○勝間田清一君 私は、ここに上程されました
昭和二十三年度
一般会計予算補正第二号並びに
特別会計特第二号に対しまして、
日本社会党を
代表いたしまして、本
予算がいわゆる
給與の
予算であり、同時にこれが災害復旧の
予算であるという意味において、きわめて重大でありかつ緊急を要するという見地から
賛成の意を表するものであります。
しかしながら私は、この
予算に対して重大な欠陥の多くを指摘せざるを得ないのでありまして、片山内閣成立以來、われわれは幾多の批判と困難の中に立たせられたけれども、現在におきましては、か
つての批判者が今まさに批判される段階に立
つておると考えるものであります。しかしながら、われわれは、いたずらに批判のための批判をせんとするものではありません。いかなる内閣が
予算の編成に
当りましようとも、幾多の困難があることは、われわれは十分にこれを承知いたすものであります。また同時に、われわれがこの
予算についてあえて批判せんとするものは、この
予算の実行にあたりまして、われ尊重大なる警告をなさんとするものであります。いたずらに、從來吉田内閣が日ごろ豪語しておつたところの、あるいは
供米後の自由販費であるとか、あるいは料飲店の再開であるとかいつたような、ばかげ切つた政策が泡沫に帰したことだけを指摘するものでもありません。(
拍手)同時にわれわれは、いわゆる例の小澤國務大臣が、三月一日に、新
財源を発見して取引高税を撤廃すると豪語したその事実が、現在まつたく雲散霧消したことを指摘せんとするものでもありません。(
拍手)また、今後のこの
予算全体を通じまして、常にいわゆる
民主自由党は
財源の困難を指摘して参つたけれども、われわれは、数箇月以前において
民主自由党の
諸君が、農民からどぶろくに課税することによ
つてを百億徴収する、いわゆるどぶろく課税に対する
意見の片鱗をも聞くことのできなかつたという事実を指摘せんとするものでもありません。われわれは、むしろ問題はさらに基本的な点にあると存ずるものであります。
すなわち、今度の
予算の
本質というものの中に、
給與の
予算対し、また災害復旧の
予算に対しまして、
政府はその態度において、眞にこの
予算と取組もうとする熱意がないばかりでなしに、むしろ勤労大衆に対して低
賃金を押しつけ、同時に首切りまでも計画している点でありまして、この点を、常に従來
政府は、
物價と
賃金との悪循環という基礎に立
つて主張せられて來た。しかしながらわれわれは、この論拠に対して謙虚に批判しなければならぬと思うものであります。
言うまでもなく、現在
賃金の指数に対して、いわゆる消費者の実効價格の指数は確かに進歩いたしております。それあるがゆえに、実質
賃金は現在一五九に達していることは当然でありまするけれども、この事実をも
つて賃金を押しつげよう、あるいは低
賃金にこれをくぎづげしようとする
政府の意図の中には、私は重大なる欠陥二つを指摘せざるを得ないのであります。
一つは、申すまでもなく
政府は、現在の勤労大衆の生活、生計費に関して全然眼をおおうているという事実であります。
諸君も御存じの
通りに、現在勤労大衆の実質
賃金は、
政府の豪語にもかかわらず、戰前のわずかに三八%に過ぎないのでありまして、しかも勤労大衆の家計費は、戰前の四六%に過ぎないのであります。何ゆえに実質
賃金が三八%であ
つて、家計費が四六%であるかということは、言うまでもなく現在の実質
賃金をも
つていたしましては、勤労者はその日の生活ができないことを意味するものでありまして、それあるがゆえに、勤労者は自己の着物を費り、あるいはあらゆる物資を費
つて、たけのこ生活をすることによ
つてこれを賄い、あるいはまた、いわゆるアルバイトと称して手内職をすることによ
つて初めて生活を保
つておるのでありまして、一五九の実質
賃金で食えないから、たけのこをやり、あるいはアルバイトをやるというのが、現在の実態であります。その事案を無視して、実質
賃金が向上しておるから、その代償に
賃金をくぎづけしようとするこの
政府の意図というものは、断じて労働者の受入れるところではないことを、われわれは知るものであります。(
拍手)
同時に、か
つてエンゲルが、生計費の中で五三%を占むる家計が最も最低の家計であると言
つておつたのであります。しかるに、現在
政府が豪語しておる実質
賃金の水準をも
つていたしましても、実に六五・七%にこれが当るという事実でありまして、現在の家計の実態を見ますならば、われわれは慄然たらざるを得ないのが事実だと考えるものであります。
しかもわれわれは、こういつた家計や、そういつた実態を見るだげでなしに、逆にわれわれは、現在の
企業の実態を見なければならぬと存ずるものであります。先ほど來の弁士もいわれました
通りに、現在の
日本の生産額、御案内の
通りに、昨年の一ー三月を一〇〇にいたLますならば、生産量は三一一に現在到達いたしております。しかるにもかかわらず、勤労者の雇用量は、昨年の一〇〇に対して現在一〇〇を占むるに過ぎません。一人
当りの労働の生産性は、確実に向上をいたしております。
從つて、一單位の中に占むるところの労働の
賃金量というものは、昨年の一ー三月を一〇〇にいたしますると、本年はわずかに七〇%、七割を上
つておるにすぎないのであります。しかるに、
企業が賣るところの生産物一の実質價格指数におきましては、実に三一三に上
つておるのであります。すなわち、生産物の價格に対して、むしろ
賃金に下まわ
つておるという実情を、われわれは無視して考えることは出来ないのであります。(
拍手)
かかる事実を無視して、労働者、勤労大衆に対して低
賃金を押しつけ、さらにわれわれは、首切りまでも用意するところの
政府に対しては、断固
反対せざるを得ないものであります。(
拍手)われわれは、六千三百七円案に対して、これが完全なる支給を望むことを強く要望するものであります。それと同時に、大量馘首に対しては、われわれは断固これに
反対することを、ここに誓うものであります。
さらにわれわれの考えるべき事柄は、このたびの
災害復旧費に対してであります。常に農民の
諸君は、あるいは
租税恐慌に、あるいはすべての農業恐慌に見舞われておるにもかかわらず、これに対するいわゆる自然増収八十四億を見積つた。にもかかわらず、
災害復旧費に対しては、わずかに六十億しかこれを見積
つていなのであります。これは言うまでもなく、現在の資材をも
つていたしましても、九十億に匹敵する
予算は当然計上せらるべきであります。われわれは、現在の吉田内閣が、一見農民の味方であるがごとくよそおいながら、事実は農具に対する搾取者であることを、
反対者であることを、指摘せざるを得ないのであります。(
拍手)
次にわれわれの指摘しなければならない問題は、先ほど尾崎末吉氏が、口をきわめて本
予算の健全性を主張せられた。われわれは、これに対して遺憾ながら
反対せざるを得ないものであります。(
拍手)この事実を、ここにわれわれは積極的に示すでありましよう。
すなわち
政府は、
一般会計において収入五百八十六億八千万円を見積
つておるのでありまするけれども、これに対する所得税の自然収入三百七十億円という数字を見積
つております。その収入は、全収入に対して六割三分を占めております。そうして
政府は、
國民所得を二兆三千九百億円と見積り、國税負担を一七・二%に見積
つておりまするけれども、われわれの討議の
経過におきましては、いわゆる
國民所得を合せたのではなくて、
租税に折合うような分配、
國民所得を計上したという実情にあると信ずるものであります。(
拍手)水増し
予算という言葉があるならば、これこそ実に水増し
予算の実体であると言うべきでありましよう。(
拍手)
しかも
政府は、先ほど申した
通りに、農民に対する重税を課しており、さらに勤労大衆に対しましては、
合計二百三十一億七千万円の、いわゆる勤労所得の自然増収を見積
つているのであります。よく現在口を開げば、二百六十二億円の
予算を計上することは
國民に対して非常な大きな犠牲をしいると主張しておつたけけれども、この勤労所得に対するはね返りや、源泉課税の増収分二百三十一億というものは、官吏の
給與改善費の二百六十二億に匹敵する数字であります。勤労着から税金をと
つて他の勤労者に與えて行くという詐欺政策以外の何ものでもない。
しかるにわれわれは、これらの一切のものを、いわゆる脱税捕捉に持
つて行くことを主張するものであります。すなわち、四百十億の自然増収を見積
つてする
政府でありまするけれども、それが徴収に対しましては、いわゆる脱税捕捉に行くべきであると信ずるものであります。昨年七月から、もし現在の所得税の捕捉率四割のものを六割に厖大することにいたしましたならば、五十万円以上の高額の所得者から、三百八十億円の増収を得ることを知るものであります。単に、この所得税の自然増収、なかんずく農民に対する税の実施というものについては、この実行の上におきまして、すべてこれらを軽減し、同時に脱税者にこれを完全に振向けることを、われわれは
要求するものであります。(
拍手)
またわれわれは、それ以外に考えることは、現在の
政府が、國立病院における自然増収を十五億円見積るとか、あるいは超過電力料金を十億円見積るとか、あるいは地方財政の返還金を三十五億円見積るとか、これらすべての点を合せまするならば、われわれは、その収入の面において決して
健全財政と認めることは断じてできないのであります。
さらにこの事柄は、次のの問題を考えることによ
つて明確になるのであります。それは言うまでもなく、本
予算案が、尾崎末吉氏の言うがごとくに、いわゆる
経済の三
原則に合い、マ書簡の九
原則に合うかのごとき観を呈しておるのでありまするけれども、この
関係には絶対に
賛成するわけには参らぬのであります。
今度の
予算が第二次
追加予算を必至とするものであるということは明確であります。すでに、本
予算案に計上せられなかつたところの鉄道及び通信
会計における赤字三十五億、公團の赤字二十億、その他の
特別会計十億、あるいは補給金の赤字八十億、あるいは必要やむを得ざる新規事業二十億、その他
合計いたしまして三百七十億というものを除外し、それにほおかむりをして、本
予算というものを計上いたしたのであります。鉄道その他の
特別会計の赤字を放棄して、その上に
予算を計上しておるところのこの
予算を、われわれは
健全財政ということもできなければ、
インフレ処理のための
予算と断定することは絶対にできないものと信ずるものであります。(
拍手)われわれは、同時にこのことは、次の
物價引上げを含んでおるものと考えるのでありまして、いわゆる尾崎氏は、物遺引上げを含まない
予算であると言うけれども、すでに鉄道や通信やその他の
特別会計の厖大な赤字を含んでおるのでありまするがゆえに、次の機会におきましては、いかに
民主自由党の
諸君が希望しようとも、鉄道、通信
会計の赤字克服の問題は、重要な問題としておおいかぶさ
つて來るに違いないのであります。
またわれわれは、補給金八十億の問題につきましても、同様のことがいい得られるものと存ずるのであります。また現に、本年度における
予算を見れば明確であります。本
予算のうちで、
石炭関係のみをも
つていたしましても三十九億五千万円を計上しておるではありませんか。いわゆる北海道の暖房用炭、炭鉱労働者の
賃金のはね返り、
石炭業の生産奨励金、あるいは北海道の地区炭鉱の從業員手当等々の、当然に補給金として出しておるところのこれらのものを、いかに処理して行くかという問題は、これは
物價を考慮せずしては処理できないものと信ずるのであります。
われわれが眞に考える事柄は、
特別会計や
一般重要産業における処置を全然ほおかむりしたところの
予算であるがゆえに、これは
物價を上げず、赤字
融資をせず、補給金を出さずというこの三
原則に対して一致する
予算であると考えることは、絶対にできないものと思うものであります。また事実吉田内閣は、脱税を捕捉し、脱税者を厳罰にするとか、また價格、配給計画を強化して、これが範囲を拡張するとか、すべて
政府においては実に困難な問題が山積しておるけれども、これらの九
原則に対して、いかにこれを好意的に考えても、吉田内閣はその責任をとることは絶対に不可能とわれわれは予測せざるを得ません。
われわれは、これらの以上諸点について幾多の困難を指摘し、幾多の点についてこれを批判して参つたのでありますけれども、われわれは、現在の実施と将来の計画において、それらを十分取り入れられることを希望するものであります。しかしながら、現にこれら対して、われわれがあえて
賛成せんとするところのものは、言うまでもなく、先ほど來申した
通りに、われわれは、現在の
給與予算というものは勤労大衆の年末を控えての切実なる
要求であるばかりでなしに、また災害の復旧費が同様の緊急性にあるにかんがみまして、現在単に
反対するがための
反対は実に簡単であると存ずるものであります。われわれは、従來まで幾多の批判は聞いて來たけれども、批判に到達するところの努力と熱意とを失つたところの政党に対しては、われわれだ、これをまことに批判せざるを得ないものと信ずるのであります。(
拍手)われわれは、門前において説教することはできる。しかし、いかにしてそれを実現するか対する熱意と責任とを持たざるところの政党に対しては、われわれは遺憾ながら
賛成することはできないのであります。われわれは、最大可能の熱情と最大可能の誠意を傾けてこの
予算を成立させることの努力をここに要望してわれわれ
代表の
討論を終るものであります。(
拍手)