幅的に代表して、そのことに当ることが適当なのであります。從いましてこの選ばれた交渉
委員は、あくまでもその排他性を強く持たなければならないわけであります。しかるにもかかわらず、本
法律案に
規定された交渉
委員は、ま
つたく
労働者の
意思と有機的につなが
つておるということを、われわれは立証することができないのでありまして、このような交渉
委員は当然またその交渉の万般にあたりまして、必ずしも
組合員の自由なる
意思を代表するのでなく、交渉
委員の独断によ
つてそのことが行われるおそれがあるのであります。しかもその
委員の選考の方法は、ひとり交渉
委員のみならず、苦情処理共同調整
会議代表者、あるいは調停
委員、仲裁
委員等々の選考の中に一貫いたします
一つの矛盾は、本
法律案の最も大きな矛盾の
一つをそのまま現わしておるわけであります。それはすなわち
組合に加入せざることもまたよしという
一つの
組合非加盟の、いわゆる非
組合員の地位を高く評價して、取扱
つておるという一点に関連するのでありますが、そういうことに関連いたしまして、選ばれたこれらの各種の
委員は、必ずしも
労働組合員としての
組合員的自覚、從
つて労働者的自覚に徹しておらない場合がしばしば予想されるのであります。むしろ
労働組合に加盟せざることをも
つて、かえ
つてよしとするかのごとき、言いかえますならば、
労働組合運動に対して一種の反逆性を持つような職員が、相当この中に
意見を反映することのできるような手続にな
つておることを、私
どもは指摘しなければならない。
從つてそのような
関係において選ばれました交渉
委員初め各種の
委員は、当然
労働組合の、そしてまた
労働者の本來の目的を達成せしめるために、十全なる活動をなし得るものと考えられないことも、またわれわれはあわせて指摘しなければならぬのであります。このようなことは、選ばれた交渉
委員初め各種
委員が、
経営者側にしばしば有利な役割を果すものとなるおそれがあるのでありまして、しかもこの仲裁
委員等の罷免権等の場合におきましても、総理大臣にその罷免権が委嘱されておるというがごときは、
一つの官僚独裁の
傾向を一層
強化促進することに、役立たしめるように相な
つておる点、すなわちこの
法律案に盛られておりまする
一つの特徴ともいうべき、
労働組合運動に対する官僚の容喙権、官僚の支配権、それを
強化するようにできていることを、私
どもははなはだ遺憾とするのであります。
さらに仲裁
委員会が
経営側のいわゆる第五條違反の行為なりと決定いたしました場合に、その行為を取消させるというだけのことが、
規定されているのでありますが、この場合は第五條違反によ
つて労働者に被害を與えました
経営側といたしましては、当然その被害賠償の
責任が
規定されなければならないし、同時にまたその
企業代表者、
責任者、あるいはその第五條違反の行為を行為いたしました
責任者は、当然その
責任を負わなければならないと考えるにかかわらず、これに対しましては何らかの
責任追究の
規定が設けられておらない。すなわち、
労働者に対しましては容赦なき制裁の
規定があるにかかわらず、
企業側に対しましては制裁、
責任追究の
規定がないということは、はなはだ片手落ちであるということを申し上げなければならぬのであります。
最後にこれらの
内容を
檢討して参りまするとき、私
どもはこの
法律案がもし本
國会を通過いたしまして、立法化せられますならば、まずこの
関係労働者は言うまでもなくこの
法律に縛られまして、
労働組合運動の当然あるべき自主的な、
責任ある、そうして民主的なる運営が、その面から妨げられて行くということを、指摘しなければならぬのでありまして、このようななされ方は、すなわち
労働組合の
育成助長を念願すると常に口にいたている
政府として、はたしてこのような
法律案の成立をも
つて、
労働組合の正常なる成長を約束することができると断言することができるかどうか。このことは、非常に
立案者側の、そうしてまたこれを決定しようとする
國会の、わが
日本の民主化に対する大きな
責任であると私は考えるのであります。ここにわガ
日本の
労働組合運動の特性といたしまして、
敗戰後ようやくあの横たわる残骸を乘り越えて、廃墟の中からはい上
つて参りました
労働組合が、ここに三年の経驗をして参りました。
從つてこの三箇年の経驗というものははなはだ尊い経驗でありましたが、しかしながら、なおかつ、いまだ成熟せざる点も多く、いまだ到達し得ざる部分も多いのでございまして、
從つてそれらのいまだ及ばざる部分をみごとに獲得いたしますためには、きわめて自由にして秩序ある
條件のうちに、
労働階級が不断の努力を傾けて、みずからを成育しなければならない
事情に置かれておるのであります。もとよりそのことは、あくまで労の自主的にあるべきことが前提でなければならぬのでありますが、ことに
日本の民主化の徹底が要請されておるこの段階におきましては、すなわちこの歴史的な課題といたしまして、
日本の民主化を徹底せしめるなければならない段階におきましては、
労働組合運動の発展
強化ということはきわめて大切なる要件であると考えるのであります。いわんやこの
日本の
民主主義的な
傾向を阻害するすべての障害、これを除去すべしと命じましてポツダム宣言の忠実なる履行のために、われわれはあくまで
労働組合が何ら制約されることなく、しかもすくすくと伸びる諸
條件が確保されなければならないし、またそのことによ
つてのみ初めて自由と平和を愛好し希求するものの本來の責務を、全うすることができるものであると考えるのであります。このような見地によ
つて考えますときに、この
法律案はまさしくわが
日本の歴史の発展を阻害して、世界の恒久平和に貢献せんとするわが
日本の歴史的過程を、逆行するものであると申さねばならぬのであります。しかもそればかりではない、このような大切な時期にあたりまして、歴代の内閣がいわゆる反
労働者的な政策を行い、全
日本の大衆が要請しております、インフレーシヨンに対し、そのインフレーシヨンの処理解決に努めることなくか、え
つて逆にそのインフレーシヨンを
助長し、これを一方的に強行せんとするの施策に終始いたしております場合、
労働階級の
生活はまさに飢餓の線下に追い込まれざるを得ない
事情に置かれておるのであります。このようにいたしまして飢餓線下に追い込まれておる
労働階級が先頭に立
つて、
日本の経済再建の主役を受け持たなければならぬのであります。このような状態のもとに、はたして
日本の
労働階級が
日本経済再建の主役を担当して、みごとに働き得るものであるかどうか。
労働階級はその
労働力を回復いたしまして、すなわち
労働再開に用意するために必要なすべての要件を、確保せしめなければならないのであります。しかるにその必要なる
條件を確保するための
生活権の確立、このことはいささかも保障されないばかりか、きわめて危險なる線に脅かされておるという
現状にあるのであります。しかも今日の
現状は、先の内閣もそうであ
つたが、吉田内閣もまた低賃金政策を行い、高物價政策に終始して、そしてまさにやせ馬にむちうつがごとき態度を示しておるのであります。われわれはこのような
事情のもとにおいて、
労働階級がほんとうに歴史的なその正しい使命を達成することができるかどうか。このことをはなはだ氣づかうのでありまして、このような必要の要請にこたえるためには、かくのごとき
法律案の制定を見ることではなくて、むしろ逆に
労働組合運動をますます正しく育成するように、働きかけることのできる
條件を附與しなければならないと、主張いたすものであります。從いまして今日の場合としては、われわれはいわゆるすでに制定されております
労働三法の適正なる運営をも
つて、かくのごとき面もまた調整さる得ると信ずるのでありまして、今さらこのような、いわば正常な線を歪曲したこの
法律案の通過を、あくまではばまなければならないと考えるものでありますが、このような意味におきまして、私
どもはこれらの
内容を持
つている本
法律案に対しまして、
労働者農民党を代表して、かつ
日本の
労働階級のすべての自由なる
意思を代表いたしまして、この
法律案に
反対いたす次第であります。