○武藤運十郎君 十月中における
不当財産取引調査特別委員会の
調査審議の状況を御報告申し上げたいと存じます。
十月十一日第三
國会が開会せられると同時に、第二
國会において設置せられました不当
財産取引
調査に関る特別
委員会とま
つたく同一の
委員会が設置せられ、前
委員会において
調査審議中の案件は、引き続き本
委員会において
調査を続行することにいたしました。去る六月三十日、第二
國会の本
会議において御報告をいたしました以後の
調査は、休会中のため
議長あてに書面報告をいたしておきましたが、本日、重要な部分はあわせてこれを御報告申し上げたいと存じます。
前回御報告申し上げました以後における本
委員会の
調査審議の主要なる案件は、兵器処理問題についての眞相究明、二、石炭國管問題に関する
調査、三、佐世保地区における隠退藏物資に関する問題の
調査、四、復金融資に関連せる昭和電工問題の
調査、五、大口やみ利得者に対する
調査、六、
官公吏の汚職に関する
調査、七、艦艇解撤に関する
調査などであります。右のうち、復金融資に関する
調査、大口やみ利得者に対する
調査、
官公吏の汚職に関する
調査及び艦艇解撤に関する
調査等は、それ小
委員会を設け、目下
調査の途上でありまして、いまだ御報告を申し上げる
段階に達しておりません。兵器処理問題及び佐世保地区における隠退藏物資問題は、一應
調査が終結いたしました。また石炭國管問題につきましては、いまだ
調査は緒論の
段階ともいうべき程度でありますが、一應中間的に御報告を申し上げたいと存じます。
第一。まず兵器処理問題に関する
調査結果の概要を申し上げます。
兵器処理に関する
調査は、すでに第一
國会に設置せられた隠退藏物資等に関する特別
委員会において取上げられ、引続き第二回
國会における
不当財産取引調査特別委員会において
調査を続行し、約十箇月にわた
つて厖大な資料を精査し、また現地を視察して綿密なる
調査を行い、並々ならぬ努力を傾倒いたしました。本
委員会に証人として喚問しました者は、東久邇稔彦君外五十名でありまして、十五回に及ぶ
委員会を開き、眞相究明に努めましたが、何分にも終戰直後の混乱時に際しての処分状況は、今日においては確実なる資料に乏しく、かつ兵器処理による物品は特殊の用途に限定せられたものが多いので、全般にわたる詳細克明なる
調査は、すこぶる困難をきわめました。本
委員会といたしましては、
調査の理由及びその眼目を次の諸点に置いたのであります。
一、
國民の血と汗とによ
つてあがなわれた莫大な兵器の処理が、はたして再建
日本の
経済復興と民生安定とに対してどれだけ寄與し得たか、その点を明白にする必要がある。
二、終戰時における軍保有物資の数量を明かにし、その処分状況の当否を究明し、も
つて責任の所在を明白にする必要がある。
三、兵器処理機構の実情を
調査し、兵器処理に関する経理及び業務実施についての当否を究明する必要がある。
四、兵器処理
委員会結成の経緯と、代行五社選定の事情を解明する必要がある。
五、兵器処理に関する
関係者の背任横領等の犯罪事実を究明し、監督上の
責任を明らかにする必要がある。
以上の見地において
調査いたしましたが、その結果、概要次のごとき結論に到達いたしました。
一、終戰直後の八月十四日、鈴木
内閣は、敗戰に処する緊急対策として、軍保有物資及び資材の緊急処分に関する閣議
決定をいたしましたが、この閣議
決定は、完全に
憲法並びにその他の法令を無視するものであります。さらに陸海軍高級官僚が、自己の
責任を追求せらるることを恐れ、これを緩和し、かつ將來もその勢力を保有するために
國家の
財産を不当に処置せんと意図したものでありまして、その
責任の糾明は、政治的にも、司法行政的にも、断固たる処置に出ずべきものと信ずるのであります。右閣議の
決定には、その冒頭に陸海軍はすみやかに
國民生活安定のために寄與し、も
つて積極的に軍民離間の間隙を防止するため、軍保有資材及び物資等につき隠密裡に緊急処分方
措置す、なお陸海軍以外の
政府所管物資等についても、右に準ず、ということが記述してあります。この緊急放出処分実施の結果は、軍
関係者による物資の爭奪となり、一部の
関係者のみに不当なる利得を與えたのみならず、やみとインフレの根源となり、経済界は不正を働く者によ
つて壟断せらるることになりました。そのため政治的にも、経済的にも、また社会的にも頽廃を來し、経済の復興を困難ならしめたことにとどまらず、ますますこれを深めるに至
つたのであります。
二、八月二十八日、東久邇
内閣においては、右の緊急放出停止について、昭和二十年八月十四日
開議決定、軍その他の保有する軍需用保有物資資材の緊急処分の件はこれを廃止す、との閣議
決定をなして、同日陸軍は、八月二十九日以降の緊急放出停止とともに、すでに拂下げまたは保管轉換したるものにつき回收可能なものはこれを回收し、しからざるものは、その内容を明らかにすべしとの通牒を発し、海軍においても放出とりやめの示達をしました。しかしながら、回收については、いずれもほとんど実効をあげ得なか
つたばかりか、とりやめの指示にもかかわらず日時を遡及して放出処分する等の不正が行われたのであります。これはま
つたく当時の
政府並びに軍首脳部及び指揮官の不注意と怠慢と言われるものであり、一部の軍人に
至つては、故意に不正行為をあえてしております。かかる処置は、軍官僚が
責任を免れるための形式的処置でありまして、当時の軍官僚組織がいかに無
責任きわまるものであ
つたかを立証して余りあるものといわなければなりません。(
拍手)
三、同年九月二十四日、連合軍最高司令部の覚書に基き、兵器及び軍需物費が
日本の
経済復興及び民生安定のために返還せらるることになり、これが受領官廳として内務省が指定せられました。内務省は
調査部を設けてその事務を担当いたしましたが、この業務は相当廣汎にして困難な仕事でありました。しかしながら、当時の
政府要路者は、この重要任務についての十分なる認識と関心を欠き、これを等閑視していたきらいがあ
つて、その人員、
予算等についても貧弱をきわめ、多くはあげて地方長官に実施業務を委任せざるを得なか
つたのであります。しかも地方廳は、中央の監督の手薄に乘じ、独断的
措置を專行して、一部腐敗官僚と不正業者との結託により拂下げ処分が行われ、各地に隠退藏物資を生む間隙を與えたのであります。もし当時の
政府、特に内務省と商工省が、返還物資に関する業務を重要視し、すみやかに陣容を整備して十分に地方廳、兵器処理
委員会並びに代行五社の兵器処理部を指揮監督いたしましたならば、
日本経済の復興と民主安定とのために一層の実効をあげ得たと考えられるのであります。いかに当時の
政府及び地方廳がま
つたく政治並びに行政の
責任を放擲し、利己的行為をたくましくしたものであるかが立証せられます。今後、この問題は別個の問題として、本
委員会が精力的にかつ徹底的に処理すべきことを痛感するのであります。(
拍手)
四、兵器処理の機構については、昭和二十年十一月五日、特殊物件処理
委員会において解体兵器等の処理機構に関する件が定められ、その根本
方針が
決定せられたのであります。すなわち、鉄のスクラツプについては
日本製鉄、
日本鋼管の二社、非鉄金属については神戸製鋼、扶桑金属、古河電氣の三社にそれぞれ分担処理せしむることとし、この五社を組合員として、いわゆる兵器処理
委員会を結成せしめたのであります。しかしながら、この兵器処理
委員会の結成は、明らかに
憲法並びにその他の法令に違反するものであり、不正の行政行為であることは、論をまたないところであります。五社の選定についても公正を欠いた点がすこぶる多く、これを一々的確に指摘しなければならないのでありますが、現在の
委員会の組織をも
つてしては、ほとんど不可能に近いのであります。さらに、
政府のこの
委員会に対する監督がきわめて不十分であ
つたため、
委員会はほとんど代行五社に
利益を與える機関とな
つたのであります。しかも、ここに最も驚くべきことは、兵器処理
委員会を構成する五社と兵器処理
委員会とは、実質上一体であるにもかかわらず、賣手と買手になり、ここに代金の
決定、数量の
決定等に十分なる不正をなすべき事態が発生したのであります。兵器拂下げにつき、
政府が一括して兵器処理
委員会に拂下げをなしたことは、右のごとく兵器処理機構が定められた以上当然のことではありますが、その拂下げ契約において、代金決済の方法を長く不確定の状態に置いたために、経費の支出が放漫に流れたきらいがあり、またその他の点についても契約の内容が不十分であつあたのでありまして、契約をなす際慎重を欠き、ために兵器処理
委員会が莫大な兵器を処理しながら、ほとんど
利益をあげ得なか
つた原因にな
つたと考えられるのであります。
五、兵器処理実施の実情について、その概要を申し上げますれば、右のごとく昭和二十年十月三十一日、日鉄、
日本鋼管、古河電氣、住友金属、神戸製鋼の五社を組合員として、民法上の組合である兵器処理
委員会を
設立し、各組合員は百万円を出資し、委員長に小松隆氏を互選したのであります。
委員会は鉄鋼部会と非鉄部会との二部会にわけ、主として前者は地上兵器、後者は航空兵器を担当し、部会内においては、地域別に五社各自の担当分野を定めて業務処理に当り、
委員会に事務局を設けて各社間の連絡統一をはか
つたのであります。しかながら、拂下げ物件の受領、解体、溶解、保管、運送等の作業より拂下げ処分に至るまで一切の実務は組合員たる担当五社に代行せしむることとして、
委員会と五社
代表者との間に業務実行契約を締結し、五社は各自独立の兵器処理部が設けられて、各社本來の会計と、独立した特別会計において経理せられたのであります。
兵器処理
委員会が回收した兵器の実際の数量は約百三十万トンでありますが、終戰時に存在した兵器の数量がこの程度であ
つたかどうかについては、各
関係方面にわたり鋭意
調査を進めましたが、残存兵器の総量を正確に把握することは、今日に
至つてはほとんど不可能のこととなり、その
調査の目的を達することのできなか
つたことはわれわれのはなはだ遺憾とするところであります。兵器処理物件の拂下げ並びに配分については、商工省の指示または監督の下に、中央配分と地方配分とにわけ、それぞれ処理要領に基いて処理したのでありますが、これらの業務実施のあとを監察して言い得ることは、解体作業費につき、請負業者らの一方的過大見積りを容認してその支出をなしたることや、拂下げ需要者が、中央配分として兵器処理特別
委員会または商工省鉱山局長の承認を得べきものを、故意に小口に数回にわけて地方配分とし、地方商工局長の承認を得てその目的を達しているなどの不正行為が指摘できるのであります。
兵器処理業務は、昭和二十年十二月ごろより開始せられ、翌二十一年八月ごろを最盛期とし、昭和二十二年九月には、おおむね回收作業を終わり、本年二月末までにおける廃兵器の回收量は三十一万トン、その総経費十五億円であります。右のうち販売したものは約八十二万トン、これが代金十二億四千万円であります。この差額二億六千万円の不足であります。他方、在庫の数量は約五十万トンでありますが、本年二月末日をも
つて同
委員会を
解散し、残務はすべて産業復興公團に引継ぐことにな
つたのであります。
以上、業務実施の結論として、兵器処理
委員会が
國家に與えた損益につき一言すれば、拂下げ契約の解除により、約五十万トンの回收物件を
政府に無償に返還し、これに対して
政府から、二億六千万円の未收経費の支拂を受けることにな
つているのであります。
從つて、
國家に與えた損益については、一に在庫五十余万トンの物件の價格または処理の結果いかんにかか
つておるのでありまして、産業復興公團の今後の処理の
責任まことに重大なるとともに、これが業務実施につき、一箇月八、九千万円の諸経費を要するがごときやり方に対しては、万全の監督をなすべきものと考えるのであります。兵器処理
委員会が引継ぎまでの処理において、二億六千万円の未收の経費支出をなしたことは、從來の経費支出が放漫のために、かかる結果を招來したとも言い得るのでありますが、一面、屑鉄、軽金属、再生塊の各公定價格が、業界の実情に沿わぬ、著しい低廉であ
つたことにもよるのでありまして、價格設定に関する行政的
措置の不注意、怠慢によることも、また
國家に不
利益を與えた有力な原因と言わなければなりません。
ちなみに、兵器処理
委員会が兵器処理に関し不正不当と認められる主要な事実を指摘すれば、交際費その他の名義を使用して支出の濫費をしたこと、会社のプロパーには特に安價に拂い下げたこと、ジユラルミンの再生総費の不当支拂いをしたこと、拂下兵器の横流しをしたことなどであります。
第二。次に石炭國管問題に関する
調査審議の現状を申し述べます。
石炭國管問題については、すでに一年以前、石炭國管案が議会に上程せられた当時より、業者の猛烈なる運動の裏に大規模な買收、餐應等の醜事実のあることが、廣く世間に流布せられておりました。しかしながら、疑惑の中心は、國権の最高機関たる
國会議員に関する贈收賄であり、
國会内における議決権の売買というべきものでありますから、本質的には、検察がつとにこれを取上ぐべき刑事問題であ
つたのであります。にもかかわらず、その規模の大なる、その
手段の巧妙なる点において、今日まで、あえて手を入れることができなか
つたのであります。しかしながら、みずからの手によ
つて政界の浄化をはからんとするわが
不当財産取引調査特別委員会は、政界の出血を覚悟の上で、断固この石炭國管問題の
調査に着手したのであります。(
拍手)
委員会としては、これを徹底的に究明するため、
日本石炭鉱業会
関係業者及び運動の拠点と目せられる旅館等より資料の
提出を求めて、鋭意
調査を続行いたして参りました。本
委員会は、九月一日以降十月十四日に至る間十回にわたる
委員会において、山川良一君外三十九名を証人として喚問し、その証言を求めて、眞相究明に努力を傾倒したのであります。元來、本件事案は、
國会議員の涜職に関する疑惑に指向せられた刑事問題に直結する
調査審議でありますから、公開せられた
委員会における証言のみによ
つて眞実を発見しようとすることは隔靴掻痒の感じがありますことは、けだしやむを得ないところであります。
從つて、本件に関する
調査の現況は、序論とも言うべき程度のものでありますが、しかし、この序論の程度においても、すでに國管
反対運動の資金に関して疑惑に包まれた様相が露呈しており、また國管
反対運動に関連して、幾多の刑罰法令違反の容疑事実が表面化していますので、本
委員会としては、しばらく基礎的
調査に專念し、刑罰法令違反容疑事実に関しては、今後における檢察廳の十分なる捜査に信頼して、檢察廳を激励し、かつその捜査の状況をを注視しつつ、適当な時期に再び
委員会を開催するつもりであります。(
拍手)
本
委員会における今日までの
調査の概要を申せば、次の
通りであります。
昭和二十二年六月中旬、商工
大臣より炭鉱業者に臨時石炭鉱業管理
法案が提示せられて、この案の立法化が進められるや、全國炭鉱業者は、炭鉱経営権の棚上げなりとして強力に
反対運動を展開しました。なかんずく、同
法案が閣議
決定を経て
衆議院に
提出せられるに及んで、全國炭鉱業者の
反対運動はいよいよ尖鋭化し、
日本石炭鉱業会は、理事会、総代会を開いて、正式に
反対決議をなし、これに呼應して、北海道、東部、西部、九州の各地域別石炭鉱業会もまたこれと同一歩調をと
つて、多数の
代表者を上京せしめ、
日本石炭鉱業会と地域別鉱業会とが一体とな
つて、連日多数の自動車を借り切り、各政党等に
反対陳情をなすとともに、この間、龍名館、
日本石炭鉱業会事務所を運動の拠点として、料亭等にも出入し、運動目的達成に奔走したのであります。
一方、九州方面の炭鉱業者は、かかる運動もなお手ぬるしとして、九州方面炭鉱業者より、同年六月分出炭量一トン当り十円の割合による運動費を賦課徴收し、さらに前月分出炭量に対するトン当り二円の割合によ
つて徴收した炭價問題の経費三十六万円をこの運動資金に繰入れ、合計一千万円以上を集めて特異の
反対運動を展開したのであります。この運動資金の会計
責任者である木曽重義君は、本
委員会に証人として喚問せられました際、右金員の使途に関して、旅費日当に五百七十六万円余、交通費に二百二十六万円余、通信費に七万円、宣傳費に三十七万円、雑費に六十一万余円、酒代に七十万円、総計九百七十八万余円を支出したと証言し、その計算書を
提出いたしておりますが、その使途については、いまだ疑惑を解消するに
至つておりません。
一方、西部石炭鉱業会は、会長俵田明君が中心とな
つて、同年四月分出炭量トン当り十四円ないし十五円の割合により、数回にわけて合計百十二万円余の運動費を徴收して、
反対運動を継続し、その一部である大阪部会は、田中彰次、肥田理吉の両君が中心とな
つて國管
反対の街頭運動を展開し、立看板、ポスターなどを多数掲示、頒布したのであります。
この間、
日本自由党は石炭國管対策
委員会を設置し、植原悦二郎君が委員長となり、所属議員数名を一班として数班を
編成し、北海道、常磐、西部、九州の各方面の炭鉱の実地視察におもむきましが、その際、視察者一名につき三千円ないし五千円の手当を支給しました。しかしてこの費用は、植原君が個人として友人より借り入れた十五万円をも
つてまかな
つたと証言しておるのであります。
一方、民主党においては、当時の党務部長岡部得三君が坪川信三、
川崎秀二両君に五万円内外の金を供與した事実及びこれが返却せられた事実の証書がありますが、この金銭授受の
趣旨については、証言によ
つては必ずしも明白にせられなか
つたうらみがあるのであります。
また、
國会議員の一部には当然党議に服すべく考えられたのに、これに反し、あるいは欠席をなし、あるいは脱党する者があ
つて、(
拍手)石炭國管案の
審議は、すこぶる複雑混乱をきわめたことは、御承知の
通りでありまして、この間における疑惑の究明は後日に期したいと考えるのであります。
なお、
日本炭鉱業業会の運動経費は、主として会合費、交通費等に使用せられ、会食費には百四十五万七千余円が支拂われております。このうち、石炭國管
反対運動に関連しての費用は、その全部か、あるいは一部かについては、支出傳票等が杜撰のため、明らかにし得ないのであります。交通費については、
日本石炭鉱業会は、元來三台の自家用自動車を所有していたのでありますが、さらに、昭和二十二年八月から十二月までの間に貸切自動車使用料として合計六十五万余円を支拂
つているのでありまして、
日本石炭鉱業会がいかに活発に
反対運動をなしていたかをうかがい得るのであります。また、九州石炭鉱業会所属の業者は、昭和二十二年七月より同年十二月に至る約半年の長期にわたり交互に上京滞在して、それぞれ
反対運動を続けたのであります。特に、北九州地区のいわゆる旧互助会のメンバーが、北九州石炭株式会社の職員とともに総力をあげて活躍したことは顕著でありまして、その運動の指導者ともくすべきものは、竹内禮藏、木曽重義、原口秀雄、上田清次郎、田籠寅吉、野見山佐一の
諸君であります。その他、藤井則文、橋上保、渡邉正夫、田籠勝、有吉満の
諸君等三十数名の石炭業者がこれに協力して活発に動いたと思われるのであります。(
拍手)
以上、石炭國管
反対運動に関する
調査の緒論的
段階における概要を
中間報告をいたしたのでありますが、本問題の今後における本格的展開の後に、さらに詳細なる報告をいたしたいと存じます。(
拍手)
第三。次に佐世保地区における隠対藏物資に関する
調査について、その概要を申し述べます。
本件につき、本
委員会は、本年七月以降九月に至る間に、北村徳太郎君外八名の証人を喚問して、長崎縣佐世保地区における佐世保船舶工業株式会社をめぐる隠退藏物資等に関し証言を求めて、眞相を
調査いたしたのでありますが、その概略は次の
通りであります。
佐世保船舶工業株式会社は、北村氏が社長当時、社長あてになされた連合軍総司令部の指令に基き、昭和二十二年七月十五日現在における非鉄金属の在庫数量を報告すべきことにな
つてお
つたのでありますが、同社が同年九月二十二日附で届出をなした報告には、非鉄金属が、当時の價格にして約四百万円が漏れており、その物品は、起重機を使用して航空母艦隼鷹を解体した船底に隠匿したり、または倉庫、地下室等を轉々して隠匿した事実があるのでありまして、この点並びに隠退藏物資の摘発は、現在檢察廰で捜査を継続し、多大の成果を收めつつあります。また佐世保船舶工業株式会社は、航空母艦隼鷹ほか三十隻を解撤しておりますが、しかしながら大藏省おいては二十五隻の解体を許可したのみでありますから、六隻の不当処分の事実があり、さらに解撤後の轉活用資材並びにスクラツプの処分につき、許可を得ずして賣却した疑いがあるので、この点につきに目下
調査中であります。
なお、佐世保地区隠退藏物資問題に関連して、艦艇解撤につき継続して
調査を進める必要がありますので、本
委員会に艦艇解撤に関する
調査の小
委員会を設けて
調査を続行することとし、佐世保地区における隠退藏物資問題の
調査は、一應これを打切
つた次第であります。なおまた、佐世保地区隠退藏物資問題に関連して、同地区土建業者より相当多額の政治資金が選挙に際し撤布された疑いのあることは、まことに遺憾とするところであります。
第四。最後に、目下
調査の途上であ
つて、報告の
段階に達してはおりませんが、昭和電工問題、
官公吏等の汚職
調査及び大口やみ利得者の
調査について、
調査の目的と
方針等に関し附言しておきたいと存じます。
一、昭和電工問題。昭和電工問題は、復金不当融資究明の一環としてその
調査に着手したものでありますが、本
委員会における基礎
調査の進むに
從つて同社に対する不当融資に関してのみならず、同社前社長森曉氏の退任と、新社長日野原節三氏の就任とを通じて、同社乘つ取りの疑いがあり、また日野原氏就任後における子会社の経営その他についても、また大なる疑惑を持つに至りました。よ
つて本
委員会としては、第一、乘つ取り問題、第二、不当融資問題、第三、子会社問題の三
段階に
調査の基本
方針を置いて、目下、第一
段階たる乘つ取り問題の究明に主力を注いでいる次第であります。
二、
官公吏汚職
調査。われわれは、すでに、いわゆる辻献金、亀井献金、土建献金並びに石炭國管、昭電問題等を通じて政界及び財界の淨化に成功しつつあります。しかしながら、本
委員会が当然に淨化すべくして、いまだの成果をあげ得ないものに、官界の淨化という大事業があります。明治以來
日本の政界に根強くわだかまるものは実に官僚主義であり、この官僚主義は、軍閥と抱合して、遂に誤れる太平洋戰爭を起した元兇と言わなければなりません。(
拍手)ことに、戰時、戰後を通じて強化された官僚統制は、行政のあらゆる部面において官僚の介入を必要とし、当然そこに、はなはだしい腐敗を結果しましたことは、何人といえども疑いをいれないところであります。今にしてこの腐敗を剔抉し、これを淨化するのでなければ、
日本の
民主化は絶対に完遂し得ないことを信ずるのであります。(
拍手)この観点に立
つて、本
委員会は断固
官公吏の汚職
調査に着手し、すでに小
委員会を設けて、目下着々としてその基礎
調査を進めている次第であります。
三、大口やみ利得の
調査。終戰当時無一物であ
つたものが、わずか一、二年のうちに数億の巨富をたくわえた例を、われわれは目撃するのであります。しかしながら、かかる巨富は、
日本経済界の現状よりして、とうてい尋常一様の正当
手段によ
つて得られるものではありません。必ずや隠退藏物資の不正領得、原材料の不正受配、製品の大量横流し等不正
手段によるものと認めざるを得ないのであります。かかる大口やみ利得は、徹底的にその取得原因を
調査して、正直者がばかを見ない社会道義を確立すると同時に、かかるやみ利得は、これを遺憾なく捕捉して、も
つて勤労階級の負担軽減に資せんとするものであります。本問題については、小
委員会を設けて鋭意基礎
調査に從うと同時に、すでに、奈良縣下における大口やみ利得者として井上信貴男氏の現地
調査のため、数回にわたり委員を派遣して
調査の実績をあげつつある次第であります。
以上で報告を終りますが、なお兵器処理問題並びに石炭國管問題については、近く文書によ
つて詳細な御報告をいたすことにしておりますので、本日の報告は、ただその概要にとどめた次第であります。(
拍手)