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1948-12-04 第4回国会 衆議院 本会議 第3号
公式Web版
会議録情報
0
昭和二十三年十二月四日(土曜日)
議事日程
第二号 午後一時
開議
一
國務大臣
の
演説
————————————— ●本日の
会議
に付した
事件
國務大臣
の
演説
午後一時四十七分
開議
松岡駒吉
1
○
議長
(
松岡駒吉
君) これより
会議
を開きます。 ————◇————— 一
國務大臣
の
演説
松岡駒吉
2
○
議長
(
松岡駒吉
君)
内閣総理大臣
より
施政
の
方針
に関し、また
泉山國務大臣
より
経済
に関して発言を求められております。これを許します。
内閣総理大臣吉田茂
君。 〔
國務大臣吉田茂
君
登壇
〕
吉田茂
3
○
國務大臣
(
吉田茂
君) 私は、第四
國会
の初めにあたりまして、ここに
施政
の
方針
の
演説
をいたしますことを、欣快に存ずるものであります。 去月十五日、私の
演説
において述べました
通り
、現
内閣
は、
芦田内閣
総
辞職
後
首班指名
を受けた
少数党内閣
であります。この
少数党内閣
は、まず
國民
の信を問うために、世論に從い、
冒頭解散
をいたすべきものと信じておるのであります。(
拍手
)第三
國会
は、
芦田内閣
以來公約せられました
公務員法
及びその
関係法規
の制定のために召集せられた
臨時國会
であります。それゆえに、その通過のため、
関係方面
のあつせんによりまして、先月二十八日、
政府
と
社会党
、民主党、
國協党等主要政党
との間に協定が成立いたしたのであります。すなわち、
政府
は
公務員給與
及びその他
緊急予算
を第三回
國会
に
提出
し、野党はその
予算
の
提出
後二週間を経て
不信任案
を通過せしめて、衆議院を解散することにな
つて
おるのであります。(
拍手
)その
予算
は、去る二十九日
提出
せられ、現に本第四
國会
において審議せられつつある
緊急予算
であります。
從つて
、私の
施政方針演説
も、その
予算
を主としていたすものと、御了承願いたいのであります。 第一に、
國家公務員法
の
改正
に照應いたしまして、
公務員
の
生活
を保証し、その職務の
能率的運営
を
確保
するために、
國民経済
と
國家財政
の
現状
とをにらみ合せて、
公務員
に対する妥当なる
給與対策
を講ぜんとするものであります。 第二は
災害復旧費
であります。近時各種の
災害
が相次ぎ、
罹災地方
に対しては、まことに同情にたえないのであります。これが
根本対策
につきましては、組閣以來腐心し、苦慮しておるのでありまするが、とりあえず本
國会
に
提出
した
予算
中に
所要経費
の一部を計上いたしまして、迅速適切な
処置
を講ぜんとするものであります。(
拍手
) 次に、現在なお
海外在留者
は四十余万に上
つて
おりまして、四たび酷寒の寒い異境において越冬を余儀なくされておる
状況
は、まことに憂慮にたえないところであります。今後一段と引揚促進にあらゆる
努力
をいたしますとともに、
引揚げ同胞
及び
留守家族
の
援護厚生
につきましては万全の
処置
をいたしたいと
考え
ておるものであります。(
拍手
) その他
予算成立
後の
経済状況
、殊に
物價騰貴等
の必要に基きまして、
終戰処理費
、
價格調整費等
の
増額
を計上いたしております。 他面
政府
は、わが
党年來
の
主張
によりまして、
生産
第一
主義
にのつとり、
統制
の
整理簡素化
、
行政
の
整理
、
企業
の
合理化
を断行いたしまするとともに、
健全財政
の
方針
を堅持いたしまして、
收支
の
均衡
をはかることを
根本
といたして
財政計画
を立て、一層健全なる
予算
の
編成
に
努力
いたすつもりであります。(
拍手
) なお特につけ加えたきことは、
文教刷新
、
民主教育
の
徹底
であります。これが
國家再建
の
根本
であることは今さら申すまでもないのでありますが、新しい理想を目ざして発足いたしました新
教育制度
は、現に
実施
の途上にあるものであります。この
完成
のためには、今後容易ならぬ
努力
を要するのであります。
政府
は、
あと
う限りの熱意をもちまして、その実質的な
完成
を期したいと
考え
ております。
最後
に申し述べたいことは、
講和條
約についてであります。先般第三
國会
における決議にある
通り
、
講和條
約なき限り、わが國の独立は
確保
せられないのであります。わが
経済復興
は期し難いのであります。
講和條
約促進のためにも、まず第一に、わが國において
民主政治
が
確立
せられなければならぬのであります。(
拍手
) 新
憲法
の成立せる今日、これが運用を全からしむることは、その
精神
にのつとり、最も正しき
憲法
上の慣例をつくり上げることであります。このゆえをも
つて
、わが党は、新
憲法
のもとに行われました最初の総
選挙
の結果を尊重いたしまして、
首班
を当時の第一党たる
社会党
に讓り、
吉田内閣
は総
辞職
をいたしまして、(
拍手
)
民主政治
の
趣旨精神
の
貫徹徹底
を期したのであります。 〔発言する者多し〕
松岡駒吉
4
○
議長
(
松岡駒吉
君) 静粛に願います。
吉田茂
5
○
國務大臣
(
吉田茂
君) (続)次に、
主義政策
を異にせる
政党
の
連立内閣
は、遂に
内閣
を弱体化し、
敗戰後
の
國家再建
を
妨ぐる
ものと
考え
まして、当時わが民自党は入閣をがえんじなか
つたの
でありますが、爾後一年
有余
、政局は安定を欠き、
政党政派
の離合集散続出し、
経済
は萎縮し、
生産
は振わず、
紛擾
また
紛擾
、ために
片山内閣
より…… 〔発言する者多し〕
松岡駒吉
6
○
議長
(
松岡駒吉
君) 静粛に願います。
吉田茂
7
○
國務大臣
(
吉田茂
君) (続)
芦田内閣
に及び、遂に
疑獄事件
のために
吉田内閣
の出現に
至つたの
であります。(
拍手
) しかるに、
さき
の
首班選挙
にあたりまして、私を
首班
に推せるは百八十余、白票を投ぜるは二百
有余
にもかかわらず、
首班
の
指名
を受けて
國会
内における
少数党内閣たる
の事実の明白なる以上、早きに及んで正しい国民の批判をまつことこそ、
國民諸君
の期待するところであると
考え
るのであります。(
拍手
)
公党
たるものは、よろしく
國民
の命ずる、
國論
の命ずるがままに総
選挙
に当り、正しい
民主政治
を
確立
すべきものであると
考え
るのであります。(
拍手
) 第二には、わが
國復興再建
でありまするが、わが
國唯一
の
経済資源
は
生産的労働力
であります。正直にして勤勉、企画的にして能率的なるわが
國民
の
労働力
が、その
愛國的熱情
をも
つて
わが
國再建復興
に協力する事実の顕著なるに
至つて
こそ、外資の導入となり、資材の供給となるのであります。(
拍手
)すなわち、わが
國経済
の
復興
が
世界
の
繁栄増進
の一環をなすことを
列國
が承認するようにならなければならないのであります。 第三に、現下の
疑獄事件
に至りましては、わが國未
曽有
の
不祥事件
であります。
政府
は、これが究明に努め、再びかかる不祥事の起らないように
努力
したいと思うのであります。
政府
としては、強力に
綱紀粛正
の方途を講じ、政界の浄化と官紀の
粛正
をはかり、
政治
と
行政
に対する
國民
の
信頼と列國
の信用を
回復
しなければならぬと思うのであります。(
拍手
) 以上申し述べた三点の達成により、わが國は初めて
講和條
約を締結し、待望の
國際團体復帰
を許されるに至るものと信ずる次第であります。各
政党
は、しばらく
党利党略
を度外し、その
主義主張
に基いて互いに切磋琢磨し、わが
國再建復興
のために、
公党
として
民主政治
の
確立
、
経済復興
に
努力
せられたいものと、私は切望してやまないものであります。(
拍手
)
松岡駒吉
8
○
議長
(
松岡駒吉
君)
國務大臣泉山
三六君。 〔
國務大臣泉山
三六君
登壇
〕
泉山三六
9
○
國務大臣
(
泉山
三六君) ただいま、
吉田内閣総理大臣
より、本
内閣
の
施政
の
根本
について述べられたのでありまするが、私は
経済安定本部総務長官
として、この
機会
に、今後における
経済
並びに
財政施策
の
根本
となるべきものにつきまして、いささか所信を申し述べたいと存じます。(
拍手
)
終戰後
すでに三年
有余
を経過いたして、わが
國経済
は、
終戰当時
の
混乱状態
から脱却いたして、緩慢ながら
漸次回復
の道をたど
つて
参りましたことは、
占領軍当局
の好意ある
援助
によることはもちろんでございまするが、また
國民各位
の
困苦欠乏
に耐え、不断の
努力
を傾注せられました結果でありまして、まことに御同慶にたえない次第であります。しかしながら、わが
國経済
の
復興
は、今やようやくその緒についたばかりでありまして、
経済
を
再建
し、
國民生活
を安定し、進んで
世界経済
の
平和的発展
に寄與することができるようになりますには、前途なおまことに遼遠であると申さねばなりません。 すなわち、第一に鉱工業の
生産状況
は、
終戰以來
逐次
回復
の徴を示して
参つて
はおりますが、本年下期における
産業用配炭
の
減少
、この冬の
渇水期
における
電力需給
の不
円滑等
、当面の
事情
を考慮いたしますときは、必ずしも
樂観
を許さぬ
状況
にあるのであります。
貿易
の
状況
も、
輸出
においては最近やや
改善
の跡を見るに
至つたよう
でありますが、なお遺憾ながら不振の域を脱せず、本年上期の
実績
について見れば、昨年上期のそれを下まわるというまことに憂慮すべき
状態
であります。一方
輸入
は、おおむね予定
通り
進捗して、
國民生活
の安定と
日本経済
の
復興
とに寄與しているのでありますが、この結果は
輸出
入の著しい不
均衡
を來し、
米國
の巨額な対
日援助
によ
つて
、辛うじてそのしりがカバーせられている
状態
であります。 次に、
インフレーシヨン
の
総合指標
である
通貨
、
物價及び賃金
の
動き
を見ますと、
通貨
及び
物價
につきましては、この数箇月間、明らかにその
動き
は緩慢にな
つて
参つて
おりますが、
ひとり賃金
のみは急激なる
上昇
を示しているのでありまして、そのため
実質賃金
は
向上
し、
家計
の
赤字
も漸次
減少
の傾向をたど
つて來
てはおりますが、
生産
の
増加
を伴わない
名目賃金
の
追求
が、はたして眞に
生活
安定に資するものであるかないかを、深く反省しなければならないと
考え
るのであります。 次に
企業
の
状況
を見るに、労働問題の應接と
赤字
の
処理
に寧日なく、その
経済性
及び
自主性
を喪失している感が深いのでありまして、
企業
の実体は依然として
改善
されておらぬ
実情
であります。 さらに
國家財政面
を見ましても、
公務員給與
の
増額
、
災害復旧費
、
企業
の
赤字
の
処理等
のため
予算
の膨脹を余儀なくせられ、すでに
國会
に
提出
いたしましたように、
多額
の
補正予算
を必要とすることに相な
つたの
であります。以上
全般
を通じて、わが
國経済
は、
米國
の
援助
を主たる支柱として漸次
安定化
の方向をたどりつつあるとはいえ、
國民経済
全体としては、依然大きな
赤字経済
を継続している
現況
にあるのであります。 かかる
現況
を
打開
して、
國民経済
の
自立
を目ざし、
生産
の
増強
、
輸出
の
増進
を促進し、
経済
の安定及び
復興
をなし遂げることが、今われわれに課せられた課題でありますが、具体的の
施策
については、その時々の
経済情勢
と
調和
を保ちつつ、
生産
の
増強
、
流通秩序
の
確立
その他
経済
安定を目途とするもろもろの
施策
を総合的に
実施
する必要があると
考え
るのであります。 以上の構想に基いて、本
内閣
として特に重点を置かんとする諸
施策
について、以下申し述べたいと存じます。 まず第一に、
経済統制
の
整理簡素化
について申し上げます。
終戰以來
、
國民経済
の各分野にわた
つて
行われた
経済統制
は、それぞれ重要な役割を果して参
つたの
ではありますが、最近における
物資需給状況
の
改善
、
購買力
の
減退等経済條件
の変動にかんがみ、
統制全般
にわたり再検討を必要とする段階に到達していると
考え
るのであります。よ
つて
この際、不必要と
考え
られる
統制
は思い切
つて
これを廃止するとともに(
拍手
)他方、
國民経済
の安定と
復興
とに欠くことのできない基本的な
統制
は、その縮小された
領域
を
対象
として、むしろ強力に行
つて
参る
所存
であります。 そもそも
生産増強
の要諦は、各
企業
の積極的な創意と
責任
とにまつべきものでありまして、限られた
領域
における
統制方策
が明瞭にされるならば、すなわち明るい
統制
のもとに自由な
活動
は認められ、各
企業
は必ずや自己の
責任
において向うべきところを自覚し活発な
企業活動
も、これによ
つて
初めて期待できるのであります。(
拍手
)同時に
統制
の
整理
は、これによ
つて行政
の
簡素化
、
能率化
を促進することと相なるのでありまして、総合的な
失業対策
を行うことと相ま
つて
、強力な
行政整理
を断行し、
行政運営
の
的確敏速
と、
國庫財政
の
負担
を軽減すべき
基礎工作
も、これによ
つて
初めて可能となると考うるのであります。(
拍手
) 次に、
企業
の
合理化
について申し述べたいと存じます。 〔発言する者多し〕
松岡駒吉
10
○
議長
(
松岡駒吉
君)
靜粛
に願います。
泉山三六
11
○
國務大臣
(
泉山
三六君)(続)
経済再建
のためのあらゆる
施策
の成否を決するものは、一に
生産
の
増加
にあることは、申すまでもないのであります。しかるに、これら
経済活動
の任に当るべき各
企業
が、今日のようにその
経済性
と
自主性
を喪失している
状態
のもとにおいては、眞の
生産
の
回復
は期しがたいといわねばなりません。(
拍手
)この点にかんがみ、
企業
の
自主性
を
回復
し、その
運営
においては、あくまで
経済性
を
基盤
とし、も
つて
現在の
不健全性
を拂拭するとともに、
経済道義
の高揚を期することが緊要であります。加うるに、一本
爲替レート
の設定の時期も次第に迫りつつある今日、
企業
みずからの自覚と
努力
とによる
生産技術
の
向上
、経理の
健全化
とともに、
労働効率
の
引上げ等
による
企業
の
合理化
を急速に促進することこそ、わが
國経済
が
世界経済
に参加して確固たる地歩を
占むる
上に絶対不可欠の要件であるのであります。
從來企業
がその
自主性
と
経済性
とを喪失して参りました
原因
は、もとより多々あるのでありまするが、
政府
の
統制
と、また
政府
の保護のもとに甘んじて参りましたということも、また
企業
が非常に非合理的に相
なつ
た
原因
の一つと
考え
るのであります。今後
政府
といたしましては、
企業
の正常なる
採算性
の
確保
を期するとともに、健全なる資本の蓄積その他
経営基盤
の
強化等
に資する
施策
を行う
考え
でありますが、他面、
賃金
安定に関するいわゆる三
原則
の線に
沿つて
、
赤字融資
、
價格差補給金
の交付による
企業赤字
の
負担等
、
企業
の
経済性
及び
自主性
と相矛盾するがごとき
措置
は、これをとらざることを
基本方針
といたすものであります。(
拍手
) 次に、
貿易
の
振興
について申し上げます。
國民経済
の
復興
と
自立
のためには、まず
一定物資
の
輸入
が
要請
せられ、
從つて
、これに見合う
輸出
の
振興
こそ
経済復興
と
経済自立
の第一歩であるのでありますが、最近の
輸出貿易
の
実績
を見まするとき、まことに寒心すべき
状態
にあることは、すでに申し述べた
通り
であります。
貿易
不振の
原因
は、あるいは國内的に、あるいは國際的にすこぶる
複雜多岐
でありまして、これが
打開
は実に容易ならざるものがあるとは存じますが、
政府
におきましては、すみやかに有効適切なる
根本的措置
を講ずるとともに、
関係方面
の理解ある
援助
を
要請
すべきものについては、すみやかにこれを懇請して、
貿易
不振の
打開策
を講ずる
所存
であります。 次に、
食糧
問題について申し上げます。すでに十月より
労務加配
の
対象
の拡大と
配給量
の
増加
を、また十一月よりは
一般主食配給基準
の増量を実現することができたのであります。しかしながら、この
増配
の実現をも
つて
、ただちに今後の
食糧事情
に
樂観
を許すことはできないのであります。すなわち、このことは、
連合軍
の
援助
による
食糧
の
大量輸入
と
農民諸君
の理解ある
供出
の
完遂
とがあ
つて
初めて
確保
できるのでありまして、これにつきましては、
政府
も
食糧増産対策
に一層の
努力
をいたす
所存
であります。何とぞ
農民諸君
におかれましても、割当てられたる
供出
の
完遂
はもとより、さらに進んでは
超過供出
にも特段の
努力
を傾注いたされんことを、切望してやまぬのであります。なお
政府
においても、
供出完了
後の米の
自由販買
について、その時期と
方法
につき、
せつかく考慮
中であります。 〔発言する者多し〕
松岡駒吉
12
○
議長
(
松岡駒吉
君)
靜粛
に願います。
泉山三六
13
○
國務大臣
(
泉山
三六君)(続) なお本問題に関連して、
農地制度
の
改革
について一言いたしたいと存じます。昨年
以來実施中
の
農地
の
買收
、賣渡しは、
関係官民
の
努力
によりまして、今年一ぱいをも
つて
所期の
目的
を達成できることと相なりましたが、いわゆる第三次
農地制度
の
改革
というがごときことは、
政府
といたしまして、これを行う意思はないのであります。今後の
農村対策
といたしましては、
既開墾地
の
土地改良
、
開墾地
の選択、
治山治水等土地
の
総合的利用
を
確保
して、
農業生産
の
増強
に努めるとともに、せつかく創設した自作農の安定を期するため、
農業経営
の
合理化
をはかり、かつ
負担
を軽減し、
農業協同組合
を育成して
農村
の
経済力
を培養するよう、各般の
施策
を具体化して参りたい
所存
であります。なお、この際附言しておきたいことは、
生鮮食料品
の
統制
の
撤廃
及び
大衆料飲店
の
再開等
についても、
食糧需給
の
推移
とも見合い、その時期、
方法
を研究いたしておるのであります。 次に、労働問題について申し述べます。
政府
といたしましては、
労働組合運動
の健全なる発達をば衷心よりこいねがうものであります。そのためには、ますます
労働組合
の完全なる
民主化
をはかるとともに、その
自主性
及び
責任制
を
確立
し、
労資とも
に
秩序
と規律を重んじ、
労資関係
の正常化せらるるように
努力
を拂うこともちろんでありますが、不幸にして起ります
労働爭議
に対しましては、その早期かつ平和的な解決をはかるよう
努力
を重ねる
所存
であります。
政府
といたしましても、
勤労者
の
生産意欲
を高揚し、
労働生産性
の
向上
をはかりますことが、
生産増強
、
経済再建
の
推進力
となることを確信するものでありまして、
勤労者
の
生活
安定、特に
実質賃金
の
確保
をはかりますため一段と
努力
を惜しまないものでございます。 しかしながら、最近
産業界
の一部に見られますように、
勤労者
はいたずらに
名目賃金
の
追求
に走り、これに対し
企業
は、
政府補給金
、
赤字融資等
の不健全な給源によ
つて
これにこたえ、あるいは
製品價格
の
引上げ
を要求するごとき、
労資一体
の
企業努力
を忘れて安易な道に流れるようなことがあれば、インフレと
賃金
の
悪循環
を断つことができません。遂には
勤労者
の
実質賃金確保
の要求にも相沿わぬ結果となることをおそれるのであります。先般
賃金
問題に関連して明らかにせられましたいわゆる三
原則
も、まつたくこの
趣旨
に基くものにほかなりません。今や
主食
の
増配
その他
労務加配
の
増加等
により、さらにまた
実効價格
の停滞によ
つて
、
実質賃金
の
向上
、も
家計
安定の
増加
の
機会
にありますので、この際特に
賃金バランス
の維持、
賃金
の
安定化
に全
勤労者諸君
の理解ある御協力を
要請
いたしたいと存じます。(
拍手
) 次に、
物價対策
について申し述べます。昨年來の
物價
趨勢は、
一般物價指数
、また
実効價格指数
を見ましても、明らかに騰勢にはありますが、その
進行
は比較的緩慢であります。また、この
物價
騰勢の
緩慢化
と相並んで、
家計
の
安定度
は最近やや
増加
いたしたようには見えまするが、
國民経済
の
赤字
は決して解消しているわけでないのであります。その
赤字
は、
財政
か
企業
か
家計
かのいずれかに、あるいはまたこの三者に
負担
せしめるほかはない
現状
であります。しかるに、三者のいずれも、すでに
負担限度
の極限に近くな
つて
いることを
考え
ますとき、
財政負担
と
物價及び賃金
の
調和
ある
相関関係
と
平衡関係
とを
確立
し、かつ、
あと
う限りこれを堅持して動かないことが、
経済
の
安定化
のために特に望ましいところであります。從來の例に微しますと、
均衡
ある
生産
の見通しを十分に反映し得ない性急な
公定價格
の
引上げ
のごときは、
企業採算
の不
均衡
と
賃金
の
跛行的上昇
を招來しまして、この面から
物價
と
賃金
の
悪循環
を誘発するおそれがあるのでありまして、これらの
事情
を
考え
ますると、用意なくして
全面的價格改訂
を企てるがごときことは、この際絶対に避けたい
所存
でございます。(
拍手
)
最後
に、
さき
に
提出
いたしました
補正予算
に関連して、
財政金融
の
方策
について申し述べたいと存じます。一 まず、
補正予算
の
提出
を必要とするに至りました
基本的事情
について申しますならば、その第一は
一般賃金水準
の
上昇
に伴う
國家公務員
の
給與ベース
の切りかえの問題であります。御承知のように、現
在官公吏諸君
の
給與ベース
は、本年七月の
補正物價体系
に織り込まれた
民間工業平均賃金
に
均衡
をとつたものでありまするが、その後の
推移
に顧みまするに、
公務員給與
三千七百九十一円ペースのすえ置に対しまして
民間賃金
は
相当
上昇
し、一方
生計費
もまた
相当
膨脹いたしておるのでございます。なお、今回の
國家公務員法
の
改正
に伴い、
官公吏
は特殊の地位を與えられたのでありまして、この際
官公吏
の待遇を
改善
することが、ぜひとも必要と相な
つたの
であります。
補正予算提出
の
基本的事情
の第二は、最近における
災害
の続出と、これが
復旧対策
の問題であります。戰時中及び
戰後
を通ずる
國土
の荒廃は、まことに憂慮すべきものがありまして、特に本年度におきましては、
さき
に北陸の震災があり、さらに
アイオン台風
を初めとして各地の風水害が相次いで起りまして、これを放置するにおきましては、民生の安定、
経済
の
再建
の上に重大な支障となることを痛感せられるのでございます。 以上二点の
要請
を根幹とし、これに
終戰処理費
、
價格調整費等
必要やむを得ざる諸
経費
を計上いたし、ここに
補正予算
を
編成
することと相な
つたの
でありますが、その
編成方針
につきましては、
財政
の
健全性
を貫くことこそ
インフレーシヨン
を收束し、
経済
を常道に立て直すためのかぎであり、かつ
外國
の
援助
を期待し得る前提であることを確信いたしまして、あくまで
健全財政
の
方針
を堅待することといたした次第でございます。 すなわち第一に、
一般会計
及び
特別会計
を通じ嚴に
收支
の
均衡
を保持することとし、第二には、
鉄道運賃
、
通信料金
の改訂その他、一般
物價
に影響を及ぼし、インプレーシヨンを促進するような
歳入
に
財源
を求めることを避け、また第三には、
財政資金
全体の規模が、
國民負担
の
現状
から見て苛酷にわたらない範囲に納まるように、極力これを圧縮することとしたのであります。 以上の
原則
に從いまして
編成
しましたのが今回の
補正予算案
でありまして、
さき
に申し上げました
主要費目
以外にわたりましても、
既定経費
の不足あるいは
新規事項
の
追加等相当多額
の
歳出
の
要請
が存したのでありますが、これらは極力圧縮いたしまして、
一般会計総額
において、
歳出
、
歳入
とも五百八十六億余万円と決定いたしたのであります。 今後の
財政
の面からする
インフレーシヨン
の
進行
を阻止するため、実質的な
收支
の
均衡
をはかり、
経済
の
安定復興
と
生産
の
増強
とを第一目標として、
財政
と
國民経済
との
調和的発展
に深く留意しつつ、全体的見地に立つた幅のある
健全財政
の
運営
を実現いたしたい
所存
であります。なお、
財政収支
の時期的調整、
國家財政
と
地方財政
との間の
財源
及び
負担
の適切なる
配分等
につきましても、一連の問題として特段の配慮をいたしたい
考え
であります。
歳入確保
の点につきましては、
租税収入
、
專賣益金等
の確実な増収をはかるため、適切な
措置
を強力に推進して参りたいと
考え
ております。
現行税制
のもとにおける
國民
の
租税負担
は
相当
に重く、
國民経済
の
現状
からいたしまして、この
負担
に耐えますることは容易ならぬ
努力
が必要と思われるのでありますが、幸いに
國民各位
が
國家財政
の窮状をよく認識せられ、
租税完納
のためにさらに一段の御協力賜わらんことを、切に希望いたす次第であります。(
拍手
) なお
取引高税
の
撤廃
につきましては、
補正予算
中に織り込む運びに至らなかつたことを遺憾とするものでありますが……。 〔発言する者多し〕
松岡駒吉
14
○
議長
(
松岡駒吉
君) 静粛に願います。
泉山三六
15
○
國務大臣
(
泉山
三六君)(続) これを廃止するという
根本方針
にはかわりないのでありまして、これが
実施
の時期並びに
かわり財源
について、引続き研究を進めておる次第であります。 次に
金融政策
につきましては、
健全金融
を建前として、いわゆる
赤字融資
は一切これを行わない
方針
で進むものであります。しかしながら、現在各
方面
において悩まされつつある
金融梗塞
の
実情
は十分これを認識し、
金融
に一層の彈力性を賦與したいものと、くふういたしておるのであります。
インフレーシヨン
の
抑制方策
として、
金融
引締めの
方法
が即効的に有効であることは明らかでありますが、それが度を過しまして、
生産
を萎縮し、
企業意欲
を減退せしめるようなことがございましては、終局的に
インフレーシヨン克服
の
目的
を達することができないことも、これまたきわめて明瞭であります。この間の
事情
をよく勘案して、
金融
の
健全性
を保持しながら、しかも
生産
の
増強
、
経済
の
復興
に活路を與えるように、善処いたしたいと
考え
ておるのであります。(
拍手
)特に
中小企業
及び
農漁村金融
の
円滑化
については格別の
措置
を講じたいと存じております。しかして、このような
金融政策
が
通貨
の増発を招來せしめないためには、手形制度の活用等信用取引を発達助長せしめるとともに、貯蓄の
増強
に一段のくふうと
努力
を必要といたすことは、申すまでもありません。
從つて
、その見地からも、
通貨
に対して何らかの
措置
をとるというがごときことは、
政府
として、まつたく
考え
ておらないところであります。(
拍手
) なお、從來とかくの批判の
対象
とな
つて
おりました復
金融
資の問題についても、復金本來の使命を達成するに必要なものに限定するとともに、融資の
責任
を明確にするため、必要な仕組等について成案を急ぎつつある
現状
であります。 以上、私は本
内閣
として当面
実施
すべき重要政策に触れて参
つたの
でありますが、
政府
といたしましては、さらに五箇年後における
日本経済
の
自立
を目標として、困難なる現勢において見通し得る限りの
経済
條件と
経済情勢
を織り込みつつ、いわゆる
経済復興
五箇年計画の立案を急ぎつつあるのであります。しかしながら、これを
再建
の目標として
生産
の飛躍的
増強
と
國民生活
水準の
向上
を期するとともに、國際
收支
の
均衡
を
確保
して、現在アメリカの
援助
にささえられているわが
國民経済
を眞に更生
自立
せしめるためには、現在のわが國の置かれておりまする内外情勢から見ましても、まことに異常の
努力
を要するものと申さねばなりません。(
拍手
)幸いに全
國民諸君
の理解ある御支援によ
つて
政府
の諸
施策
が所期の実効をあげ得ますよう十分御協力くだされんことを切望してやまぬ次第であります。(
拍手
) —————————————
今村忠助
16
○今村忠助君 この際暫時休憩せられんことを望みます。
松岡駒吉
17
○
議長
(
松岡駒吉
君) 今村君の動議に御異議ありませんか 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
松岡駒吉
18
○
議長
(
松岡駒吉
君) 御異議なしと認めます。 暫時休憩いたします。 午後二時三十三分休憩 ————————————— 午後六時十時
開議
松岡駒吉
19
○
議長
(
松岡駒吉
君) 休憩前に引続き
会議
を開きます。 —————————————
今村忠助
20
○今村忠助君
國務大臣
の
演説
に対する質疑は延期し、明後六日定刻より本
会議
を開きこれを行うこととし、本日はこれにて散会せられんことを望みます。
松岡駒吉
21
○
議長
(
松岡駒吉
君) 今村君の動議に御異議ありませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
松岡駒吉
22
○
議長
(
松岡駒吉
君) 御異議なしと認めます。よ
つて
動議のごとく決しました。 本日はこれにて散会いたします。 午後六時十一分散会