○内田
政府委員 堀江さんの御質問にお答え申し上げます。御質問の中に、本年末の通貨の現在額は二千七百億の
計画であつたが、現在は三千億を超えておるというお話がございましたが、御承知のように現在の通貨の発行額は、
日本が金本位
制度をと
つておりませんために、いわゆる管理通貨として、人間の理性によ
つて経済の
計画にマッチして、通貨の
限度をきめて参るという仕組みで、通貨発行
審議会というものがございます。その通貨発行
審議会によりまして、今年の九月当時までの通貨の発行
限度として、二千七百億ときめられておりましたが、十月以降年末までは、御承知のように
経済の
関係が非常に複雜に動いて参る期間である。と申しますのは、産業的にも年末金融の問題があり、貨政におきましては、ことに食糧管理
特別会計におきまして、供米の代金が非常に活溌に、大部分この期間に一年中のものが支拂われるという
関係がございますために、それを九月末におきまして三千三百億円を拡張いたしております。從いまして私
どもも、年末は通常の
状態で行けるならば、この三千三百億の
限度内で通貨は收まる。かように見て参りました。ところが最近におきまして、ただいまお話がございましたように、すでに三千億を突破し、年末ぎりぎりにはあるいは三千五百億程度にもなるだろう。こういう見通しが出て参りました。
從つてそこに限外発行が行われるような
状態になりました。これはお説のように必ずしもわれわれの
計画を破るような、金融政策がずさんであつたということではないのでございまして、現状におきます限り、実は米の供出の成績が非常によ過ぎて、そのために、食糧管理
特別会計から、当初見込みではこの十月から十二月までの期間に、大体千億円ぐらいの買上げ代金が支拂われるという見込みでおりましたところが、超過供出等のものもぽつぽつ出始める
状態でありまして、これが千五百億を越えるような
資金の支拂状況が現われて参りました。
從つてその
関係が主になりまして、年末には三千五百億ぐらい出て参る。これは一月あるいは二月等において供米があれば、その際に
資金が出るものが、繰上
つて十二月に一時的に出て参る。その見返りに米が
政府の倉庫に積まれる。こういう形が現われて参つた。さようにひとつ御承知を願いたいと思います。
その次に
復金の増資の問題でございますが、
復金の増資についても、これはお話のように本年において何べんもや
つておりますが、安定本部において一年中の総合
資金計画のようなものを樹立いたしました。この総合
資金計画は
復金等の貸出しばかりでなく、
一般金融機関の貸出し、逆に申しますと、産業
資金需要が、資材
関係あるいは
日本の
復興計画とマッチして、どのくらい
資金が必要であるか。さらにそれに財政
計画、國の
予算、あるいは地方財政、それらの面において、今日
一般会計においては、御承知の
通り公債は
一つも出しておりませんけれ
ども、鉄道とか、通信とか、食糧管理
特別会計、あるいは薪炭会計、その他の
特別会計において、あるいは
建設公債、あるいは品物と見合う
運轉資金の借入れ等がございまして、そのために公債、借入金、証券等の類を本年度で申しますと一千億程度の公債発行増、借入れの増があります。それをいかなる時期に、いかなる程度において、それらの金を調達して参るか。こういう財政
資金、特に
特別会計における財政
資金の
関係をも調整して、それらに対して一体貯蓄がどれくらいあるか。貯蓄の
関係を組合せまして、大体大きな
資金計画のわくを立てて参ります。さらにこれは全体を通じて
インフレにならないように、
経済の総合指標と言われております
國民所得の推算をいたしまして、
國民所得が一年間にあるいは一兆九千億円であるとか、あるいは物價、賃金の移動等によ
つては二兆四千億というような推計をいたしまして、
國民所得の中から一切の財政
資金も産業
資金も、あるいは消費
資金もまかなわれなければならない。これがまかなわれないときには結局
インフレにな
つて、物價もどんどん騰貴する。それでできるだけ
國民所得のわく内に納まるように、先ほど申しましたいろいろな
資金を集めて参るということで、おおよその見通しもついて参
つております。さよういたしました場合には産業
資金につきましては、先ほど
中川政務次官からもお話がありましたように、現在の過渡期の
経済事情のもとにおきましては、
一般の
金融機関からだけの貸出しができない。どうしても
復金の
制度に頼らなければならぬ。しかして
復金の
制度に頼ります場合には、
復金は
一般の預金も取扱いませんから、増資をいたして、その増資に対して
政府から拂込みをいたす。あるいは拂込みをいたすかわりに、増資のわく内で債券を発行して、その債券を消化して参る。消化して参ることは、先ほど申しました
國民所得のわく内で消化ができる。言いかえますと、
市中銀行等において消化ができるのであれば、これまた
インフレにならない。たとえ何べん増資をいたしましても、結局それは
國民所得の中でまかなわれるということになりますが、ただ現状におきましては残念ながら増資をしても、財政
資金から増資の全額の拂込みができておらない。しからば、その発行する債券は
一般の
國民所得、
市中銀行で消化されているかというと、これもなかなかさように参
つておりませんために、六割とか七割というものは
日本銀行がこれを引取
つて、
復金に金を入れておる。こういう事情にな
つて参
つておる。そこにおつしやるような
復金インフレと言われる余地が残るのだろうと思います。從いまして今後
復金というものは、安定本部にいたしましてもにわかにこの
制度をやめて行くわけには行かないと思います。今後特に
経済復興五箇年
計画をや
つて参ります場合には、
長期の
資金は
一般の
金融機関からはできないから、そこで
復金を
運用の形はいかようにいたしましてもぜひ使いたい。この場合に増資もいたすでありましよう。今度の百億ばかりでなしに、百億の
限度が一ぱいになりました場合には増資をいたしましよう。ただその増資の中を、今後としては國が財政
計画の中において
拂い込んで参る。あるいはそれがどうしても
拂い込めない場合には、日銀が背負い込んで通貨の増発にならないように、
一般金融機関で消化できるように仕向けて参りたい。かような仕組みで
資金計画及びその
運用をや
つて参りたいと思います。
なおまた全般的の
インフレの問題でありますが、昨年十二月末における通貨の発行高は二千二百億が
ちよつと切れるくらい。二千百九十六、七億だつたと思います。それに今年末が三千かりに五百億に
なつたといたしますと、千三百億くらいの通貨の増発になりますので、この割合はおそらく六〇%増くらいでありましようか。しかるに、それは本年の事情でございますが、昨年に対比いたしますと、昨年の初め、言いかえますと、一昨年の末は通貨の発行高はおそらく九百億台だつたと思います。それが先ほど申しましたように、昨年末には二千二百億近く
なつた、すなわち千二百五十億くらい昨年は通貨がふえた。
ちようど昨年の通貨のふえ方と本年の通貨のふえ方は、大体絶対量においてとんとんである。若干今年の方が多くはございますが、パーセンテージにいたしますと、そこに非常な違いがあります。去年は通貨が一年間に一二五%くらいの増加に相
なつたと思います。それが本年はただいま申しましたように六〇%程度で納まるということは、これは通貨のふえますことはいいことではございませんが、世間によく言われますように、本年は
インフレの足並みも大分緩和して参つた。これは通貨ばかりではなしに、物價ことに公定價格は改訂がございましたけれ
ども、公定とやみとをとりまぜました実効價格等の
動き方も、昨年に比べまして非常に緩和して参
つておる。その間通貨がふえておりますが、生産自身も昨年に比べて、私
どもの計算で一六・七%パーセント昨年よりも実質的に生産がふえておると思います。これは
昭和六年あるいは
昭和十年、十一年等に比べますと、五、六十パーセントのところを低迷しておる困つた
状態ではございますが、徐々にではありますけれ
ども生産がふえて参つた。生産が一七・八パーセントふえ、物價は実効價格にして四、五十パーセント上
つておる。こういう
状態のもとにおいては、通貨が六〇%くらいふえておることは、物價なり生産の事情から見ると、必ずしも
惡い状態ではない。しかし、これは油断するわけには参らない。通貨がふえて参るのは、信用取引も徐々に回復しているでしようし、退藏通貨も引出されて使われているでしようから、この辺でぜひとどめたいという氣持で、安定本部も大きなところから見ておりまして、
一つの政党からの政策だけで左に動いたり右に動いたりしないで、
日本の
経済安定のために、安定本部としては回復を着実にや
つて参
つております。