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殖田國務大臣 前会
猪俣委員の御質問になりました点は、
國会と裁判所及び
政府の
関係、それから國家地方警察と行政官廳、自治体警察との
関係、こういう点であ
つたと考えます。
司法行政権は原則としまして、裁判所は
内閣と
関係なく、独立してこれを行うことは御承知の
通りでありまして、司法行政権の行使につきましては、
内閣は
國会に対し
責任を負わないのでありまして、いわば無答責の
事項と申さねばなりません。しかしながら
國会としては、廣く國政に対する調査を行うことが認められておりますので、司法行政運用の実情を調査研究し、あるいはその結果を発表し、あるいは他日の立法に資することは、もとより当然のことでありまして、また
最高裁判所長官、またはその指定する代理者が
委員会に
出席説明する場合に、司法行政の運用につき
説明を求め、意見を述べ、希望を開陳すること等は、こうもさしつかえないことと考えます。司法行政は右述べましたように、裁判所が独立して行うのでありますが、裁判所の
予算の面におきましては、裁判所と
内閣、
國会とは大いに
関係があるのであります。裁判所
予算は原案を裁判所が発議し、
大藏省と折衝して、確定案を作成決定するのでありますが、これは
内閣の
責任において決定せられるのであります。
從つてこの場合
内閣は、
國会に対し
責任を負うわけであります。しかし裁判所の裁算についても、なるべく裁判所の独立を保障することが、司法権の独立のため願わしいことでありますので、
裁判所法は、裁判所の経費は独立して國の
予算に計上すべきことを定め、財政法はもし万一歳出の概算につき、
内閣と裁判所との間に意見の一致を見ない場合には、すなわち
内閣が裁判所の歳出見積りを減額した場合には、裁判所の送付にかかる歳出見積りについて、詳細を歳入歳出
予算に付記するとともに、
國会が歳出額を修正する場合における必要な財源についても、明記することを規定しているのであります。この場合には
國会は、
政府の査定と裁判所の歳出見積りを彼此檢討して、
國会がその
責任において最も適切妥当と信ずるところに決定いたすわけでありまして、この場合はもとより、
内閣と裁判所と意見の一致を見ました場合におきましても、
國会の裁判所裁算案に対する議決は、司法行政の上にきわめて重要な意義を有するのでありまして、この面において司法行政は、
國会のコントロールの下に立つわけであります。
次に裁判所について、
國会は裁判所に対し意見や希望を述べることが許されるかとのお尋ねであ
つたのでありますが、現在裁判所に係属中の
事件についてこれを批判したり、その取扱いにつき意見を述べ、裁判につき希望を申し出ることは、裁判の独立を保障する
憲法の
精神にもとるものでありまして、嚴に戒めねばならないところでありますが、しかしすでに確定した裁判につきましては、学界において廣く判例批評も行われているところでありまして、國民としてこれを批判することは、どうもさしつかえなく、また一般的に司法権の公正妥当な行使のために、裁判所の裁判に対する意見なり希望などを述べることは、言論の自由が認められております以上、当然許されるところであります。
從つて全國民を代表する議員が、
國会において司法権の運用に関し希望を述べることは、議員たるの立場において、もとより当然のことと考えます。かかる希望の開陳に対しては、裁判所はよく傾聽して、これをしんしやくせられることと信じます。およそ三権の分立は、三権の分離孤立を意図するものではなく、
從つて分立された三権が相侵さない限度において互いに協力調和して、初めて國政は円満な運用を期し得るのであります。文法権は國権の最高機関である
國会に属するものでありますが、これは
内閣が
法律案を
國会に
提出することを妨げるものではなく、ただいま御審議を仰ぎました裁判所の一部を改正する等の
法律案は
政府の
提出にかかるものでありまして、
法務廳はこれを立案するにあたりましては、あらかじめ裁判所と事務上の打合せを遂げ、裁判所の意向は十分これをしんしやくした次第であります。司法権の独立を保障し、その適正な運用をはかるためには、立案にあたりこの用意が必要であり、またこれは三権分立の
精神にもとるものでないと考えた次第であります。
それから國家地方警察の行政管理のことを申し上げますが、國家公安
委員会がこれを行い、その運営管理は各都道府縣公安
委員会で行うのであります。しかして國家公安
委員会は
内閣総理大臣の所轄に属し、各都道府縣公安
委員会は各都道府縣知事の所轄に属するのであります。ここにいわゆる所轄とは、警察法の定めるごとく、それぞれの公安
委員の任命または罷免権を含むことはもちろんでありますが、行政管理または運営管理自体に対する指揮
監督権は含まないと解しております。自治体警察の管理は、各市町村公安
委員会が行い、市町村公安
委員会は市町村町の所轄に属しますが、市町村長もまた自治体警察の管理自体に対する指揮
監督権はないものと解しております。
以上のごとくでありまして、警察法の建前としては、警察による
犯罪搜査は、國家地方警察にあ
つては各都道府縣公安
委員会の運営管理下に行われ、都道府縣公安
委員会は各都道府縣の議会に対して
責任を負いますが、直接
國会に対して
責任を負うものではございません。自治体警察にあ
つては、各市町村公安
委員会の管理下に行われ、市町村公安
委員会は各市町村の議会に対して
責任を負いますが、直接
國会に対して
責任を負うものではございません。しかしながら現行
刑事訴訟法のもとにおいては、司法警察官吏による
犯罪搜猛は檢察官の指揮を受け、その補佐または補助として行われるものでありますから、この意味においては
法務総裁が
國会に対して
責任を負うものと考えております。この点は改正
刑事訴訟法の
実施を見るあかつきには、檢察官と司法警察職員はそれぞれ独立の
搜査機関となり、檢察官は司法警察職員に対し
新法第百九十三條に規定する限度の一般的指示及び一般的指揮の権限を認められるに過ぎないのでありまして、この場合においては
法務総裁は、檢察官がと
つた一般的指示または一般的指揮の措置の当否についてのみ
責任を負うことと考えております。なお新
刑事訴訟法の定施を見るならば、海上保安官、労働基準
監督官等のいわゆる特別警察職員による
犯罪搜査は、それぞれの主管大臣が
責任を負うこととなるものと考えております。かように御承知を願います。