○
公述人(風早八十二君) 昨日の或る新聞に非常に面白い、これは俳句でありますか、狂歌でありますか、出ておりましたが、「脛のきず、膿拡がりてつゆに入る」
というのがありました。これは漫画の附録に出てお
つた俳句でありまして、その漫画には今問題にな
つております、西尾氏の名前が出ておるのであります。併しながらこれは決して西尾氏個人だけの問題ではないのでありまして、現に当の西尾氏がいわゆる切返し
ということをやる
という話であります。これによりまして、社会党の内部にも又いろいろな波紋が描かれる。更に民主自由党なり或いは民主党なり、それぞれへもこの波紋が波及するであろう
ということが言われておるのであります。で、私がこのことを今特に指摘いたしますのは、これは決して
予算の問題と無
関係でない
ということであります。今度の厖大
予算の中には、又しても莫大なる割合を以て、終戰処理費及び公共土木
事業費
といつたようなものがあるのであります。さてその費用が、それならばその本來の目的にそのまま使われておるかと申しますと、これは疑問であります。で、昨今西尾民の問題を繞りまして出ております土建業者と
政府の大臣その他の要人たちとの
関係、こういうふうなものは結局主としてこの終戰処理費なり、又公共土木
事業費なり、こういうものの
支出を繞
つて、そこに展開せられておる事実に外ならないのであります。これは全國財務労働組合の機関紙でありまする「全財新聞」に出てお
つた記事なんでありますが、併し決してそれだけの、そこのいい加減な記事ではないのである。これは大体二十二
年度の
経験でありますが、これらの費用の工事
というものは、
一般にその筋の指示によ
つて行われる、そういうことにな
つておりますが、代金は勿論
日本政府がこれを支拂うのであります。そこで、この
日本政府とその筋との両者の間にあ
つて、巧みにこれを利用しまして、この一部のブローカー或いは土建業者が非常な不正な請求をやる。そこで昨
年度におきましても、この支拂の三割切捨て
というような問題さえも起
つた程なんであります。ここで実地調査をやりました二百件の
報告があるのでありますが、それに基きますと、この見積額が四十億五千七百万円
という、これは僅か二百件の調査でありますが、この四十億五千七百万円のうち適正を認められたる額は僅か二十一億でありまして、全体のこれは五六%に過ぎない。あとの四四%
というものは、これは余計なものを請求してお
つたということなんであります。こうい
つたような事実を又今年も繰返すかどうか、これは決して繰返さないと保証し難い、本
年度の終戦処理費はすでに当初
予算だけで九百四十二億円を計上しております。これは前
年度の当初
予算並びに
追加予算を合計した額の更に二百九十九億、約三百億
という
増加額でありまして、非常な驚くべきもので、これが全体の
予算の膨脹を大いに助けておる、で、而も終戰処理費
というものが、ただその終戰処理費
という費目だけに計上せられておるわけではないのであります。この費目以外の費目の中で、同じような目的を達しようとする、こういう
方針がすでに採られておるのでありまして、例えば公共土木
事業費、これはいろいろ複雑な内容を持
つておりまして、沢山の小さい費目に分れておりますけれど、その中でも終戰処理費と同じ目的を追及しておるものが多々ある
ということだけは断言して憚らないのであります。道路にいたしましても、我々がどこを見ましても、非常に惡い道や又どぶや、こうい
つたようなものが修理修繕せられておるような跡を見ないのであります。これは鋪装した幹線道路と対照して人々の注意を惹いているところであります。これは公共土木
事業費の費目は盛
つておるが、その実、終戰処理費において今日まで追及せられて來た目的と同じものを追うておるのじやないか
ということは十分これは言い得るのであります。こういうものをすべて集めて見ますと、大体私の
計算では全
予算四千億のうち約三六%
というものはこれによ
つて占められておる。これは実に莫大なものであります。
次に、この歳出の中で大きな割合を占めておりますのは、言うまでもなく直接
資本家に対する救助費だけでなく、それに対する積極的な補助費であります。例えば價格
補給金であるとか、或いは
政府出
資金でありますとか、或いは国債費でありますとか、或いは
物資物價調整事務取扱費でありますとか、又價格補正等特別補充費でありますとか、いろいろな名目を取
つておりますが、これらは露骨に、もう極めて明らさまに
資本家の超過利潤を約束した費用に外ならないのであります。と申しますのは、今日價格
政策におきましてすでにすでに
資本家は十分なる利潤を保証せられておる。到底
賃金は追い付けない。この
物價の高騰によりまして十分なる利潤が保証せられておる。例えば鉄鉱におきましても、これは銑鉄、鋼材ともでありますが、更に非鉄金属、それから肥料、硫安にいたしましても、燐酸、石灰にいたしましても、それぞれ非常に莫大な
補給金を得ておる。而もこれはすでにその價格が戰前の百十倍
というのが今度の
物價改訂の基準でありますが、併しながら実際に今買取られておるこれらの資材の價格
というものは、この百十倍を遥かに上廻
つておるのであります。而もその上に更に又
補給金が附く
ということでありますから、これは二重、三重に加重せられたる超過利潤でなくて何でありましようか。こうい
つたような費用がこれ亦全体の
予算の中で莫大な割合を占めておる、約二五%の割合を占めております。これだけでもすでに六〇%以上
というものが、この
予算の殆んど過半
というものが、占められておるのでありまして、これでは幾ら節約
といいましても節約ができない。どうした
つて財政は膨脹せざるを得ない
ということになるのであります。
飜
つて、それならば、この
国民大衆に直接間接利益を及ぼすであろうと
考えられる費用
というむのがどのくらい出ておるか。これは又実に貧弱なものでありまして、例えば社会
政策費
といたしまして
生活保護費、それから
国民健康保險経費、失業保險費、こうい
つたような
三つの大きなものが計上せられておる。併しながらこれはその実額におきまして極めて僅かなものであります。その割合にしますれば、四千億の全経費の僅か二・五%に過ぎない。更に教育文化費
といわれる、いわゆる六・三制
関係の費用でありますとか、小学校の教員の
給與の國庫
負担の
部分でありますとか、或いは新制中学の実施費でありますとか、或いは盲唖学校等々、こうい
つた費用でありますとか、いろいろなものを全部寄せ集めましても、やはり全体の
予算の三・四%にしかならないのであります。これら全部を合せて僅か六%にもならない。こういう惨めな状態であります。その外まあいろいろな、これはいずれともそう
はつきり制切ることのできないものもありますから、これらは一應預かりまして、直接費本家救済費になる、或いは又
日本を亡國の淵に陥れる、こういうような傾向を持
つた費用
というものが全体の
予算の大
部分を占めておる
ということを申上げることができる。これは何度繰返しても決して無駄ではない主張であると
考えるのであります。
こうい
つた歳出の一体財源はどういうものであるか。これはもう前々から、今日の供述人の方々からいろいろそのお話がありましたと思いますので、成るべく重複は避けたいと思いますが、併しながら、又この財源におきまして、同じように
財政の階級的な性質、又亡國的な性質、極めて非
生産的な性質、そうしてこれを
経済的に見ますならば、
インフレーシヨンというものをますます惡性化させるような性質
というものが現われておるのであります。大体税
負担というものは
一般会計だけで今日論ずるわけにはいかないのであります。これはもうみんなくつ附いて離れないものでありまして、
一般会計、
特別会計、並びに地方
予算を通じて
考えて行かなければならない。でありますが、これらを全部今合せて正確な
計算をするだけの資料がまだ発表されておりません。概してこの
一般会計につきまして申上げましても、これは昨
年度の税
負担よりも遥かに増大しておる。絶対的には勿論のことでありますが、その割合からい
つても倍加しておる
ということ、だけを申上げて置きたいと思います。ここで注意すべきものは、その場合に
政府が今度は
所得税
負担というものを軽減した
ということを言
つておることであります。これは果してそうであるか。絶対にそうじやないのであります。
政府の言い分によりますれば、この
所得税の免税点
というものを大いに引上げた、昨年は四千八百円くらいでありましたが、今年は一万七百五十円である、大変引上げた、これによ
つて非常に低い
收入者に対して大きな社会
政策が行われることに
なつた
というようなことを言
つておるのでありますが、これは眞つ赤な偽りであります。一万七百五十円
といえばちよつと大きいのでありますが、これを十二で割
つて見れば、僅かに八百九十五円そこそこにしかならないのであります。今日如何に低
收入である
といいましても、実額八百九十五円以下の勤労
所得者は殆んど一人もいない
といつて差支ない。でありますから、この一万七百五十円に免税点を引上げたと言いましても、これの適用を受ける人間が結局一人もいない。こういうようなインチキなる仕掛けがあるのでありまして、我々はこの点を十分に皆さんに訴えたいのであります。大体この勤労
所得税
というものは、すでに今日それでなくても絶対食えない二千九百二十円
ベースの
賃金の中から更に天引をする。これは本当の典型的な
大衆課税であります。我々の
生活の中に食い込んで行くところの本当の
大衆課税なんであります。でありますから、勿論これは全廃の必要があるのであります。又それなくしては、この全廃なくしては、本当に労働
生産力が維持せられて、そうして産業の再建、
日本の再建
というものはなされないのであります。併しながら、それにしましても、この税金のまだ廃止せられない場合におきまして、この免税点は大いに引上げられなければならない。我々は少くも勤労
所得税を廃止して、そうして綜合
所得税として、これに大体免税点を二十万円くらいにするのが、これからの
物價の値上りを勘案いたしまして妥当であろうかと
考えておるのであります。いずれにしてもこうい
つたようなわけで、決してこの
所得税を軽減した
ということは言えないのであります。若しも言えるとすれば、それは極めて高額なる
所得者に対してだけでありまして、これは確かに累進課税率を非常に引下げております。或る
程度軽減
ということは言えるのであります。又法人税のごときもやはり相当の引下げをや
つております。殊に外國法人税、これは今まで四%台でありましたのが更に三〇%台にこれを切下げている。こういうようなことにな
つておるのでありまして、これらについては確かに軽減があるのであります。我々としてはむしろ外國の法人であろうが、やはりこれは
日本において営業をする場合は、
日本の法人税立と同等或いは同等以上になすべきである
という主張を持
つておるのであります。少くとも五〇%以上のものにしなければならんと
考えておるりであります。然るにこういう点については、全く反対の処置を採
つておるのであります。こういうふうにその声明に副わない内容を持
つた所得税のいわゆる「軽減」なるものを口実
といたしまして、更に
政府はそれだけの財源を他に求める、言い換えれば間接
消費税に求める。今日最も問題にな
つておりますのは、いわゆる取引税であります。この
生産者から卸へ、卸から小賣へ、小賣から又
消費者へ、この各段階ごとに各一%ずつ税金を取
つて行く。でありますから、最終の
消費者に対しましては、全体で殆んど五%以上に上るであろうと
考えられる厖大なる消費課税の増徴があるわけであります。こうい
つた新らしい
負担増大の上に更に附加えて、
政府は今日鉄道運賃の
値上げ、
通信料金の
値上げ、更に煙草その他の
値上げを企図しておるのであります。これらについては、それぞれ非常な問題がある。で、これはもういろいろすでに論議せられておりますので、私は後で主張のところで一括して、これに対する我々の態度を明らかにしたいと思うのであります。一應ここでは省いて置きます。
こういう実に階級的なる
予算というものに対して、我々はこれを如何に処置すべきであるか。又今日ここでお集り頂いておりますところの
予算委員の方々に対しましても、我々は虚心坦懐に皆様に是非共お願いしなければならない。この今日の
予算というものに対しては、先ず第一に徹底的なる緊縮
という要求を我々は持つのであります。と申しますのは、先程のようなわけで、この
予算は膨脹に膨脹を重ねて、
一般会計だけでも、すでに四千億に達しておる。而して
一般会計四千億だけが問題ではない。
特別会計がすでに約一兆一千億足らずあるのであります。更に又これに対して地方
予算というものが約二千億あるのであります。で、全体の
予算の総額
というもりは約一兆六千億に達するのであります。勿論この中には重複する
計算がありますから、これを差引きまして、純計としても殆んど一兆を超えておるのであります。今日
國民所得が一兆九千億と言われておるのでありますから、この
政府の一應の
数字を認めましても、これの過半
というものは
財政負担で食われてしまうのであります。こうい
つたような莫大なる
財政負担というものは、これは殆んど今日の我が
國民経済を食い盡しておる。又我々の
生活、
國民所得の中に深く食込んでおるのでありましで、このために
國民の
生活はいつまで経
つてもうだつが上らない。大体
予算の緊縮に対する要求
というものは、これは本來は非常にブルジヨア的なものであります。
資本家はこれを要求したものであります。我が國におきましても明治二十五年、六年の最初の二回の議会でありますが、この時には確かにそうである。あの時には、まだ
政府は全くの軍閥、官僚のいわゆる藩閥政権
というものでありまして、これに対して議会はとにもかくにも進歩的なる新らしい氣魄を持
つてお
つたのであります。この数回の國会におきましては、毎回々々國会
というものはこの藩閥、軍閥、官僚政権に対する議会の猛烈なる対立抗争の舞台であ
つたのであります。あの有名なる樺山海軍大將のごときは「明治以來今日まで
日本がや
つて來たのは誰のお蔭であるか。これは我々薩、長、士の元勲である。お前達の今日あるのはこういう藩閥のお蔭じやないか。だからお前達はぐずぐず言わないで、全部この
予算を呑め」
という有名な蠻勇演般を試みて、莫大なる軍事費を計上しておる。これに対して
予算委員会を挙げまして、これに反対して猛烈な削減をや
つて、遂に本会議においても否決さした。同時に併し
政府はこれに対抗して解散を命じておるのであります。それにも屈せずして又次の議会において同じことをや
つておるのであります。併しながらこれは二十五、六年の二ケ年の議会に行われたことに過ぎないのであります。それ以後二十七年日清職事が始まりまして以來は、遂に我が
資本家達は軍閥、官僚の政権と完全に妥協いたしまして、それ以外は遂にこの軍事費に対する徹底的なる
予算の削減
ということをもう言わなくな
つて今日に至
つたのであります。今日におきましては、もはや
財政の膨脹
ということはその当時と
意味が違う。日清戰争以後は
財政の膨脹
というものは、これはもはや
資本家がみずからの
負担を感じなく
なつた。若しこの
負担があるならば、それは全部
國民大衆に轉嫁することができるのだ。それをやる、その代り軍閥が、官僚は十分助けて呉れる
という妥協が成りましたために、税金
負担の大
部分というものを
國民に掛けてしまう。その又経費
というものは殆んど大
部分資本家
自身の利益に使われることに
なつた。でありまするから、幾ら
財政が膨脹してもそんなことは苦しうない。むしろ今日では
財政が膨脹して更に
補給金が加わる
ということの方が利益であるとさえ
考えておるのであります。でありますから、今日
資本家の手によりまして絶対に
予算の削減
ということはあり得ない。ますます膨脹する一途であります。この
予算の削減を真に要求し得るものは、今日この勤労
國民大衆を措いて外にはないのであります。我々はこの勤労
国民大衆と共に痛切にこの
予算の徹底的なる削減を要求して止まない。
この
予算の削減をどの
程度になすべきか
ということは、この場合にはもはや、どの
程度に我々が産業再建なり或いは
國民生活の安定と向上に必要な費用が計上せられるべきか
ということによ
つてむしろ決するのでありまして、これは今日の微々たる四千億の
予算の中で僅か六%弱の計上をみているに過ぎないところの社会
政策施設費乃至は教育文化費、こうい
つたもの及びこの産業再建に必要なる諸費用
というものを大幅に引上げて、これを引上げない限りは本当の
日本の再建
というものはできやしない。幾ら
補給金をや
つたつて、幾ら終戰処理費が膨脹しても、それによ
つて少しも我々は
日本の
経済再建はみていない。又
政府はこの場合におきまして、勿論それはまだ外資の導入がないから、外資の導入さえあれば何とかなる
ということを言
つております。併しながら外資の導入
自身が果してどの
程度まで期待し得るものであるかどうか。勿論この外資の導入が我々
国民生活にむしろ大きなマイナスの影響を與えている
ということを十分に証明し得るのでありますが、今はこの問題は省いて置きます。
政府の言うように、若し外資の導入
ということが少くもこの
資本家的な
日本の再建に役に立つとしても、この導入をどの
程度まで期待し得るか
ということは甚だ疑問であります。すでに皆様御承知の通り、アメリカの國会におきまして、下院では一億五千億ドルの
日本並びに朝鮮
経済再建費
というものを全面的に否決してしま
つた。これは上院におきましてヴアンデンバーグ氏の努力により一億二千五百万ドル分は復活した。併しながらまだまだこれは分らない。併しながらこれが仮に復活しましても、これくらいの金によ
つてそれで
日本が復活するくらいならば、
日本はこういうものを貰わなくても復活する。この一億二千万ドルを仮に一ドル二百円乏して換算して見ても、僅か二百億ぐらいの金である。これを貰うか貰わないかで
日本の再建がどうなるか
ということが決定される
というならば、誠に情ない再建と言わねばならんのでありましよう。
日本の八千万の同胞が完全に就業できまして、而もこれらの人達が就業した場合においても、しない場合においても、全部最低
生活以上のものが保障されるらいうことのために、
日本はこの厖大な
生産拡充が必要なのであります。來るべき産業再建
というものは実に厖大なものでなければならない。私など終戰後一貫して、
日本の重工業、機械工業、こうよう基礎的な産業
というものの拡充の上に
日本を再建しなければならん
ということを主張してお
つたのはそのためでありまして、これがなされるために僅か一億ドルぐらいの金で右左されることはあり得ないと思う。しかのみならずこの一億二千五百万ドルが仮に入
つて來るとしても、入
つて來る資材の性質が問題であります。若しこのクレジツトの裏付けで入
つて來る資材が直接
日本再建に役立つところの平和的な
國民生活に必要なものでなか
つたら、どうしますか。若し再建される重工業乃至化学工業が軍事的なものになり、再び財閥軍閥の権力に基礎を提供するものであ
つたらどうしますか。それは窮乏しておる我々
國民生活をますます押下げることを
意味するでしよう。現に
政府発表の「
経済復興五ケ年
計画案」を見ますと、その最終
年度におきまして、
國民生活は
昭和五年乃至九年の平均に対して八〇%に切下げられておる。然るに重工業、機械工業の方は一四〇%にな
つておる。これは、併しながらもはや我々が期待する重工業、機械工業でなやのであります。そしてこれは戰時中の
経済というものを更に再興し拡大して行くに外ならない
ということは
はつきり言えるのであります。我々がこの重工業、機械工業
というものを今日大々的に拡充しなければならない
という場合におきまして、これはもはや今まで通り財閥の手に委せて置くべきものでなく、又これと結託した軍閥に委せて置くべきものでなく、この両者を全然これから切離しまして、どこまでも重工業、重要産業
というものを國営にして、これを人民管理して行かなければならん。更にこれらの
金融を賄うところの
金融機関というものにつきましても、これは國営にして人民管理にして行かなければならん。先程土屋さんが
復興金融金庫の問題について指摘されましたが、問題は正にここにあるのであります。併しながら土屋さんの言われる
結論とは違いまして、
復興金融金庫に対して幾ら統制を加えてもこれは駄目である。今日一切の
市中銀行が
復興金融金庫にかぶさ
つておる。つまり国庫の金を用いまして、自分達の産業を救済しようとしておる。而もこれを
生産的に救済しよう
というのでなく、これをあらぬ方面に使おうとしておる。そのため
インフレはますます惡化しておる。こういう不都合なる
復興金融金庫に向
つて日本の一切の
金融の役割
というものがかぶさ
つて来ておる限りは、もはや
復興金融金庫と
市中銀行を合せたものを
一つにいたしまして、これを國営にして人民管理にして行かなければならん。もうそこに行く
條件が成熟しておる。これに対して本当に
日本の勤労
大衆の代表を送りまして、人民管理をして行き、この
生産的な面に向
つて金融を使
つて行き、これによ
つて正しく資材を買集めて行く。資材を賣る方の側におきましてもやはり國営にして、人民管理をして、これと見合う
という仕組を取らない限り、
日本の眞の再建はあり得ない。
この見地から今度の
予算の徹底的な削減を主張すると同時に、これらの産業再建の費用並びに
國民生活安定向上の費用を大幅に引上げて行くことを要求するものであります。
細かい
数字を挙げて見たところで話になりませんし、もう時間もありませんから、
結論に移りたいと思いますが、例えば今日のこの
経済負担を軽減する、
国民負担を軽減するために労働階級の各層は鬪
つております。この國鉄の労働組合の諸君は、國鉄の運賃
値上げにみんな反対しております。そうしてこのために鬪
つておる。又全國財務労働組合の諸君は、外ならぬ彼ら
自身が徴收しつつあるところの
大衆課税に反対しております。又第三に專賣局の労働組合の諸君は、この煙草
値上げに反対しております。併しながらその人達が若しもそれぞれ自分達だけの経営に関する新らしい
負担の増徴を、これを軽減しよう
というふうに狭く物を
考えて行きますならば、これは決して解決したい。例えば国鉄の從業員諸君に聞いて見ますと、國鉄の運賃
値上げによりまして、彼らの実質
賃金が直ちに下るのであります。決して彼らの
賃金というものが上るために、彼らの
賃金が保障されるために運賃が上るのじやない。そういうこととは別個に運賃が上るのでありまして、これによりまして彼らの
賃金は却
つて下るのであります。これでありますから、運賃
値上げに反対するのは尤も至極なんであります。併しながら、この財源をどこに求めるか
という場合に、若しも國鉄の諸君が、そういうことはないと思いますが、煙草の
値上げをこれでする、それに賛成する、若しそういうことであるとするならばどうなります。これに反して煙草
値上げに反対する專賣局の労働組合員の諸君が逆に運賃を
値上げしろ、それによ
つて財源を取出してこの煙草の借上げをやめる、こういうことになりますればどうします。これでは何にもならない。やはりこれらの全財の労働離合の諸君も、又煙草の專賣局の労働組合の諸君も、國鉄の從業員の諸君もみんな一緒になりまして、これらが全体に通ずる
大衆負担を軽減する、これに対して別個の財源を大きく求めて行く
ということが必要なんである。この財源は果してどこに求めるか。これは最も大きな問題でありまして、実際問題でありまして、我々は仮に今日のこれらの厖大
予算を一應そのまま呑む
という建前をとりましても、それでも尚且つこれを十分補
つて余りあるところの財源を知
つておる。これが外ならぬ大間利得者の脱税
部分でありまして、これは全國財務労働組合の機関紙、先程挙げました全財新聞の
計算するところによりますと約五千億弱あるのであります。すでにこれだけの大脱税が昨
年度において行われておる。でありますから、これを徹底的に追究すれば、もうこれらの
赤字インフレ予算というものは大いに解決が付くのであります。で、この
大衆の税
負担というものは殆んどもうこれは全免に近い状態になし得るのであります。こういうような大体税金の体系の問題を、根本的な
改革なしには、今日はこの
財政の
改革ということは絶対にあり得ない。で、我々はこれらの
部分的な
大衆の要求
というものを全部総合して、そうしてこれが共通に満足させられる共通の相手方、この大独占
資本家並びに大闇ブローカー達の不当利得、不正なる利得、又これらの利得はそれからそれへとこの高級官僚の腐敗、頽廃を又導き出すのでありまして、これらの二重、三重の罪悪の根源であるところのこの不正なる利得
というものに対して徹底的なメスを揮い、これによ
つて今日の
財政の問題を根本的に解決することを主張して止まないのであります。幸いにして今日この傍聽を辱くした議員諸公が、単なるその政党の今までの
立場というふうなもの、或いは今まで持
つてお
つた主張である
というようなことを棄てて、虚心坦懐に、我が
国民大衆を今日生かすか、殺すか、そうして
日本を亡國の淵に陥れつつあるところのこの
予算に対して如何に鬪うか
ということを、この
國民の代表者としての皆様が
考えて下さることができるならば、私の本望これに過ぎるものはないと
考えるのであります。