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國務大臣(加藤勘十君)
只今のお尋ねに對しまして、現在のような
事態の起
つておりますることにつきましては御説の
通りでありまして、
政府といたしましても、一刻も速やから問題の平穩を解決を見ることについては、非常に熱望しておるわけでありまして、この點については御説のように
考えておるわけであります。
苫米地官房長官のラジオ放送が
政府に一方的な態度の表明であ
つて、
組合側から態度の表明がさなれていない。こういう御説のようでありますが、この點は私
どもといたしましては、
政府側として從來正式に今までの經過
報告がなされたことが一度もないから、經過
報告をする
意味でありまして、これによ
つて政府の態度を表明するという
性質のものではないのでありまして、ただ單にあくまでも經過
報告としてだけ述べられたものであることを御了承願いたいと存じます。
それから現在どういう點に
組合側と
政府側との間に喰い違いがあるか、こういう御
質問のようでありましたが、この點につきましては、大體のことは
新聞等を通じて御承知のことと存じまするが、御承知のように、新
給與の二千九百二十圓というものは、新合側から中勞委員提議されまして、中勞委の裁定に基いて、中勞委は三つの點を裁定したのであります。
一つは生活補給金として二・八ケ月分を支給するということ。
一つは最低賃金制の問題は、理論的にはともかくとして今日の實情においてはそれは
考え得られないから、新らしいそういうものを決める
給與委員會というものを作
つてそこで決定をすべきである、その新
給與は一月において決定するようにと、こういう點でありました。
この勸告に基きまして、
政府は當時いろいろな困難な事情もございましたが、中勞委というものの存在を尊重し、その裁定に權威を持たしめるために、これを承諮いたしまして、御承知の
通り、二・八ケ月の補給金を出すということ、それから一月を基準として新
給與のために臨時
給與委員會を作
つて新らしいものを決定する、こういう態度を立てることにな
つたわれであります。そこで一月、中勞委の申入れに基きまして、新
給與委員會が構成されることになりましたが、この構成におきまして、中勞委の申入と
趣旨に
從つて、各組合に代表者を出して頂くように、再三申入れたのでありまするけれ
ども、國鐵の方においては、組合の代表者が正式に参加を承諮されましたが、全逓その他の組合の代表者は、最低賃金制の問題が論議されないような
給與委員會では
意味をなさん、こういうことから、参加されなか
つたのであります。ところが中勞委の裁定は、今申しまするように、一月からということにな
つておりまするから、どうしてもやはり一月中に出發をしなければならんということから、一月の末に至りまして、甚だ遺憾なことでありましたけれ
ども、他の組合の参加を見ることなくして、國鐵の代表者だけが参加されまして、國鐵側から三名、
政府側から三名、これに中勞委から三名、九名の委員が出まして、そうして當時の状況におきましては、時間的にも相當の制約を受けておること、御承知の
通りであります。又
日本の現在における資料の蒐集の點においても一定の限界のあること、御承知の
通りであります。そういう限界のある時間的制約と資料の蒐集の上に立ちまして、この臨時
給與委員會が最善を盡して裁定をいたしましたものが、今
新聞に報道されておるところの二千九百二十圓の問題でありまして、これにつきましては、一囘、二囘の
報告書が出されておりまして、最初、賃金體系の問題については、それ程重要ではなか
つたように取扱われたのでありまするけれ
ども、これが途中において非常に重要性を持
つて來るようになりまして、
報告書の全文に強く採り上げられることにな
つたわけであります。
その新
給與體系とは、從來の生活給一本という觀念の上に、能率を加味したものを採り入れる。こういう點から、時間差、職種という問題が上
つて來たわけであります。そういう點で裁定されたものが二千九百二十圓となりまして、これを
政府が正式に
給與いたしまする場合に、新らいし
給與を支拂う内容を規定したものとして、過日兩院において御承認を受けました
法律が制定されたわけであります。この
法律の中に規定されたものは、臨時
給與委員會の答申に基くものを、それを中勞委の裁定によるものであるという點から、
政府としては極力これを尊重してその
趣旨に則る内容を規定したものでありまして、それから先に一歩も出ておるものではないのであります。ところが
組合側におきましては、二千九百二十圓で食えるか食えんか。こういう問題にな
つて参りますれば、誰でも二千九百二十圓で
滿足すべきものであるというような答えは出せません。恐らく何人と雖もこれでよいと言い得る人は一人もなかろうと思うのであります。そういう點において、そういう
滿足することができない、食えないというような賃金を決める場合に、今直ぐに能率給を加味した性格のものでなくて、從來の生活給としての千八百圓ベースをその儘の形において膨らましたもので支給すべきではないか。殊に二千九百二十圓は國會において豫算が承認されておるのだから、
當然政府としては支拂うべきではないか。こういう御
意見でありました。これに對しまして
政府側としては、二千九百二十圓が不
滿足なものであるということもよく分るし、又なんとかして勤勞者の生活の安定化を圖らなけりやならんということも十分に
考えられる點であるけれ
ども、この新
給與の改訂の問題につきましては、將來どうしても
日本經濟の再建のためには
生産増強即ち勤勞者の
生産意欲が増強されなきやならん、これには若干の能率的なものが加味された新賃金體系が定められなければならんという點を
一つ了承して貰いたいということと、それから
法律によ
つてそういうように暫定
給與の問題が決められ、それには時間差がついておるのだから、その點も
一つ了承して頂きたい。こういうように極力
お話をしたのでありまするけれ
ども、
組合側としては、それはそうであるかも知れんが、これは一月を基準とした一月から三月までのものであるから、もう既に過ぎ去
つた期なのだから、
從つて今直ぐに能率給を加味しなくとも、それは今後の問題の場合に團體交渉によ
つて話をすればいいではないか。取敢えず一月から三月までのものは今までと同樣の形において拂
つて貰いたい。こういう御
意見でありました。併しいろいろ話合いをしました結果、
組合側としましては、それでは
法律も既に定ま
つたものであるから、二千五百圓という暫定
給與の問題については時間差をそのまま認める。その代り四百二十圓のあとの職種、地域差という操作のできる範圍内において、これをやはり十五割……、時間によ
つて御承知の
通り十五割、十六割、十七割とな
つているが、これを今度は逆に、四百二十圓操作の場合には逆に計算をして、實質においては千八百圓を膨らまして二千九百二十圓というものが支給されるような形で、これは
法律上の操作でできるという
解釋に基いてそうしてくれないか。こういう
意見でありました。これに對して
政府といたしましては、そういうすべてのことを審議するために
組合側から十名、
政府側から十名というような委員を出して、調整整理
委員會というような
性質の
委員會を作
つて、そこで交渉によ
つて話合
つて、その話合の過程において、
政府といたしましてはできるだけ組合の希望に近いものが
實現するように努力をしたい。こういう申入をしたのでありまするけれ
ども、やはり依然としてその點については話がつかない。結局現在のような状態に立至
つておる次第であります。
これが今日までの最近における交渉經過の内容でありまして、こういう點で兩者依然として話合いがつかず、今日の
事態を惹き起して一般社會に不安の念を與えておりますることは、
政府としてましてはくれぐれも遺憾な極みでありまして、今日におきましても
政府としてはなんとかして妥詰の途を講じたい。このように
考えておりまするが、尚その
具體的な點につきましては、これは今まで申上げますように困難な
事態があるわけであります。
要するに二千九百二十圓を最低賃金制のそういう賃金體系の一系列として認めるか能率給を加味した新
給與體系として認めるか、こういう點に今のところ主として來ておるわけであります。この點において
政府側としましては、今日のようなインフレ昂進下において、物價の動搖常なき段階においては、最低賃金制を決めるということは
事實上不可能のことであるから、その點はいづれ勞働基準法に基く賃金
委員會というものもやがてできることになるわけでありますから、その方で全般の問題については十分に論議し審議する餘地もあることであるから、ともかくこの際は平和的に處理して頂きたい。殊に今日の段階におきまして、
爭議行爲が平和に打切られて、平和的な團體交渉によ
つて話が進められて行くということが最も強く要請されておるわけでありますから、そういう事情も
一つ組合側において十分御諒承の上で話合いをして頂きたいと、こういう態度に出ておるわけであります。今後の見透しとしては私共としては何とかこの點についての
組合側の御諒承を得たいと、このように
考えております。