○
高瀬荘太郎君 私は先ず
予算の基礎の問題につきまして、
大藏大臣に
お尋ねをしたいと思います。
大藏大臣は、
健全財政の
原則を確立するにつきまして、最も大切なことは、國の
経済力と
予算との
均衡である、こう
言つておられるのでありますが、この点につきまして、今回の
予算が眞の
健全財政の
原則に反しておるのではないかと考えますので、これを
お尋ねしたいのであります。この問題について
大藏大臣は、
國民所得と
一般会計歳出総額との比率を挙げて、
昭和二十三年度は、これが二二%に当
つて、前年度の一八%と比べれば、多少増率になると
言つておられます。
政府の
國民所得推算の
方法等につきましても疑問があるのでありますが、仮にそれが正しいと仮定いたしましても、それに対して、二二%に当たります
一般会計歳出総額が、果して我が國現在の
経済力と
予算との
均衡を得ておると考えてよいのかどうか、若しそうであるとしたならば、如何なる根拠に基きまして、この比率が
均衡を得ているとお考えに
なりますのか、その根拠を伺いたいと思うのであります、昨年の比率一八%でさえ、すでに國の
経済力と
予算との
均衡を失しておると一般に考えられてお
つたのでありまして、それがために
國民経済、或いは
國民生活に対して著しい圧迫を加えておると、一般に言われてお
つたのであります。だからこそ、國の
経済力と
予算との
均衡が特に強力に要望されたわけであります。それにも拘わらず、今年度は前年度よりも更に増率になるということは、今年の
財政が真の
健全財政ではなく、文字の上だけの
健全財政に過ぎないと
言つてよいのではないかと思うのであります。(
拍手)又國の
経済力と
予算との
均衡ということは、ただ單純に
國民所得の高と、
歳出の高との比率くらいで決められる問題ではなく、これには
國民所得と
國民支出との
関係が重大な
関連を持つものであります。(
拍手)一般の
國民大衆が、その所得で生存の維持さえ困難を感じておりますような
日本の
現状では、如何に軽微な
國費の
負担でありましても、身を切られるように苦しいのであります。
從つてよく行われまするように、各國における
國民一人当りの所得の金額と税金との割合を比較いたしまして、
日本の
國民一人当りの税金
負担の割合が過重でないと、こういうようなことは全く意味がないと思うのであります。(
拍手)余裕のある
生活をしております國の
國民が、その所得の五〇%に当る税金を
負担いたしまするよりも、今日の我々
國民が、その所得の一〇%に当る税金を
負担する方が遥かに苦しいのであります。それで先ず、今度の比率二二%というものが、如何なる根拠に基きまして、國の
経済力と
予算との
均衡を得た健全な比率であるとお考えに
なりますのか、
大藏大臣の御
意見をお伺ひたいのであります。
次に、國の
経済力と
予算との
均衡を図るにつきましては、ただ
國民所得と
歳出総額との
関係だけでなく、その歳入における
租税体系との
関連をも細かに考えなければならないのであります。つまり
國民所得の分布状態及び
國民所得によ
つて負担されますその
負担の分布状態が、十分細かに考慮されなくてはならない問題であります。この
見地から申しまして、今回の
予算のように、
租税体系の重点が直接税から間接税へ移行するということは、國の
経済力と
予算との
均衡を、内面的に破壊する結果になると言わなくてはならないと思うのであります。今日の我が國のような変態的な、病的な
インフレ経済の下では、直接税中心から間接税中心に移
つて行くということも、一面におきましては無論止むを得ないことでありましよう。併しそれは飽くまでも変態的な
租税体系でありまして、決して健全な
租税体系ではないのであります。だから止むを得ないことであるとは言え、不健全な体系から当然に生じますところの国民
経済、或いは
國民生活への不健全な圧迫は、できるだけ軽微に止めるように十分の配慮をすることが、國の
経済力と
予算との
均衡を図る上において欠くべからざることであると思うのであります。この
見地から考えまして、今度の
予算で最も重大な問題に
なります点は、取引高税の新設と
鉄道料金及び
通信料金の大幅引上げの問題であります。取引高税のような惡税も新設しなくてはならないということは、全く遺憾な次第ではありますが、我が國今日の病的
経済状態の下では、これも止むを得ない病的課税として認めなくてはならないかと思います。併しこれがために生じます惡結果につきましては、できるだけこれを除去し、緩和する方策を考えなければならないのであります。(「それができないんだよ」と呼ぶ者あり)この
見地から取引高税を
政府原案のように、主食及び教科書以外のあらゆるものの取引に課するということは、決して妥当ではないのであります。その外に
國民の日常
生活に欠くことのできない必需品、教科書以外で、教科書と同様に是非必要な学童の教育用品、こういうようなものの取引につきましては、これを除外することが是非必要であります。(
拍手)
大藏大臣はこの点につきましてどう考えられますか。取引高税免除の品目を相当拡張する必要があると考えるのでありますが、この点について
大藏大臣の御
意見を伺いたいのであります。
次に
鉄道運賃及び
通信料金の大幅引上げの問題でありますが、
人件費及び物件費などの著しい
値上りから、相当
程度の引上げは無論これ止むを得ないところと思うのでありますが、これが
國民大衆の
生活に対する圧迫、
物價に及ぼす
影響、
インフレ促進の心理的
影響等を考えますと、これらの引上率につきましては、十分の考慮を拂わなくてはならないと思うのであります。
政府はこれにつきまして、
一般会計からの繰入れを少なくし、
独立採算制の
原則に副うために止むを得ない
値上げであると
言つておるのでありますが、
独立採算制ということは、我が國今日のような病的
経済の下では到底徹底して実行のできない事柄であります。又その実行は却
つて社会的に重大な惡い結果をもたらすものと考えるのであります。だから今直ちにこの
原則に余り拘泥をするということは適当と思われないのであります。又
独立採算制というここは、ただ收入を殖やしてバランスを合せるということではなくて、
支出の方を切り詰めてバランスを合せるということも含んでおるのであります。
支出の方には手を触れないで、そのままにして、收入の方だけを殖やしてバランスを合せるということは、そういう仕方は決して本当の確立採算制でないのであります。(
拍手)だから
政府は独算採算制を実行しようという考えならば、
支出の方の思い切
つた切詰めをや
つて、バランスを図るということももつと
眞劍に考えなくてはならないのであります。これらの点から考えまして、
鉄道及び
通信料金の
値上げは、この際もつと低率にして、そうして足りないところは、
支出の切詰めと、一部は
一般会計からの繰入れを増加することによ
つて賄いますことが、今日の
日本の
経済の
実情から考えますと、最も適当と思うのでありますが、
大藏大臣の御
意見を伺いたいのであります。(「
大藏大臣はどうした」「運輸大臣もどうした」「誰が
演説するのか」「
議長に要求します」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)
次に
大藏大臣は、今回の
予算編成につきまして、
人件費は三千七百円
ベース、物件費は現在の公定價格の七割増として、これを
編成したと
言つておられる。
從つてこの
予算の
收支均衡は、結局三千七百円の
賃金ベースと、七割増しの新
物價体系によ
つて專ら支えられておるわけであります。ところが、この三千七百円の
賃金ベースというものが、果していつまで守られるとお考えになるか。もうすでに團体協約で、このべースを遥かに超えておる
賃金の支拂が行われておる産業もあるのであります。又多くの労働組合が、すでに五千円以上の
ベースを猛烈に要求しておるのであります。このような状態の下で、
大藏大臣は、この
予算の基礎とな
つております三千七百円の
賃金ベースを、いつまで保持して行くという確信があるのか、これを伺いたいのであります。又
物價につきましては、現在の公定價格の七割増しを基準としたと
言つておられますが、この基準も一体いつまで有効なものとお考えになるのか、これで一体今会計年度の終りまで打ち通すことができるとお考えになるのか、殊に
政府は
賃金の統制は行わないと、こう
言つておられるのでありますから、決める前からすでに崩れかか
つております。三千七百円の
賃金ベースに基いて決められる七割増しの
物價体系というものが、これから長く崩壊しないで続けられるということは殆んど考えられないのであります。公定價格は原價計算を基礎にして決められるし、
賃金がその原價計算の重要な要素とな
つておる場合に、
賃金については何ら統制を加えないで、それで公定價格による
物價の統制がどうしてできるとお考えになるか、
從つて七割増しの公定價格に基いて
編成されました
予算の
均衡が保持されますためには、どうしても何らかの
方法による
賃金の統制が必要だと思うのであります。若しこれを行わなければ、公定價格による
物價の統制は全く無意味に
なり、
從つて今度の
予算の
均衡も当然に破られると思うのであります。
大藏大臣の所見はどうでありましようか。
予算の
均衡を保持して、
健全財政を堅持するという建前から、何らかの
方法によりまして、
賃金に対しても統制を加えるということが必要であるとお考えにならないか。若しもこれが必要であるとするならば、これを実行するお考えはないかどうか、これを伺いたいのであります。(「大臣の出席がないじやないか」「
大藏大臣の
質問は中止」「休憩休憩」「やり直し」「
議長怠慢だよ」「高瀬さん中止しなさいよ」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)先程
大藏大臣からは、
衆議院の方で止むを得ない用事があるので、五分間だけ留守さして呉れと、こういうお話でありましたが、五分以上非常に超過しておるようであります。(「
大藏大臣が來た來た」「初めからやり直しだ」「そんなけつの穴の小さなことを言うな」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)
次に
軍事公債の
利拂延期の問題につきまして、
大藏大臣の所見を伺いたいのであります。この問題につきましてはいろいろの問題があるわけでありますが、私は次の二点につきまして
大藏大臣のはつきりとした御
意見を伺いたいのであります。第一は、今回の
軍事公債利拂一年
延期の措置を実行する根本の理由、或いは理論上の根拠は何であるかという点であります。第二は、
政府は今回の措置が金融機関に與える
影響に対しては、急速に適切な措置を講ずる用意があると
言つております。その急速に行わんとする適切な措置とは一体如何なる措置でありますか。この二つの点につきまして
大藏大臣の明確な御
答弁を願いたいのであります。
政府は今回の
軍事公債利拂一年
延期の声明を発しました際に、これを実施する理由につきましては一言半句も述べておらないのであります。
政府以外の
方面では、これが戰争
犠牲の
負担を公平にすること、及び
インフレを阻止すること等の理由が言われておるのでありますが、
大藏大臣もそういう理由を同じく認めおられるのでありますかどうか、これを伺いたいのであります。苟しくもこういう重大な
処置が行われるのに、はつきりした理由根拠もなく実行されるべき筈はないと思いますですから
大藏大臣も亦、この措置が戰争
犠牲の
負担の公平を図るために最も適切な措置で、又これによ
つてインフレの進行が阻止されるとお考えに
なりますかどうか、これを伺いたいもであります。(
拍手)我々の見解では、今日のような
インフレ高進期に
公債を持
つておるということがどれ程の
犠牲を拂うことであるか、全くその
犠牲というものは実に莫大なものであります。支那事変
公債を仮に初めから今日まで持
つてお
つたといたしましたならば、貨幣價値の著しい低落によりまして、実質的には百分の九十九以上の
犠牲を拂
つておるのであります。他の物質的な資産を持
つておる者に比べましたならば、どれ程大きな
犠牲を拂
つておるか分らないのであります。こういう事実につきまして
大藏大臣はどうお考えに
なりますか、
お尋ねしたのであります。
又この
利拂延期措置のために生ずる金融機関への
影響につきまして適切な措置を講ずると
言つておりますが、これが一体どんな
方法でどの
程度に行われるものか伺いたいのであります。これがために生ずる金融機関への
影響を一切補償してやるということでありまするならば、何故に今度の措置をやられるのか、全く無意味であると思うのであります。(
拍手)而もこれによりまして國内一般金融界を動揺させ、
対外信用にも惡い
影響を残したならば、全く愚劣な
処置と言われなくてはならないと思うのであります。ついては
大藏大臣が、金融機関のためにやろうとしておられますその適切な措置というものが、一体どんな措置でありますか、詳細に伺いたいのであります。これは國会で我々が審議するために必要なばかりでなく、金融界にとりましても亦
対外信用維持のためにも重大な
関係のあることでありますから、はつきりと御
説明を願いたいのであります。
次に
大藏大臣は
企業の資本を借入依存から自己資本による
方向に段々に進めて行く必要があるということを述べておられます。この点について御
質問をいたしたいのであります。
企業資本は成るべく自己資本へ移行させます方が、
企業経営の健全化のために必要である、適当である。そうして今日のような借入資本依存の傾向が甚だ不健全なものであるということにつきましても私は全く同感であります。ところが、今回の
予算におきましても重要な歳入
項目とま
つております價格差盆納付金の制度及び現在の法人税の対象とな
つております所得計算の
方法は、
大藏大臣が強調されますところの自己資本依存主義と全く矛盾するものではないか。(
拍手)これらの課税
方法は、所得の形で、実は
企業の自己資本を
政府が取上げておるものではないか。
インフレによる
物價騰貴時代の
企業資本の自己資本維持及び
企業所得の計算には、通貨價値の低落のよる修正を加えました、いわゆる安定價値計算の
方法を採用されなくしてはならないのであります。これを無視しております價格差盆納付金制度及び所得課税の
方法は、全く
企業から自己資本の召上げをする結果になるのでありますから、(
拍手)
大藏大臣の心配されるような借入資本依存の一般的傾向が、これによ
つて当然に生じて來るのであります。
從つて若しも
大藏大臣がかかる借入資本依存の不健全な傾向を止めて、自己資本依存主義へ移行することを必要だとお考えに
なりますならば、この際價格差盆納付金制度を廃止する、そうして又
企業所得計算の
方法につきまして安定價値計算制度を採用しなくてはならないと考えるのでありますが、この点につきまして
大藏大臣の御所見を伺いたい。
最後に栗栖安定本部総務長官に
お尋ねしたいのでありますが、新聞紙の報ずるところによりますと、今回
政府は中間安定という方策を実施するということであります。その中間安定ということは一体どういう意味のものでありますか、伺いたいのであります。又その中間安定と、
政府が先に発表されました
経済復興五ケ年計画とが如何なる
関係を持つものであるか、御
説明を願いたいのであります。中間安定のための期間として、約一ケ年ぐらいを予定してこの間に各種の
経済安定に関する綜合
施策を強力に実施する計画のようでありますが、安定と言います以上は、
生産も相当に増加し貿易も相当に増大をし、失業も解決されるということが必要であります。中間安定という場合に、一体これらの点がどんな形で二年の先に実現されることに
なりますのか、これを伺いたいのであります。又別の解釈から考えて見ますと、この二年間に安定に関する思い切
つた措置を講ずること、つまり安定する前に経過しなくてはならないところの恐慌、つまり安定恐慌に堪えるような準備を十分に整えようとしておられるようにも思えるのであります。かようにいろいろの意味に解釈をされますが、
政府の考えておられます中間安定ということは、果してどういう意味のことでありますか、はつきり御
説明を願いたい。又それが長期復興計画の一環を成すものでありますのか、或いはそれとは全く別個のものでありますのか、この点をもお伺いしたいと思います。私の
質問はこれで終ります。(
拍手)