○村上(好)
政府委員 私からただいまの政務次官の
説明を補足いたしたいと思います。今回の戰爭に際しまして貯金原簿、振替原簿の燒失の危險を防止し、これを分散させるために方々に疎開させたのであります。現在二十九貯金支局がございますが、このうち七局は疎開のために当時新設いたしまして、その他三局を新しく加えて併せて十局が戰爭の危險を分散させるためにつくつたのでございます。その後これはその
状態のままに継続されて今日に相
なつておるのであります。一方この貯金事業は本年度の経営上からみますと、貯金の歳出は五十七億八千万円、これの約七割が赤字で、一般会計から補填を受けておるような経営振りであるのであります。われわれ
逓信省の郵便貯金を担当する者といたしましては、この経営がまことに遺憾な
状態に
なつておることを痛感しておるのであります。これは新しく賃金ベースが上れば、この赤字はさらに増大するものと考えられるのであります。かような見地から、われわれ
当局者は、この貯金事業をかような
尨大な一般会計の補填を受けることなしに、もつと合理的に國民のために経営して行かなければならぬという責任を感じておるのであります。それででき得べくんば戰爭当時に疎開された形、戰爭当時にいろいろ新しく貯金の
サービス状態というものができたのでありますが、それらを整理して、戰後のあるべき姿に返したいという念願を持
つていたのであります。それで戰時中に疎開のためにつくつた貯金支局は、極力これを統合して惻後の新しい
状態に合致するようにしたいという考えを持
つていたのであります。たまたま昨年の七月、不幸にして福井がかの震災で、貯金支局が倒壞いたしたのであります。この福井貯金支局は戰時中に新しく生まれた支局のうちでは最も小さな、また同時に不経済な
施設であることを免れなかつたのであります。かねがね思つたのでありますが、私としてはこの震災を理由としてただちに手をつけたいのだが、手をつけることはしないということで、
逓信省として存続することで進めていたのであります。それで一應この廳舎の復旧
予算を一千四百十二万円計上いたしまして
関係当局と折衝を続けていたのでありますが、これが容易に賛成をみることができないのであります。——それで廃局に伴
つてわれわれがぜひ考えなければならぬことは、
地元の縣民に相当の不便を與えるであろうということ、それからもう一つは二百三十数名の從業員に対する善後措置をいかになすべきか、この二点が重要な問題であつたのであります。それで現地の縣民に対する
関係におきましては、特に振替貯金
関係におきましては、振替口座を
地元に持
つておれば便利であります。しかし郵便貯金の原簿が金沢に行つた場合を想定いたしますと、これはさして郵便貯金の
加入者には利便はないのであります。それで金沢に移管いたしましても、長い間の戰前の
状態に復帰いたすことに相なるのでありますが、特に
福井縣が長年の利益をこれによ
つて奪われるということでなかろうと思うのであります。
次に從事員に対する問題でありますが、從業員に対しては一般的の行政整理ではないのだから断じて失業はさせないという建前をと
つております。現在二百三十名おりますが、これは市内もしくは通勤可能なところに配置轉換し、月給は元
通りで、他に欠員があるまでは貯金事業経費をも
つて全額支弁するという建前をと
つております。欠員ができたらこれにかわるだけであります。それで十一月十五日の官報に告示を発表いたしまして、廃局はもはや決定した問題只であります。ただ來年の七月まで配置轉換する間残務整理に從事して、轉勤の問題はそれまでに解決するということであります、なおこの福井貯金支局の從事員のうち幹部を除いたほとんど全部は、あの局は開設以來わずか二年数箇月でありますので、二百三十名といいますが、その大部分は二年前後の勤続者であ
つて、青年男女でありますので未婚者が非常に多いのであります。それで長い間貯金事業に携
つて、もう骨まで貯金事業でしみているという人たちではないのでありますので、いずれもほかへ行
つてもさほど苦痛はなかろうと考えるのであります。但しほかへ行
つても
郵便局に行けばやはり貯金の仕事をやることができるのであります。またその他の郵便業務に行誠てもそれはかけ離れた仕事ではないと思うのであります。かようなわけで職場をかえられる精神的の苦痛は十分察知できますが、この
程度の人たちであるから、長年月の者と比較してさほど苦痛はないのではないかという考えを持
つております。なお金沢支局轉勤者のためには、金沢に五十数名入る寄宿舎を用意しております。單身者はそこへ行
つて寄宿生活をすればよろしいかと考えるのであります。かようにいたしまして從業員に対しては断じて失業はさせません。先ほど從業員の生活の保障がわからないというお言葉がございましたが断じてかようなことは、私はさせないつもりであります。なおこの問題について、全國從業員組合の一致團結した廃局反対の運動があるというお話でございますが、私もこれにつけ加えてこの
委員会に一言御報告いたしたいと思います。本問題は、全逓組合が約二週間ぐらいでしたか、全逓大会の問題に取上げまして、福井貯金支局廃局絶対反対という決議をいたしたのであります。なお同時に全逓組合は、官側のかかる一方的なる行政整理の端緒をつくるような廃局は絶対反対である、ということを決議して、大臣に電報をよこしております。行政整理の端緒をつくるものであるから廃局は絶対に反対であるということを申しております。一方的なる、という言葉を使
つております。いつ廃局をするということは、向うと相談せなくてはいけないかということであります。私は断じて全逓組合とこれは相談をしてきめるべきものではないと考えるのであります。しかるがゆえに私は組合にはこの相談はいたしません。当然これはまとまる筈はありません。向うはこれが端緒になるとい
つておるそうですが、私は別に、これから次々にこれをやるということを考えておるわけではないのであります。向うはこれを非常に重大問題としておりますが、從業員の態度を容認するならば、
政府は
將來の企業合理化は断じてできないと思うのであります。また同時にその衝の当るわれわれ管理者は、企業合理化をやる勇氣が消滅するのであります。かような意味におきましてこの件は先ほど政務次官も申し上げましたようなことで、
政府の
方針を変更されないように御
審議を願いたいと思います。