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金森國会図書館長 國立國会図書館の状況は、いろいろな
意味でときどきとりまとめてはおりますが、
法律の
規定に從いまして、この
図書館運営委員会に適当な時期を選んで御
報告を申し上げることが正当と
考えております。そこでこの
報告書を、口頭で申し上げますよりも、字に書いた方が比較的わかりやすいと
思つて一應つく
つたわけであります。ところがこれをつく
つておりましたのは前でございまして、その後の歳月の
経過によりまして今日は十一月にな
つております
ために、少しく時期が離れたという感じはしておりますが、これは
ちようど六箇月分を予想いたしまして、九月の
実情で締め切
つて報告書をこしらえておるわけであります。いろいろこまかいことが書いてございますが、大体
從來の、いわばこの
図書館の歴史的な
発達状態を表わしておるのであります。その中の一、二のおもだ
つた点をつかまえて御
報告を申し上げたいと
思つております。
それは
支部図書館といたしまして
靜嘉堂文庫東洋文庫を受け入れるという問題であります。これは昨年の十二月の、つまりこの
図書館がまだ
法律としても確定せず、
從つて生れて來るごく不完全な
状態の時分に、
靜嘉堂文庫と
東洋文庫とを
図書館に何らかの形で合体させることが適当であろうという
議論が起
つたのであります。ところで
衆議院側の御
意見と
参議院側の御
意見とは幾分そこに
程度の差がありまして、何か割り切れないような姿を見せてお
つたと私
どもは理解しております。これをどうするかということにつきましては、一應私の方で
責任を持
つて、まず案の骨子となるべきものを
考えまして、それから
両院の御
意見を伺う方が適当であろうと思いまして、
予算の上にとりあえずこの
二つの
文庫をおせわをするような
準備をしておきまして、それから
予算の
議決ができそうなころになりまして、
衆議院の
委員会の御
意見をあら
ためて伺い、
参議院の
委員会の
意見もあら
ためて
伺つたのであります。
そのときの樣子は、私の了解いたしますところでは、
日本に再び集めがたきところのかような貴重な
文献というものは、できるだけ保護をしなければならぬ、散逸をしないようにはかるべきである。しかし
図書館がほかの
仕事を妨げてまでこれをやることはよろしくないのだから、そこでその
程度をよく
考えて、
図書館の通常の任務を害せず、しかるべき範囲においてこれの保存をはかることがよかろう。こういうことに
納まつたものと了解をしております。そこでその御
趣旨に從いまして、
東洋文庫と
靜嘉堂文庫を私
どもの手元において
管理をする。但し
所有権は
もとより元の
財團がこれを持
つておるということにいたしました。
管理をするとは申しますが、何しろ
予算の
関係もあり、
人員の
関係もありまして、そうこまかいことまではすることができません。そこでさしあたり若干の
職員をこちらの
図書館の
費用で、また
図書館の
人選で任命をいたしまして、これをこの
二つの
支部に配置をして、それによりまして貴重な財産を最も妥当に
運営をして、読みたいと思う人に公平に読んでもらうことができるようにする。但しその
経費は
最小限度にとどめるという
方針をとりまして、この中に書いてございますように、今のところ
一つの分館の
実情は、わずかに六人見当の人でこれをや
つております。これは不十分といえば
もとより不十分でございますけれ
ども、
本館自体が今日
相当不十分の苦しみをなめておるのでございますから、この
程度で行くよりほかにしようがないと思います。また一部の見解ではかような民間でつく
つておる
財團に金を拂うということは、
國費を濫用するおそれがある。こういうふうな
議論が
運営委員会のある
部面——衆議院ではございませんが、起
つてお
つたのでございます。これに対する私の心構えといたしまして、決して
補助金などは一文もこれを渡さない。また
法律上、これは困難でありましよう。
從つて全
責任をも
つて私
どもの
職員でこれを
管理し、こまかいことではありますが、必要な
管理の
費用、
電燈代をどうするかというような、ごく軽微な
費用は私の方の
図書館で直接支弁をするというようにして、ほんとうにわずかの
経費でや
つております。
もう
一つ御
報告を申し上げたいのは、ロバート・B・ダウンズという人が
アメリカからわれわれの
図書館に対して必要な
助言を與えるように來られたのであります。これは
從來の
運営委員会の
方々が非公式に先方に希望せられて、
アメリカの
関係者が
人選をして送
つて來られたものでありまして、前の
法律の
規定について、こまかい点においてさらにわれわれによき
助言を與えようという精神であると
思つておりました。そこで私
どもはこの
專門家とよく交渉をいたしまして、かゆいところまでわれわれの
図書館のいろいろな欠点、
將來の行く道について指導を受けました。その一端は、さきに申しました
受入、
整理を合体するということでございました。そればかりでなく、もくろくのつくり方をどうするか、本の分類をどうするかというようなことまで
相当こまかくや
つておるのであります。
次に、
図書館を
將來どういうふうにや
つて行つたならばよいかという先の
計画を、やはり今の時代にや
つておかなければなりません。と申しますのは、一時的にこの
図書館が生れて來たと申しますか、適当なる場所がなく、適当な
計画もなく、
法律の
趣旨をなるべく実現するという
趣旨で生れて参りましたから、今のところ
赤坂離宮の一部を使
つておりまして、これは
世間に向
つて図書館の大切なことを知らしめるという
宣傳的意義においては役に立
つておりますけれ
ども、実際から言えば、この最も能率を発揮しなければならない
図書館がこれであ
つては本物になることはできないと思うのであります。そこで
計画といたしましては、
將來図書館をやるのにきわめて適切な
建物を持たなければならぬ。
建物ばかりでなく、
図書館の
運営に必要な
設備をつくらなければならぬ。
設備と申しまするのは、たとえば
書物が迅速に中を動いて歩く、あるいは
國会との連繋において、機械的に
書物や
書類が動くというようなことまでも
考えた
設備を完備しなければなりません。のみならず
図書館というものは、これはもう物の方からよほど制限せられますので、
書物とか器具とかいうものについても特別に考慮しませんければ、これはもう能率的につぶれてしまうほかはありません。諸國の事例を
研究して、新しいものをつくりたいと
考えておるのでございます。それは
將來のことでありますが、とにかくそれに向
つて現在
研究して行かなければなりません。その第一歩は、どこに
將來の
図書館をつくるか。大
よそどのぐらいの企画でも
つて図書館が設計されていいか、またこの設計を大
よそどのぐらいの時期に実現するようにして行くかという問題が
一つ。これは
建物の問題です。
いま
一つ、この
図書館は
將來どういう
計画で、どういう
方針で
書物を集めて行くか。しかも
書物ばかりではございません。
書物類似の蓄音機のレコードだとか、実物を写した映画のフイルムであるとか、あるいはまた地図であるとか、古文書であるとかいうようなものについても、
近代図書館として必要なくふうをしなければなりません。その結果また
写眞に写す。マイクロ・フイルムにいろいろな
文献を写し取
つて、また保存したり、世界に紹介するという
計画も持たなければならぬ。こういうふうなことでございまして、これは
將來のことをうのでありまするが、
將來の
研究についても、今乏しき
人たちではありますが、
調査を進めておる、こういう
状態であります。幸いにして今日のところ、
図書館の
利用者は
——もとより希望にはかないませんけれ
ども、少しく人の多い日は入館を謝絶しなければならないような
程度に來観者が多いのであります。また
立法調査の方におきましても、漸次議会からの御
要望によ
つて調査もしておりまするし、また今後御
要望があるのではなかろうかという予想の
もとに、だんだんと
調査物件もでき上
つておる次第でございます。これで
報告を終る次第でございます。