○大屋國務
大臣 ただいま田中君の御
質問は、非常に基本的のわが國の
産業の建直しに関しまする最も重要なる問題なのでありまして、私がここで短時間に完全なるお答えをいたすことは非常に困難であるのでありまして、またこれが有力なる構想並びに実施の点につきましては、相当の時間がいる。かつまた
関係方面とも時々刻々に協議をして返事を受けなければならぬ問題であることは言うまでもないのでありますが、私の構想をごく概略御答弁申し上げますると、まず第一に御
承知のように、戰爭直後にありました相当のストツクは、すでに食いつぶしをしてしまいまして、もはや何物もほとんど残
つておらない
状態でありまして、わが國の
産業の基礎原料、
資材というものの供給先は、一にかか
つてアメリカからのいわゆるガリオア・フアンドによりまして、食糧の輸入を仰ぎ、石油の輸入を仰ぎ、肥料の輸入を仰ぎ、医藥品の輸入を仰いでおるわけであります。エロア・フアンドによりましては、これは御
承知の
復興用の原材料の供給を受けている次第であります。その他にいわゆるレヴオルヴイング・フアンド——回轉基金というものがございまするし、その他に棉花のクレジツトというものがございます。これがすでに現在活躍をいたしております原材料の供給源なのでございます。これを元といたしまして、過去三年の間わが國は既存のストツクの食いつぶしと、これらによる新供給を唯一の原料にいたしまして、また國内の既存の地下
資源というようなものをあわせ用いまして、辛うじてただいま田中君御指摘の
通り、五十%ほどの
生産力を回復いたしたのでありまするが、もちろんこれはいまだとうてい輸入の厖大なる支拂い勘定を十分内地の
生産量でカバーするわけには参りませんし、また一方におきまして、わが國の
國民生活の消費面におきまする生活の水準というものも、まだとうてい低くて、これも十分考慮をせねばならぬ
状態にあるのであります。この点に関しましては、片山、芦田両内閣とも、それぞれこれらに対しまして、いわゆるわが國の
産業の五箇年
計画というようなものを樹立し、また
関係筋におきましても、これらの
日本経済の
復興に対しまして、いろいろ基本的の立案をされておるのでありますが、私の根本の考えといたしましては、やはりこの重要
産業でございますところの石炭鉱業であるとか、あるいは製鉄工業であるとか、あるいは肥料工業であるとかいうような重化学工業、いわゆるマイニング・アンド・インダストリーの、このもつぱら重要なる工業の
方面におきましては、やはり相当
程度の傾斜
生産方式を採用して行かなければ相ならぬと考えておるのでありまするが、
從來は田中君御指摘の
通り、その傾斜
生産、重点
産業、基礎
産業に重きを置きます
関係が、非常に強く朝野に印象されております
関係で、この消費財
生産の必要の
程度が、少し軽視されている面があるということは田中君と同感であります。もちろん現在の
日本の
状態は、傾斜
生産方式に重点を置きまして、あるいは飢餓輸出というような点で、八千万
國民がともに耐乏生活に耐えて、わが國が一本立ちになるまでは、なるべくアメリカの好意、税を拂うタツクス・ペイヤーに御迷惑をかけぬという
方針で行かなければならぬのでありますが、その間におきましても、やはり明日の労働の再
生産の強力なる手段といたしましては、ただいまの
程度よりも、もう少し消費財の
生産の面に力を注ぐ必要は私も同感いたしておる次第であります。いわゆる
経済復興五箇年
計画におきまして司令部の
計画、
日本援助、
日本の
産業の自主的方向、あるいはわれわれのいわゆるペーパー・プランでありますが、五年
計画はあらかたただいま申し上げた線に
從つて、だれが考えてもやはりそういう線に
從つて考えるだけだと思うのでありますが、さてそれを実施の面においてはどういう手を打つかと申しますならば、私はこれに対してこの要素が二つあると思うのであります。何を申しましても
産業を再建し、改善して行くということは人間が扱うのでありまして、この人間はいわゆる数百万の勤労者の諸君と経営に從事する諸君の人的
方面、それからもう一つはつまり経営技術の面における二点であると考えておるのであります。
人的の面におきまして、私はいわゆる終戰直後の
日本の
産業の姿、つまり勤労者、労働の不安定、今日もむろん安定とは申されない、はなはだ不安定の
状況があるのでございますか、このいわゆる労働
生産力を高め、労働の安定感を強固にして、労資がともに、いわゆる昔流の陳腐な労資協定というような考え方にあらずして、一本と一本、五分と五分の立場において創意を働かして、労資が氣持よく働けるような政策を、
政府においてとるということがまず根本的に必要であると思うのでありまして、この面においては、いわゆる
國民生活、食糧の面におきまして、あるいは日常の生活の面におきまして、不必要な
統制というようなものがありますならば、さようなもの、あるいは
統制があ
つてもなくてもよろしいというようなものがございますならば、
統制というような面に対しましても、大幅な改善を加えて行かなければならぬと考えております。
次に第二のいわゆる技術経営の面におきまする
観点から申すならば、何といたしましても、いわゆる企業の自主性をここに確立して行く、そのためには現在終戰以來の惡い習慣がありまして、その企業自体が成立
つて行かぬにもかかわらず、いろいろな不合理矛盾が包藏されておる企業が数限りなくございます。もつともこれはいわゆる賠償問題の解決、あるいは独占禁止法案、あるいは集中排除法案というような一連の
産業界に非常な影響を及ぼすところの法制的の問題もまだ解決いたしておりません
関係上、また講和條約がまだ締結しておりませんので、
日本人の技術者が先進國に行
つて技術を修得するとか、あるいは向うの進歩した機械をこちらに輸入するとかいうような面に、まだ打通の道が講ぜられておりませんから、十分とは言えませんが、何にいたしましても、いわゆる企業の合理化、
産業の自主性を確立するという面に対しまして、強力なる合理的なる手段を施す、すなわちいわゆる勤労者と経営者が十分に働ける環境をつくり出す一連の政策、企業自体におきましては、企業の合理化を促す。しこうしてこの結果いわゆる輸出の促進政策をここに強力に進めて行く、その間におきましては、為替のレートを早くきめるというような事柄、労働安定を早くいたすというような事柄、その他必要な政策はすべて、これに付随する。これらのものを巧みに組合せまして、や
つて行くよりほか方法ないと思うのであります。田中君も御
承知の
通り、企業なり
産業というものは、一夜づくりでこれが振興をはかることは困難なのでありまして、いろいろな要素を巧みに組合せまして、そこに相当の時間を與えて行かなければならないかと私は考えておるのでございます。はなはだ雜駁な御答弁でございまするが、さような氣持をもちまして、これから私たちは諸君の御協力を得まして、一日も早く
日本の
産業の
復興をいたしたいと考えておる次第であります。