○河井彌八君
只今議題となりました郵政省
設置法案並びに電氣通信省
設置法案につきまして、
内閣委員会においての
審議の
経過並びに結果を御
報告申上げます。
この両案が
内閣委員会に付託せられましたところ、衆
議院において先議権を持
つておりまして、本院に
送付せられましたのは今朝であります。從いまして
内閣委員会におきましては付託を受けまして以來数日間、連日予備審査を実行したのであります。而してその予備審査に当
つては逓信委員との連合会を開きまして愼重に審査を続けたのであります。今朝衆
議院から正式に議案が
送付せられましたので、今朝初めて
内閣の本
委員会を開きまして審査をいたしました。そうして結局この両案は参
議院において可決すべきものなりと
議決いたしたのであります。その審査の内容につきまして、これからできるだけ
簡單に申上げたいと思います。
この両案は、逓信省を二つに分ける、そうして郵政省及び電氣通信省、この二省を
設置するという案であります。その二分する理由はどこにあるかと申しますると、第一には郵便貯金及び保險、そういう事務と、一方に電氣通信に関する事業、電波監督行政などは全然違つた種類のものである。ひとしくこれは公共の通信事業でありまするけれども、その樣式は全く違つた事業であるから、これを一つの逓信省において取扱うということは不合理であるという一点、それからもう一つは、この二つの違つたものをば別々にいたしまして、それぞれその特色を発揮いたしまして、日本の現在におけるがごとく非常に能率の低いこの通信業務をば世界の水準にまで上げなければならん。これを上げるためには両省に分つのが適当であるという点、これらの二つが両省に分ける主な理由と認められたのであります。この両省に分けることにつきましては、連合軍の厚意について我々は感謝しなければなりません。即ち
昭和二十一年三月から、連合軍から非常な專門家が來まして、この逓信業務について研究をしました。それから、それに基きまして昨年の二月以降、日本も加わりまして專門家の調査をいたしました。そうしてその結果、先に前国会に提出せられたところの逓信省
設置法案というものが出たのであります。ところがこれは
議決を経ずして今期議会になつた。而して去る七月二十二日の連合軍総司令官の書簡によりまして、この二分案が
國会に提出せられたということになりましたのであります。而してこれは申すまでもなく両省
設置というのは、國家行政組織法の規定第三條第二項によ
つて設置せられたものであるのであります。
両省の所管
事項につきまして詳しく申述べますることは省きまするけれども、いずれも内部部局と
地方機関とに分れております。そうして郵政省におきましても電氣通信省におきましても、可なり沢山の局が設けられておるのであります。そうして殊に電氣通信省におきましては総務長官の官房というものが置かれるのであります。尚その外に附属の機関としてそれぞれ附属せられておるものがあるのであります。内部組織はそうでありますが、更に
地方機関といたしましても、やはり相当綿密に分れておるのであります。殊に電氣通信省におきましては四つの階段があるのであります。即ち
地方電氣通信局から現業の取扱局に至るまで四つの階段を経ております。その最末端の現業機関と申しますれば即ち郵便局でありまして、電信電話等の通信事務は郵便局に委託せられて行われるのであります。
この案を検討いたしますると、どういう特色が、どういう利益があるかということを考えて見ますると、先に申しました通り、逓信省の業務が違
つているものを二つに分けて、そうしておのおのその特色に
從つて能率を発揮するという点は、確かにこれは進歩した点であると考えるのであります。それから更にこの内部組織について見ましても、業務とか、事務とかいうものが系統的にこれは一貫しておる。一貫性がある。從來のごとくばらばらなやり方でないという点において特色が認められるのであります。更に又今度特に郵政省に監察局という監察制度が置かれたのであります。これも、これまでも監察制度は行われないことはなかつたのでありまするけれども、特にここに監察局というものを置きまして、そうして上の組織から末端の組織に至るまでその業務の実行について十分に徹底的に監査をするということ、これも又一つの時流に適合した
施設であると、かように考えるのであります。
それからこれらの両省の業務はどういうふうな会計組織によるかと申しますれば、それぞれ特別会計といたしまして、即ち郵政の特別会計、電氣通信特別会計というものを立てまして、自主性と特殊性とを発揮せしめるということであります。併しこの二つの特別会計法は今期議会には提出せられないのでありまして、次期に提出せられるということを
政府が言明いたしておるのであります。更にこの両省の人員は如何なる程度において充たされるかと申しますれば、原則として今日の逓信省の人員がその程度内において取扱われるということであります。もう一つ実施期は如何と申しますれば、明年の四月一日を以て実施するという計画であります。大体さような趣意のものでありまして、これに対しまして
委員会においての質疑應答は極めて沢山ありましたのでありますが、できるだけ
簡單に纏めたのを申上げて見たいと思います。
第一は、この両案が
國会を通過した場合において現在の逓信省を廃止する法案が出ておらないが、その廃止はどういうふうにして取扱うのであるか、又現在の逓信省の各部局等を両省の如何なる所に持
つて行くかというような、法的の
措置はどう執るかという事柄でありました。これは
政府において近くその案を検討いたしまして、次の
國会に逓信省の廃止案として提出するつもりであるという
説明でありました。
第二には、両省を置くということと、それから両省の内部の機関と外部機関というものを考えて見まするのに、極めて厖大なものとなる。現在の逓信省は八局一部であ
つて、外局が二つあるのであるが、この案によりますと、郵政省だけでも八局に分れる。そうして電氣通信省にあ
つては総務長官の外に十局二部を置き、外に一総務室、一研究所を置く。更に外局として二つの廳ができる。そしてその下に六部を置くというようなことであつたので、極めて厖大なものであるというのであります。これは、つまり行政の簡素化ということを今日必要と認めておるのに対する逆行ではないかという質問でありました。ところがこれに対しましては、成る程さように見えるか知れませんけれども、事務の或いは業務の十分な運用、十分な充実ができて行くということになれば、これは必ずしも余分なものではないというような考え方でありました。
更に第三の問題といたしましては、國家行政組織法第二十一條の規定に違反しておる嫌いがある。即ち現業官廳の機構については特別の除外例を設けておるのであるが、この両案については、例えば総務長官の
設置、或いは部を置く、或いは理事を置くというような点につきまして、余りこの除外例を濫用し過ぎておるのだという強い質問がありました。更に只今申しました通り、次官の下に、而して局長の上に総務長官を置く、或いは理事を置くというような点などについて、関連して強い反対的の質疑があつたのであります。これに対しましても相当の弁明がありましたのみならず、これはどうしても
政府の力によ
つては動かすことのできない点であるという意味まで述べられたのであります。
更に出先行政機関を整理するということは今日國民が一般に要望しておる点である。然るにこれに対して電氣通信省の
地方機関の組織には沢山の段階を重ねておるではないか、
從つてその中で或るものはこれを廃止してちつとも差支ないのではないかというような
意見等もありました。
尚、監察局につきましては特に郵政省に限
つてこれを置くのであ
つて、電氣通信省にはこれを置かないという点は均衡を得ないのである。又監察局というものを強いて置かずとも、これは大臣の官房にでも置いて置くなれば、それで十分監察ができるではないかという質問もあつたのであります。これに対しまして電氣通信省にはこれを置かないのは、主としてこれは機械力によ
つて運用せられるのであるから、それ程の必要はないと認めるのであるけれども、郵政省の仕事は主として多数の人の運営にかかるものであるから間違いが多く、どうしてもこれを監察する必要があるのだということを述べました。そして、それであるから局が必要である、電氣通信省におきましては部内においてこれを監察して行けばそれで足りるという考え方であつたのであります。
尚これらの両案を
審議する場合におきましては、一体
政府は行政機構を
改革をいたして、そして機構の簡素化を図り事務の能率の向上を企図しておるのであるが、この両案共に相当複雑な、又今日の日本の
現状からいえば実に贅沢過ぎる程大きな機構をここに認めるということになる虞れがある、そうなれば
政府の行政機構を簡素化するというようなその趣意と矛盾するのではないか、
從つて場合によ
つては参
議院においてこの両案をこのままに通過させるということはよろしくないではないか、というような心配が各委員の間にあつたのであります。
從つて政府は如何なる方法を以て行政機構を簡素化するかということについて
政府の方針を問うたのであります。これに対しまして岩本國務大臣が出席せられまして、
政府はどこまでも行政の簡素化及び能率の向上を図る。そのために近く閣議を決めてその方針を明らかにするつもりである。その結果が、既存の行政組織は勿論のこと、この両案と雖も
政府のこの方針と矛盾する点があるならば、これを改めて行くことに努力するということを申したのであります。
大体それらの
意見が主なものでありまして、その他、從業員の待遇の問題、或いは從業員の福利
施設の問題というようなこと、或いは又郵便或いは電信電話の料金を上げるかどうかというような問題等、いろいろありましたが、それらの点につきましては、ここに
報告を略します。
かくのごとくにして沢山の質疑應答を重ねましたが、要するに
委員会の全体の空氣といたしましては、この案については可なりまだ検討すべきものがあるということは認めたのでありまするが、何といたしましても会期も迫
つておるのでありまするし、一方においては衆
議院においてこれを無修正で可決して参つたということ、而うして衆
議院がこれを無修正に可決しなければならなかつたという事由等をここに参酌せられまして、
委員会におきましては、修正案を提出することは止めまして、直ちに
賛成か反対かという点について討論に入つたのであります。
討論におきましては、反対論者は、修正の
意見はこの際諸般の情勢に鑑みましてできないと思うから、止むを得ず本案に対して反対をするのである。その要点は、逓信省という一省をば、この二つの省に分割する根拠が極めて薄弱であるという点、それから又両省の機構が極めて複雑であ
つて今日の
実情には適していないという点、総務長官の制度は
國家公務員法の制定においてこれを認めない。ただ事業官廳等において特殊の例を認めるというのに、総務長官或いは理事制というようなものを採用した点などはよろしくない。それから又
地方機関が余りに複雜であるということもよろしくない。それから第三には、從業員が二つに分れる、即ち郵政と電氣通信と両方に分れる、それで殊に逓信の從業員は、同じく從業員であるところの國鉄の從業員と同性異質であるに拘わらず違つた取扱を受ける、即ち一般職員として取扱わせるということはよろしくないというような点を挙げまして、本案に反対をせられたのであります。
賛成論は、成る程この案については沢山の考究すべき点がある。併しながら連合國の厚意もあるし、又
政府がこれを出したところの、又支持したところの熱意もあるのであるから、この際これを認めようではないか。そうして殊に
政府において人員の増加をしない。又速かに行政整理の方針を立てて、そうして若しその趣意に照してこの両法が不適当であるならば、これが
改正に吝かでないというような点、それから殊に國際情勢から見まして、この今日のごとき日本の地位が通信
関係において漸次國際的な水準に進むことのできるということは極めて必要なことであるから、どうしてもこの案は、仮に若干の欠点があ
つてもこれを通過させなければならんというような
意見等があつたのであります。かようにして討論を終りまして、
採決いたしましたところが、
賛成の委員が六名、反対の委員が二名であつたのであります。かくのごとくにいたしまして両案は可決せられたのであります。このことを御
報告申上げたいと思うのであります。(
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