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栗山良夫君 この
最高賃金制の問題は、さつきの
紛爭處理機關の問題とも非常に關係がありますので、或いは話が混同するかも知れませんが、然るべく解明して頂きたいと兩大臣にお願いして置きます。特に安本の方もさようにお願いいたしたいと思います。
最高
賃金統制方式、即ち
賃金安定方式に對しましては、今非常に私共として不可解に思
つておりますことは、五月の二十三日の夜のラジオでは、芦田内閣は初めて閣内において
意見の對立が出た。芦田民主黨と社會黨との間に、この問題を通じて對立が起きた、こういうようなことを報じておりました。又昨日の衆議院の豫算
委員會においては、
芦田首相と
加藤勞働大臣との間には
意見の
食い違いが起きておる、こういうことが報ぜられております。そこで私はこれは
加藤勞働大臣は、この前勞組法の
改悪が起きましたときに、するのかしないのか分らないような問題を、いつまでも煙にしておいて、勞働不安を起す
前提を
作つてはならん。だから勞組法の
改悪はしないとはつきり言明して、
勞働者に安心を與えるということを言明しておりましたが、そういうような線まで早く
政府部内の統一された方針というものが
決定されなければ、
勞働階級の不安は一掃されないと、こういうように
考えるが故に、次の
質問を申上げたいと思います。
ちよつと前段を申上げますが、昨年の七月に物價改訂がありまして、物價六十五倍、
賃金二十七倍、この比率に對しては當時
勞働階級は非常な不滿を表明いたしました。事實千六百圓を、撥ねつ返りを入れまして、千八百圓にふくらましても、尚且つ實質的には數百圓の赤字が出るということが安定本部で發表されておつたのであります。果せるかなその
通りでありまして、物價改訂の直後から、
勞働階級は賃上の運動を展開いたしまして、やつと今日まで何とか生命を繋いで來た、こういう状態であります。そうして恐らく今におきましては六十五倍、二十七倍の差は實質的にずつと縮ま
つていると思うのでありますが、然るに今度
政府は又物價の改訂を計畫せられまして、そうしてその基本的な
構想は、昨年の七月の状態にもう一遍還元をして、
賃金と物價の比率の差を還元する、こういう
構想に端的にとれると思うのであります。そうして而も社會黨の政調會の調査によりますと、三千七百圓ペースではすでに六百十圓の赤字が出る。こういうことが言われておるのであります。そういう状態におきまして、若し
賃金の安定をやろうというようなことがありますならば、ここに二つの問題がありまして、物資その他の完全配給ができるかどうかということの問題、これが
一つの問題になるわけであります。もう去年の七月分からの私共の體驗から言えば、現在の政治力を以てしてはなかなかそれは不可能に近いことである。結局七月以降においても同じような状態が再現し、六百十圓の赤字に對しては、
勞働階級は生活の切下げを克服するために、やはり賃上げ運動を依然として強硬に行な
つて行かなければならないのではないか、こういうように
考えられているのであります。そのときにこういうような
賃金の安定を、強權を以てやられるということが起きますならば、それは決して
賃金の安定ではなくて、ただ名
目的な
賃金の安定をするというだけでありまして、勞働の
生産性を高めることは何
一つできないと私は思うのであります。ただ逆に申しますならば、勞働の搾取でありまして、ますます勞働不安を激發するだけである、こういう
工合に
考えるのであります。戰爭中にあの徴用工に對して
賃金の釘付で、低
賃金を強要した當時の東條内閣の場合、如何にあの
賃金の釘付が勞働の
生産性を低下せしめておつたかということは、もう戰爭中のあの強權下においても、はつきり私共はあのように體驗しているわけであります。そこで今申上げましたような
事情から申しまして、
賃金の安定策というものは今俄かに機械的に講すべきではない。こういうようなことに私共は
考えるのでありますが、そのときに幸いに現在の
政府の中で
食い違いがある。こういう
工合にまあ二度も事實が報道されておりますが、その中で新聞紙上の報ずるところによりますと、五月の二十三日の毎日新聞におきましては、
加藤勞働大臣と西尾
國務大臣とは、二十二日の
閣議後の懇談會において
意見の一致を見た。そうして
賃金の安定は、合理的な基礎の上に立
つて行わなければ一利もないというようなことから、俄かに最高
賃金を設定すべきではないというような、
意見の一致を見たというようなことがいろいろ書かれておりました。併しここで私共關心を持
つておりますことは、これは社会黨の出身の閣僚としてのお
考え方を聽きたいと思うのでありますが、これは東京民報にも載
つておつたのでありますが、五月の二十三日であります。安本筋の最高
賃金統制方式に對しては、社會黨の出身閣僚は、
賃金安定は賃上げ要求の
爭議行爲防止が先決であ
つて、實質
賃金の裏付けのないこの
賃金統制はやるべきでないと、そういう
工合に
考えておる、又西尾大臣も輕々にこの問題を出すべきでなく
つて、今國會中には結論は得られないだろうというようなことを申されたということが述べられておりました。併しその場合に重大なことは、こういう
工合に言われておりながら、そこに社會黨閣僚の
意見として、間接的に
賃金安定策を講じなければならんということが述べられておつたんであります。で、その項目を見ますと、五つありますが、五つとも實にひどい内容であります。
一つはこれは企業に對する
赤字融資を極力制限し、
赤字融資の
賃金引上げを抑制する、二番目は合理的な企業整備によ
つて、水膨れ
勞働者の取得
賃金を振り向ける、三番目は粉爭
處理機關を全企業に
設置せしめ、粉
爭議の發生を防止する、四番目は粉爭
處理機關と別個に
勞資竝びに中立委員による
調停機關を設け、粉爭が發生した場合、當事者間で自主的に
解決する、五番は勞働
協約にピース・クローズを入れると、こういうことなんでありますが、これを
考えて見ますと、端的に申しますと、社會黨としては、今表から最高
賃金統制方式は取れないと、これは實質
賃金の裏付けがなければできないとこういう
工合にしておいて、内容的には、間接的には、
勞働階級が食えないために、働けないために
爭議を起して行くことに對して、
爭議を起し得ないような状態、例えば企業に對して融資を拒否して、そうしていくら企業が
賃金を改善しようと思
つても、融資を得られないために、
賃金の改善ができないと、こういうようなこと、或いは粉爭
處理機關を全企業に
設置せしめて、これはせしめてと書いてありましたが、これは
政府の意圖で、社會黨の閣僚の
意見として、こういうような
考えを持
つておいでになるのかどうか分りませんが……せしめて、粉
爭議の發生を防止するということは、
勞働階級が不滿があ
つても、この粉爭
處理機關で以て我慢させてしまおうと、こういうような
考えに受取れるのであります。それで、私はそういうような、今の、なぜ閣内で
意見が對立しておるのかということが
一つであります。そうして二つ目は、社會黨の閣内の
意見というものが、私が今東京民報で
承知したような内容と間違いないのかどうかということが
一つ、それから社會黨が若しこの最高
賃金統制をおやりになるとするならば、完全に物資の裏付ができてからおやりになるつもりなのか、或いはできないままにでもおやりになる豫定なのか、それからもう
一つは、西尾
國務大臣は、今國會には結論は出ないと、こういう
工合に言われておりますが、それは事實であるかどうか、こういうような點について伺いたいと思います。