○
辻寛一君
民主自由党を代表いたしまして、
吉田内閣の
施政方針に関し、わが党の立場を明らかにしつつ若干の
質疑を試みたいと存じます。
現
内閣は、申すまでもなく
民主自由党よりなる
單独内閣であります。
議院内閣制が確立されてより、
内閣の入れかわること、ここに四たびである。しかも、
單独内閣はこれをも
つて嚆矢といたします。けだし、議院内において過半数の勢力を
占むる政党の出現せざる限り、
連立政権またやむを得ないが、しかし、それにはおよそ限度というものがあります。
政党の性格において大同小異であり、その
主義政策の傾向においてほぼ相似たるものが寄
つて組織する
連立政権ならば話はわかる。すなわち、第一次
吉田内閣の当時、
自由党、
進歩党の
連立政権であつたごとき、これであります。しかるに、その後の、
片山内閣、
芦田内閣は、いずれも根本的に
主義政策の違う間柄である
政党が寄り合
つてつく
つた連立内閣である。かかる、生れながらにして不自然なる
連立内閣の常として、結局中途半端な
政策でお茶を濁すのやむなき実情を暴露し、完全に
國民の不満と不信を買つたことは、けだし当然でありまして、時に
中道政治などと、もつともらしく笛を吹いてみても、
国民がこれに和しておどらなかつたのは、ゆえあるかなと存じます。
国民は旗幟鮮明なる
單独内閣の出現をまつこと久しかつたのであります。すなわち
吉田内閣は、たれに氣がねもいらぬ、水入らずの
單独内閣である。
在野時代の公約を敢然として実行に移す熱意と
勇氣を
國民は期待いたしておるのであります。
吉田首相の
施政方針演説において、さらに
泉山経済安定本部長官の
経済演説におきまして、ある程度その氣魄はうかがい得られましたが、まだまだ足らぬ。
從つて、さらにこの点を
國民の前に徹底的に明確ならしむるために、わが党かねての主張をここに宣明しつつ、これに対する
政府の率直なる
所信をたださんとするものであります。
しかして、それに先だ
つて、まず念を押して置かなければならぬのは、
國会解散についての
政府の信念のほどであります。
施政方針演説の冒頭に
首相が宣言されたごとく、過日
政府と主要なる野党間に成立いたしました協定により、
追加予算案提出の日より二週間を経て野党より出す
不信任案の通過をきつかけとして、
一路解散に突入する手はずと承り、信を
國民に問う日がいよいよ近づいて参つたことを喜ぶものでありますが、ただ、ここに一抹の不安を感ずるのは、
協定成立後、
公務員法改正をめぐ
つて社会党の不
信行爲に目のあたり接したわれわれは、
解散回避のためには再び協定を弊履のごとく捨てて顧みざるの挙に出るのではなかろうかとの疑念を抱かせられるのであります。万一さような事態が生じた場合において、
政府はいかなる
態度をも
つてこれに処せんとするのであるか。ここまで承
つておかねばならぬほど、生き馬の目を拔くような、ゆだんのならぬ
政界の今日を悲しむものでありますが、人を見て法を説かないと思わぬ不覚をとることを念頭に置いて、
解散の初一念を貫徹するに万全の策を立てられねばならぬと存じますが、これに対する
首相の
決意を明らかにされたいと思うのであります。(「
首相はいないぞ」と呼び、その他発言する者あり)
首相は、ただいま御不在のようでありますから、他の閣僚よりこの由をお傳えいただきまして、直接
首相の御
答弁を得たいということを要求いたします。
なおこの機会に、朝野をあげて論議されておりまする
解散権の根拠について、
政府の
憲法解釈を明らかにされておきたいと存じます。まず、これをお伺いいたしまして、順次問題を追うて質問に入りたいと思います。
第一に、
綱紀の
粛正に関してお伺いいたします。
吉田内閣が、
組閣の
第一声においても、また重ねて一昨々日の
施政方針演説においても、
政界、
官界財界を通ずる
綱紀の
粛正を強調されたることは、心から賛意を表するものであります。今や
日本の
政界、
官界、財界は、見るにたえぬ醜状を白日のもとにさらしているのでありまして、
芦田内閣退陣のもとをなした昭電疑獄問題を初め、
炭鉱國管事件、
繊維疑獄等等、とどまるところを知らぬ醜悪なる
不正事件は徹底的にえぐり出して、各界にひそむ毒血の一滴までも洗い清めなければ、
首相のいわゆる健全なる
民主政治の確立は、とうてい望み得ないでありませう。
吉田首相は、
與党野党の別なく断固として不正を糾明すべしとの
決意を披瀝し、特に
官界の腐敗に対しては、
綱紀粛正委員会を設け、
粛正工作を行う意向のように
組閣直後発表されましたが、これは一体どうなつたのか。
大体、どの
内閣でも、
組閣の
第一声として
綱紀粛正をうたわないものはなかつたのでありまするが、それだけでは、新
内閣おきまりの御
祝儀的あいさつにすぎません。か
つて片山内閣は、
官界刷新要綱をつくり、
行政監察委員会を中央・地方に設けて、
官界の
能率向上、
綱紀粛正をその
一大看板としたのでありますが、その実際はどうであつたか。一片の
口頭禪と化し、今日のごとき事態を現出したではありませんか。思えば、これも当然のことであろう。閣僚の中から続々疑獄に連座する人を出すようでは、どんな
りつぱそうな委員会をつく
つてみたとて、百日の説法へ
一つということになる。たとい
吉田内閣によ
つて、予定のごとく
綱紀粛正委員会が生れても、
片山内閣がつく
つた行政監察委員会の二の舞いを演ずるようなことでは、それこそ
屋上屋を架する子供の
いたずらにすぎません。少くとも
内閣全体の責任として、身をも
つて綱紀粛正の先頭を行くだけの威信と
政治力を示さなければならぬと存じますが、
綱紀粛正の
具体的方策と
政府の
信念決意のほどを、つつこんで承
つておきたいと存じます。
第二は、
行政整理の問題であります。これも、
歴代内閣にして
行政整理を唱えざるはなく、しかも断固として
行政整理を行つた
内閣あるを聞きません。いずれも一片の掛声に終
つている。これによ
つてみても、
行政整理がいかに今日の
日本にと
つて緊急な課題であるかということを立証するとともに、またいかに
行政整理が言うべくして容易に行われがたい微妙な難事業であるかということを物語
つておると存じます。
官公翼の数は、現在二百六十万と推定されております。地方を除き、一般、
特別会計の
予算定員だけと
つても、
一般会計四十七戸、
特別会計百二十万、合せて百六十七万に上
つております。
国民は重税にあえいでいる。やせさらばえた
國民経済の上に、かような
尨大な
官僚機構を支えて行くことは、実に
国民にと
つて、耐えがたき負担であります。
官吏亡國論が盛んに唱えられるのも、むりからぬ次第と存じます。
元來、
行政整理には二通りの意味があり、
行政機構の
簡素化と
人員整理とにわかつわけであるが、二者いずれも
切つても切れぬ不可分の
関係にありまして、
行政機構の
簡素化と相ま
つて人員整理も行われ得るわけでありますから、
在野時代からいわゆる
行政整理の断行を強力に主張して來たわが
党内閣が、いち早く
行政簡素化について
具体策を練りつつあることは、当然であります。しかし、從來の例にかんがみ、ゆだんのならぬのは、とかく最後には官僚の
お手盛り案に牛耳られて、さて実行の段取りとなると、
簡素縮小化の目標が、いつの間にやら
複雜拡大化の
現実にすりかえられて來たことであります。論より証拠、
内閣に列する直前までは
行政整理の急先鋒として
自他ともに許した
民主党の
北村徳太郎氏が、一たび
大臣となるや、ために
首切り大臣來るとばかり、そのおもむくところ鬼のごとく恐れられたが、一体どんな
行政整理の実をあげたであろうか。逆に片山、芦田両
内閣を通じ、
行政機構は複雜化し、役人はその数を増したのが、
現実の姿であります。
一体、
行政整理が言うべくしてなかなか行われない眞の原因は、
統制経済そのものに内存する矛盾にあることを知らねばなりません。
官廳機構の拡大、
官吏の増員を宿命的に必要とする
統制経済と、
官廳機構の縮小、
官吏の減員を使命とする
行政整理とは、生れながらに背中合せの道理であります。すなわち、
統制を
整理して順次
自由経済の方向へわが國の
経済体制を切りかえて行こうとするわが党にして初めて可能な仕事であると言わなければなりません。しかも一方、多年にわたる鉄壁の備えと、時に根強い
反撃力を発揮する
官僚組織の中へ馬を乗り入れて
行政整理の実をあげ、も
つて國民の負担を軽減し、高
賃金、高
能率の原則を打立てるには、並々ならぬ
勇氣と
政治力を必要とするのでありますが、これに対する現
内閣の
所信とその
具体策を、特に
岩本行政管理廳長官から、はつきり示していただきたいと存じます。
次に、
労働対策についてお尋ねいたします。
労働対策は、現下の重要問題であり、かつ
日本経済再建の
中心課題をなすものと思われます。私はここに、主要な諸点について
政府の
方針と
決意とを伺いたいのであります。
思うに、
労働問題解決の
中心は、あくまで健全にして民主的な
労働組合の質と量との両面にわたる
拡大強化でなければならないと思うのであります。そこで
政府は、組合の眞の
民主化、今後の育成について、いかなる
方針で臨んでいるか、その
根本的態度を宣明していただきたいのであります。
次に
給與の問題は、これも
労働問題解決の
中心点をなすものでありますが、さきに
人事院から提出された六千三百七円ベースに対して、
政府はこれをどう見るか。われわれの
考えでは、わが党の主張するいわゆる高
能率、高
賃金の
根本方針から見ても、能う限りこれに近い
給與を支給すべく努力すべきであるが、將來にわたり、
賃金政策について
政府はいかなる
態度で臨むか、これを明らかにされたいのであります。同時に、高
能率、高
賃金の原則を確立するためには、とりもなおさず強力にして総合的な
労働者及び
事務系統の
配置転換を伴わなければならぬ。
從つて、これがためには、
政府は
失業救済の面において
強力廣範な準備を整えなければならぬと思うが、この点について、いかなる
方策を準備されているか伺いたい。
さらに、
労働関係法規の
改訂に関してでありますが、そもそも、
労働関係法規の
改訂は、必ずしも
労働問題解決の根本的、第一義的なものではない。しかし、一度定めた法規は絶対に改めず、
改訂はすべて
改悪なりと頭からきめてかかるような、一方的な
公式論に拘泥する必要はありません。改善なり改正なりと信ずればこそ改めるのであ
つて、
改悪としりつつ改めるばかはない。改正と言い
改悪と呼ぶも、所詮は立場の違いにすぎぬ。よろしく情勢の変化に應じて適当に
改訂せられることが当然でもあり、正しい行き方でもあると信じます。
日本復興のために、
労働双方のために必要なりと信ずる
改訂は毅然として断行すべきであると思いますが、
労働法規の
改訂について、
政府は当面いかなる
態度をも
つて臨むか、とくと承
つておきたいのであります。
さらに、
電氣、石炭等重要なる
公益的事業が、今日爭議の中にさらされ、
國民一般の公益が重大なる侵害を受けておる
現実に対しては、新たなる角度から
國民的批判を加えるべき段階と見られるが、
政府は、これらの当面せる
現実のストに対して、いかなる
方針で臨んでいるか。さらにまた、近き將來の
見通しについて率直にその見解を発表していただきたいのであります。
労働問題については、以上四つの
重点についてお伺いいたします。
なほこの際、
電氣・石炭問題に関して、ちよつとお尋ねいたしておきたいのは、鉄道の電化問題であります。国鉄の使用する石炭は
尨大な量であり、
石炭生産目標の達成がきわめて困難なる実情にかんがみ、
鉄道電化による
石炭節約は、
経済復興に寄與するところ大なるものがあり、なお同時に国鉄の
経営合理化ともなると信じますが、今後大規模に鉄道を電化して以上の目的を達成する方途について、
運輸大臣の
所信を承
つてみたいと存じます。
次に、
産業政策について伺いたい。わが
國経済再建の課題が、当面
インフレの收束に集中されることは、言うまでもありません。しかして、
インフレ対策には二通りあ
つて、
一つは
通貨面に
重点を置く
対策であり、他の
一つは
物資面、
生産面に
重点を置く
対策であります。しからば、わが党はいずれに
重点を置いて
対策を
考えるかというと、通貨は
生産関係の結果的表現であるという建前から、すなわち
生産関係に
安定的要素のできない限り、通貨はいかに工作しても、結局また元のもくあみにな
つてしまうものであるという観点に立
つて、
生産面に対する
強力政策こそ
インフレ解決の正道なりと
考えるものであります。この観念から、
政府の産業に関する諸
対策を
伺つてみたい。
まず第一は、
統制撤廃に関してであります。
泉山経済安定本部長官の
演説によりましても、
経済安定復興方策の第
一條件として、不必要な
統制を廃して
企業の
自主性を確立しなければならぬと申しておられるが、その通りであります。わが
民主自由党が、
自由主義経済を目標として、
統制の
緩和排除に向か
つて前進を試みんとするのも、一に、わが國の
経済安定、
経済復興の勘どころが、できるだけ
企業の
自主性を認め、各個人、各
企業の自由な活動を保証し、その
創意とくふうを最大限に発揮せしめるところにあると信ずるからであります。
日本の
経済が一應安定すれば
統制のわくを大幅にはずすとは、他のいずれの
政党も言うておるところであり、
芦田内閣においても、先般百余種の
公定價格を撤廃したほどでありますから、きわめて微温的な
統制緩和は、たれしも異存はあるまいが、わが
党年來の主張とするところは、むりな悪
統制が
経済安定の速度を不当に阻害している
現実を指摘して、
経済が安定すれば
統制のわくをはずすなどというのではなく、
日本経済の
安定復興を促進するためにこそ、まず
統制の大幅な
整理を要するという、
根本的見解に基くものであります。
そこで、わが党の唱うる
統制の
大幅整理とは、すなわち主食その他の
基礎的重要物資若干を除く以外は思い切
つて統制をはずすべしという
原則論に立つものであります。
いたずらに机上の
需給状況にあくせくして、小手先でこれを調節しようという、從來の小ざかしき
態度を改めよと主張するのであります。人間の自由によ
つて、わき上がる創意くふうと
増産意欲が、いかにすばらしい
経済復興の原動力となるかを知るわれわれは、勇敢に思い切
つた統制整理の発表される日を待ち望んでやまぬものであるが、これに対する
政府の
決意と当面の
具体策を、いま少し明確に示していただきたいと存じます。なかんずく、わが
党主張の先端を行く
生鮮食料品の
統制撤廃と、
供出完了後における主食の
自由販賣について、
政府の率直なる所見をお恥きしたいと存じます。
次は、
産業合理化の一環として、
まつ先に
議題に上るのは、言うまでもなく
企業整備であります。
官界における
行政整理とともに、民間における
企業整備が必要にして避くべからざるものであることは、つとに認められながらも、容易に手が下されなかつたのは
失業対策の不備と
政治力の貧困からであつたが、
大屋商工大臣出るに及んで、さすが
産業人だけに、
企業整備は万難を排して強行徹底化する意氣込みと承りますが、
大屋商工大臣の言うように、
いたずらに
社会政策的見地にとらわれていたのでは踏切りがつかぬことはわかるが、さればとい
つて、不用意に、ただ自然発生的に、手当り次第血刀を振うのでは、
いたずらに混乱を拙くのみと思われるが、具体的にどの部面からこの問題の解決に臨もうとするのか、その
眞意と構想を承りたいのであります。
企業整備の主たる対象となるのは、いうまでもなく
中小企業であるが、元
來中小企業は、口でこそ
経済再建の
中核体をなすものだなどと叫ばれながら、その実、
政治的には
從來あまりに等閑視されて來た傾向が多く、先般
中小企業廳ができましたが、
発足日も浅い状態である。
金融面において、
資材面において、
中小企業の悩みは実に深刻でありますが、一口に
中小企業と言うのみで、その実態の調査がまだできいておらないから、ただ
企業整備の掛け声で、みそもくそも運命をともにするようなことがあ
つては、たいへんであると思います。
中小企業対策の
中心を一体どこに置こうとするか、またどこに置くにしても、効果的ならしめるためには、まず完全な
実態調査を急速に進める必要があると思いますが、所見を利いたい。特に
中小企業に対する
特殊金融の
具体的方針、さらにいわゆる大屋商工行政なるものの観点から、石炭國管問題並びに
電氣事業再編成の問題について
所信と
見通しをお聞きしたいと存じます。
次は、
外資の
導入と輸出の振興に関して伺いたい。
外資導入と
輸出振興が、わが國の
経済再建に量も必要であることは、言うまでもありません。しかしながら、このためには、まずわが國の
経済が安定し、
外國資本の
安全性と
利潤性とが保証されることが絶対の要件でありますから、
各種企業の
健全化合理化を促進するとともに、
價格体系その他
経済の全般にわた
つて國際経済との調整をはかり、も
つて外資の
導入に適する
経済態勢を確立する必要があると思います。
そこで、端的に
伺つておきたいと思うのは、第一、特に
民間外資の
導入に関する
政府の
見通しいかん。第二に、
民間外資導入促進のため、
外資に
限つて免税その他の特権を與える
考えがあるかどうか。第三に、
外國企業による
日本企業の支配を制限する
考えがあるかどうか。第四に、
外資導入と関連して
独占禁止法を緩和する
考えがあるかどうか。右の四点を
伺つておきたい。なお單一爲替
レートの設定については、
政府はいつごろ、その
レートはいくらくらいにこれを設定尾する至当と
考えているか、また單一爲替
レートが設定せられた場合において、
國内生産、輸出、
物價等に及ぼす影響を緩和するため、いかなる
方策をとらんとするか、右の二点について
政府の所見をただしておきたいと思うのであります。
次は、
金融対策についてお尋ねいたしたい。今日ほど各方面において
金詰まりに悩んでいるときはありません。
政府は、この
金詰まりの現状を打破するために、いかなる
金融政策をとろうとなさるのか。
泉山藏相は、
金融の
健全性を保持しながら、しかも
生産の増強、
経済の
復興に活路を與えるように善処したいと述べられていますが、かような当然過ぎる
抽象論では満足することできない。
泉山藏相、
大屋商相等の
経済閣僚が、
組閣以來各方面で発表しておられる談話と、一
萬田日銀総裁が各地で発表された
金融引締め論との間には相当の食い違いがあるように各方面では見ているが、その
眞意はいかがであるか。
政府は一体、
金融緩和と
生産増強と
インフレ問題との
因果関係を、いかなる線において調整しようとなさるのか、具体的な
金融対策をお示しいただきたい。
わが党は、
生産第一主義と
金融梗塞打開という
政策項目を掲げているが、
ただ金さえ出せば
生産がふえるという素朴な
考え方ではない。
ただ金さえ引締めれば
インフレがとまるという公式的な
考え方とともに、わが党のとらぬところであります。
赤字融資はあくまで排斥するが、
企業合理化と並行して、
生産に必要な資金は大いに出すべしと、わが党は主張いたしております。
藏相の言う
弾力性に富む
金融というスローガンを、いま少し具体的に御説明願いたいと存じます。
次は、現制に関し二、三の問題についてお伺いしたい。
まず第一は、
取引高税の
廃止についてであります。
取引高税が天下の悪税として、
即時廃止の輿論が廣が
つていることは、御承知の通りである。わが党も、つとにその
廃止を天下に公約せるところであり、
政府もまた
取引高税廃止の
根本方針を明らかにしたが、
國民は、その
廃止の時期の一日も早からんことを待
つているわけであります。
先日
泉山藏相は、当議場において、
民主党の北村氏と、できることと、できないこととの禪問答においていわく、
取引高税の
かわり財源調達はまことに容易ではないが、しかし
政治力の結集によ
つては、できないこともできるのであ
つて、幅のある財政とはこのことであると申されたが、まことにわが意を得たる
答弁である。いかにも
非常時財政を切む盛りするのに、初めから可能と不可能とをわけて、できないことはできないと手取り早くあきらめ、だから中道を行くというのではまことに心細い。一見不可能と見えることをも、これを可能にするところの熱情と努力こそ、われわれは
非常時の
大藏大臣に期待するものであるから、その意氣を壯とするものであるが、そこで一歩を押し進め、
藏相のいわゆる蛮勇に期待して
答弁を得たいと思いますのは、この
取引高税の
廃止を可能ならしめ得る
見通し、すなわちその
廃止の時期であるが、ぜひ蛮勇を振
つてお答え願いたいと存じます。
税制問題の第二は、最近
國民の間に
一大恐慌を巻き起している
所得税の
更正決定についてであります。
予算申告納税制度は、最も自主的な
納税制度として理想的ではあるが、現在
国民の
納税思想の水準に照しては、よほど
納税思想の高揚と
徴税事務の
親切適切を期さなければ、その目的を達し得ない現状であるにもかかわらず、
納税者を千篇一律に頭から疑い、
官吏の独善によ
つて更正決定を行うならば、
正直者ほどばかを見る
政治はここにも行われ、
納税思想はますます低下し、かけひき申告を助長し、かけひき更正を盛んならしめ、出すまいぞ、と
つて見せるぞと、
国民と
政府との血で血を洗う爭いはいよいよ激しくならざるを得まいと存じます。かかる憂うべき状態を緩和し、收税の確保を期するためにも、この際民主的なる租税調整機構を確立する立法的措置を講ずる必要ありと、すでにわが党より
政府へ進言いたしておりますが、この租税調整に関し、いかなる
対策を有せらるるや、お伺いしたいと存じます。
なお、今回かくのごとく大幅なる
更正決定をいたすの余儀なきに至つたおもなる原因は、前
内閣が
國民所得の確証を把握するに際し、その過大なる見積りのもとに予算を編成したところにあり、勢い收入予算へ帳じりを合すに急にして、所得の実情を顧るいとまがなかつたというところに、すでにしてこの問題の生ずる必然性をはらんでいたと解せられるが、これに対し、現
政府はいかなる見解を有し、また將來いかにして
方策を立てんとするか、お尋ねいたします。
さらに税制問題の第三として、料飲店再開について所見をただしたい。
吉田首相は、常に裏も表もない公明正大なる
政治を行いたいと言われているが、水商賣といいながら、裏と表のあること、これほどはつきりしたものはありません。同じ
政府で、表口はほとんど商賣をとめておきながら、裏口でやつたものと見込んで税をかけて來る。ここでも、
正直者はばかを見るぞと
政府みずから教えておるにひとしい。裏と表のある、これほど不明朗にして不公正な
政治がありましようか。食糧の輸入を進駐軍の好意に仰いでいる今日、主食を初め、これに類した食糧はもとより禁ずべきであるが、一定の條件を嚴守せしめることによ
つて、すでにその実を完全に失
つている料飲業禁止令のごときは即刻解除して、容易にとれる税金はどしどし徴收することが、いかに賢明な策であるか、多く論ずる要はありますまい。せめて大衆料飲店は、至急これを再開せしむべきものと思うが、その用意ありや。しかして、料飲店再開により一体どれだけの税源を確保し得る見込みであるか、お伺いしたい。
次に、文教
政策についてお尋ねいたします。総理は、
施政方針演説においても特に文教
政策に言及し、文教刷新、民主教育の徹底こそ國家再建の根本であるから、
政府はできる限りの熱意をも
つてその実質的な完成を期したいと述べておられるが、現在地方における最大の問題は、六・三制義務教育の完成であると思います。これがためには、現在のごとき貧弱なる予算、國庫補助の程度をも
つてしては、地方農村の貧窮化ますます拍車をかけるのみで、その完成は遠い將來のように感ぜられます。六・三制問題をめぐり、地方財政のやりくり難から、遂に責をと
つて辞職する町村長、公職者がいかに多いかを見ても、想像がつくと思います。この際國庫補助の半額制を奮発して、七割補助を実現しなければ、実質的完成を期することはとうていおぼつかないと思いますが、これに対する
政府の所見を伺いたい。
なお次に、明年度から新制大学実施が予定されていますが、各府縣とも、現在の高等專門学校を大学に切りかえるにあた
つて、必ずしも地元の希望通りに行かず、相当複雜微妙な問題をはらんでいる地方もあるようであるが、これについて円満な切りかえを完全に行うだけの自信があるか。また、大学法の制定についても目下考慮をめぐらされていると聞くが、明春の新発足に間に合うためには相当急を要すると思いますが、今國会に提案の用意ありや。なお、その法案の骨子について承りたい。
なお
一つ、最も重大なる問題がここにある。というのは、近時教職員の志望者がきわめて少く、現に本年度師範学校志望者のごとき、募集人員の一割にも達しない学校すらあると聞きます。この教職忌避の傾向は、高專、大学に至るまで、とうとうとして今日の風潮をなしている。
從つて、無資格教員が六割を占める状態である。大学の数はふえても教授にその人を得ぬというありさまである。國家再建の人材養成に当る教育一界として、これほど憂うべき事態はないが、これというのも、教職員の
給與がきわめて惠まれない現下の情勢では、背に腹はかえられぬということより起る悲しむべき現象でありますが、これに対しまして、
政府は一体いかに善処する
考えをお持ちにな
つているか、承
つておきたい。
次は農林
対策でありますが、まず現
内閣における農林行政の基本
方針をお尋ねいたしたい。すなわち、食糧を
中心とする農産物の
生産力を向上せしめ、農林水産業経営の安定を保持するため、総合的見地に立つた
能率的にして適正なる施策を講ずるとともに、國土の保全につき、いかなる
方策を立てているかということを承りたい。たとえば、まず、第二次農地改革は本年度をも
つて一應打切り、第三次農地改革のごときはこれを行わないと言明した
政府は、しからば今後における農地
対策の
中心点をどこに置くか。第二に、從來実効の比較的あがらなかつた向きもある開墾事業を再檢討することによ
つて、土地改良
対策といかにかみ合せて行くか。第三に、近年頻々として起る水害を根本的に防止するためには、單なる目前の災害復旧にとどまることなく、今にして総合的、根本的な治山治水の
対策を打立てなければならぬと思うが、その
根本方針はいかがであるか第四に、近來、ともすれば、山林についても農地改革同様の措置がとられるのではないかという不安から、山地の保全と林業経営の安定を欠くおそれのあるきざしが、ぼつぼつ見えているがこの際いかにして積極的な民有林
対策を推進せんとするか。以上の四点について所見をただしたいと思います。
今日、農山漁村にとりまして最も切実な当面の問題は、
金詰まりと供出と換金の三つに要約されると思います。二年前には、全通貨の半分以上が農村漁村に集ま
つておつたが、今では二割程度に減少している。この分では、今後一年半もたてば、すつかり底を拂
つてしまうという形勢と思われる。しかも、税金を含めて公租公課は、実に農家收入の平均四割三分に達するという調子である。これでは悲鳴のあがるのもむりではありません。この際、農村
金融の緩和、農村課税の調整に関する
対策が至急立てられねばならぬと思いますが、所見を承りたいと存じます。
なお食糧
対策につきましては、今日のいわゆる米麦
中心の食生活を科学的に再檢討して総合食糧主義に切りかえるのが現在の環境にある
日本民族將來への食生活の目標でなければならぬと思いますが、その意味において、今日軽視されがちな沿岸漁業、有畜農業に力点を注いで、動物性蛋白給源を確保する根本
方策を講ずべきであると
考えまするが、これに対する
政府の
考え方を承
つておきたいと存じます。
最後に、民生
対策について伺いたい。まず厚生当局にお尋ねいたしたいのは、社会保障制度についてであります。社会保障制度については、憲法第二十五條に規定せられているところでありますが、
國民生活の窮乏化につれ、
国民の間からも、本制度実施への要望と期待は時を追うて高まりつつありますが、
政府は、これについていかなる具体的措置を講じているか、お答え願いたい。
なお、海外残留者引揚げの促進と引揚げ同胞及び留守家族の援護厚生については万全の措置を講じたいと、特に総理も
施政方針演説で述べておりまするが、終戰後すでに四年目に入
つているにかかわらず、引揚げは遅々として進まず、なおソ連地域を主として五十万人に近い同胞が残留しており、四度目の冬を朔北の地で送らねばならぬ悲境にあります。一方、引揚者及び留守家族も、現下の社会
経済状態に照して深刻なる様相を呈しつつあるとき、緊急に解決を要する問題も多いと存じますが、これらの
対策をいかに進められつつあるか、とくとお尋ねをいたしたい。
民生
対策の最後の問題として、住宅
対策についてお尋ねいたします。人間生活に欠くべからざる衣食住のうち、特に住生活は、相かわらず深刻なる社会問題として、迫り來る冬空のもとに大きくさらされている現状であります。建設省の推定によれば、全國の住宅不足数は約三百八十万戸であるが、一戸当り平均五人としても、さしあたり千九百万人が住宅難に直面いたしておるわけでありまして、住宅問題がいかに重大でありその解決がいかに焦眉の急を要するかは、多言を要せぬと思います。住宅
復興長期計画も立てられてはおりますけれども、なかなか目標には達しないという話であります。しかもその原因は、
資材面ではなくして、一に資金面にあるというのであるから、住宅
金融の專門機関を早急に設置して所要資金の融通を行うなり、それがさつそくむずかしいということならば、さしあたりの措置として、
特殊金融機関をしてこれに当らせるなりして、一戸でも多く、一日でも早く住宅難緩和に努力をしなければならぬが、その
対策はどうであるか。なお、今後の住宅
政策上考慮すべき問題として、民営による貸家
企業を育成すること、建築
統制の撤廃緩和をすることなどいろいろありますが、これら住宅問題に対しまして、一括してその
対策を承りたいと存じます。
以上十数項目にわた
つて、
吉田内閣施政の
根本方針並びに具体的施策について、質問申し上げた次第でありますが、最初に申し上げましたごとく、現
内閣はわが党
單独内閣であ
つて、
国民はあげて、わが党が
在野時代天下に公約したわが党独自の
政策をいかに具現するかということについて、多大の期待をも
つて、そのなすところを見守
つておるのであります。今日
国民が
政治に信を失いつつある原因の一半は
政界の不祥事件にありますが、さらにその大なる一半は、
政党が平素掲ぐるところの
主義政策を、一朝責任ある地位に立つた場合に、これを実現する熱意と実行力に欠くる憾みが多かつたところに原因すると
考えます。すなわち、
政治の信用を回復する道は、あくまで
政界の淨化と公約実行の二つあるのみであります。自己の
政治的責任を明らかにすることを念願されておる
吉田首相の
決意も、またこのほかに出るものではなかろうと信じます。この場合、明朗健全なる
民主政治の將來のために、
吉田内閣総理
大臣の、これに対する金鉄のごとき
決意を最後に望んで、私の
質疑を終る次第であります。(拍手)
〔
國務大臣吉田茂君登壇〕