○奥むめお君 もうすでにそれぞれの立場から御
質問の出た後でございますので、私は重点的に、
國民の中でも特に婦人として聽きたい問題を取上げたいと思うのでございます。
第一には経済安定の具体策についてでありますが、
政府が述べられましたインフレ
対策は、今までもとの
内閣でもこれを取上げて來ておるので、いわば
一つの公式に過ぎないのであります。果してどれだけ有効な具体性を持
つておるかどうか。今日國中に高ま
つておりますあの
労働攻勢の火の手もインフレ
対策、つまり経済安定の強力な
実行なしには、解決がされないと思われるのでありますが、それにしましても
政府は、本当にこれならば大丈夫だ、経済の安定、延いては
國民生活の安定、生産の増進ができるという確乎たる具体的な
政策をここにお示しを願いたいのであります。私共は経済問題につきましては、ほんの素人の一家庭婦人に過ぎませんけれども、この素人の私共さえも今日の國家の経済、産業界の情勢は憂えられることが沢山あるのでございます。中でも
政府の厖大な支出がインフレを促進して、世間では財政インフレと言うておるくらいであります。現に去年の一月から今年の二月までの、
政府が
日本銀行からする貸上金と日銀手持の証券は、凡そ同期間の日銀券発行増加高と比べますと、同じような数字を示しておるのであります。これは私共
國民が現在食う物も買うことができない、中
学校や女
学校に上
つておる子供も
学校を止めさせるくらいにして、又
学校では教科書やノートにも不自由しておるという、この窮乏の中で、國家財政だけが相変らずの
予算編成
方針を続けまして、そしてその歳入といいましたならば、その大部分を
國民の税金によらなければならない。歳出面に根本的な大鉈を揮おうとしていない。こういうことを考えましても、行政整理は緊急に行わなければならんということを痛感するのであります。又物價と賃金收入の釣合というものが欠けております。こういう問題も私共に取りましては、今日の場合、経済の安定方策というものを立てることが、一番の根本問題だと考えられるのであります。幾度新給與水準が高められましても、それは所詮インフレ克服にはならず、インフレは繰返し促進する結果になるばかりだと思われます。総理は
資本の蓄積を唱えておられるのでありますけれど、今日のように貨幣價値を信ずることができないような
状態にある時に、
國民が
安心して貯金をすることができるでしようか。この貨幣價値を安定させるということが第一の急務であると思いますが、それにつけても、今こそ安定價値計算制スライド制の急速な実施を考えて見る時じやないかと私は考える。併し昨二十二日の衆議院の本
会議に淺沼稻次郎氏がこの問題について御
質問になりましたが、経済安定本部長官は、今の
日本の
状態ではこの制度は実現困難な点がある。或いは不適当と思うので採用する考えはないと答弁しておられるのであります。私はどの点が実現困難であるか、何故
日本にこれが今不適当なのかということを具体的にお示しを願いたいのであります。
第二に、主として消費者の立場から
政府に伺いたいのであります。先ず魚、野菜等の生鮮食料品、炭、薪その他現実に非常に不自由をしておるのをどう見られるか、実情を無視した役人の統制の不手際が、あらゆる方面に禍いをいたしまして、私たちの台所にはさつぱり物が廻
つておらないのであります。長官は、生鮮食料品の現行統制を
改正するということを言明しておられますが、何をどのように
改正するおつもりかを伺いたい。燃料の不足は、今日では殆んど
生活を脅かすところまで來ておるのでありますけれども、せめて山元に滯貨されておるものを、私共の台所まで廻して貰う必要が大変痛感されるのでありますが、それも輸送の陸路だけではなしに、統制の枠が妨げておると聞いておるのであります。纖維品に至りましては、商工省の発表にも拘わらず年度未に近い今日にも、尚殆んど配給らしい配給を受けていないのでありますけれども、その一面に、先頃
片山内閣の命取りとな
つたところの、あの〇・八ケ月分の給與の財源に取上げられた輸出メリヤス・シヤツの千八百万着という、あの大量のローズ物を出してあるのであります。これを
政府はどう
責任を取ろうとしておられるか、そんなものがあるのだ
つたら、何故
國民にこの不自由をさせておるのか、そのシヤッは、今どこに置かれておるのか、又最近砂糖の代替配給が行われまして、三日分の砂糖でありますが、これは主食に代賛して配給された砂糖を以て
國民に腹の足しにこれを食べよと、こう解釈するより外ないのですけれども、或いはこれを闇で賣
つて米を買
つて食べろというのであるか、(
拍手)どちらにしても、絶対に
反対であります。今後尚砂糖がどの
程度輸入が見込まれておるのか、又主婦は今後いつまで主食代替の砂糖を受取らなければならないのか、この見通しを聽きたいと思います。人工栄養兒のミルクの問題でありますが、乳のない赤ちやん一人が、配給量の人工栄養を貰
つておるとしても、尚不足なるものを買うためには、闇買いをするためには、一ケ月に二千円は要るというのであります。一ケ月二千円を一人の赤ちやんのために出すことのできる家庭なんというものは極めて稀れであるとするならば、その多くの赤ちやんはどんな栄養を取
つておるか、ストライキもできないし、デモをすることもできない赤ちやんのために問うのは私たちの
責任であります。(
拍手)
政府はこの人工栄養兒の食糧に対しまして、如可なる將來の見通しと、そうして現状にあるかということを伺わなければならないのであります。こういう問題を
輸入の
関係とか、或いは放出
関係とかに言い遁れをして無
責任に
答えられるということを、私はここで予めお断りして置きたいと思うのであります。
尚二十四日の答弁で大藏大臣は、多くの困窮者を救うために社会保障制度の制定によ
つて、こういうことを言われております。勿論藏相のお
言葉のように、我が國の國家財政の許す範囲でという制限が附くことは言うまでもないでありましようが、聞くところによりますと、社会保障制度というのは非常に財源を食いまするところから、当分実現の見込は薄いというのであります。若しこれの実現が延びるといたしましたならば、それに代る急速の手を打
つて、沢山の困窮者、不幸な
人々を救う途を図ることは、憲法第二十五條で
國民の健康にして文化的な最低
生活を保障すると明らかにしております。國家の立場を考えましても
責任があると言わねばなりません。今
生活保護費を見ますと、五人
家族一ケ月の保護費が千五百円というのであります。誰が千五百円で五人の
家族が
生活安定できると信じますか。絶対にそれはできていない。ほんの言いわけだけの
生活保護費にな
つておるのであります。若くして夫を失
つて、まだ頑是ない子供を抱えて働きにくいいわゆる未亡人も決して少くないのでありますが、これらの者も保護することなしにはその生計を立てることができないのでありますけれども、婦人のための職業補導所というものは今まだ取るに足らない
状態に置かれてあるので、どうしても保護費を増額しなければ
生活は成立たないのであります。(
拍手)
又社会事業の諾施設に対しまして考えますのに、戰災で失われたものもまだ半分は復旧をされていない有樣であります。これらに対しまして施設費を大幅に引上げて補助するということがなか
つたならば、急いで復旧させるということができないのであります。又多くの社会
事業家が訴えておりますように、現在救護を受けなければならない人や、又子供を預か
つて貰わなければ働けない人や、或いはいろいろな不幸な事情で社会的な公の保護機関を利用せざるを得ない人が非常に多い今日、その施設に働いて献身的に日夜苦労いたしております職員たちが、どんなに薄給で過労の中に置かれておるかということは誠に酷いものがあるのであります。これらに対しまして、その過労と薄給を救うて、この人たちの
生活の上にも、
國民に保障されておるところの文化とそして幸福な明るい
生活を保障するためには、社会事業施設に対する事務費の大幅値上げということも当然起
つて来るのであります。(「同感」と呼ぶ者あり)(
拍手)私共は
生活保護費の大幅値上げと、又これを渡しますときの保護手続の迅速化、簡素化ということを痛感するのでありますが、これらに対する
対策を伺いたい。
最後に対長官は地域及び職域に
生活協同組合の積極的な
活動を助成すると言われました。
生活費の切下げのために、又闇撲滅のために、又流通秩序の民主的な形成のためにも、
生活協同組合を
政府の立場から、殊に経済安定本部長官の立場から取上げて頂いたことは、感謝に堪えないところであります。前の長官の発表を見ましても、闇買いが八割、マル公買いが二割という
生活のやり繰りは、今も尚続いておるのでありまして、長い間の笥
生活で
國民はもう殆ど賣るべき皮さえも失
つておる。この中で主婦は枯渇した購買力とやり繰りに疲れ果てておるのであります。今のようなままでいますならば、女の
生活は、民法の
改正も、婦人参政権も、文化も、
教育も、それどころではないというより外なく、勢い家庭の崩壞ということはこれは避けられないところとなるのであります。私共はこの家庭
生活の荒廃という問題につきましては、打つちやられております可哀想な子供の問題を母親の立場から大いに取止げなければならないと思うのでありますが、時間の
関係から今日は主として消費
生活の面から申上げたいと思うのであります。一日も早く、失われた婦人の
生活を返せという家庭婦人の叫びは、
生活協同組合に通ずるものにしなければならないのであります。
配給の登録を集めますために、魚屋は一票について五十円渡した。衣料の登録を集めますために一票について人絹の風呂敷を一枚渡した。こんなことがいろいろ傳えられ、パンの組合に渡されたズルチンや、バターがパンの中には入れられないで、裏から横え流されてしま
つたという、新時代の商人道のモラルを捨てて顧みない不徳義な人がいつまでも絶えないのは、誠に残念なことでありますけれども、(
拍手)併し商業者と雖も惡い人ばかりあるのではなく、中には非常に立派な、又親切な人も少くないのであります。これらが
生活協同組合の発展に伴いまして必然
生活を脅かされるかも知れない。脅かされるに至るであろうと言わねばなりません。又
生活協同
組合運動が起
つて参りましたならば、必ず業者の側から
反対運動が起ると見なければならないのでありますが、これらに対して長官は如何なる
対策を以て、どうや
つていらつしやるつもりか伺いたい。(「安本長官どうした」と呼ぶ者あり)敗戰後の
生活の不安と物資不足をみずからの組織で救うために、今全國的に
生活協同組合は澤山結成されつつありますけれども、何分にもまだ法的根拠を持
つていないものですから、事業をや
つて行きます上にも金融の面にも差支える所が非常に多いのであります。ただに我々の
生活に欠くことのできない食べ物や着物類の協同購入や配給をするばかりでなく、
生活協同組合は今日では私共の
生活物資、文化資材、又託兒所とか、共同炊事場とか、娯樂場とか、或いは協同作業場とか、いろいろこの
生活万般に
関係のあるものを持
つて行こうとして、又現にそれをや
つておるのでありますから、
政府の強力な援助と法的根拠を持たないことには、この仕事は発展することができないのであります。
第三に、海外
引揚同胞と戰災者援護の急速実施の問題についてであります。総理はこの問題について眞心を傾けて努めると約束されて下さいました。一千万を超えるところの
人々がどんなに深い感謝の中に
政府の施策を待
つておりますことか。せめて
一つでもよいから一日も早く再起の途を図
つてや
つて頂かなければなりません。海外からの
引揚者、帰還者、戰災者は、いわば測らざる運命から、その身
一つに最も大きな不幸を受取
つたところの殉国の犠牲者ともいうべき人たちであります。この人たちのために何よりも先ず家を
用意し、衣食を
用意し、働く仕事を與え、
土地を保障し、そしてこの人たちの再起の途を手傳うということは、これは國の任務であります。殊に海外から
引揚げて来た人たちは、能力を持ち、働く意欲、勤労意欲の旺盛なものを持
つておるのであります。この能力と勤労意欲を立派に役立たせるような方途を講ずることは、
引揚促進に最善を盡されておりまするところの連合軍当局に対して、
日本の國としてのなすべき
一つの義務でもあると言わねばなりません。(
拍手)尚シベリヤには七十万の同胞か終戦三年後の今日も還れないでいるのであります。彼等は今何をしているか、何を考えているだろうか、私達はこのことは心から離れることができないのでございますが、
ポツダム宣言には「
日本國軍隊は完全に武装を解除せられたる後、各自の家庭に復帰し平和的かつ生産的の
生活を営むの機会を得せしめらるべし」と書かれているのであります。対日理事会のシーボルト議長はこの問題について、
アメリカ政府は一ケ月の予定があれば十七万人を、ニケ月あれば二十六万人を、半期の予告があれば最後の一人までも全部
引揚げさせるための船を
用意することができるというこの感激的な
言葉を発表されたと傳えられているのであります。たとえ現在の
日本が進駐軍の管理下に置かれまして、自由なる発言が許されていないにいたしましても、なされるままに待つ外に何とか縋る快はないものでしようか、(
拍手)人道の名において、正義の光りの下にこの肉親の腸のそこから挙げられているところの血の叫びを、
引揚促進の
要求を、
世界の良心に向
つて愬えることが許されないのでありましようか。(
拍手)私は総理であり、外相であるところの
芦田さんに、この問題について
日本の母として率直なる御返答を伺いたいのであります。
最後に、第三次
世界大戦が今後若しも起るようなことがあ
つた時に、
日本の立場ほどうあるのであるかという問題であります。すでに我が國は
ポツダム宣言受諾によりまして無防備の國とな
つております。然るにヨーロツパを見ましても、アジアを見ましても、
世界の国際情勢は誠に険悪の度を加えておりまして、勢いの趨くところ、いつ第三次
世界大戦の勃発を見ないと言い切ることが誰ができるか。私共はその不安に戦いているのであります。若しそういうふうな日が來ました時に、
世界の地理上から考えまして、
日本の置かれております地位は非常に危い焦点の
一つに立
つていると言わなければなりません。こうした場合に直面して、果して我が
日本が憲法に言明しましたように、はつきりと平和と正義を標榜して、あの憲法の法文
通りに戦禍の外に立ち得るのでありますかどうか。單なる仮定に対する仮定の
質問といたしましては、余りにも現実に近い緊迫感に迫られているのであります。総理は平和と自由と正義の支配する
世界の建設に不断の努力をすると
言つていられますが、現に如何なる努力をしていられるか、又今後如何なる方途の努力をして下さるのですか。又その時に及んで、第三次
世界戦争の危険が
日本の國にも迫りました時に、我々としまして、又
日本の國として、取るべき立場と態度、
國民としての心構えは如何にあるべきかということについて、胸襟を開いてお
答えを願いたいのであります。このことは万民り齋しく聴かんと欲するところであると信じますから、私は率直にお伺いする次第であります。現に今日ラジオや
新聞の報ずるUPの通信は、確実なる筋の情報として、
芦田首相がドレーパー次官に対して、
アメリカが
日本を極東における
共産党の拡大に対する防壁として再建する計画に、全面的に協力することを約束したと報じておるのであります。非常に重大な時期が來ておることを我々は感ぜざるを得ないのであります。(
拍手)
責任のある御答弁をお願いする次第であります。(
拍手)
〔
國務大臣水谷長三郎君
登壇、
拍手〕