○鍛冶
政府委員 ただいま上程になりました
罰金等臨時措置法案について、その提案の理由を御
説明申し上げます。
終戰以來の経済事情の変動、特に
貨幣價値の低落は著しいものがあり、これに伴いまして
裁判所の言い渡す罰金または科料の額もおのずから高めらるべきは自然の道理でありますが、御
承知のごとく、一般的に罰金の最低額及び科料の
最高額を定めた刑法総則の
規定は改められておらず、また最近制定にかかる刑罰法規は別といたしまして、刑法その他古く制定せられた刑罰法規においては、その各本條に定められる罰金の多額が今日の物價より見て不自然に低いために、これらの法令の罪に対しましては、適切な罰金刑を言い渡すことが困難な実情にあるのでありまして、この点を是正し、法定の罰金、科料の額を適当な程度に引き上げることがこの
法律案の目的とするところなのであります。
ところでかような目的を達成するのには、各刑罰法規自体を
改正して行く方法と、これとは別個の
法律で一時その特例を設ける方法と二途
考えられるわけでありますが、経済事情のいまだ十分に安定しない今日、ただちにこれらの法令、ことに基本法たる刑法などを
改正することは、まだその時期でないと
考えられますので、さしあたり後者の方法により、暫定的特例という形でこの
法律を立案いたしたのであります。
次にこの
法律案の内容の要点を申し述べますと、まず第一に、現在罰金は二十円以上、科料は二十円未満とな
つておりますのを引き上げまして、その五十倍たる千円以上、千円未満ということにいたしました。物價だけの比較からすれば、この倍率でもなお少いように見えますけれども、罰金の性質上今回はこの程度の引上げで相当だろうと
考えたのであります。次に各刑罰法規に定められた罰金の多額の引上げでありまして、これは本來すべての法令につきこれを行うことが望ましいのでありますが、短時日の間に立案しなければならなか
つた関係上、とりあえず今回はその必要性の最も強いと思われる刑法及び外二
法律についてだけその多額を五十倍に引き上げることとし、他の法規については次の機会に讓ることといたしました。ただこれらの法規中「五百円以下の罰金」「百円以下」というような
規定だけは、この
法律による新しい罰金体系と直接矛盾いたしますので、その限度においてこれを修正いたしてあります。なお條例の罰則につきましては、その性質上右の修正をこの
法律で行うことなく、それぞれの條例自体にゆだねることとし、その
手続のため六箇月の猶予期間を置くことにいたしました。このほか罰
金額の引上げに伴いまして、
執行猶予及び略式命令をなしうる限度、勾留、逮捕の制限に関する
金額等をある程度高め、なおいわゆる
未決勾留日数法定通算の折算額の引上げをも行
つているのであります。
以上この
法律案についてその大要を申し述べたのにとどまるのでありまして、なお詳細につきましては御質問によりお答えいたしたいと存じます。なにとぞ愼重御審議の程を希望いたす次第であります。
次にただいま上程に相なりました
司法警察職員等指定應急措置法の一部を
改正する
法律案の提案理由を御
説明いたします。
皇宮護衞官は、警察法第十
五條の
規定に基く
國家公安
委員会規則第二号皇宮警察局設置規程により、皇宮警察局に置かれた職員でありまして、皇居、御所、離宮、御用邸、陵墓、皇室用
財産及び
國家公安
委員会の指定する場所の警備並びに行幸啓の護衞に関する事務をつかさどるものでありますが、その職務の性質上、皇居、御所、離宮、御用邸、行在所もしくは御泊所における犯罪、陵墓もしくは皇室用
財産に関する罪または行幸啓の際における天皇、皇后、皇太后及び皇太子の生命、身体または
財産に対する罪につきまして、これに司法警察権を與え、この種の犯罪の搜査をさせることが適当と認められるのであります。しかし他面において皇宮護衞官は、現在総員数九百三十名でありまして、この種の犯罪の搜査をすべてみずから行うことは困難であり、当然他の司法警察職員もこの種の犯罪を搜査する必要があるのであります。そのために皇宮護衞官とその他の司法警察職員とは、その職務の
執行につきまして互いに協力する必要がある次第であります。しかして皇宮護衞官と司法警察職員に指定いたしますことは、その職務の性質から見まして、なるべく早い方が適当と認められますので、とりあえず本案のごとく應急措置法の一法を
改正することといたしたいのであります。
以上がこの
法律案を提出いたしました理由であります。何とぞ愼重御審議の上すみやかに可決せられんことを望みます。
次にただいま上程になりました
少年法を
改正する
法律等の一部を
改正する
法律案の提案理由を御
説明申し上げます。
すでに御
承知の
通り、
少年法を
改正する
法律は第二國会を通過し、本年七月十五日
法律第百六十八号をも
つて公布され、明年一月一日から施行されることとな
つているのでありますが、この
改正少年法の
規定によると、家庭
裁判所は少年に対する保護処分の一種として、地方少年保護
委員会の観察に付する処分をすることに相な
つております。この処分がありました場合には、地方少年保護
委員会はその処分の
執行機関として観察の実行に当る
趣旨であります。
現行
少年法においては、少年審判所が保護処分の
決定とその
執行を行うのでありますが、
改正少年法においては、新
憲法の
趣旨にかんがみ、この
決定と
執行とを分離し、保護処分は家庭
裁判所において
決定し、その
執行は
裁判所以外の機関すなわち地方少年保護
委員会において行うこととな
つたのであります。
改正少年法では、地方少年保護
委員会という機関が他の
法律によ
つて設置されるという予想のもとに、前述の
趣旨の
規定が設けられたのでありまするが、この地方少年保護
委員会を設置する
法律案は、諸般の事情によりいまだ國会に提出する運びに至
つていないのであります。このように地方少年保護
委員会が設置されていない状態のもとで
改正少年法が施行されますためには、地方少年保護
委員会の行う職権を行う機権を行う機関が必要なのであります。このような機関としては、從來の少年審判所をこれに充てることが最も適当であると思料されまするので、ただいま上程されました
法律案においては、その第
一條において、地方少年保護
委員会が成立するまでの間、その代行機関としての権能のみを有せしめ、少年審判所を存置しまするとともに、從來の
法律の
規定のうち少年の仮出獄、仮退院及び観察に関する
規定、仮出獄中または仮退院中の者及び観察中の者の監督に関する
規定は、心要な限度において、なおその効力を有せしむることといたしたのであります。この應急措置によりまして、
改正少年法の施行に支障なきを期することといたしたのであります。
次に
改正少年法と同時に第二國会を通過し、
法律第百六十九号をも
つて公布されました少年院法も
改正少年法と同様に明年一月一日から施行されるのでありますが、この
法律においては、少年院の收容者の処置に関連して、地方少年保護
委員会及び地方成人保護
委員会が予定されているのであります。しかるにこの二つの機関については、前に申し上げましたように、それを設置する
法律案がいまだ提出の運びに至
つておりませんので、この状態のもとで少年院法の施行に支障なきを期しまするため、ただいま上程された
法律案の第
二條において、これらの
委員会の行う職権を暫定的に法務総裁が行うこととしたのであります。
以上が
改正の要旨であります。何とど愼重御審議の上すみやかに御可決あらんことを希望いたします。