○佐々木(更)
委員 私は日本社会党を代表いたしまして、原案の第二十六條を留保いたしまして、原案に
反対し、あらためてこれから申し上げまする修正案を提案いたす次第であります。まず案文を朗読いたします。
日本國有鉄道法案中修正案
日本國有鉄道法案を次のように修正する。
この法律中「日本
國有鉄道法」を「日本
鉄道公社法」に、「日本
國有鉄道」を「日本
鉄道公社」に改める。
第一條中「
能率的な」を「民主的な、
能率的な」に改める。
第十二條第一項中「又は金融業」を、「金融業又は労働事情」に改める。
第二十八條第二項中「考慮して」の下に、「、類似の業種部門における給與水準を下らないように、」を加える。
第三十三條を削り、第三十二條を第三十三條とする。
(
意見の聽取)
第三十二條 総裁は、第二十九條、
第三十條第一項又は前條第一項の処分をするについては、当該
職員又は当該
職員に属する組合の
意見を開かなければならない。
以上の修正案を
提出する次第でございます。この
法案はマツカーサー
書簡の勧告に基くものではありまするけれども、さらに進んでは日本の
國有鉄道の持
つておりまするところの機能を自主的に十分に発揮せしめて、いわゆる公共の福祉を増進するところの日本
國有鉄道それ自体の必要から、かかる
法案を
提出するものと理解するものでございます。從
つてこの
法案が
從來の
國有鉄道と区別せられるためには、その
内容はもとより、その名称がこの新しい
機構を最もよく代表するものでなければならないのでございます。原案によりまするところの日本
國有鉄道は、その原案の
内容が、
從來の
國有鉄道の
鉄道総局をそのまま單に分離して、これを日本
國有鉄道と名づけたにすぎない、それ自体名前が日本
國有鉄道でありまして、これはまつたくお座なりの分離にすぎないのでございまして、かかるずさんな
機構や、かかる名称によりましては、とうてい新しい
機構の日本の
鉄道企業を代表させることはできないのでございます。わが党はここに日本
國有鉄道法を日本
鉄道公社法、並びに日本
國有鉄道を日本
鉄道公社と呼ぶことを主張するものでございます。特にこの
法案でわが党として最も留意しなければならないことは、かかる
機構の新しい確立によ
つて、眞に
企業の業績をあげようといたしまするならば、近代の産業の発展の原則に基きまして、最も労働協力が完全でなければなりません。しかるにこの
法案はいわゆる官僚的と申しましようか、この労働協力の部面をはなはだしく軽視しておるのでございます。もつと突き進んでは、自主的、民主的な労働協力をはばんでいる部分、いわゆる労働の自主的協力をかえ
つて妨害している部分が多く見受けられるのであります。從
つてこの
機構の
運営にあたりましては、この労働協力が十分に民主的に自主的になされるように、これを改めなければならない必要が絶対にあると思うのであります。從
つて監理委員会にいたしましても、これは当然かかるものに労働組合が——
経営に直接参加するようなことは別といたしましても、参加しなければならぬ。今日特に
鉄道産業におきまして、労務管理がきわめて重要であることはいうまでもございません。近來の
鉄道にと
つて最もおもしろくない現象は、いわゆる労働不安であろうと考えるのであります。從
つて新しい
機構が依然としてかかる労働不安を釀成するような條件を内包するならば、たとい
機構をいかに改変しましようとも、この新しい
鉄道機構が十分の業績をあげることは、不可能であろうと考えなければならないのであります。從
つてこの際こういう
監理委員会に、少くとも労働を代表する者が絶対に必要である。單に工業とか運輸業とか金融業とか、そういうものの代表だけで、新しい
鉄道企業の
運営が十分に円滑に行くということは、とうてい考えることはできないのでございます。私はかかるゆえに、第十二條の第一項中に、いわゆる労働の代表を
監理委員会に参加せしめるような、
委員の選任方法がとられなければならない、こう考える次第であります。特にこの
法案には、種々労働者の権利を抑止束縛する幾多の
條文があるにもかかわらず、その労働協力の最大の原因であり、かつまた労働不安の根本的原因でありまするところの労働者の待遇問題につきましては、これを十分に規定しておりません。規定しておらないばかりか、第二十八條第二項によりますると、この
公共企業体に從事する
職員の俸給は、他の公務員の俸給を考慮してきめなければならないというような、これを解釈いたしまするならば、他の公務員その他のものを考慮はいたしまするけれども、この公務員の給料よりも下にこれをきめることができるような
條文があるということは、私はいかにこの
條文が、労働協力の面を等閑に付しているかということの証拠であろうと思うのであります。從
つて私はこういう新しい
公共企業体の労働者諸君、すなわち
職員の生活を安定せしめるために、しかしてまたこの
職員の十分なる協力を得るためには、ここに第二十八條の第二項中、考慮しての次に、類似の産業部門におけるところの給與水準を下らないように、たとえば他の運輸業に從事する者、あるいは類似した公務員のこの給與を下らないように、それ以上にこれをきめるような、いわゆる一種の制限規定が設けられなければならないものである。
かくして労働者諸君の生活を安定せしめなければ、とうていこの
企業体の労働不安は除去されないものである、こういうふうに私は考えるものであります。特にしばしばこの
委員会で私たちが
意見を申し述べましたように、第三十三條による災害その他におけるところの無制限使用の規定は、労働基準法第三十三條においてすでに可能であります。しかも
公共企業体労働関係法第八條におきましては、この
公共企業体と
職員組合とがいわゆる團体交渉によ
つて労働協約をなすことを規定しております。これは單に規定しているというよりも、新しい労働行政として、労働行政として、労働協約を結ぶことを奬励している規定と見なければならないのであります。この労働協約におきまして、いわゆる労働條件、賃金あるいは労働時間、これらのものをこの
企業体と
職員の組合とが自主的に民主的に締結することを奬励しているのであります。しかるにもかかわらず、この第三十三條で、
公共企業体労働関係法第八條の奬励規定と見るべきところの労働協約を骨抜きにするがごときは、私は絶対に
賛成するわけには参りません。特に労働基準法におきましては、年少者、婦人等を保護する規定がありまするのを、しかもこの第三十三條の規定に基いて、年少者、婦人等をも無制限使用のできるような反時代的なかかる條項には、私たちは
賛成できないのでございます。先日私の質問に答えまして、当局はこの
日本國有鉄道法案は会社の定款にひとしいものであるということを答えられておるのであります。定款はいうまでもなく、会社の
機構とか
運営を明記するものである。その定款にひとしいものに労働條件をあらかじめきめるような、こういう定款自体が私は誤りであろうと思うのであります。こういう見地から私は第三十三條の全面的削除を主張するものでございます。特に
本案は第二十九條、第三十條及び第三十一條におきまして、
職員の降職あるいは減俸、あるいは免職、こういうものを規定しておるのでございますけれども、原案によりますれば、使用者の一方的な意思によ
つてこれをなすことができるようにな
つているのであります。從
つてこの規定をこのままに存置せしめまするならば、これらの規定は往々にしていわゆる労働者彈圧、もつと積極的には労働者の組織の彈圧に惡用されるおそれが十分にあるのであります。從
つて私はこれらの規定を設けるためには、ここに一方的な意思をも
つて押しつけることなく、十分
職員本人の意思を確かめ、あるいは本人の所属するところの組合の意思を聞いて、眞に納得の行く民主的な決定をしなければ、これまた労働不安釀成の原因になると考えますので、第三十二條の
意見の聽取の点を新しくここに設けたいと考えている次第であります。この
法案は全体を通しましてずさんでございます。われわれはもし時間がございますれば、根本的に、全面的にこれを修正したいのでございますけれども、現在われわれの置かれておりますところの客潜的な條件はこれを許しません。遺憾ながら私は不十分ではございますけれども、とりあえず以上の修正案を提案いたしまして、皆樣の御
賛成を得まして、決定いたしておきまして、あらためて第四
國会におきまして、これらの以外の不備の点、全面的なずさんの点を改訂いたしたいと思いまして、とりあえず以上の点の修正案を提案する次第でございます。何とぞ各位におかれましても、以上の点を十分御了察の上に、御
賛成あらんことをお願いする次第でございます。