○南
公述人 全官労の事務局長をしております南でございます。所属は会計檢査院でございます。
この補正
予算は、この前の
國会で可決されました本
予算を合せますと、
一般、特別両会計の純計
歳入歳出ともに一兆六百億を上まわる厖大
予算であります。
政府は健全
財政をとなえながら、なお
インフレをあおるこの
予算を提出しておるのであります。大藏大臣の本会議並びに
予算委員会の説明によりますと、この補正
予算の重点は、
官公吏の新
賃金ベースの改訂と、
災害復旧費の支出のためになされたとしておりますが、もつぱら土建業者をうるほす終戰処理費の百二十億並びに廃兵器処理費の七億円、それに軍公利拂いを含む
國債費の二十四億円、なお刑務收容費の六億七千万円、
價格調整費の百十億円等計三百二十八億すなわちこの補正
予算の
総額の四割七分、約半分をこの便乘的な
予算にさいておるのであります。
從つて政府は
官公吏の
給與と
災害復旧費と言
つておりますが、その実はこの
予算の半分にしか当らないのであります。
なおこの
予算は、
予算として提出されるまでの経緯をわれわれは新聞紙上で見ただけでございますが、新聞紙上に見られただけでも、たとえば十月二十七日の新聞によりますと、石炭手当及び寒冷地手当十億円、なお超過勤務手当二十億、また生活保護費を四十億としておりますが、このたびは十八億に削
つております。なお電産、石炭の
労働者へ與えなければならない價格
補給金四十億を削り、また
災害復旧費が初め百十億と予定されてお
つたのに、これを六十億に削
つております。かように要するに待遇改善費とか人民の生活保護費とかい
つたような人民的な経費を抑えて、初めに予定されていた終戰処理費の三十億円をその四倍の百二十億円にふやしたということは、この内閣がいかにこの
予算を通じて反人民的な、そして反動的な
金融資本擁護の内閣であるという
性格を暴露しておるのであります。
なお
官公吏の待遇改善費については、あとで
給與法案と関連して述べるつもりでありますが、この
官公吏の
給與予算は、人件費節約額の七十七億七千万円というものが節約費として立てられております。しかも官吏のみの
所得税の増加四十七億円というものを
考えるときに、
政府は
官公吏の待遇改善費として二百六十億円を支出すると言
つておりますが、これはまつ赤なうそであ
つて、その実体は百三十六億でしかないのであります。
政府はまたこの
歳出の
財源をもつぱら
租税の
自然増收、
官公吏の
所得税の増加、各種の消費税の増加等、すべて
大衆課税に求めておるのであります。すなわちこの
歳入総額の七割五分を
大衆課税に求め、また一割二分に当る七十七億を
官公吏支拂い
賃金の節約額に負わせておるのであります。今や勤労階級はその最低の生活費すら割る毎月の源泉
課税に苛斂誅求され、その上に年末
調整をやられ、われら
官公吏の生活は、十二月においては、
政府みずからが認めているように、月並の收入の三分の一しかない状態であります。また中小商工業者、農漁民その他医師に至るまでの勤労階級は、もとよりこれらの下層の階級に対する
大衆課税によ
つて、完全に現在の官僚機構の税制のもと、なお惡税法案のもとに苦しめられておるのであります。しかるにこれ以上に
租税の
自然増收として
一般勤労者より百八十四億をとり、
官公吏より四十七億を水増しするということは、実質
賃金を増加せしめるという大藏大臣の説明に反して、まさに
反対の方向であ
つて、この
自然増收として
考えられるもののうちの六三%は勤労者より、なお三七%は
中小企業者に負担させるという結論が出て來るのであります。
なお全財職組の研究によりますと、
政府の
発表された六月物價水準の二十三年度における
國民所得は、一兆九千億と
発表されておるのでありますが、これからして個人業種
所得の限度を一兆千五百三十億
程度にして見積らなければならないのに、大藏当局は六千七百五億としてしか、
課税所得を見積
つていないのであります。
從つて約六千億の
課税対象を見のがしている。かりにこの六千億に五〇%の税金をかけたとしても、三千億の税收が捕捉されていないということが、この
政府の
発表した
國民所得の金額から割り出されるのであります。すなわち土建業者だとかやみ成金からの税把握というものがなされていないというこの
現状は、
財源問題とからんで
政府の今の
性格を暴露している一つではないかと
考えられるのであります。もちろん現在のような官僚的な税務機構というものを、ほんとうに人民的な管理に移して、現在の天くだり的な税金の割当、いわゆる頭割の水増し税をかけるということではなくて、これを民主的な決定の
方法に切りかえなければ、この
大衆課税的な税制そのものを改革することはできないと
考えるのであります。
なお今更正決定で中小工業者、勤労階級は年末
調整等で非常に苦んでおりますが、來年の二月、三月に第二次の更正決定、第三次の年末
調整というようなものが、もしかりに、かりにではなくて、
現実にこの
予算によ
つて行われるならば、いかなる事態が生ずるかということは容易に想像され得ることではないかと思います。
最後にこの補正
予算の重点であるところの官吏の待遇改善費に関連しまして、全官公及び勤労階級を代表しまして一言述べさしていただきたいと思います。今
加藤公述人からも御説明があ
つたように、われわれとしましては四月手取り、六
條件づきの五千二百円、これを八月手取りに直しまして七千三百円、われわれは最低
賃金制の確立を
要求して、その具体的な標準としてこの七千三百円を
要求したのでありまして、これには物價改訂をしないこと、首切りをやらないこと、
大衆課税をしないというような六
條件をつけて、全人民的な
要求としてこれを
政府に提出したのであります。ときたまときたま
國家公務員法の改惡という、ま
つたく
労働者の基本的労働権を無視し、新憲法違反の世界的惡法を提出し、反人民的な議会勢力の
関係から押し切
つてきま
つたのでありますが、振り返
つて國家公務員法が制定されるまでに出されたマ書簡並びに通過後の十二月一日に出された第二次のマ書簡においても、
はつきりと
官公吏に対しては、他の地位にあるすべての日本國民に対してよりも、大きな保障が與えられねばならぬとい
つたようなことが書いてあります。しかしながら今回提出された
予算案に盛られております五千三百円
ベースは、私の計算によりますれば、電産、石炭の調停
賃金よりも下まわり、また毎月の勤労統計よりもずつと下まわるものであると言わなければなりません。
從つて逆にこの場合は、
官公吏に特別の冷遇を押しつけたものということになるのであ
つて、これは明らかにマ書簡の精神にも反し、
現実にわれわれの勤労階級を、この
ベースにまで下げて來るという低
賃金政策の一環をなすものであると
考えられるのであります。なお
政府は
人事院の六千三百円
ベースという勧告を無視して、五千三百三十円という何ら根拠のないでたらめな、いわゆる食うとか食えぬとかい
つたそういう計算を無視して、
予算案並びに
給與法律案をこの
國会に提出しておるのであります。大藏大臣の一昨日の本会議における説明によりますれば、勤労者の生活安定、特に実質
賃金の確保をはかるために努力したいというようなことを言
つておられるのでありますが、この五千三百円
ベースなるものは戰前の約十二円にしか当らないというような餓死的の低
賃金であります。なお戰前に比して安本の
生産統計によりますれば、
生産は十月現在で戰前の六〇%にまで回復しておるにかかわらず、
賃金は三%以下であるから、これは戰前よりも勤労者は特にひどく收奪されておるということを証明しておるのであります。なお
政府は同じく税込みという形でこれを持ち出して來ておるのでありますが、この十一月手取りを換算すれば、四千九百九十三円になります。これを私
どもは
要求しております。八月手取りの七千三百円というものを十一月手取りに換算しますと、一万一千三百円くらいになると思うのでありますが、これを対比すると、四千円、すなわち五割の差があるということが
はつきりしておるのであります。なおこれは單に
ベースと
ベースを合わせただけの量的の違いだけではなく、われわれとしては首切りをしないということ、
大衆課税をやらないということ、最低
賃金制を確立するとい
つたような、六
條件のついたものとしての
賃金要求でありますから、本質的に異
つたものと
考えなければならないのであります。さらに新聞紙上の
発表するところによりますれば、これまでの
官公吏の労働時間が大体三十五時間でありました。ところがこれを四十四時間に延長するということを言
つておる。なお先ほど
質問にも出ました
國鉄その他における現物
給與すらこの
賃金から差引くということを言
つております。労働時間の変更とか、労働
條件の低下というものは、労働基準法第二條によ
つても明らかに
労働者と協議しなければならないのにかかわらず、
政府は
公務員法の施行を理由にして、この天くだり的の改惡
條件を押しつけようとするのは、まさに戰時中の東條内閣の労働政策と同じものと
考えなければならないと思います。これは
公務員法改惡という仕事をや
つた吉田内閣の
性格が、まさに労働
條件の低下を通じてフアシズムに通ずるものであるということを発見するのであります。
政府はなお五千三百三十円と称しておりますが、これまでオーバー・タイムがわく外にあ
つたのをわく内に入れて、なおわく外であ
つたところの寒冷地手当とか、石炭手当とかい
つたものを地域給の方へ入れますと、約二百円というものがここで差引かれなければならないし、なお
政府計算によ
つても、
ベースは明らかに五千百三十円ということになり、また前に述べましたごとく、二千九百二十円の職階級施行の際、並びに三千七百九十一円
ベースに切りかえるときに、当然われわれに支拂済みにならなければならない金額を
歳入財源に入れているのでありますから、この三千七百九十一円というものが完全に支拂われないということを証明しておるのであり、組合側の計算によりますと、
政府が本俸分として計算している三千八百七十五円は三千七百七十五円であり、この差額約百円がごまかされているということであります。
從つて結論から申し上げますと、五千三百三十円の実体は、時間延長を含めたる税込み五千円という数字になるのであります。手取りがこれで四千七百円ということが明白になるのであります。
政府は五千三百円という数字を言
つておりますが、これは決して五千三百円ではなく、五千円だということが
はつきりしておるのであります。
また物件費としてこれまで計上せられてお
つた終戰処理費
関係の人件費の三十億円というものを、
官公吏の待遇改善費の中に持
つて來たということであります。これは一種の
予算の魔術でありますが、われわれとしまして
考えることは、この首切り、行政整理の問題であります。
政府は過般の人事労働
委員会において、増田労働大臣は
予算定員の三割
程度を行政整理することを言明しておりますが、この
予算の算定
基礎は二百九十九万と称せられております。これは終戰処理費の三十八万を入れて計算されておりますから、実際には約一割三分を計算上切
つております。
從つて予算と定員の差を現在一割と
考えてみても、この
予算から十万人のほんとうの血の出る首切りが予定されるということが推察されるのであります。要するにこの
予算に盛られておる五千円
ベースなるものは、餓死的な
ベースであるとともに、首切りの
賃金であるということが
はつきりわかるのであります。なお
政府は五千円
ベースが、
賃金政策の三
原則の
立場からして、電産や石炭の調停
賃金と同計数のものであると言
つておりますが、これは
政府部内でもいろいろ見解の相違するところでありまして、たとえばこれは議員諸公が官僚に御
質問していただけばわかると思いますが、労働省、
人事院では、
人事院で出された六千三百円
ベースは電産、石炭と同じ水準であるということを言
つておるのであります。一例をあげますと、電産が四千四百三十一円のときに、
官公吏は三千七百九十一円でありまして、その差が一二・三%であ
つたのであります。これはおのおの手取りに換算して直した差でありますが、これによ
つて、このたび電産の調停案として出されました七千六百五円から算出してみますと、全官は当然六千六百三十二円という数字が出て來るのであります。すなわちこの
人事院の六千三百円案を上まわる六千六百円というものが、電産に示された
賃金と同じで、あの電産が爭議をかけて
反対している
賃金ですら、
官公吏に直せば、六千六百円だということを証明しているのであります。なお毎月勤労統計を、二千九百二十円のときの
政府的な算出
方法によ
つてすれば、十一月で六千八百三十三円となるのであります。すなわちいかにわれわれが計算しても、
政府的な非常に低
賃金政策的な
建前から計算をや
つてみても、五千三百円、実質的には五千円という数字は、どこをどう押しても出て來ないのであります。さらにこの五千円という
ベースを
官公吏に押しつけて、それにくぎづけにしておいて、他の
労働者をここまで持
つて來るということが、これはやはり現内閣の反人民的な労働政策の行き方だといわざるを得ないのであります。なお石炭手当とか寒冷地手当すら出ないところの北海道、東北地方では、すでに吹雪がさんさんと降
つている状況で、今年の年末
調整によ
つて、この十二月の後半にもらうところの
ベース差というようなものは、今
加藤氏の説明によ
つても明らかなるごとく、ほとんど全部が税金として徴收されるような状態でありますから、このまま放置するならば、いかなる事態が起きるかということは想像にがたくないものと思われるのであります。
以上のごとく
歳入を
大衆課税に求め、餓死的な
ベースを全勤労階級に押しつけようとするこの反人民的な
予算に対して、全國的に
反対の意を表するものであります。
なおただちに組合の
要求である七千三百円、並びに寒冷地手当、二・八箇月の生活
補給金等を計上した、私の計算によると一千二百二十四億の待遇改善費に切りかえて、この
財源を
大衆課税以外の、すなわち三千億の脱漏があるあのやみ成金とか、土建業者とか、
金融資本とかいうものにこの税を求め、なお價格差
補給金とい
つたようなものについても、
相当まだ徴收の余祐があると思われますが、こうい
つたものから
財源を求めて、
予算をただちに編成がえして提出されんことを、なお
國会としては議員提案なり何らかの形によ
つて、この
予算を全面的に切りかえて、一日も早くそうい
つた予算を通過されんことをお願いする次第であります。