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松元説明員 今回は、今まで
漁業調整委員会の機能については御説明いたしましたので、
漁業調整委員会の組織につきまして御説明いたします。
漁業調整委員会は、海区
漁業調整委員会、
連合海区
漁業調整委員会、
市町村漁業調整委員会の三種類になります。それから
中央漁業調整審議会は、形式上は
漁業調整委員会へ入れておりませんが、実質上は
漁業調整委員会の一種でございます。これはその組織も権限もその他の
委員会と
違つておりますために、名称も
審議会という名称を使
つておりますが、実質は
漁業調整委員会の一種であります。
海区
漁業調整委員会は大体一つの縣を三つないし四つくらいに
漁業状況の同じようなところを見てつくりまして、その海区ごとに置くわけでございます。全國で大体二百七、八十くらいになる予定であります。これが一番
中枢的機能を営むわけでありますが、その
下部機構としまして、
市町村單位に
市町村漁業調整委員会を置きます。それから海区と海区にまたがる問題、この海区
委員会は大体
漁業状況の同じようなところを單位として置くわけですが、どうしても海区と海区にまたがる問題がありますから、この問題を解決するために
連合海区
漁業調整委員会を随時必要に應じてつくります。但し
瀬戸内海だけは、海区と海区にまたがる問題が非常に複雜に入り組んでおりますので、常設の
瀬戸内海連合海区
漁業調整委員会を設けております。これが
委員会設置の一般の原則でありますが、ただ
北海道につきましては特例を設けております。
北海道は
市町村の区域が相当廣うございますし、
漁業状況から申しましても、大体内地で海区にわけた單位が
北海道ではほぼ
市町村單位にあた
つております。その関係で
市町村ごとに海区
漁業調整委員会を置いております。その
代り市町村委員会は置きません。そうして海区
委員会に
市町村委員会の権限も両方営ましております。
漁業調整委員会の組織は
漁民が
選挙した
委員を主体としまして、これに知事の選任した
委員を若干名加えております。海区
委員会の
委員の人数は原則として十名、そのうち七名が
漁民の中から
漁民が
選挙した
委員、残りの三名が知事が
学識経驗者の中から選任した
委員であります。この
選挙権及び
被選挙権でございますが、これが非常にむずかしいものにな
つております。大体の考え方は、
相当程度に
漁業で飯を食
つている人間、これに
選挙権及び
被選挙権を持たせようということにな
つております。この
相当程度に
漁業で飯を食
つている人間ということを、技術上どうや
つてきめるかということがなかなかむずかしいわけであります。
從つて一應原則として、
関係市町村の区域内に住所または
事業場を有する者であ
つて、一年に九十日以上漁船を使用する
漁業を営むか、あるいは漁船を使用して行う
水産動植物の採捕または養殖に從事する者、これに
選挙権及び
被選挙権を認めております。しかしこの原則に対しまして、各海区によ
つていろいろ特殊の事情がありますから、今申しました
漁業者の範囲をあるいは拡張することもございますし、縮小することもございます。その点は知事がその海区の事情に應じて、海区
漁業調整委員会の意見を聞いてきめるようにしております。たとえば一年に九十日以上というところを、地域によ
つては、この
漁業では一年に五十日以上であれば資格があるとか、あるいは逆に百五十日以上でなければ資格がないとか、あるいは漁船を使わない
漁業であ
つても、あまでありますとか、そういうものについては、漁船を使わなくても
選挙権はあるというふうに範囲をかえられるようにいたしております。この中で一年に九十日以上
漁業を営むかどうか、この判定が実は非常にむずかしいわけであります。形式上はこの
選挙は都道府縣の
選挙管理委員会が管理することにな
つておりまして、
選挙人名簿は
市町村の
選挙管理委員会がつくることにな
つておりますが、実際問題として、この
選挙管理委員会で一年九十日以上
漁業をやるかどうかの判定はなかなかつかないわけであります。
從つて具体問題になると相当紛糾が起るかもしれませんが、この点どうにも明確な線の
引きようがなかつたわけであります。農地の場合ですと三反歩以上耕作しているとか、あるいは三反歩以上土地を持
つているとかいうことで、三反歩という明確な基準がありますから、非常にはつきりするわけであります。
漁業の場合、そういうふうな明確な線はどうしても引けなかつたわけであります。それで一年に九十日という線を引いたわけですが、この判定は末端では大体
漁民の
社会通念できめて行くよりなかろうと思
つております。この九十日というのは、現実に沖へ行
つてやる日数ではありません。
準備期間ももちろん含んでおります。
從つてその判定がますます困難にな
つて來るわけであります。そこで
選挙しましたあとから、あの男は九十日の資格がなかつたから
選挙権がないのだとい
つて、
選挙無効になるおそれが生じますために、普通の
選挙とは違いまして、一旦
選挙権を認めて
選挙した以上は、
選挙の効果を
爭わせないような措置が必要ではないかと考えております。それからこの
選挙は農業と違いまして、
地主代表何名、
小作代表何名、
自作代表何名というふうな
利益代表制にはいたしておりません。この点は一番議論になる点ではないかと思いますが、
漁業の場合ですと、農業と違いまして
利害対立も非常に複雜にからま
つております。たとえば大きな対立を考えますと三つございます。まず
地域対立、つまり部落と部落間の対立、それから
業種対立、たとえば定置と刺網の対立、定置と小
づりの対立というふうに、業種間の対立がございます。また
経営者と
労働者、あるいは小
生産者というような階層的な対立もございます。そういうような対立がいろいろ複雜にからみ合
つておりますために、
利益代表制をとることができなかつたわけでございます。また事柄の性質上、
利益代表というものではなくて、この
委員はそういう利益ということから離れて、全体的見地から、最も公正に行動するという性質のものでございますから、思い切
つて全体
延べ選挙にしたわけであります。そうしますと理屈は確かに通るのでありますが、事実問題として、海区は縣を三つか四つに割つた單位でございますから、なかなかよその
市町村の人間のことはわかりません。そのために結果としては、あるいはきわめて
地域対立になるおそれもございますし、あるいはまた
業種対立にな
つて、ある業種ばかりたくさん出て、逆にある業種は出ないという危險性ももちろんございます。あるいはまた
経営者が全部出てしま
つて、
労働者あるいは小さな
漁業者、そういう零細な
漁民は少しも出ないということも、もちろん予想されます。その点は
漁民の判断にまかしております。最初の
選挙で妙な結果になるかもしれませんが、妙な結果になれば、
漁民が自分でさとるであろう。そうして次の
選挙には必ず
りつぱな選挙をしてくれるであろうとい
つて、
漁民の意識にまかしておるというふうにいたしております。またそういう
延べ選挙でございますから、場合によ
つてはある地区からちつとも出なかつた、あるいはまたある業種からちつとも出なかつたというふうになる
可能性がありますために、その
委員がその海区全体の事情を必ずしも知
つておるとは限らない、そのために
專門委員制をとりまして、
專門委員を十分に活動させるようにしております。実際問題として定置の問題を審議する場合には、
定置関係の人間を
專門委員に選ばなければ審議できない。この
專門委員は何人置くということを限定しておりませんし、必要に應じて随時置けるようにしております。もちろん
專門委員は
議決権はございません。
これが海区
委員会の
委員のきめ方でございますが、
市町村委員会も大体これになら
つておりまして、
市町村委員会は、
漁民が
漁民の中から
選挙した
漁民委員が七名、それからこの点は海区
委員会とは違うのですが、知事が
市町村の公益を代表すると認められる者の中から選んだ
委員が三名、合計十名でつくります。この
市町村の公益を代表する人間というのは、
学識経驗委員とは若干性質が違うのでありまして、場合によ
つてはこの
公益代表ということで、
漁民以外の勢力が
委員会を左右することも考えられるわけです。ただ一部におきまして、末端の
市町村においては
漁民だけで判断するのは危險だ、むしろ
漁民以外の人間も入れた方がいいのじやないか、たとえば引揚者の問題であるとか、
復員者の問題であるとか、そういう問題を処理するために、
市町村ではむしろ全体という見地から考えたらいいのではないかという議論もありまして、この
公益代表委員というものを認めたわけであります。
それから
選挙権及び
被選挙権は、これは大体海区
委員会の場合と同様でございますが、違う点は、海区
委員会の場合ですと「
関係市町村の区域内に住所又は
事業場を有する者」としておりまして、
事業場を有してお
つても
選挙権はございますが、
市町村委員会の場合ですと、
事業場を有する者は
選挙権はありません。住所を有する者に限定しております。これはこの二つの
委員会の権限にも関係しておるわけでございますが、海区
委員会の場合ですと、その
海区内の全部の
漁業に対して権限を持
つておる。よそから來る人間であろうと、その海区に住所を持
つておる人間であろうと、その
海区内で
漁業をする者に対しては全部持
つておる。そのために
選挙権も住所を有する者に限
つておらないことにしたわけであります。ところが
市町村委員会の場合にはこれと
違つて、
市町村の住民以外には権限が及ばない。つまりよそから入
つて來る者に対しては
市町村委員会は口をきけない、その
選挙権の方も限定して、住所を有する者に限つたわけであります。
北海道につきましては、先ほどどこに置くかという点で、一般の原則に対して特例を設けたわけですが、その関係上この
委員会の組織につきましても特例を設けまして、その権限が海区
委員会と
市町村委員会と両方の権限を持つというために、その構成も海区
委員会と
市町村委員会と両方からみ合せたようにしております。
從つて漁民が
選挙した
委員が七名、この点は同じですが、残りの三名のうち二名が
学識経驗委員、それから一名が
公益代表委員というふうにいたしております。
それから
連合海区
漁業調整委員会、これは常置のものではなくて、問題の
たびごとにつくるわけであります。そうして海区と海区にまたがる問題の処理でございますから、その
委員は関係の海区
委員会の
委員の中から同数の人間を互選してきめることにいたしております。これは同数にいたしませんと海区に不公平になるわけでございます。
從つて同数にしております。この海区
委員会の
委員と申しますと、
漁民委員だけでなくて、もちろん
学識経驗委員でもさしつかえございません。そのだれを出すかということは、各海区
委員会の自由であります。そのほかに必要があります場合には、
学識経驗委員、これを海区
委員会の
委員の中から選ばれた
委員の半分以下に限
つて置くことを認めております。同数の人間が出るからして、そのためにまとまりがつかない、それを裁くのが
学識経驗委員になるのではないかというふうに思
つております。一應この法律の建前では、海区
委員会というものは決して海区の利益を代表するものではない。
從つてよその海区の人間に対しても公正に行動するというふうに割り切
つてはおるわけですが、どうしても海区対立になりがちでございます。そのためによその海区からの人間はシヤツト・アウトする、自分の海区の人間に対して有利に扱うということが懸念されますから、この懸念を裁いてくれるのが
連合海区
漁業調整委員会の運用だろうというふうに思
つております。
この
漁業調整委員会の権限につきましては、前の説明で大体説明があつたことと思いますが、もう一度繰返しますと、大体大別いたしまして二つの権限を持つわけです。一つは知事の諮問に対して意見を述べるというふうに知事から聞かれて意見を述べるという形の権限、これと自分から積極的に動く場合の権限の二つ持
つております。つまり
漁業の免許をします場合には知事は海区
委員会の意見を聞いてきめる。それから
漁場計画をつくる場合には海区
委員会の意見を聞いてきめる。それから
漁業権の免許を與た後に、
漁業権に
制限條件をつけるとか、あるいはまた
漁業権の変更を許可するとか、あるいは取消すというような、
漁業権に関する重要な処分をする場合、この場合は知事が
委員会の意見を聞いてきめるわけでございます。それからこの権限は
漁業権の免許だけに限りませんので、法律では規定しておりませんが、許可についてもやはり意見を聞かせるつもりでおります。
取締規則をつくる場合でも、実際問題としてこの
委員会の意見を聞いてつくる。それに基いて許可をする場合にも
委員会の意見を聞くというふうにして、大体
委員会の意見を聞かせることにしております。この
委員会の意見を聞くと申しますと、この聞き方でございますが、これは單におざなりに聞く
諮問機関というようなものではなく、実際問題としてはこの
委員会の意見と
違つた決定は知事はまずできませんから、事実上はこの
委員会がきめるということになるのじやないかと予想しております。それから
委員会の方から積極的に動く場合、これは
委員会が
関係者に対して
漁業調整上必要な指示をすることができるのでございます。これは今度の
漁業法の建前が、從來の
漁業法では
漁業権というものを主体にしまして、
漁業権を免許して、その権利と権利の間で問題を解決して行くというふうにしておりましたけれども、今度は権利というものの範囲をぐつと縮めております。権利の範囲を縮めて、残りを
許可漁業にするとか、
自由漁業にしておいて、その間の
調整を指示でさばいて行くわけです。これは
漁業権で規律しますと、どうしても
権利者が強くなりますし、一旦権利となると、固定して
融通性がなくなります。その関係上
調整のしやすい、
融通性のある、具体的な必要に應じてこまかな注文をつける、そういう指示ということにして漁場の秩序を保
つて行こうと思
つておるわけでございます。
從つてこの指示がどの程度までうまくできるか、
漁民が実際この指示に対してどれほどの権威を認めて行くか、その指示に
從つて漁業して行くかによ
つて、今度の新しい
漁業法の成功、不成功はきま
つて來るわけでございます。ところが、この
委員会の指示という形、この
委員会システムというものは、これは相当
漁民がなれませんとなかなか運用しにくいものでございます。
漁民一般の通念では、
漁業会が
漁業権を持
つて、
漁業会の総会でいろいろ発言するという方が発言しやすいのであ
つて、
自分たちの代表を
委員に選んで、
委員会の指示でそのことをきめて行くというのは、なれなければなかなかうまく行かぬものでございますが、最初は多少うまく行かぬことがあ
つても、この指示というものを大いに活用して行きたいと思
つております。
この指示の
拘束力でございますが、
委員会が指示をしただけではただちに
法的効果はないわけでございます。
委員会がある指示をした、ところがその指示に対して言うことをきかなかつた人間があつた場合には、
委員会から知事に対して、指示に從わなかつた者に対して、指示に從えという申出をすることができる。そして知事がそれを審査いたしまして、もつともだと思う場合には、その指示に從えという
個別命令を出します。そしてその
個別命令に違反した場合に罰則がかか
つて來るというふうにいたしたのでございます。
從つて委員会のこの
漁業権の免許とか許可の場合に、実際
委員会が免許、許可をきめて行くという権限と、この指示という権限と、二つの大きな権限によりまして、事実上
調整委員会というものは、いわば漁場を管理するというような非常に強い権限を持つことになります。そこで先ほど申しましたこの
委員会の
選挙で、たれを
委員会の
委員に選ぶかということが、決定的な問題にな
つて來るわけです。この法律が施行になりましてから、実際
上免許、許可をするまでには二年間ございますから、その間の
準備期間の間に
漁民の意識を高めて、
選挙に関心を持たせるようにするということが、一番重要なことではないかと思
つております。
それから
市町村委員会であります。話は前後いたしますが、これは
沿海市町村には全部置きます。それから沿海でなくても、
漁民が相当おる
市町村には、たとえば
岡山縣で從來は
漁民がたくさんいた、海に沿
つていた所が埋立てのために海に沿わなくなつたというような地域では、海に沿わなくても
市町村委員会を置きます。それから
漁民数が非常に少い場合には置かないこともあります。その場合には、その近隣の
市町村委員会が権限を持つことになります。それから
漁民数が非常に少い場合には、二つ以上の
市町村を合して
市町村委員会をつくることもあります。それからまた
市町村内部の部落で非常に業態が違う場合には、
市町村を二つにわけまして、おのおのに
部落委員会を置くことも考えております。
それから
中央漁業調整審議会でありますが、これは先ほど申しました通り、その
委員会の構成も権限も海区
委員会や
市町村委員会と
違つておりますために、名称も
審議会としております。そこでこれは具体的な問題をさばくのでなくて、
漁業法の施行に関する
重要事項の
諮問機関ということにいたしております。これは
選挙ではございません。そして人数は十五人でございますが、その中で
漁民から選んだ
委員が十名、
学識経驗者の中から選んだ
委員が五名として、その選び方は
農林大臣の申出によ
つて、
内閣総理大臣が任命するというふうにいたしております。
委員の任期は二年でございますが、この二年が長いか短いかについていろいろ議論がございます。あまり長くなるとボス化するおそれがあると考えられます。逆にあまり短いと、
ほんとうの仕事ができないということも考えられます。
從つて一應二年という線を引いたわけでございます。以上大体
漁業調整委員会の組織でございます。
次は土地及び土地の
定着物の使用でございます。これは從來の
漁業法でも、ある程度土地を使用し得る規定は置いたのでございますが、それは目的が非常に限定されておりました。そしてある
漁業では
漁業を営む場合に
漁業権とか、漁船の許可とか、漁船、漁具のような通常の手段のほかに、土地及び土地の
定着物が必要不可欠であります。たとえば海藻などは海藻ほし場というものがどうしても必要にな
つて参ります。また
漁業をいたします以上、どうしても船を
引揚げるための
船入澗とか、
船揚場というものが必要不可欠にな
つて來るわけであります。從來こういう土地を個人が持
つておりまして、
漁業者がどうしてもそこを使わなければ困るというために、あたかも農地の
不在地主のような関係を生じておつたものが相当あつたわけであります。具体的に一番著しい例は、
北海道の海藻ほし場とか、あるいは
福井縣における
船入澗の問題とか、そういう問題があつたわけでございます。今度の
漁業制度の改正にあた
つては、單に
漁業権の改正だけでなくて、こういう
漁業権に必要不可欠の土地とか、その
定着物にも手をつけなければ
漁業政策ができないという見地から、こういうものに対して
使用権を設定できるようにしたわけでございます。一般に土地とか土地の
定着物とかの
代替性のないもの
——漁船、漁具でございますと金でかえ得るという
代替性がありますが、土地とか土地の
定着物には
代替性がありませんから、こういうものをある事業のためにかえるということがどうしても必要で、
土地使用法とか、
鉱業法とか
森林法とかいうものではいろいろ規定を設けておりますが、今まで
漁業は
公益事業でないという見地から、その
使用権を設定するとか、あるいは收用するとかいうことは、非常に限定されておつたわけでございますが、その点を今度は
廣げたわけでございます。その場合
漁業権に附属しておる土地とか建物、こういうものを從來の
漁業者が持
つて開放しないということも考えられますから、これも使用できる措置を講じたわけでございます。このやり方は、土地とか
定着物がほしいと思う人間は、知事に対して
認可申請をするわけでございます。知事は
認可申請がありますと、その
申請者と、土地とか土地の
定着物を持
つておる
権利者と
市町村漁業調整委員会、この三者の意見を聞いて、認可するかどうかをきめるわけでございます。認可がありますと、今度は
権利者に対して
使用権を設定してほしいということを協議するわけでございます。協議がまとまらなかつた場合には、
市町村漁業調整委員会は裁定をして、その裁定によ
つてきめて行くというふうにいたしております。これが土地またはその土地の
定着物の使用に関する規定でございます。
以上は大体海面におきます
漁業についての規定でございますが、内
水面漁業では、今度は全然規定を別にいたしております。
從來内水面漁業は、大体海と同じにいたしておりましたが、内水面の特殊の事情に應じての規律というものができておらなかつたわけであります。内水面の特色として一番大事な点は、内水面では増殖をしなければ
漁業が成立しない、増殖が
漁業の生命であるということが、内水面の一番重要な特色であります。内水面で増殖をしないと、てきめんに魚が枯渇してしまう、逆に増殖すればてきめんにその効果が現われるということにな
つております。もう一つの特色は、海の場合ですと、
漁業者は割合はつきりいたしております。相当專業の
漁民もございます。ところが内
水面漁業は、專業の
漁民というものが非常に少いのでございます。大多数は百姓が主体である
百姓漁民、さらにもつとたくさんあるのは、いわゆる
遊漁者でございます。このごく少数の
專業漁民と多数の
百姓漁民と、さらに多数の
遊漁者を対象といたしまするために、海と同じような規定ではいかぬわけであります。もちろん内水面と申しましても、霞ケ浦とか琵琶湖、あるいは
北海道の風蓮湖とか
猿澗湖、こういう所は海と同じような規律でや
つております。そのために内
水面といつても
主務大臣の指定する湖沼は別にいたしております。内水面では、今申しました
通り増殖が生命でございますから、まず増殖をしなければ
漁業権は免許しません。
從つて区画漁業権以外の免許はしないわけであります。從來は
專用漁業と申しまして、
ほんとうに増殖するのではなくて、ただ
補助金をもら
つてお
ざなりに孵化放流をや
つて行く、そうしてほかの人間をシヤツト・アウトするというように惡用されるものが多かつたのであります。
從つてこのために積極的に増殖をする
区画漁業権以外は免許は認めないことにしております。それから内水面は
関係者がたくさんあ
つて、関係の水系も非常に長大である。そのために個人が主体とな
つて管理することはなかなか困難でございます。たとえば
孵化放流をいたしましても、だれがとるかわからぬというわけで、
ほんとうに管理できませんから、個人が主体では増殖はまずできにくい、どうしても國がや
つて行かなければならぬというわけで、國が基本的な増殖をすることにしております。そしてそのほかに個人の責任でできることがあれば、
区画漁業権を免許して行こうというふうに考えます。
國が
増殖事業をいたします場合に、その財源として料金をと
つて行き、この料金を納めなければ魚をつ
つてはならぬというふうにしております。もちろんこれも全部の
漁業について料金をとるわけではありません。國が金をと
つて増殖をして行くというものに限
つております。ところが内水面の場合、はたしてこの料金がどのくらいとれるかという点が問題でございます。
專業漁民——あるいは專業でなくても
漁民であれば、何とかつかまえられるのですが、
遊漁者を対象にして、はたして料金をとれるかどうか。数から言うと数十万、百数十万になりますが、その人間からどれくらい金がとれるかということが一番難点になるわけでございます。相当國民の道義観念が行き渡
つておれば、金を納めますが、今の状態ですと、ただ盗みどりするということが十分考えられるわけであります。料金の納め方はやかましいことを言わないで、大体遊漁券というものを発行しまして、どこでも手軽に賣るようにしたいと思います。
漁業会でも、タバコ屋でも、駅の賣店でも賣るようにして、それを買いさえすればよいというふうにいたしております。この料金と漁区とは別問題でございまして、料金を納めれば何でも
漁業をや
つてよいかというと、そういうわけではありません。やはり数を限定する必要のある
漁業、たとえばえり梁
漁業とか網
漁業などは、料金のほかにやはり許可制度をもちろんしいております。料金の額は
漁業方法によ
つても違います。網の場合には幾ら、えり梁の場合には幾ら、つりの場合には幾ら。あるいは通用する地域によ
つて違えております。たとえば全國通用の遊漁券は幾ら、あるいはこの川の遊漁券は幾ら、あるいは時期によ
つても違えております。そういうふうに
漁業の種類、方法あるいは時期とか場所によ
つて、いろいろ料金のわくをかえて行こうと思
つております。この料金を財源にして、内水面における基本的な
増殖事業を行うわけでございますが、もちろん國がやると言いましても、國が役人を雇
つて全部やるわけではございません。重要なところは國が直接やることになりましようが、相当の部分は大体縣にやらせ、料金という形で納めたものを國がプールして、必要に應じて縣にわけてやる、縣はさらに地元の組合などを使
つて行くというふうに考えております。
從つて國がやるとい
つても、國が全部やるわけではなくて、料金のプールと増殖計画というふうにお考え願つたらよいのではないか。料金のプールと増殖計画をつくるのは國であ
つて、具体的の増殖行為は末端の
漁民がやるのではないかと考えます。
この内水面における水産物の採捕
増殖事業に関する事項を処理するために、都道府縣ごとに内水面漁場管理
委員会というものを置きます。これは
選挙ではございません。これは
選挙権を有する者をとらえにくいために
選挙にいたしておりません。また増殖計画を立てますために相当高度の技術的知識を必要といたします関係上、知事の選任にいたしております。これは
漁業者代表と、
遊漁者代表と、
学識経驗者を代表する者、この三者の中から知事が適当に選任して、合計十名でつくるということにいたしております。もちろん内水面漁場管理
委員会は縣一本でございますから、これは大体大綱を立てるのみであ
つて、実際の仕事は、さらにその下に各水系ごと、あるいは湖沼ごとに
專門委員会をつく
つて運用して行きたいと思
つております。これが内
水面漁業の概要でございます。
それから
瀬戸内海に限りましては、
瀬戸内海漁業調整事務局というものを設置することにしております。これは
瀬戸内海というものは、非常に入会関係が複雜でございまして、各縣が各縣限りの意思で規律するということはできません。たとえば
岡山縣でございますと、目の先の島が他の縣に入
つておりますので、縣限りでやることは実態に沿いませんので、
瀬戸内海というものは一單位として規律しなければならない。そのために
瀬戸内海につきましては、
連合海区
漁業調整委員会を一應設置しております。それに対應いたしまして、縣知事のみに任せないで、本省の出先機関を置いて、
瀬戸内海漁業調整事務局が、
瀬戸内海全般を掌握して行く。そうして縣知事を使
つて行くというふうに考えております。具体的に、免許は事務局がやるのか、あるいは知事がやるのか、あるいはどの許可は事務局が許可して、どの許可は知事が許可するという具体的のことは、まだ決定はしておりません。
最後に、これは少し特殊になりますが、指定遠洋
漁業についてであります。これは今度の
漁業法改正の趣旨とは、ちよつと違いまして、少し性格が別のものでございます。この指定遠洋
漁業についての規定は、大体大きくわけますと、從來と
違つている点は三つございます。
一つは許可の定数、数をはつきりきめるという点が一つでございます。もちろん從來も許可する以上は、定数ということは予想はされておりましたが、それがはつきりきま
つておりませんでした。それを今度は許可の定数というものは、はつきり合理的にきめて行こうというようにしております。これが第一点でございます。もう一つは、許可をする場合に、行政官廳の裁量権というものを、なるべく認めないというふうにいたしております。もう一つは、指定遠洋
漁業の許可は、船ごとに許可をするわけでございますが、その場合、船が移つたら、必ず許可もしてやる。たとえば許可を受けておる人から船を買つた場合には、買つた人間に必ず許可をするというふうに、船と許可と一致するようにいたしております。この三点が從來と違う点でございます。
從つて許可をする場合には、
漁業権の場合と同樣の考え方で、適格性がございます。適格性をパスした場合には、あとは優先順位というものは置いておりません。これは考え方としては、適格性がある者にはだれでも許可する、但し許可すべき数に対して、
申請者の数が非常に多い場合には、くじできめるというふうに、くじ引き制をと
つております。この点は、行政官廳の裁量権は入れられない、とい
つて、これを入札制にすることもできませんし、優先順位もきめがたい。そうしてまたこれは沿岸
漁業と違いまして、資本
漁業として確立しておるものでございますから、むしろ思い切
つてくじで公正にやらしたらよいのではないかというように考えまして、くじ引き制をと
つております。それから一旦許可をもらいますと、そのあと許可は、特別の事情がない限り続くように処置しております。
從つて許可の期間の満了した場合には、必ずさらに許可をする、いわば許可の更新というものを認めております。それから許可を受けた者が、許可を受けた船舶で
漁業をやめて、ほかの船舶で
漁業をやろうという場合にも、必ず許可をやるようにしております。許可を受けた船が滅失したり、沈沒した場合には、代船の建造も認めております。それから許可した船舶を相続したり、讓り受けたりした場合には、必ず許可をしてやるというふうにいたしております。こういうふうに、沿岸
漁業と
違つて資本
漁業の特殊性にかんがみまして、適格性さえあれば、だれでも自由に認めるという形にいたしております。それから過渡的な措置といたしまして、
漁業権の再割当と同樣な考え方で、この指定遠洋
漁業につきましても、現在許可を受けておる人間を一旦全部再審査いたします。但しこれは
漁業権の場合と違いまして、一旦消滅さして、新しく割当をし直すというのではなく
つて、先程申しました適格性があるかどうか、あるいは許可の不当な集中ではないかどうかという点を考えまして、大体この二つの條項にあてはまらない人間を落す、適格性のない人間は許可しない、あるいは不当に持ち過ぎておる人間は落していくというふうにして、再審査を行うことにいたしております。言い落しましたが、指定遠洋
漁業というのはどういう
漁業かと言いますと、大型捕鯨業と、以西トロール
漁業、以西底引遠洋かつおまぐろ
漁業、この四つでございます。大型捕鯨業というのは、南氷洋を別にしまして、沿岸捕鯨のうちで、ミンク以外の捕鯨船でございます。トロールは、これは以西に限
つております。現在以西しかございませんが、將來北洋トロールその他ができました場合には、これは指定遠洋の中に入れます。これにつきましては、許可の数はまだきめられないわけでございますから、落したわけであります。底引も以東は別にいたしまして、以西に限
つております。遠洋かつおまぐろと申しますのは、現在のかつおまぐろは二十トン以上でございますが、これは百トン以上でございます。これにはずれました以東底引でありますとか、あるいは母船式でありますとか、あるいは百トン以下のかつおまぐろ、これも本省の許可といたします点は、從來とかわりございません。
以上で大体大ざつぱの説明を終つたわけでございます。
施行法について説明を補足いたします。施行法のおもな規定は、これは補償に関する規定でございますが、これは前回御説明いたしました。そのほかの規定はつなぎの規定でございます。それは先議会を通過いたしました
漁業権等臨時措置法、この中に
漁業権の新規免許はしないとか、変更の許可はしない。あるいは讓渡抵当権の設定は認可を受けなければならないとか、あるいは
漁業権の賃付契約の解除は認可が必要であるというふうにいたしておりますが、これと同樣の措置を
漁業法施行法で講じております。つまり
漁業法施行法が施行になるまでは
漁業権等臨時措置法でや
つて行
つて、施行法が施行になりましたあとは、臨時措置法は廃止いたしまして、
漁業法は施行法で規律するというふうにいたしております。その他の施行法の規定は、大体先ほど御説明いたしました指定遠洋
漁業をもう一回再審査し直すという規定、それと農林省設置法を改正して、
瀬戸内海漁業調整事務局を設置するという規定、その他財團抵当法の改正でありますとか、そういうつなぎの技術的規定でございます。大体法律的技術的規定でございますから、特に御説明は省略させていただきます。