○吉川末次郎君 只今
議題となりました、
地方財政法案並びに地方税法を
改正する
法律案及び地方配付税
法案並びに地方自治法の一部を
改正する
法律案につきまして、本委員会の審議の経過並びに結果について御
報告いたしたいと存じます。
先ず
地方財政法案について申上げます。先に地方自治法の
制定実施によりまして、地方公共團体の自治催は、画期的なる伸長を見たのでございますが、その基盤をなすべき財政自主権は未だ必ずしも確立を見るに至らず、而も他面激変する経済変動の影響を深刻に受けまして、
地方財政は非常なる危局に直面するに至り、この危機を打開して、眞に地方自治の確立に即應する、自主的
地方財政制度を確立するということが、緊急の課題とな
つておりますことは、皆さんも御承知のことであると存ずるのであります。從
つてこの際自主的
地方財政及び税制の確立を期するために、その独立
財源の
拡充強化を図ると共に、國家財政と
地方財政相互の関係に対し、合理的規律を與え、
地方財政の合理化、健全化を図る必要がありますことは、勿論のことでありまして、この趣旨により提出せられましたのが、この
地方財政法案でございます。
その内容につきまして、政府当局の説明の大要を申述べますれば、第二点は、
地方財政運営の基本に関する問題でありまして、その一は
地方財政の実質的収支の均衡を図るため、赤字財政の根源である地方債の発行についての
原則を規定いたしましたこと、その二は公営企業の経営につきまして、いわゆる独立採算制を採用いたしましたこと、その三は、
地方財政についても減債基金制度を採用したること等でございます。その
運営全体を通じて健全財政堅持の精神を具現しようとしておるのでございます。
第二点は、
地方財政と國家財政との関係に関する問題でございまして、その一は事務の性質によ
つて國費、地方費の
負担関係を明瞭にせんとしておるのであります。その二はいわゆる補助職員制度の合理化でありまして、従來のごとき國庫財政の一方的な都合によ
つて、補助額の増減せられることは、
地方財政を常に不安定な状態に置きますし、かたがた補助を通ずる無用の干渉は、地方公共團体の首長の権限に、不必要なる制肘を加えるものであつたのでございますから、從來の補助職員制度をも廃し、
國庫負担職員の制度を設け、その定員、
負担経費の範囲及び
負担割合は、法律において規定いたしますことによりまして、この方面における
地方財政の困難を取除くことといたしてあるのでございます。その三は
國庫負担金、
國庫補助金等の支出を合理化せんとすることでございまして、これらの
負担金、補助金等の金額算定の基礎及びその支出時期等について、基本的なる規定を設け、國庫の支出金が
実情を無視した低い單價で定められたり、著しく遅れて支出されたりする現状を防止しようとしておるのでございます。
次に第三点は、地方公共團体の相互の間における財政関係に関する問題でございます。特に
都道府縣とその区域内の
市町村との間における財政関係は、國と地方團体との関係と類似した問題でございますので、その間の問題につきましても、國と地方公共團体相互の間における財政調整の方法に準じまして、
経費の
負担関係その他について合理化を図らんとしておるのであります。
最後に第四点は、地方公共團体の財政
運営に関する規律、「國庫財政と
地方財政との関係に関する規律」に、違反した場合の
措置に関する問題であります。その一二は、國又は地方公共團体が法令の規定に違反して、補助金、
負担金等を濫費しましたときは、國はその
負担金、補助金等の返還を命じ、地方公共團体は國に対してこれが返還を請求し得ることとしてあるのであります。その二は、地方公共團体が法濫令の規定に違背して、多大の濫費を行つた場合等におきましては、それだけ
財源調整の意味で交付される配賦税の額を、減額し得ることとしてあるのであります。
以上がこの
地方財政法案の内容といたすところでございます。
次に第二番目には、地方税法を
改正する
法律案につきまして、併せて御説明申上げたいと存じます。
今回の地方税法の
改正は、全文百五十條よりなりまして、非常に廣汎な規定を包含しておりますので、詳細な御
報告を申上げることは、時間の関係上、これを省略させて頂きますが、要約いたしますると、一、地方公共團体に必要な
財源が得られるよう、
地方財政の全般に亙
つて改正をいたしましたこと、二、財政自主化のため、監督官應の許可事項を全廃したことが、その主なる内容としておるところであります。即ち所要の
財源を得る方策といたしましては、第一には新税目の創設でございまして、事業税、特別業務税、鉱産税、電気ガス税、木材引取税、使用税、余裕住宅税等を新設せんとするものであります。
第二には、現行税目について、その課率を
引上げまして、租税収入の増加を図ろうとするものであります。地租、家屋税、住民税、その他各種の税目に対して、賦課率の
引上げを行わんとしおるのであります。
第三には、國税の地方委譲でありまして、入場税、狩猟免許税等を地方に委譲せんとしております。
次に監督官廳の許可の権限を全廃することは、地方公共團体がその財政自主権を確保するため、多年要望しておつたところでありますが、この度の地方税法
改正を機会といたしまして、実現する運びと
なつたのであります。併しながら、これがため地方團体が財政
運営の方針を誤るようなことがあ
つては、却
つて地方自治の基礎を破壊することになりますので、地方税審議会というものを
設置いたしまして、これが
審査の制度を設けようとしておるのであります。
以上が今回の地方税制の改革の大要でありますが、政府におきましては、先に
地方財政委員会を
設置いたしまして、
地方財政確立の方策の審議、立案に当らしめたのでございます。ところが不幸にして財政委員会の案は、その全部を政府が容るるところとはならず、政府案と
地方財政委員会案とが互いに対立するの結果を來しましたことは、誠に遺憾とするところであります。政府は國会に、その政府にやや対立する点がありまするところの、
地方財政委員会の案をも、審議の参考として我々の手元に送付して参
つておるのでございます。
第三番目には、地方配付税
法案について御説明申上げなければなりません。本
法案について政府当局の説明するところによりますれば、現行地方分與税法を廃止いたしまして、新たに地方配付税法を
制定するものであります。
地方財政自主化の見地から考えまして、前の地方分與税法にある分與という言葉は適当でない、これに代えて配付という言葉を用うることといたしました外、現行地方分與税法の内容に若干の修正を加えたものでありまして、その根本精神には別段の変更は加えてございません。その
改正の要点といたしまするところは、第一点は、配付税制全般に関連する問題でありますが、その一は、入場税を地方独立税といたしまして、地方配付税の
財源から除外いたしましたこと、第二は、配付税の繰入割合を増率いたしましたことで、地方税所要額は年間一千百七十二億円でありますが、國税の委譲を受けたり、地方独立税を創設したり、現行地方税の増税を行つたりいたしましても、尚四百十五億円の不足を生じますので、これを所得税及び法人税から地方配付税配付金特別会計の方へ繰り入れる割合の増率に求めることとしてあるのでございます。
その三は、配付税の道府縣分と
市町村分との割合を変更いたし、
市町村分を増率したことでございます。地方税所要額中、独立税又は附加税の収入を充てて、尚不足いたしておりまする額は、配付税を以て充てることといたしますと、その配付税の所要額は道府縣分二百九億円、
市町村分二百五億円となりますので、その配付税の道府縣分と
市町村分との割合は、それぞれ百分の五十ずつとなるのであります。現行は道府縣分百分の六十七、
市町村分百分の三十三でありますので、この
改正によりまして、
市町村分は現在より相当増率することとなります。
その四は、戰災による税の減収額を標準とする戰災地地方團体に対する分與税の制度を廃止したことであります。
改正の第二は、配付税の配分方法に関する問題でありまして、財政需要に正例して配付する配付額の算定方法につきまして、或いは人口に設けるウエイトに、
改正を加えたのであります。或いは新たに義務教育に係る学級数を標準とする配付額の制度を設け、町村配付税を、
自治体警察を
設置する町村と
自治体警察を
設置しない町村に区分する等、配分の適正化を図ることといたしておりますが、詳細は速記録により御承知を願いたいと存じます。以上が地方配付税
法案の趣旨、内容であります。
今申上げました
地方財政に関するところのこれら三
法案につきましての我我の委員会における質疑の主なるものにつきまして申しますると、
第一には、酒、「たばこ」の消費税を地方税として新設することは、財政委員会が相当の自信を以て立案したようであるけれども、政府案としてはこれを採用していなかつたのは何故であるか、又知事
会議等の主張するところの所得税附加税をば地方税として認めなかつた理由はどうであるかというような質問がございました。これに対しまして政府委員から、消費税は國税とする租税
原則に反するということ及び國の專賣品に地方税を課することは適当でない、又所得税附加税は本税が配付税の
財源とな
つておるのであるから、実質的には地方税とな
つておるし、又源泉課税が相当多額に上
つておるから、地方税としては不適当であるとの答弁がございました。
第二には、先に申しましたところの地方税法を
改正する
法律案中に規定いたしてありまするところの、新たなる機関でありまする地方税審議会の委員の選任方法につきまして、從來國会の承認を求める場合……そのような規定があるのでありますが、そういう場合において、事前に何らの國会の了解を求めることなく、突然提案して同意を求める例が、國家警察に関するところの公安委員の選任その他のことについて見られたのであるが、今後は事前に人選上の協議をなし、了解を求めるべきであると思うが、政府の所見如何という質問に対しては、政府委員よりこの趣旨の通り取計らうつもりであるという答弁がありました。
第三には、生活保護費の二割は地方
負担とな
つているが、地方ではこの
負担の増大に苦しんでいる分與税の交付に際して生活保護費に充当する分を明らかにして欲しい、無縁故者を多数収容せしめている特定の町村の生活保護費は
全額國庫負担とすべきであると思うが、政府の所見如何といふ質問に対し、分與税は
地方財政の調整資金的性格を有するものであ
つて、
経費の使途を
指定することは困難であるが、御質問のごとき無縁故者の収容のため特に財政
負担を要する町村に対しては、御意見の趣旨は御尤もであるから、分與税の配分で考慮しているという答弁がありました。
第四には、引揚者に対して課税を免除すべしという本院の決議の趣旨に則
つて、今後の引揚者に対し住民税を一ヶ年間免除することとしたい、又休業中の料理飲食店業に対し遊興税を課することは適当でないと思うが、政府の所見如何との質問に対しては、引揚者の窮状には深く同情する、從
つて公私の救助を受くる者は免除することにな
つているから、この規定の運用によ
つて措置したい、又事実、休業中の料理飲食店業に遊興税を課することはないと思うという答弁がありました。
次いで七月五日即ち本日衆
議院より左のごとき修正案を附して回付されて参りましたので、この衆
議院修正案をも一括して審議いたしました。衆
議院修正の要旨を御紹介申す必要があると存じますので簡單に申上げます。
衆
議院修正案の第一は、酒の消費税とその附加税を新設し、その賦課率は通じて百分の五として、これによ
つて約十五億円の
財源を見込んでおるということ、
第二点といたしましては、右の増収を
財源として住民税の減税をなすこととし、住民税の賦課標準額千円を九百円に引下げるということ、
第三点は、本法即ち地方税法
改正法律の施行期日は七月一日とな
つておりますのを、公布の日より施行することに改めたことであります。
かくして我々の委員会におきましては質疑を打切り、討論に入りましたるところ、緑風会所属岡元義人君から修正案の提出がありました。この修正案は、本年四月一日以降の引揚者、復員者に対しては帰還の日から一年間住民税を免除せんとするものでございますが、これに対し政府委員より、引揚者等で生活困難な者は、地方税法を
改正する
法律案の第四十七條及び百
二條の運用によ
つて十分免除できる旨の答弁がございました。岡元義人君の修正案は、採決いたしましたところ、提案者以外に賛成者なく、少数を似て否決となりました。討論の過程におきまして、社会党羽生委員、緑風会の岡本愛祐委員、鈴木直人委員等より、この衆
議院の修正を引括めて本三
法案は大体において本委員会において、即ち参
議院の我々の委員会において予め協議して、衆
議院に我々の意見を申入れたのでありますが、その衆
議院に申入れたところの参
議院の
治安及び
地方制度委員会の意見と、趣旨を同じくするものであり、又地方公共團体側の要望も、これによ
つて僅かながらも一部達成せられるものであり、將來
地方財政の伸張性、弾力性をこの方向に求める端緒を得るものであ
つて、極めて適切な修正と認められる。これらの三議員諸君の違つた観点からのそれぞれの賛成が述べられまして、本委員会は多数を以て衆
議院の修正案を一括いたしまして、この三
法案を可決いたしました次第でございます。以上御
報告申上げる次第であります。(拍手)
尚附け加えまして、地方自治法の一部を
改正する
法律案につきましての審議の経過及び結果を極めて簡單に申上げたいと存じます。
この地方自治法の一部を
改正する
法律案は、その内容は建築に関する
行政事務というものは、從來
都道府縣において、地方自治法に基きまして、土木の主管部局において所管しておりましたのでありますが、主要なるところの
都道府縣におきましては、戰災の復興、住宅問題等、著しく厖大且つ複雑化しました建築に関する
行政の部門を、独立強化せしめたいというところの強い要望があり、それがため地方自治法百五十八條を
改正いたしまして、東京都には新たに建築局を設け、道府縣には又建築部を
設置することができるというような方途を講ずる必要が生じて参つたのであります。たまたま今回建設院の建築出張所が廃止されまして、臨時物資需給調整法に基くところの、建築用資材の割当事務及び建築の許可事務が、
都道府縣知事に移管せられることになりましたので、この際東京都、北海道、
大阪府、京都府、並びに主要なるところの縣に、東京都におきましては局を、その他の道府縣におきましては部を
設置することができまするよう、法的
措置を講じまして、これと同時に從來東京都におけるところの総務、財務の両部を局に昇格しようとするのが、本
法案の目的とするところでございます。
以上が本
法律案の趣旨内容でございまして、本委員会は愼重審議を重ねましたが、現下最も緊急なる住宅建設事業を積極的に推進するためには、本
改正は必要であるというところの趣旨を、大体了解いたすところがあつたのでございます。
次いで討論採決に入りましたところ、全会一致を以てこの
法案は可決すべきものと決定いたしました次第でございます。
以上
地方財政に関するところの三
法案並びに地方自治法の一部を
改正するところの
法律案につきまして、審議の経過並びに結果についての御
報告を申上げた次第でございます。(拍手)