○
藤井新一君
只今議題と相成りました
政治資金規正法案について、
議院運営委員会におきまする
審査の
経過並びに結果について
簡單にご
報告申上げます。
本案は
衆議院における
政党法及び
選挙法に関する
特別委員会の中に特設いたしました
政党並びに
選挙に関する
腐敗防止法案起草小委員会におきまして、去んぬる二月四日以来鋭意
起草にかか
つたものでありまして、四月三十日
衆議院の本
委員会において
正式決定の上、共産党を除く
各派共同提案の
形式を以て、即日、本
会議の多数議決を得て本院に提出されたものでございます。
本
院議院運営委員会におきましては、先に
衆議院における
本案の
起草に照應いたしまして、去んぬる二月三日、
委員長を含む十一名の小
委員を
選任、不肖私、小
委員長に選ばれまして、爾来
数次に
亘つて或いは
衆議院における
起草状況を聴取いたし、或いは、各会派における研究結果を持ち
寄つて意見の交換をいたし、或いは又その他
予備的審査に属します
事項につき熱心に
審査を続けたのでございます。而して先に申上げましたように四月三十日に本院に提出されまするに及び、
衆議院政党法及び
選挙法に関する
特別委員長淺沼稻次郎君の
説明を求めえ、ここに本
審査に移
つた次第でございます。
ここに
便宜法案の
趣旨を御
説明申上げますると、本
法案は、第一章
総則、第二章
政党、
協会その他の
團体、第三章
公職の
候補者、第四章
政党、
協会その他の
團体及び
公職の
候補者以外の者、第五章
報告書の
公開、第六章
寄附に関する
制限、第七章罰則、第八章補則及び
附則より成り、全文五十九條に及んでおるのでございます。
この
法律案の
狙いといたします点を申上げれば、大体
三つの点に要約されるのでございます。即ち第一は、
政党、
協会その他の
團体、
公職の
候補者及び
第三者の
政治活動に伴う
資金の
収支を公の機関に届出でさせ、以て
資金関係の
全貌を
一般國民の前に
公開して、その公正な判断に資すること、第二に、
選挙に伴う不
正行爲の発生を未然に防止するために、
政治資金の
寄附に
一定の
制限を附すること、第三点は、
右二つの
措置に対する
違反行爲の処罰及びそのけつかとしましての当選無効、
選挙権被選挙権の
喪失等に関する
規定を置き、以て第一、第二の
目的の嚴正な
実現を期する点にありまして、全体としては
政治活動の公明と
選挙の公正を確保し、よ
つて民主政治に健全な発達に寄與することを
目的とするものでございます。
さて
具体的内容について申上げますというと、第一章
総則において、
本法の
目的を明示すると共に、各本條に現われて参りまする用語の
定義を
規定いたし、
選挙の
範囲は、
衆議院議員選挙法、
参議院議員選挙法、
地方自治法による
選挙に限
つてあります。又
政党と
協会その他の
團体について特に
定義を儲け、
政党の外、
政治に
関係のある
團体に
本法を適用することとして、後者につきましては、例えば
組合等が本来の
目的においては
経済團体等であ
つても、この
目的を有するに至
つたときは、その限度において、本
法案の
狙いとする
費用公開の
趣旨に副い、
團体の
収支に関する
規定の適用を受けることとな
つておるわけでございます。
次に
政党、
協会その他の
團体に関しては、先ずこれら
團体の
代表者、
主幹者及び
会計責任者の届けを
規定し、
寄附の
受領も
支出も、挙げてこの届の後になさるべきものとし、
團体等が隠密の
授受をすることを防止し、又
会計責任者の
義務として
会計帳簿の
備付、毎年三回の
収支の
定例報告選挙に関する
収支の
特別報告、
書類の
保存等を
規定いたし、
政党初めこれらの
團体の
収支の
全貌がそれぞれの
選挙管理委員会に詳細に現われることを期しておるのでございます。これらの
團体の
寄附、
支出について
報告を要するのは、個人に係るものは五百円、
團体に係るものは一千円以上のものについて氏名、
住所等を明らかにすることとしてあります。更に又
会計責任者の事故によ
つて、
責任が曖昧になりますことのないために、
事務引継についても
規定を設けてあります。又
政党、
協会その他の
團体の支部についても以上の
取扱は同様といたしてあります。
次に、
公職の
候補者に関して、先ず、
政党等におけると同様、
出納責任者を定めてこれを届けること、この
手続を経ないうちは、
寄附の
受領又は
支出が制約される旨が
規定されてあります。而して
出納責任者の
義務として、
会計帳簿の
備付、
選挙運動に関する
収支の
報告、
書類の
保存等を定めてあり、この
外選挙運動に関する
支出の権限を、僅かの例外を除いて、
出納責任者一人に専属せしめた点は特に重要な
規定であります。尚
候補者の
出納責任者に関する
事項は、現在の
衆議院議員選挙法、或いは
参議院議員選挙法等の
規定とほぼ同様でありまして、
本案中に包括された
部分については、
附則において
選挙法を改正し、
該当條文を削除してあります。
次に、
一般の
第三者が
政党、
協会その他の
團体のために、二千五百円以上の
支出をした場合の
報告義務を
規定いたし、即ちこれらの
團体ために、
第三者運動として
支出した者は、これを
報告しなければなりません。又官吏その他
公職にある者は、
寄附を自由になし得ることといたしましたが、併しながらこの場合は、
授受双方の側にこれに関する
報告義務を負わせることといたしてあります。
次に、
報告書の
公開でありまするがこれは実に
本案の
最大眼目の
一つでありまして、今まで申上げましたところにより、
選挙管理委員会に提出された
各種の
報告書は、
選挙管理委員会の公表、
手続、
保存義務と
一般の
閲覧要求権の両面の
措置によ
つて、廣く
國民の前に
公開させるのでございます。
次に寄付に関する
制限といたしまして、先ず
一定の身分又は地位に伴い、絶対的に、或いは特殊の場合を除いて、
一般的に
選挙に関し
寄附をしてはならない者の
範囲を揚げまして、これらの者が
寄附をすることも、これらの者から
寄附を受けることも許されないことにな
つております。又
公職の
候補者は立候補に際し、過去一年間にしたすべての
寄附について
報告の
義務を負うこと、更に何人も
選挙に関し、本人の名義以外の名義を用いたり、匿名を以て
寄附をすることを絶対に禁止し、これを犯してなされた金銭、物品の所有権は國庫に帰属する旨の
規定をいたしてあります。
次に、罰則におきましては各本條に対する
違反行為の態様につき、事柄の軽重に應じて、でき得る限り公平を期すべく、
手続的な
規定の
違反と、本質的な
規定の
違反とに分け、慎重に考慮いたしましてありまするが、この
法案の特別の重要性に鑑み、全体として相当重い処分を以て臨み、殊に過失犯をも処罰する旨を
規定しております。又罪の時効は二年を
経過して完成することにな
つております。尚又処罰に伴う当選無効及び
選挙権等の喪失の
規定も罰則の章に
規定してあります。
次に、
附則におきましては、この
法律施行に関する事務的
規定が掲げてあります。
最後に、
附則におきましては
本法施行に伴う
経過規定を定めた外、
衆議院議員選挙法の一部を改正してあります。これら
選挙法に
規定せられておる罰則の限度も、本
法案の罰則と均衡を取
つてこれが改正を加えてあります外は、主としてそれらの
規定が
本法中に吸収されるに相應する改正であります。
以上申上げましたところが、本
法案の要旨でございますが、
議院運営委員会の
政党及び
選挙に関する小
委員会におきましては、予備
審査及び本
審査を加えて、
委員会を開きますこと実に前後十六回に及び、毎回長時間に亘り熱心に
審議を続け、その間特に学界、労働組合
関係、及び実業界よりおのおの二名の
関係者を証人として、その出頭を求めて、隔意なき
意見を聴取いたすなど、慎重
審査を遂げたのでありまして、各
委員会を通じ、
委員諸君よりは極めて重要且つ適切なる討議が続々と行われたのでございます。その詳細は速記録に記載してありますから、これを省略いたします。
以上の
経過を経まして慎重検討の結果、問題となりました点を
中心としまして、原案に若干の修正を加えることといたし、去る六月十一日、最後の小
委員会において、又去る十五日、
議院運営委員会において修正案が多数を以て可決せらるることにな
つたのでございます。この修正に当りましては、先ず無所属懇談会の佐々木良作君より修正案の提出があり、又緑風会の竹下豐次君よりも修正案提出せられました。採決の結果、佐々木君の修正案は少数で破れ竹下君の修正が案が多数を以て可決されたのでございます。以下その修正案の
内容を御
説明いたすことが、
委員会において論議の
中心になりました点を明かにすることにもなりますので、さような
趣旨において若干の御
説明を加えます。
惟うに
政治團体その他に関する
政治資金の出所及び動きを明かにいたしまして、
政治の腐敗を來たす大なる原因を断ち、或いはいわゆる
政治ボス等にまつわる不明朗な要素を根絶し、
政治活動の公明を図らんとする
本法の立案の
趣旨については何人も賛意を惜しまんところでありませう。然るにその
内容に至りましては、幾多の問題を包藏しております。最も問題となりましたのは、
政治に
関係のある
團体の
範囲であります。即ちこの
法案の主張が、
政治に
関係のある
團体に関する
政治資金の動きにありますだけに、その
團体を如何なる
範囲までこの
法律の対象とするかは、最大の関心事たらざるを得ないのであります。
そこで、凡そ
政治に
関係のある
團体を問題にします場合に、大別して三種類が考え得られるのであります。その一は、いわゆる
政党であり、その二は、
政党以外の
政治目的を本来の
目的とする
政治團体であり、その三は、
政治團体以下意の
團体であ
つて而も
政治に
関係を有する場合であります。
先ずその一に挙げました
政党と、その二に挙げました
政治團体とをこの
法律の対象とすべきことについては、殆ど異論はございません。ただこの場合
衆議院原案によりますれば、その中、
政党の
審議を第三條第一項に掲げて、次のように定めているのでございます。「この
法律において
政党とは、
政治上の主義若しくは施策を推進し、支持し、若しくはこれに反対し、又は
公職の
候補者を推薦し、支持し、若しくはこれに反対することを本来の
目的とする
團体をいう。」
委員会におきましては、この案を検討いたしましたところこの原案の擁護はいわゆる
政党の
定義としては廣きに失するのではないか、むしろこの
規定は普通言われる
政党よりも更に廣く、
一般に
政治團体或いは政事結社と称せられるものの
定義として、ふさわしいように考えられるのであります。もとよりいわゆる
政党について法的に適切な
定義を掲げることは望ましいと存ぜられますのでありまするが、
政党が今後の
政治の運行上最も重要な役割を演ずるべきでありますだけに、その
定義を下すには慎重な用意を要するわけでありまして、原案は
政党の正しい
定義といたしましては、やや適切を欠くものがあり、この点は尚将来の研究の余地を残すことといたしまして、この際むしろこの
條項に若干の補正を加えて、これを
政治團体の
定義とすべしというのが
委員会の多数の意向であ
つたのでございます。
提案者の
説明によりましても、この
規定は普通にいう
政党の
意味よりもやや廣い
意味に
説明せられておりますので、これを
政治團体の
定義に改めますことは、原案の
趣旨を著しく変えたものとも考えられないのであります。かくいたしまして第三條第一項の修正となりました。尚これに伴いまして、この
法律案中全部に亘り、「
政党」とあるのを「
政治團体」とすることにいたしたのでございます。
次に、問題は
政治に
関係ある
團体のその第三に挙げました
政治團体以外の
團体であ
つて、而も
政治に
関係を有する場合を如何なる
範囲まで取入れるべきかであり、これは第三條第二項の問題であります。それらの中、
團体として
公職の
候補者を推薦し、支持し、若しくはこれに反対する者、言い換えれば
選挙に
関係を持つ場合は、これを
本法の対象とすべきことについては、これ亦余り異論はなか
つたのでございます。然るに
政治上の主義若しくは施策を支持し、若しくはこれに反対することを
目的とするものにつきましては、これをどの
範囲まで包含せしむべきか、及び原案に言うところの「
目的とするもの」という字句の意義が不明確ではないかという点に論議が集中されました。即ち
政治資金の動きを明確にするという
趣旨には賛成でございまするが、余りに廣い
範囲にこの
法律の適用を及ぼし、
本法による
手続を要求するときは、思わざる支障を来すことにならないであろうか、特に労働
組合等の諸組合、或いは経済
團体その他の
團体の活動が、現下の諸情勢では実際上
政治に
関係を持つ場合が甚だ多いのに鑑み、解釈の如何によ
つては、これらの諸組合又は諸
團体の活動の殆どすべてについて、その
法律の適用を受けることとなることは、不必要な
方面にまで煩雑なる
手続を要求することになり、延いてはこれらの場合、
團体の固有の活動を阻害する恐れがないであろうかというのでありました。更に又「
目的とするもの」というものは、旧来の法的観念よりすれば、定款、会則等に
目的として挙げておる場合と解釈されておるが、それは
本法の適用上は狭きに失するわけであるし、反対に然らばこれらの
目的を有する場合の外、これらの行為をなす者のすべてを含ましめることとなれば、これ亦不必要に廣きに失する虞れがあるのであります。これらの論議に対しまして、
提案者その他の
説明によりますれば、單に一時的な
政治活動を行うだけでは
本法の
團体に該当しない
趣旨であるが、「
目的とする」というのは定款、会則等に
政治目的を挙げていなくとも、
團体の意思決定機関の決定その他により、客観的に
政治目的を有するに至
つたと解せられる場合は、これに該当するのであるという
説明であり、又実際上は
昭和二十一年
勅令第百一号「
政党、
協会その他の
團体の結成の禁止に関する件」に基いて届出を要する
團体の
範囲と、ほぼ同樣
趣旨に解して適用運用すべきであろうとの見解であ
つたのでございます。併しながら
委員会といたしましては、その限界を不明確のままにいたすことは、適用を受ける
國民の側において迷惑を蒙むることになりますので、この点を如何にすべきかについて苦慮いたしたのでございます。前述の佐々木
委員の修正案は、この場合を、
團体が
選挙に
関係を持つ場合にのみ限定して
本法を適用しようとするものでありましたが、これは少数で否決せられました。多数
意見としましては、第三條第二項の原案の字句に若干の修正を加えると共に、本
國会における以上の論議等を斟酌しつつ、全國
選挙管理委員会をして、その
範囲を認定せしめるを適当とするとの見解の下に、特に第五十二條に修正を加え、全國
選挙管理委員会にこれらの認定等の権能を與え、以て
本法の適用上遺憾なきを期することといたした次第であります。
以上が最も論議の白熱した点でありまするが、その他の修正点といたしましては、その一は第
八條但書の削除であります。本但書は解釈上却
つて疑義を生ずる虞れがありますので、これを削除せんとするものでございます。その二は、
政治團体の財産の
報告に関する
規定の追加であります。
政治團体の
収支を明らかにいたしますと共に、定期にその財産の現況を明らかにして置くことが
本法の
目的を達成するのに必要と考えるのでございます。この見地より必要な若干の
規定を追加することにいたしました。又これに伴い
團体の会計
報告を、原案においては年三回これを要求しておりましたのを、財産
報告と共に年二回に改めることにいたしました。
尚佐々木
委員の修正案としては、
政党等の
会計帳簿の記載その他の場合につき、僅少の金額については細目の記載を要しないこととするとの案があり、又共産党からは労働
組合等にも
本法の適用があること、匿名
寄附を禁止すること等に鑑み、
本法全部に反対の
意見の開陳がありましたが、いずれも少数
意見に止ま
つたのでございます。
最後に、本
法案の題名につきましてでございます。
衆議院におきましては、原案の
起草に当り、当初問題になりましたいわゆる
政治腐敗防止
法案等の名称を避けた
趣旨には賛意を表するのでございまするが、
本案の
内容を見まするに、
政治資金の規正もさることながら、むしろその
収支を明らかにし、これを
公開して、批判に俟つことを主眼としますので、幾分の圧迫感を伴いまする規正
法案という名称から更に一歩を進めて規正
公開法案という題名に改め、明朗活発な
政治活動の促進にふさわしいものとする
趣旨に基き、これを修正することにいたしました。
以上修正の諸点は、いずれも
衆議院原案の
趣旨を著しく変更せんとするものではありません。不明確な点を明確にし、
政治資金の公明化を徹底せんとする
趣旨に出でたものでありまして、
衆議院においてもこの
趣旨におきまして、欣然これらの修正に同意せらるべきことを期待するものでございます。何とぞ
委員会におきまする以上の
審議の
経過に鑑み、本修正案に基き可決確定あらんことを切に希望して止まない次第でございます。
最後に私はここに
本案の
審議に当りました木内
委員長並びに
委員各位の熱心なる御努力に対しましては、衷心より感謝措く能わざるところがあるのであります。以上を以て
委員会の
審議の
経過並びに結果の
報告を終ります。(
拍手)