○多賀
委員 在伯、ブラジルにおる
日本人の問題につきましては、すでに昨年の九月二十一日の当
委員会において一度お尋ねいたしましたが、実は安心してお
つたのであります。その内容につきましては前会申し上げましたので、簡單にブラジルのサンパウロ市の中央警察部保安課長アルフレツド・アツシス警視の
報告書によ
つてこれを要約いたしますと、今次戰爭において
日本の降伏せる八月十五日を境として、超國家主義的狂信的一部の
日本人は、当國に居住する同國人、
日本人間に、
日本人は勝
つたという誤れる観念を流布せり。かかる観念は何ら根拠あるものにあらざりしも、
日本人の狂信的
性格に適合せるものか、たちまち廣く傳播せられ、彼らの居住する限り、僻遠の地といえ
ども通達せざるなく、多数の奉信者を獲得するに至れり。かくのごとき
状況のもと、当サンパウロ市に一
祕密結社が結成せられ、戰勝を信ずる同國人を結集して神道連盟と呼称したり。問題はこの神道連盟が、
日本はほんとうに負けたのであるという、いわゆる戰爭に負けたという認識派の
日本人を、血を血で洗うように、次から次へ主として指導者を殺してしま
つたのであります。この問題につきましては、在伯二十三万に余る
日本人に直接つなが
つており、
日本のこれらの肉身の人々が非常に心配をいたしまして、われわれブラジルに
関係を持
つた者のところに頻々として問合せがあるのでございます。先ほど申し上げましたように安心をいたしてお
つたのでありますが、その後
ちよい
ちよい地方の
新聞等で、多少氣にかかるような
新聞記事も見受けられたこともありましたが、とにかくその後は小康を得て、次第に平靜に帰しつつあるものと、希望的観測も手傳
つて大した心配もいたしていなか
つたんであります。ところが去る九月の四日付のブラジルの
新聞に、たとえば見出しを御紹介しますと「困
つた話、北パラナに特攻隊、まるでランペオン氣取り」とあ
つて、英雄氣取りでお
つたのを、劍銃を見つけられて、
日本人をさらに暗殺して歩こうという
計画が発覚したという
状況であります。さらに最近私のところに、十月五日付の通信でブラジルの指導的
立場におる三宅壽一という人から、このような神道連盟のま
つたく氣違いじみた報道が行われておるために、ブラジルにおる二十万の同胞は、町を歩くのにも戰々兢兢として、実際
日本が負けたという現実の上に立
つて在伯同胞の今後のいろいろの
計画を立てて行かなければならないのに、それを実践して行くことは、これらの背中に日の丸をつけた特攻隊員によ
つて非常に危險な状態にさらされるというので、日常満足な活動もできない
状況で非常に悩んでおるということを、十月五日付の私信で私によこしておるのであります。最近ブラジルの
新聞を見ますと、たとえばジユリオ・デ・サンパウロ
新聞の報道で、
日本移民を禁止せよ、評判の神道連盟のものすごい狂信ぶりは、一九三四年の法規をも
つて日本移民に制限を加えろ。一九三四年の移民制限というものは、
從來日本から二万人ずつ入
つてお
つた、それの二分制限、四百人しか入れないという制限をや
つたのでありますが、この
日本人を入れないという制限をするということの
措置は決して誤
つていなか
つた。これら
日本人の意図はいかに有害であり、いかに非ブラジル的であるかを、來るべき市議会にわれわれはこれらを指摘せんとする。ブラジルの
憲法において
日本人の移民の入國を禁止しようというような
意見さえ、この
新聞では社説で論じておるのであります。さらにエスタードという
新聞には、この神道連盟を呼称して、これら危險分子をわれわれの
世界からなくなしてしまう権利を規定し得るものはたれもおらぬのだろう。われらは
日本人に入
つてもら
つて労力を提供してもらうことは言うまでもないが、無差別な移民によ
つて外國から、狂信、暴力、残忍、非社会、非人道の輩が流入して來るに及んでは、遠からずしてこの國は統治すべからざる國家に陷
つてしまうだろうということを言
つておるのであります。このような事態に処して、
外務当局におきましてはいかなる対策を現在実践しつつあられるか、私の見解によれば、向うの方からもそういうことを要求して來ておるのでありますが、たとえばスポーツでブラジルに行
つていたなじみのある人、あるいは経済的にいろいろそれぞれの顏なじみの深い人が向うえ行
つて、直接
日本はこういう状態であるということを傳えるよりほかに手がないであろう。なるほど
新聞やら映画やら、いろいろ御
努力のあとは見られるのでありますが、皆途中でアメリカですべてとりかえられて、謀略的なものが入
つて來ている、
日本の家族から送る通信さえも、皆アメリカの謀略的な意図によ
つてわれわれのところにこういうものをよこしているんだと、これさえも彼らは信用しないというのですから、生きた、しかも顏なじみの人間が向うに実際に行
つて状況を説くよりほかに、しようがないと思います。これにはいろいろの現在の
日本の
立場から制約はありますが、このような
方法を
考えておられるかどうかということについても、一應御見解を承
つておきたいと思います。私は重ねて御
質問しませんから、これらの問題について現在の状態、これに対する当局の対策、これらについて御
説明を願いたいと思います。