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米窪滿亮君
吉田内閣は、
皆さんもすでに御
承知の
通り、十月十九日に組閣されまして、十一月八日にこの第三回
國会が開会されたのでございます。この間二十日間あるのでございまして、われわれは、この十分なる期間において、
吉田総理大臣初め各閣僚は、この
國会へ臨む準備が十分に果されておると
思つたのでございます。すなわち、現在問題にな
つております
総理大臣の
施政方針につきましても、あるいはその他の重大なる問題につきましても、十分なる用意ができておると思
つておりましたところ、未だに
総理大臣から
施政の演説がないことは、明らかに
政府の怠慢であると断言してさしつかえないのであります。(
拍手)しかも、わが党その他の
野党側から、この問題に関する
緊急質問、あるいは
決議案が出ておるにかかわらず、何らこの院議を尊重せずして、いまだに
施政方針を
総理大臣は述べておらないのでございます。
ここにおいて、われわれは、この
内閣を信任すべきであるか、不信任すべきであるかの態度をきめるためには、今日まで歴代の
内閣の慣例であ
つたところの
施政方針を聞かざる限り、われわれの態度は決定できないのでございます。(
拍手)
日本の憲政、議会の歴史を見ましても、田中義一
内閣以外において、
施政演説を行わなか
つた内閣はないのでございます。この意味において、私は、
國家公務員法は、すでに本
会議における
審議を完了して、目下人事
委員会にそれが付されたこの
機会こそ、われわれが
吉田内閣の一般
施政に対する
緊急質問をなすべき時期が來たと思いまして、これから
総理大臣、大藏大臣、労働大臣に対して
質疑を試みんとするものであります。(
拍手)
吉田総理大臣は、組閣以來、閣議におきましても、また
國民に対しましても、單独
内閣担当の抱負として、健全なる民主政治の確立、政界、財界、官界を通ずる綱紀の粛正と社会道義の確立、経済の再建に対する
國民の熱情振起を掲げておられるのでありまして、まことにけつこうなことだと私は思うのでございます。しかしながら、いやしくも一國の
総理大臣たるものが、こういう大抱負を述べる以上は、單なる抽象的な言辞ではいけないのでございます。すなわち、われわれは、いかにしてこの抱負を実現するかの具体策を伺わない限り、われわれとして、この言明に賛成するわけには参らぬものでございます。(
拍手)
総理大臣は、健全なる民主政治を確立する方策といたしまして、もつぱら
國民の総意に基き、私心を去り、一切の権謀を排して公明に行動し、自己の政治的
責任を明らかにする、とおつしや
つておるのでございます。われわれはもちろんこれに反対するものではないのでございますが、この方策としては、いまだに抽象的の範囲を出ないのでございます。どうすれば
総理大臣はその理想を達成できるか、具体的のことを承りたいのでございます。
私は、フアシズムとか全体主義とかいう人生観を信奉する人々や、あるいはボス的政治家という印象を
國民に與える人々によ
つて指導されると信ぜられている、いわゆる極右政党によ
つては、決して健全なる民主政治は確立できないと思うのでございます。(
拍手)また同時に、その政治行動の主力を院内に置かず、院外の大衆を政治的に動員して、最惡の場合は、
國民の持つ社会不安を
暴力的革命に結集しようとする極左政党によ
つても、決して眞の健全なる民主的政治は達成できないと考えているものであります。(
拍手)ここにおいて、われわれは、右に偏せず、左に傾かず、社会
民主主義に立ついわゆる中道政治によ
つてこそ、吉田総理の言われる健全なる民主政治を実践することができると考えているものであります。(
拍手)
この点に関連して考えられますことは、民主自由党
内閣の性格に対する批判は、われわれがあえて言うまでもない。支那には他山の石という言葉があります。
吉田総理大臣が
内閣を組織しましたときの外國の批判を、
皆さん再び思い返してください。ことに、ニユーヨーク・ヘラルド・トリビユーン紙は、どういう批評を下しておるか、
吉田内閣の出現によ
つて、過去一年半、新
憲法実施によ
つて、形式的ながら一應順調に進んで來た政治の
民主化は、実質的にその
内容を整備する今日の段階において若干期間後退した、といわれておるのではありませんか。(
拍手)この批判は、單なるニユーヨーク・ヘラルド・トリビユーンだけではない。フランスの新聞、英國の新聞、中華民國の新聞は、筆をそろえて
吉田内閣の反動性を指摘しておるのであります。(
拍手)
なるほど國内的には、政権授受にあたりまして、民主的、立憲的意見を
実施した点において、わが國の新聞紙は、一應その政権授受の方法について、この
内閣に好意を寄せたことは事実であります。しかし、好意を表したのは、ただその一点だけであります。組閣以來の民自党及び
政府の
とつた態度については、そろそろ不評なるところの批判が出て來ておるのでございます。
ここにおいて考えられることは、かの英國の労働党首であるところのアトリー氏が、「社会主義への意志と方途」という著書のうちに、こういうことを言
つております。アジア的諸國において、資本主義は、ややもすればフアツシヨ化する危険がある、社会主義は、ややもすれば共産主義化する危險がある、ということを言
つておるのでありますが、私は、あのアトリー氏の言こそ、民自党にきわめて適切に当てはまるものと思うのであります。ここにおきまして、吉田総理たるものは、健全なる民主政治の確立を天下に約束されたこの重大なる重荷をいかに運ぶかという、その具体的方途について、率直なる御意見を伺いたいと思うのであります。
次に
総理大臣に伺いたいことは、政界、財界、官界の綱紀粛正の具体的方策についてであります。芦田
内閣を倒した
昭和電工、炭鉱國管、兵器処理、繊維
事件等は、まことに醜惡なる
事件でございまして、
國民の目をおおわしめる
事件であ
つたことについては、われわれはこれを認めるものでございます。
從つて総理大臣が、政界、財界、官界の粛正を決意したことは、ごもつとものことでございます。しかしながら、その後の
経過はどうであります。殖田
法務総裁を
委員長とするかのごとくに傳えられた粛正
委員会は、その後どう
なつた。あたかも砂漠の川であります。行方がわからない。この点ついては、この際明確に、この綱紀粛正の具体的方策を承りたいと思うのでございます。
從つて、この種の
委員会をつく
つても、高閣につかねて何もしなければ、これは屋上屋を架するところの、子供らしいいたずらにすぎないのでございます。粛正工作の遂行は、不退轉のものでなくてはならないのででございます。一旦決意した以上は、この
内閣によ
つて大掃除をしていただかなければならない。しかるに、何ら大掃除などということは考えずに、ただ一言にしていえば、解散々々ということばかりを言
つておる。政界、財界、官界の粛正についての具体的の方策は、組閣以來二十日た
つた今日において、いまだに何ら現われておらないのでございます。
しかも
総理大臣は、三週間にわた
つて專任の
法務総裁を任命せず、兼務してお
つたということが、いかにこの粛正工作に対して熱意がないかということを物語
つておる。総務大臣は、
法務総裁を兼任したとき、廳員を集めて、どういうあいさつをしたかというと、こう言うております。いわゆる綱紀粛正は断固としてやるべきある、もしも閣僚のうちにも、あるいは
法務総裁自身である自分にも、疑惑の点があらば、どしどし檢挙せよ、ということを言
つておる。まことに意氣悲壯ではあるのでございます。
しかし私は、あまり言いたくないのでございまするが、現在民自党の幹部からは、元の幹事長、元の総務等十指に余る人々が、いろいろの疑獄
事件でも
つて、容疑者として檢束をされ、あるいはすでにとらわれている者があるのでございます。しかも、わが党にもあるのでございまするが、わが党は、すでにこれに対しては除名をし、かつ離党せしめております。すでに自粛自戒の態度をと
つておる。しかるに民自党からは、一人もそういう自粛自戒者が出たということを聞かない。まず足元を清めて——みずからを清めずして、いずくんぞ天下を清めんやであります。
もちろん、今回のごとき政界、財界、官界の腐敗のよ
つて來たその
理由は相当多くあり、かつ淵源するところ遠いのでございます。こういう現象が現われたその
理由の一つには、道義の頽廃ということがあげられるでしよう。あるいは官公吏の
生活が窮乏と不安におののいているということが取上げられなければならない。こういう点については、
総理大臣はいかにしてこの道義の興隆をはかるつもりであるか。いかにして経済的に官公吏の
生活を安定させ得るものであるか。この点を考えずして、いたずらに道義的に粛正を唱えても、私は決して完全なる解決であるとは思いません。私、いまさら管仲の言葉をここで引例する必要はない。しかし、衣食足
つて礼節を知るということは、今日においても、やはり眞理であります。私は
総理大臣に、よろしくこの点について文教的及び文化的の施策を講ぜられんことを希望するものであります。
政界浄化の問題については、各政党運営の資金その他の政治
運動の経理の面において、われわれは相当思いをめぐらさなければならない点があると思うのでございます。すなわちアメリカにおいては、党費のみによ
つて政党運営をするのでなく、かのハツチ法のごときは、個人または團体における政策支持者あるいは受益者からの醵出を公認する
法律があるのでございます。私は、わが國において、政党資金規正法というものがすでにできておりまするが、はたしてその程度でも
つて、政党及び政治
運動の資金を公明正大なる方法をも
つて集め得るものであるかどうか。この点については、
政府はよろしく、この政治
運動運営の方策について、この際確固たる案をお出し願いたいと希望するのであります。
次に、大藏大臣にお尋ねします。民自党は、在野当時、統制の大幅撤廃、金融引締めの緩和、米麦の供出後の自由販賣等、これを要するに自由経済政策を唱えて來たのであります。
けだし自由の本質は、経済的に言うと、いわゆるレツセフエール、すなわち放任と競争の主義でありまして、統制とは眞正面から対立するものでございます。同時に、自由経済主義の最終的形態であるデフレーシヨンは、インフレーシヨンと相反的
関係に立つものであります。しかも、デフレーシヨンに到達するためには、経済的には過渡的に若干のインフレーシヨンを肯定することによ
つて産業的に生産を振起し、統制を撤廃する方法も考慮しなければならなくなるでございましよう。
從つて民自党が、十月九日の大会で発表しました、緊急対策十九項目のうち、生産第一主義を積極化してインフレを收束するとうた
つたことも、理想論としては、必ずしも自己矛盾であると一笑に付するわけには参らないかも知れません。しかし、かくのごときは、ノーマルな経済状態においては、若干の副作用と犠牲を生じつつも実現可能でございましようが、資金資材が極度に行き詰ま
つておる現下の
日本のアブノーマルな経済状態のもとにおいて、統制を全廃し、一切の價格、一切の生産を自由市場、自由貿易、自由競争にまかせるべき何らの経済的、客観的條件はないのでございまして、かくのごとき経済的
措置は、インフレーション激化を誘発することこそすれ、インフレーシヨンの收束には何ら貢献しないことは、第一次
吉田内閣の石橋財政によ
つて、みごとに試験済みにな
つておるのでございます。(
拍手)民自党は、この石橋財政を再び繰返さんとする考えであるか、大藏大臣にお尋ねします。
資金の面においても、資材の面においても、生産の面においても、今日の
日本と比較することすら不自然であるアメリカのルーズベルト政権は、二ユー・デイール政策を
実施して、ある程度の統制経済、計画経済を断行したのでございます。今日において、しいて自由経済政策を行わんとするならば、イフレーシヨンを一應抑制した上において、さらに数十億ドルの入超決済資金を導入することを前提として、財政の收支を均衡するため赤字公債の発行を中止し、通貨の増発を防ぎ、金融を合理化し、も
つて通貨の整理を断行したる上でなければならないことは、自明の理であります。わが党のインフレ処理の基本対策は、まさに、ただいままで申し上げたこの一線に合致するものでございます。泉山藏相は、民自党の自由経済政策をも
つて現下の経済難局を乗り切れると思うかどうか。また、いかなる具体的方策をも
つて、生産第一主義を積極化してインフレーシヨンを收束するという民自党の緊急対策を実現しようとするものでありますか。
西ヨーロッパに対するアメリカのマーシヤル・プランは、当然これはアジアにも適用すべきでありますが、無條約の今日、このことは、にわかに実現ができないのでございまして、ここにおいて、芦田
内閣当時において、
関係筋の意向をもくんで十大
原則を確立しまして、この十大
原則を具体化するために長期経済計画を立てております。大藏大臣は、このいわゆる十大
原則を認めるものであるか、あるいはこれに基いて長期経済対策を立てるおつもりであるか、この点を明らかにしていただきたいのであります。
泉山大藏大臣は、就任直後、赤字融資を行わないと言明しまして、價格、財政両政策の上から必要やむを得ないものは國債の発行によ
つてこれを賄うべしとする一万田日銀総裁の言明に同調し、建設公債のごときものを発行すると傳えられているのでございます。しかも、この意見については、民主自由党がこれに反対をしたために泉山藏相との意見が不一致にな
つているということを伺
つているのでございますが、この点は、はたしてどうお考えになるか、この調節をどうとられるか、お伺いしたいと思うのであります。また泉山君は、この不一致を、赤字融資と公債発行一本にとりまとめる自信がおありになるのであるか、また
関係筋の了解を得られる見通しがあるのであるか、その点をお聞きしたいと思います。
資金資材が極度に行き詰ま
つているわが國現下の経済界の
実情において、民自党の政策のごとく、一方において統制を緩和し、他方において生産を積極化せしめんとするならば、勢い通貨の増発と、
政府補給金ないし産業融資を放出せんとする、放漫なる石橋財政を再び繰返さざるを得なくなる。この結果、インフレーションは今日よりもさらに激化して、賃金と物價との惡循環をさらに促進し、
國民生活の窮乏を今日以上に惡化せしむる結果に終るにすぎないのでございます。なおかつ、この経済政策を強行するとせば、勢いデフレ的傾向に附随する整理恐慌を招來することになりまして、大量の行政整理と企業整備を断行しなければ、つじつまが合わないことになるのでございます。
さすがに民自党の諸君も、かかる結果になることはやむを得ないと認めたものと見えまして、十月九日の緊急対策には、行政整理を
決議しているのであります。しかるに、小澤運輸大臣その他の閣僚は、就任直後、行政整理は行わないと言明した、そうして党に帰
つて來て大いにしかられた、ということを聞いている。(笑声)
総理大臣、大藏大臣は、党の方針に
從つて行政整理を断行するつもりであるかどうか、この点をお伺いしたいと思うのであります。
また、自由経済政策の
実施に基くインフレの高進と、現実に見る財政と金融の不調和を、いかに調整せんとするつもりでございますか。また、組閣以來極度に國際的不評をかもし出している現
内閣に対し、米國及びその他の外國から、自由経済政策を遂行するかぎともいうべき大量の入超決済資金を導入し得る見込があるかどうか、この点を
総理大臣及び大藏大臣にお伺いしたいと思うのであります。
民自党の
決議は、あるいは統制の大幅撤廃を叫び、あるいは米麦の供出後の自由販賣を説いておりますが、これまた、その結果としてインフレを促進することになると思うのであります。現に、
吉田内閣組閣直後、ただちに大手筋の諸株は暴騰を続けているのは、このいわゆるインフレの前景氣であることを、如実に物語
つているのでございます。(
拍手)このインフレ收束をいかにしてなすべきかについて、大藏大臣にお尋ねしたいと思います。
また民主自由党は、料理店、飲食店の再開を公約しております。われわれといえども、庶民的、大衆的飲食店の再開には、何ら
異議を持つ者ではありません。しかし、民自党の眞のねらいは、彼らを支持しているところの高級料理店の再開であります。(
拍手)高級料理店は、食糧供出の調子を乱し、しかもインフレを促進し、そうして官界を腐敗するところの巣になると思うのでございまするが、これについては、
日本における自國の生産の食糧で足らずして、約千五百万石の食糧を海外から求めておるこの現状において、はたしてかくのごとき政策が許されるべきであるかどうかということについて、
総理大臣であり
外務大臣である吉田さんは、
関係筋に対して了解を求め得る見通しがあるかということを、お伺いします。
次に民自党は、野党当時も、また組閣後も、取引高税の全廃を
主張しております。これは何とい
つても惡税でございまして、われわれも、芦田
内閣が
提出した予算からこの二百七十億円の取引高税を全廃するために努力をしたのでございまするが、これを埋めるかわり財源がないために、逐にわれわれは、
生活必需品その他の物に対する課税を撤廃して六十億円を削除することに成功しまして、なお二百十億円は残
つておるのでございまするが、泉山藏相は、この二百十億円の取引高税廃止のために必要である見返り財源を、全体どこに求めるつもりございましようか。傳えられるところによると、泉山大藏大臣は、このかわり財源として、汽車の運賃、通信料、タバコの値上げ等をも
つて充てようということで、これまた民自党へ行
つて、諸君にしかられて撤回したということであります。しからば、全体このかわり財源をいずこに求めんとするか。ひ
とつ大藏大臣の御意見を伺いたいと思うのでございます。
かくのごとく、大藏大臣と民自党との
関係は、まことに見るも氣の毒な状態でございます。(
拍手)この哀れなる状態を、どうや
つて脱却するか。これは大きな見ものであると私は考えております。大藏大臣たるものは、民自党が何と言
つても、万難を排して、かわり財源を探すべき
責任があるじやないか。
最後に大藏大臣にお伺いしたいことは、公務員の賃金べースの改訂を含む追加予算を、いつ議会へ上程するのであるか、また、いかなる金額をお組みになるつもりであるか。すでに、
政府の一部である臨時人事
委員会は、六千三百七円という額をきめまして、これを
政府当局に勧告しております。しかるに大藏大臣は、先日の本
会議において、これは高過ぎると言われた。
政府の意見の分裂は、まさにここに現われておる。これを
総理大臣はいかに調整されるつもりであるか、お伺いしたいのであります。
官公吏は、
國民全体の奉仕者であるという
理由のもとに、
憲法によ
つて與えられたる罷業権を剥奪され、しかも重大なる義務を強要されながら、しかもマツカーサー元帥の手紙の中に歴然と書いてあるところの賃金その他給與の保護規定に対してきわめて冷淡であるこの
内閣は、はたしてマッカーサー元帥の手紙に沿うだけのことをしておるかどうかということに対して、疑いなきを得ないのでございます。(
拍手)傳えられるところによりますと、
政府は、この
國家公務員の給與の財源に窮しまして、給料を月の初めに繰上げるとか、あるいは年末に
生活補給金を出すとかいうような、きわめて糊塗的な手段をも
つて、これの一時のがれをしようと試みておるがごとくであります。かくのごとき態度をも
つて、二百七十一万の全官公の諸君が、ほんとうに喜んで
憲法できめられたるところの義務を行うか、ほんとうに喜んで行政実務に彼らが精進して行くかどうかということについて、お尋ねしたいのでございます。
労働問題について、労働大臣にお伺いしたいと思います。高能率高賃金で労働者の
生活安定を
実施するということを、増田労働大臣は言
つております。あるいは民自党の大会において、これをうた
つております。しかし、いかにして高能率を出させるか、いかにして高賃金を與えるか、いかにして労働者の
生活を安定せしめるかということについて、組閣以來一箇月た
つた今日、何らの具体的な方策を伺
つておらない。増田労働大臣は、道義と愛をも
つて労資の間を調節し、改善解決すると言
つておられます。私は、これに対して必ずしも反対はしないのでございまするが、しかしながら、こういう抽象的表現をも
つて、いかに労働者のモラルを高揚力説しましても、彼らの
生活が不安定では、たとい唯物弁証論者にあらざる私といえども、これに同調することはできないのでございます。
増田労働大臣は、
國家公務員法の
改正は芦田
内閣が
関係筋と折衝をして到達した最終の修正意見以上に改惡しないと言明をしました。一般労働法規については現状以上に改惡しないということもつけ加えております。しかし社会の一部には、民自党は、この
機会に便乘して、年來の持論である三労働法規に対する改惡を断行しようと傳えられております。労働大臣の言明にもかかわらず、かかる流説の行われる
理由は、何であるかというと、第一次
吉田内閣のときに、吉田さんが、
憲法によ
つて認められた罷業権を行使しようとする労働者に対して、不逞のやからと言
つたのが、いまだに労働者の頭にこびりついているからであります。(
拍手)また民自党は、政権を
とつたならば、賃金と物價の惡循環を断ち切る方法としまして、賃金安定、すなわち賃金のくぎづけを断行するということを言
つております。同党の高賃金とは、もし賃金のくぎづけの意味であるとするならば、われわれは、これに絶対に反対であります。労働大臣に、この点をひ
とつ明らかに御
説明願いしたいと思うのであります。
増田労働大臣は、就任当時、企業整備はしないと言
つております。しかし民自党は、行政整理を行うと言
つておる。もちろんこれには、行政機構の改革と簡素化の結果としての整理と、註釈がついておりまするが、これはただちに民間企業界の企業整備を誘発する危險が多分にあるのでございます。これらの点は、同党のインフレ政策に対する反対とともに、全國七百万の組織労働者の
吉田内閣への全面的否定とな
つて今日現われて來ておるのでございます。労働者に不信の
内閣、労働者に敵意を持たれる
内閣が、どうして生産の増強ができますか。(
拍手)どうして労働者の生産意欲を高揚することができますか。これに対して増田労働大臣は、生産第一主義を積極化するという、この唯一の労働対策を、いかに具体化されるか、お伺いしたいのでございます。
最後に増田労働大臣にお伺いしたい点は、目下大問題にな
つている電産爭議及び鉱山爭議に対して、いかにしてこれを急速に收め得られるところの自信がおありになるか。一日三万六千トンずつの減産をしているこの石炭争議については、これを一日も早く解決することは、目下のわが國の至上命令であります。労働大臣の確固たる御回答を伺いたいと思います。
最近の米國大統領選挙におきまして、トルーマン氏が、いわゆる番狂わせの勝利を得た原因は、タフト・ハートレー法に反対した労働者、すなわちAFL、CIOの労働者諸君が、デユーイ氏に投票せずしてトルーマン氏に投票した結果でございます。民自党は、今人氣があるというので解散解散と叫び、選挙の結果は民自党が圧倒的多数を占めると、うぬぼれてはおりますが、労働者の信用を落しておるところの民自党が、トルーマン氏のごとき番狂わせを受けないと、だれが断言できましようか。
最後に、解散問題について吉田総理。大臣にお伺いします。
〔発言する者多く、議場騒然〕