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重井鹿治君 私は、
佐藤官房長官の行動に関して
質問いたしたいと思います。
吉田内閣は、組閣以來三箇月、国家
公務員法と不可分である
追加予算並びに
給與法案をいまだ決定し得ず、政界を暗黒に陥れつつあるのであります。しかも、その首謀者は
佐藤官房長官であるといわれております。一官僚の行動を批判することは、あまりにおとなげないことでありますが、
吉田内閣は、この独善官僚に引きずられておる事実を見るとき、
國会の名において彈劾せざるを得ないのであります。(
拍手)しかも佐藤君は、
追加予算及び
給與法案は
政府原案が
関係方面の
了解による最後案であるがごとく策動し、宣傳してお
つたのであります。その結果は、今日の政界混迷の
原因をなさしめておるのであります。また
賃金ベースの遅延は、労働不安を惹起し、電産
爭議、
炭鉱ストライキ、船員
ストその他、
重要産業を麻痺せしめんとしておるのであります。この
責任は当然
政府が負うべきであります。私は、
佐藤官房長官がいかなる策謀をなしつつあ
つたかを事実によ
つて究明し、
質問をいたしたいと思うのであります。
去る十二月十四日午後九時ごろ、佐藤君は
予算委員長に対し、総司令部
経済科学局顧問ベーカー氏から、
予算委員各党代表が打そろい、ただちに來訪せられたいとの申入れがあ
つた旨、通告せられたのであります。これを聞いた上林山
予算委員長は、急遽理事会を招集して、その通告に関する打合せを行
つたところ、一部の理事
諸君から、佐藤君の出席を求め、親しく事の詳細を聽取せんことを
要求したのであります。しかるに、聞もなく、すなわち午後十時ごろ、
佐藤官房長官は、情勢変化のためその儀は中止に相
なつたと答え、そして出席を断
つたのであります。しかるに、またもや午後十時十分ごろ、佐藤君は松岡
議長を
議長室にたずねて、
日本社会党、民主党並びに
國民協同党の各党首またはその代表と同道して、ただちにベーカー氏のもとに來訪すべしとのベーカー氏の申入れを傳え、かつ、もし來訪ぜざる場合は
政府提案の原案に賛成したるものとみなすとの付言を傳えられたのであります。松岡
議長は、即時三党代表に対して官房長官の傳言を通達されたのであります。よ
つて三党代表は、
議長と相はかり、とりあえずベーカー氏に直接電話をも
つて事情を確かめましたところ、ベーカー氏は、全然自分の関知せざるところであると答えられたのであります。なお念のため、
國会対策課長ウイリアムス氏のもとに確かめたところ、これまた何ら関知せずとのことでありました。
かくのごとく、
政府の傳言なるものは全然根拠なき謀略であり、総司令部の各によ
つて國会を愚弄し、フアツシヨ政治を行わんとしたのであります。(
拍手)この事実は、單に奇怪なる
事件として、このまま等閑に付することのできない重大なる意義を持ち、かつ將來のためにこの際その
責任を明確にして、いやしくも再びかかる失態を繰返さないよう戒めなければならないと確信するものであります。(
拍手)
佐藤官房長官は、單に個人としてではなく、
政府を代表して、國家の最高機関たる
國会の
議長を通じ、野党三党首の行動を
要求する占領軍当局の意向を傳えたのであります。ことに見のがすことのできない重要なる点は、第四
國会における重要案件たる
追加予算案に対する野党側の賛否を、もし來訪なき場合は賛成とみなすというがごとき高圧的言辞を弄し、民主政治を冒涜せんとしたことであります。(
拍手)この謀略は、あたかも戰時中の
國会において、その名も同じ佐藤局長が、黙れの一喝をも
つて軍部の野望を達成した行動と何らかわるところなき、保主反動政治の陰謀であると断言するのであります。(
拍手)われわれは、かかる奇怪なる陰謀を未然に探知することができたことは、まずも
つて幸いといわなければならないのであります。
そこで私は、吉田総理に
質問申し上げたいのであります。もし
政府の一部に、かかる哀れむべき小策を弄する陰謀家があ
つたとしましたならば、吉田総理は、民主政治の確立のために断固たる処置をとる決意があるかどうかということであります。
次に、敗戰の結果、わが國は今や連合軍の占領下にあ
つて、
國会と
日本政府は連合軍総司令部の制約のもとに置かれているという事実は、誤れる過去の指導者の企てたる侵略戰爭の結果であるとはいえ、八千万
日本國民にと
つては未曽有の悲劇であり、深刻なる民族的悲しみであります。しかるに、この事態を利用して、國家最高の機関たる
國会をまさに愚弄し、侮辱し、陰謀政治を行わんとしたのであります。事は何者かの陰謀によ
つたものであるとはいえ、そして辛いに成功しなか
つたとはいえ、
政府の
國民及び
國会に対する
責任は重大であるといわなければなりません。(
拍手)かかる愚劣なる策動が、
佐藤官房長官その人によ
つて企てられたものではないにいたしましても、これ幇助した佐藤君の
責任は許すべからざるものであります。私は、
國民に対し、
國会に対し、佐藤長官はよろしくその職を辞し、その罪を天下に謝すべきであると断ずるものでありますが、吉田総理並びに長官みずからは、いかなる考えであるか、
責任ある
答弁を願いたいのであります。なおこの際申し上げたいことは、十二日十五日牛後三時、
政府は
声明書を発表せられております。その
声明によれば、
追加予算及び
給與法案は、五千三百三十円が総司令部り承認せる最後案であるかのごとく述べ、あたかもこれを
了解せざる野党の態度を攻撃しておるのであります。しかるにその後、
政府は六千三百七円ペースを準備れつつあるといい、なお昨日も今日も、この
國会に
提出されておらないのであります。この事実をも
つて見ても、いかに羊頭を掲げて狗肉を賣る無
責任きわまる態度であるかを証明するものであります。その多くは、
佐藤官房長官の官僚独善的行動のしからしむるところであると言われております。この際、
政府のためにも、
民主自由党のためにも、はたまた國家のためにも、よろしくその
責任を明らかにし、眞摯なる態度をも
つて國会に臨まれ、すみやかに
予算審議を議了して、政界粛正浄化のために議会解散を断行されんことを希望するものであります。
以上私は、吉田総理
大臣及び直接の
責任者たる
佐藤官房長官の、良心ある御
答弁を要望する次第であります。(
拍手)
〔
國務大臣林讓治君
登壇〕