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中西功君 その点は別にしまして、直接
援護院総裁がや
つていらつしやる事務についてお聽きするのでありますが、これは実は先般も申しましたが、私たちが独自で引揚港を調査いたしましたところによりますと、さつき十五万人分を用意しているといわれておりますけれども、実際において十五万人どころか四万そこそこの能力しかないというふうなことを知
つたのであります。これは
一つは、確かに船は或いは
政府の言われるように、一應そういう
準備に当てられておるかもしれませんが、乘組員が種々の
理由によ
つて、即ち
一つは待遇の非常に惡いということ、並びに最近におきましては戰争のデマが非常に飛びまして、それに対する保証というふうなものが十分でないという結果、乘組員が乗りたがらないで非常に少くな
つておるという風な
事情が
一つあることを発見しております。更に又もつと大きし問題は、食糧、或いはその他の必要な物資の積込みにおきまして、例えばこういう話を聞いております。その場合、この食糧の積込み、引渡し、そうしたものは引揚援護院の調達部が行な
つている。ところが、その調達部の役人がその食糧を引渡す場合に非常に官僚的であ
つて、なかなか快くは出さない、コミッションだとかそうしたものを非常に要求する、或いは種々の策を講じてその積込み食糧を横流ししておる。具体的な事実といたしましては、例えば二千人以上はまあ積込まないわけでありますが、併し船が大きくて尚スペースがあるという場合に、向こうでは引揚者が待
つていて、引揚者たちが一日も早く帰りたいために、二千五百人くらいはとにかく船長が乗せてくる。その場合に船長は二千人以上の食糧は積んでいないのだから絶対に乘せられないというふうに断るんだが、断り切れないで乘せて来るという風な場合もあると聞いております。そうした場合五百人分については、もともと二千人分しか食糧をや
つたということにして、そうしてその五百人分の物資、食糧、そうしたものを適当に処分しておるということも現にあ
つたと聞いております。こうなりますと、いくら船があろうが何しようが、或いは
政府の上の方で
準備をしておるということを言
つても実際の現実においては引揚能力が非常になくなるということになると思うのであります。よく巷間傳えられるところによりますと、これと反対のことを言われております。
日本側としては、例えば高砂丸の如き四千人も積まれる船を向けるときには四千人乘せたいというので交渉すると、ソ聯側がそれを聞かない。それでやむを得ずがらがらの船が帰て來ておるしますから、こういうふうなことはこれは巷間傳えられておりますが、実際は反対であ
つてこういうふうに食糧を非常に切り詰めて乘せないというふうなことや、或いは船長がどこからかよく知りませんが、とにかく二千人以上は絶対に乘せてはならん。スペースがあ
つても乘せてはならんというふうに嚴命されておる。そういうところから実際の問題として引揚が非常に澁滯しておる。これが十分でないという点があると思うのであります。それで、まあ私の第二の
質問は、そういうふうな食糧の問題に関して、現に現地においてこの横流し事件があ
つて檢挙されておるということを聞いておりますが、そういう事実があるのかないのか。そうし又そういう事態に対して最近援護院長官が私は現地にいかれたということを聞いておりますが、その調査された事実は一体どうかということを聞きたいのであります。
第三点はこれは檢疫の問題でありますが、檢疫ということによりまして船が三日、或いは四日、五日と相当長い間、船に乘
つたまま
日本の港についておりながら待
つておるわけです。その帰還というものは非常に船の運航能力を殺いでおるわけでありますが、一体そういうふうな檢疫ということだけで三日も、五日も止めておく必要が一体あるのかどうか。これは一日で済むと思うのです。そういう点が非常に問題だといういことを我々は
考えておる。第四番目は、これはもつと切実な問題であるますが、引揚げて來た人々は港に引揚げて來たときに旅費として三百円渡される。この三百円で檢疫中の小遣いも使うでしようし、港を出るときにはすでにもう一文無し。
從つて函館に着いた人々は青森で洋服を賣るとかということによ
つて、それこそ本当に裸にな
つて來ておるという実情です。今の時代に三百円しか事実渡さないということは非常に馬鹿げておると思います。尚この点は今年においても
政府はこれを実際に継続するつもりなのかどうか。これまで
日本側が言います
受け入れ態勢が事実において非常によくな
つておるのかどうか、その点をお伺いいたしたい。もう
一つの点は、その引揚者には從來物資の特配みたいなものがあります。ところがその物資の特配の場合に、必ず復員者は除くとこう書いてあります。即ち復員者は物資特配を受けられないのであります。これはいろいろの
事情もあると思いますが、
日本政府の独自の見解というふうに、その他いろいろ
事情はあると思いますが、実際の問題として現地においてと言いますか、外地において商賣をしておる。そうして引揚げて來るという人と、復員して來る、戰争に行
つて帰
つて來るという人と、これは確かに非常に違うと思います。違うというのは反対に違う。即ち戰争に引出されて、狩出されて、そうして長年の間実に一月十五円で働かされて、何にもないという人が実は復員者である外地において商賣しておる人々はともかくも自分達が自発的にあそこへ行
つたのでありまして、今日帰
つて來るといたしましても、これは止むを得ざる
事情で帰
つておるわけであります。いわゆる決して強制的に外地に連れられて行
つて帰
つて來た人達とは違うのでありますから、むしろ復員者をこそ、我々は優遇しなければならん。ところがそれが逆にな
つておる。單なる引揚者だけが優遇されておるという、こういう
状態にあると思いますが、
政府としてこういう矛盾を今匡正する意思或いは用意があるかどうかということをお聞きしたい。その他まだありますが、一應その点をお聞きして、後は又後にしようと思います。